第23話「策略」
「はい、安藤くん『あーん』して?」
「…………」
「ほら、朝倉さんもこうしてぼっちの安藤くんに食べさせてくれようとしているんだし……そろそろ観念したら?」
(俺は今、食堂で多くの男子生徒から殺意のこもった視線を向けられた中……委員長に背後から押さえつけられ、朝倉さんに食堂のごはんを『あーん』で食べさせられようとしている……
どうしてこうなった?)
ーーーーーーーーーーー数十分前ーーーーーーーーーーー
キ~ンコーンカーンコーン♪
(お昼休みになったわ! さぁ、安藤くんを誘うのよ!)
「あ――」
「…………」ガタッ!
(よし、お昼休みだ! コンビニに行くか)
(ちょ! もう安藤くんが廊下に出ようとしているんだけど! 安藤くん行動が早すぎない!? 待ってぇえええ! 安藤くんカムバッーーーーーク!)
「安藤くん、、ちょっといいかな?」
「え、委員長! どうしたの? ドアの前なんかで待ち伏せして……」
(え、委員長!? どうして委員長が教室で安藤くんに話しかけているの?)
「実は、今日から学校の食堂で期間限定の春キャベツをふんだんに使った『春ロールキャベツの春キャベツ詰め&春キャベツの出汁スープ定食』が発売されるのは知っているかしら?」
「何その見事に春キャベツしか使用していないベジタリアン歓喜の定食は……それは知らなかったけど、それが?」
「いい機会だから一緒に学食で食べない?」
「え!」
「っ!?」
(でぇえええええええええええええ! い、委員長ぉおおおおおおおおお! 貴方、私に安藤くんのことは好きじゃないなんて言っていおいて私をたばかったわね! 酷いわ! 私がどれほど安藤くんをお昼に誘いたかったか知っておいてそれを目の前で奪うなんて……委員長! 貴方は悪魔よ! サタンよ! もう、超サタナキアよ!
委員長なんか、見損な――――)
「それで、良かった朝倉さんも一緒に食堂でご飯食べない?」
「是非、ご一緒するわ!」
「はぁ!?」
(委員長、マジ天使! ありがとう委員長様! 私信じてたわ! 委員長の半分は優しさで、できているんだって!)
「ちょっと待って委員長! な、何で俺が委員長達と一緒にご飯食べるの? 理由が無いよね……」
(そう、それよ! 私も安藤くんをお昼に誘おうとして何度理由で悩んだ事か……一体、委員長はどんな理由で安藤くんを説得するの……?)
「え、理由なんているの? クラスメイトなんだから理由なんてそれでいいでしょ?」
「「えぇえええええええええええええええええええええ!」」
(嘘……だろ? え、クラスメイトって理由も無く一緒にお昼ご飯を一緒に食べるのか? 俺『ぼっち』だからいままで友達なんて絵に描いた餅のような存在いなかったし、そんな事言われても……わかんねぇーよ!?)
(まさか……理由なくても誘って良いなんて盲点だったわ。流石は委員長! 私にできない事を平然とやってのけるわね!)
「え……嘘だろ? 委員長、それって理由になるの?」
「なるなる。ね、朝倉さん?」
「う、うん! そうよね! クラスメイトをお昼に誘うのに理由なんか必要ないわよ。と、当然でしょう?」
「いや、朝倉さんもさっき一緒に驚いていたよね……?」
「何……? 安藤くんは一緒に私達とご飯食べたくないの? せっかく朝倉さんも一緒に食べるのに?」
「いや……だって俺、いつもは外で食べるから……」
「因みに、それ断る理由にならないからね? 委員長命令よ」
「じゃあ、何で聞いたし!?」
(ふふふ、何とか上手く、安藤くんと朝倉さんをお昼に誘えたわね。
私は気付いたのよ! このまま朝倉さんの恋の相談係りをさせられても、あの二人で仲が進展するとは到底思えない。そうしたら、朝倉さんの相談は増える一方だわ。ならば、いっその事私が手伝ってチャチャっとあの二人をくっつければ私はお役御免。そして、朝倉さんの信用も得てクラスの地位も安泰って作戦よ! フフフ……二人ともこのお昼休み覚悟しなさいね)
(やったわ! ついに安藤くんとお昼ご飯よ! 楽しみだわ! 何を話そうかしら?)
(ヤバイ……クラスでもそこそこ人気の委員長とお昼ってだけでクラスのヘイトを集めるのに、その上、学校一の美少女の朝倉さんとお昼を一緒にするとか学校中の男子のヘイトが溜まりすぎ俺の胃が耐え切れないぞ…………)
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