第19話「委員長の災難」





「さて、場所をわざわざ廊下から図書室に移動させてもらってすまないわね」

「う、うん……私は大丈夫だから」


(確かに廊下ではあまり落ち着いて話せなかったけど、まさか委員長が図書室を選ぶとは……なるほど、自分のホームで戦うつもりね!)


(うわぁ~~何で委員長キャラの私が女子カーストトップの朝倉さんに目を付けられてるのよぉおお! 流石に他の女子にそんな現場を見られたくなかったから朝倉さんを図書室に案内したけど、何か変な誤解されてるよね?)


「あ、朝倉さん! 誤解してるわ! 待って、あれはただ安藤くんが図書室に来ているだけで私は図書委員として話しているだけなの!」


(冗談じゃないわよ! 安藤くんは全然私のタイプじゃ無いし、そんなくだらない理由で朝倉さんに嫌われたら、ただの委員長キャラの私は学校中の女子から肩身が狭くなるじゃない! もし、朝倉さん本人が私を陥れるつもりが無くても、女子の世界ってのはカーストのトップが特定の誰かを敵だと思えばそれは他の女子、全ての総意になっちゃうんだから!)


「つまり、私と安藤くんはそんな仲じゃないの!」

「つまり……お昼休みの度に逢引をしていると……」


(ちがぁあああああああああああう!)


「朝倉さん、落ち着いて! そもそも、たかがクラスの男の子と軽く話すくらい『ふつう』だから!」

「ぐふぅ!」バキューン!


(ふ、ふつう……たかがクラスの男の子と軽く話すくらい『ふつう』ですって……!? じゃあ、これまでの私の安藤くんに話しかけようとしてきた努力はすべて彼女にたかが『ふつう』と言われる事だったの……?)


「それに、私はただ安藤くんとは本の話くらいしかしてないから!」

「がはぁ!」バキューン!

「てか、むしろ安藤くんと図書室で会っても話すことなんか本っていうか……『ライトノベル』の話くらいしか無いからね?」

「ぎゃふん!」ズガンッ!


(な、なんて事なの……この小娘は今まで私が必死につかみとろうとしてきたことをそんな軽がると……)


「いいわ、分かったわ。委員長! 貴方は私の敵よ!」

「何でぇええええええええええええ!」


(ヒィイイイイイイイイ! お、恐れていた事が現実に!)


「朝倉さん、待って! マジで、お願いします。私の話を聞いてください! あ、朝倉さんは安藤くんが……『好き』なんでしょう?」

「はぅっ! な、ななな、何の事かしら~~?」


(うわぁ~朝倉さん、分かりやすいくらい動揺してるし……嘘つくの下手だなこの人)


(はぅううう! ななな、何で委員長に私の気持ちがバレたの! 私この気持ちはまだ誰にも言ってないのに!)


「か、勘違いしないでよね! 別に、私は安藤くんの事が好きなんじゃなくて……ただ、彼と休み時間とかに仲良くお喋りできるような仲になりたいだけなんだからね!」

「へ、へぇ~~……」


(しかも、何このわかりやすいツンデレは……でも、この反応なら上手く誘導すれば朝倉さんを敵に回す事は無さそうね)


「大丈夫、朝倉さん。落ち着いて、私は別に安藤くんのことはミジンコほどにも興味無いから、むしろ、私はクラス委員長として朝倉さんと安藤くんの仲を応援したいとでも思っているわ!」

「ふぇ……委員長、それ本当?」

「もちろん! 前から安藤くんには朝倉さんみたいに明るい人が友達になればって思っていたのよ! だから、私に朝倉さんが安藤くんと仲良くなれる様に協力させて欲しいの!」

「協力……?」

「うん!」

「委員長が……私と安藤くんの仲を?」

「うんうん!」

「でも、委員長は私が安藤くんと仲良くしてもいいの?」

「もちろん! てか、何度も言うけど安藤くんは私のタイプじゃないから! 私は『レット・バトラー』みたいな男性がタイプなの!」

「れっとばとらー?」

「あ、朝倉さん、知らないんだ……えっと、私の好きな小説に出てくる登場人物よ」


(つまり、委員長は本当に安藤くんのことは狙っていないと……むしろ、それどころか私に協力してくれようとしている……)


「委員長! 貴方、本当はいい人だったのね! 疑ってごめんなさい!」

「いいのよ。だって、私達クラスメイトじゃない!」


(助かったぁアアアアアアア! よし! それどころか朝倉さんの恋を応援する事で、私も女子のトップカーストの朝倉さんと親しくなりついでに私の女子のカースト地位も今より安定すると言う打算も手に入れたわ! あの朝倉さんが安藤くんにお熱なのは意外だったけど、こんなの学校一の朝倉さんをチャチャっとけしかけさせれば、あのぼっちの安藤くんを落とすくらい楽勝でしょう)


「それで、委員長! どうやったら安藤くんと緊張しないで話せるかしら?」

「…………は?」

「そ、そのね……実は私最近になって安藤くんの事が好きになっちゃったんだけど……いざ『好き』って感情を理解したら上手く安藤くんの顔を見て話せなくなっちゃって……」


(まさか、そこからかぁーーっ! えぇえええ、あの朝倉さんがそのレベルなの?)


「えーと、じゃあ、安藤くんの顔をジャガイモだと思えばいいんじゃない?」

「そんなことできたら苦労しないわよ! もう!」


(うわぁ、メンドくせぇえええええ……え、もしかして、私予想以上に厄介な相談を受けちゃったんじゃ無いの?)


「えっと……朝倉さん、そろそろ授業が始まっちゃうから続きは今度にしないかしら?」

「あ、あら、そうね! 委員長、時間をとってゴメンなさい。また、今度ね! お願いだからね!」

「あ、うん。ハイ」


(ふぅ……やっと、朝倉さんが出て行った)


「お、委員長じゃん」

「あ、安藤くん」


(噂をすればなんとやらね。てか、今更きて何の用よ)


「さっき、そこで朝倉さんとすれ違ったんだけど、聞いたよ。委員長って朝倉さんと仲いいんだってね」

「アハハハ……そ、そうね~~」


(誰の所為だと思ってんだこの野郎!)







【おまけ】ss「サイト」


「思ったんだけど……私達っていつもウェブ小説の話をしているけど『なろう』の話ばっかりしてて良いのかしら?」

「朝倉さん、突然何の話? なんか発言がメタいよ」

「いや、私達って大体は『なろう』の話をしているじゃない? でも、考えて見れば小説投稿サイトって『なろう』意外にも『αポリス』や『エブリデイ』とか他にもいろいろあるじゃない? ああそれと『カクヨム』とかね」

「朝倉さん、なんか最後に凄くわざとらしく『カクヨム』を追加したね……でも、やっぱり小説投稿サイトって言ったら大手は『なろう』だし、俺と朝倉さんだってよく読むのは『なろう』でしょ? 正直『カクヨム』なんて最初コメント機能すらなくて絶望したくらいだし」

「安藤くん、貴方には怖いものが無いのかしら……貴方って時々さらりと『毒』を吐くわよね。そして、何故か急に『なろう』の話をしてていいのか不安になってきたわ……」

「朝倉さん、何を『不安』に思う必要があるのさ? 別に俺達が『ラノベ作家になろう』略して『なろう』の話をしても何も困ることはないでしょ? 別に『ラノベ作家になろう』略して『なろう』と似たような名前のサイトがあるわけでもないしね」

「そ、そうよね……大丈夫よね! 例え私達が『ラノベ作家になろう』略して『なろう』の話や『αポリス』や『エブリデイ』の話をしても何の問題も無いわよね! ああ、あと『カクヨム』とか?」

「うん、そうだよ! だから、これからもドンドン『なろう』の話をしよう!」

「それはそれで怖い気もするのだけど……因みに、安藤くんは『カクヨム』は使っていたみたいな事を言ってたけど『カクヨム』の作品も読んでいたりするの?」

「うん『なろう』ほどじゃ無いけど、時々読んでいたりするね」

「へーそうなのね。実は私って『なろう』以外のサイトは使ったこと無いのだけど、他のサイトはどんな感じなのかしら?」


「うん、やっぱり『なろう』と比べてサイトデザインがダサいよね!」


「ストォオオオオオオオオオオオップ!」

「うぇ! あ、朝倉さんどうしたの?」

「『どうしたの?』なのは貴方よ安藤くん!? どうして、今日の貴方はいつもより『毒』が4割増しくらいになっているの!?」

「いやーね。でも、実際に初期の頃のあのサイトは酷いもんだったよ? さっきも言ったように作品へのコメントは無いやら、トップが文字だらけで見づらいやら『なろう』に比べてPVが全然伸びないとか『あとがき』『執筆報告ページ』は無いとか評価システムが意味不――」

「ワァアアアアアアアアアア!? ダメダメ! 安藤くんストップ! セイ! セイセイ! セーーーーーーーーーーイ!

 ちょっと、安藤くんその自殺志願者みたいな口を閉じなさい!」

「話せって言ったの朝倉さんだよ……?」


(それでも、今日の安藤くんの発言は何故かどれも『爆弾』を孕んでいるような気がしてならないのよ!)


「でも、そんな使いづらい環境だったからこそ、小説投稿サイトの素晴らしいところも見えて来たって言うのもあるよね。特に『カクヨム』は利用者とのコミュニケーションは凄く活発でいいと思うんだ」

「あら、さっきとは一点変わって、まるでゴマをするような掌返しね?」

「いや『カクヨム』って作品へのコメント機能は最初無かったから読者がコメントの変わりに積極的にレビューをつけて作者もそれに応えるようにレビューを返したりとPVが『なろう』に比べて少ない分、読まれた分のPVに比べてレビューが付く数は『なろう』よりもはるかに多かったんだよ。だから、PVが少ない作品でもちゃんとした読者が付いていたりして、それに応えるように作者も作品を投稿し続けたし、サイト側もそれを見て『コメント機能』をつけたりとちゃんと改善はされていたんだ。

 確かに小説投稿サイトでは『なろう』が大手かもしれない。でも、やっぱり『小説』を『書く・読む』のに一番大切なのは『どのサイト』かじゃ無くて『読者と作者のコミュニケーション』なんだって俺は『カクヨム』を利用して思ったんだ」

「安藤くん……」


「でも、やっぱり一番使うサイトは『なろう』だけどね!」


「だから、アウトォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」



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