第20話「アプローチ」




「安藤くん、おはよう」

「おはよう、朝倉さん」

「…………」

「…………」


(安藤くんと一緒にお昼を食べたい!

 どうしよう……いつも安藤くんはお昼休みに何処か行くけど、よく考えたらお昼休みって一番長い休み時間よね。だったらそのお昼休みに安藤くんと一緒にご飯を食べていっぱいラノベの話がしたいわ! でも、私が誘って安藤くんが了承してくれるかしら……いやいや、弱気になったらダメよ! 委員長も『うーん、って言うか朝倉さんがお昼を誘って断るような男子はこの学校にいないと思うよ』って、太鼓判を押してくれてたじゃない! ここは強気に安藤くんへアプローチを仕掛けるのよ!)


「あ、安藤くん!」

「え、何? 朝倉さん」

「えーと……」


(初っ端から、お昼を一緒にする約束を持ちかけるのは……流石に急ぎすぎよね? まずは無難な話題から安藤くんのガードを切り崩すのよ!)


「安藤くんっていつもお昼休み何処にいるの?」

「あはは~~何だそんな事か――……」


(止めろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ぼぼぼぼぼ、ぼっちにそれを聞くんじゃねぇえええええええ! 朝倉さん、それは全世界の『ぼっち』にとって絶対に聞いてはいけないこと第一位の質問だよ! いいか? ぼっちって言うのはいつもリア充が活発になる休み時間でおのれの安息できる地を求めて毎日一人になれる場所を探しているんだよ! まぁ、具体的に言えば休み時間は近所のコンビニに行って適当なおにぎりとか買ったら人気の無い駐車場とかでラノベ読みながらご飯を食べているんだけど……そんなこと朝倉さんにいえるわけ無いだろうがぁ!)


「あ、あはは……えっと――コンビニとか外に出てブラブラしてるかな……」

「そうなのね~~でも、どうして教室で食べないの?」

「だってお昼休みになると何故か俺の机消えるから……」

「安藤くん……」

「…………」


(あ、察し……)


(くそう! だから、この話題は嫌だったんだよ! 何でクラスのリア充は人の机を無許可で借りていくんだ!)


「そ、それなら――」

「ん?」

「安藤くんの机が無くなった時は、私が安藤くんに机を貸してあげるわ!」

「……へ? そ、それは?」

「っ! か、勘違いしないでよね! 別に私は安藤くんが本をくれたお礼をしたいだけで、別に特別な理由とかはなな、無いんだからね!」

「そ、そうだよね! あの朝倉さんが俺みたいなクラスの『ぼっち』にどうこう何てありえないよね!」


(キャァアアアアアアアア! 私ったら、また何てテンプレなツンデレセリフを言っているのよ! これじゃあ、私の気持ちが安藤くんにバレちゃうじゃない!)


(あっぶねぇええええええ! 危うく朝倉さんが俺のことを『好き』なのかと思い込む所だった! そうか、本を上げたお礼か……そうだよな! いくらなんでも学校一の美少女の朝倉さんが俺の事なんか……)


「……え、えへへ」

「……あ、あはは」


((は、恥かしい……))



「………………」


(朝から安藤くんと朝倉さんの二人のやり取りを、クラス委員長として気になったから見ていたけど…………何あのバカップル?

 爆発しないかな……)







【おまけss】「『孤独(ぼっち)』のグルメ」



 お昼休み


「いらっしゃせー」

「…………」 


(ふ~~やっと、お昼休みだぜ……やっぱりクラスメイトが大勢いる教室よりも、近所の客が少ないこのコンビニの方が『ぼっち』の俺には落ち着くな。さてさて、今日のお昼は何を食べようか……予算は500円程度、個人的な要望としては米と肉と飲み物を買いたいですな)


「…………」 じー

「しゃせー」


(レジの横には定番の『肉まん』に『あんまん』に『ちくわまん』の三つ……そして、その横にはこちらも定番の『から揚げ』と『おでん』と『焼き鳥』か……)


「…………」 じー

「ぁせー」


(弁当コーナーにはこちらも定番の『おにぎり』に『サンドイッチ』に、そしてお弁当各種……めぼしい弁当は『そぼろ弁』『カルビ弁』『オムライス』かな)


「…………」 じー

「せ~」


(飲み物は『お茶』『紅茶』『コーヒー』あたりか……よし、決めた!)



「あざっしゃー」

「…………」


(フッフッフ! 今日は『ちょっとした贅沢』がテーマだぜ! メニューはズバリ……


『カルビ弁当』 350円

『焼き鳥(ぽんんじり 塩)』 80円

『炭酸水(250ミリリットル)』 30円

『味付タマゴ』 60円


 これだ! ふはははは! どうだ!? これぞ、俺の考えた最強の組み合わせ! 昼飯としてもっとも重要な『米』と『肉』を入れつつ最後のつまみの『焼き鳥』とそれにあえて『炭酸水』を合わせ! シメに『味玉』ぁああああああああ! これぞ完璧な献立だ!)


「さて、いつもどおり人の少ない駐車場のベンチに移動して……食べるか!」


(まずはこのカルビ弁当を――)


「…………」 パク


(……おおぉお! しばらく米を入れてなかった口に広がるこの米の感触に……広がる『肉汁!』 しかも、この心に沁みこむ様な味はまさしく『塩味!』 やっぱり、カルビは塩にかぎるなぁ~~これが米にひじょぉおおおにマッチしてごはんが進むんだわ~)


「……」 ゴックン


(さて、お次はつまみ用の『焼き鳥』と『炭酸水』だな……)


「…………」 パク! ……ゴクゴク!


(くっぁ――――ぁあああ! このぽんじりの柔らかくもコリコリと感じる歯ごたえ!

 そして、その後に残る後味を無理矢理に胃へぶち込んでいく『炭酸水』の刺激!? これがまた腹ペコの胃に直撃するんだわ―ーっ!)


「…………ふぅ」


(いやー上手かった……よし、じゃあシメの『味玉』に行きますか!)


「……」ニヤリ


(そう、たらふく飯を食い終わった後の、でもまた少しだけさっきの弁当と焼き鳥の味が恋しくて口の中が寂しく感じるこのタイミング! ここで『味玉』をシメにして自分の胃に最後の『食った』という実感をあたえる!)


「…………」 パク! モグモグ……


(うっ……めぇえええええええええええええ! 噛めば噛むほど口の中に味玉の味が広がる! そして、ここで残りの時間を口の中で味玉を味わいながら時々のどを炭酸水で潤して……)


「…………」 パラ


(残った時間で『ラノベ』を読む……ふぅ、最高の一時だな)




 安藤くんのお昼は意外と充実しているのであった。




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