第17話「図書室」




「あ、安藤くん、こんにちは。今日も図書室に来たんだ?」

「委員長、こんにちは。てか、委員長もお昼休みは図書室にいるじゃん?」

「私は図書委員もしているからいいのよ。でも、安藤くんは図書委員じゃないのにいつも来るじゃない?」

「だって、お昼休みって暇なんだもん……」

「なら、友達と話すなり遊べばいいと思うんだけど?」

「委員長……俺が『ぼっち』だって知ってる?」

「そりゃ、当然でしょう?」

「なら、何故言ったし……」

「クラス委員として、クラスに馴染めるようにアドバイスしているのよ」

「よけいなお世話だし」


(委員長は相変わらずお節介だな。見た目は三つ編みメガネの真面目なクラス委員で優しそうなのに、中身は結構辛らつなんだよ。別にタイプとかではないのだけど、お昼休みは俺と一緒で委員長はいつも図書館にいるから必然的に良く話すんだよね)


「それで、委員長は何読んでいるの?」

「この前、発売した爆撃文庫の『老女戦記』よ」

「あー、あの結構本格的に戦争してる戦記モノだよね。委員長ってそういうハードな小説や古風なの好きだよね」

「まぁ、私はもともとラノベよりも一般文芸やライト小説を中心で読んでるからね。安藤くんは逆に、ファンタジーものとかライトノベルらしい物が好きだよね?」

「まぁ、比較的いろいろ読むけど……最近は『なろう』系が多いから」

「『なろう』系か~~私はあまり読まないジャンルね。あ! でも、最近話題になっている『ソナタの心臓を食べたい』は気になってるわ」

「ああ、あれね! あれはかなりいい作品だからオススメだよ」

「そうなんだ……じゃあ、安藤くんがオススメするなら買おうかな?」


(安藤くんって、クラスでいつも一人だから最初は暗いイメージだったけど、こうして話すと意外とそうでもないのよね。でも、異性としてタイプかって言われたら、正直私は『無い』かな。だって、私のタイプの男性は『レット・バトラー』みたいな男性なんだもん!

 あ、でも……こうして、お昼休みに本の話をする相手としては『有り』かも?)


「安藤くん、いつもオススメの本を教えてくれてありがとう。その優しさをクラスの子達にも分けれれば友達もできると思うわよ」

「いやいや、委員長こそ、いつもよけいなお世話をありがとう。その無駄なお節介を治せば、良い彼氏の一人でもできると思うよ」

「うふふ……」

「あはは……」


((この野郎……))





















「………………」


(安藤くん……その女、誰?)






【おまけss】「好み」



「安藤くんって、ラノベでは好きなヒロインのタイプとかあるの?」

「え、好きなヒロインのタイプか~そうだね……」

「…………」


(キタキタキタァアアアアアアアアアアア! やったわ! これで自然に安藤くんの好きな『女の子の好み』を聞き出せるわ!

 この質問ならラノベの話題に見せかけることで私が安藤くんの事を意識しているように見えないし、それでいて安藤くんに警戒心を与えることなく彼の『好み』を聞く作戦よ!

 フフン、流石は私ね! こんな完璧でパーフェクトな誘導尋問を思いついちゃうなんて私ったらなんて頭が良いのかしら!

 フフ、私ったらホントに賢い子~♪)



「うん、そうだね。最近ならやっぱり『めぐ●ん』かな?」


「まさかの『中二病』ですってぇええええええええええ!?」


(何よそれ!? つまり、安藤くんは私に中二病キャラになれって言うの!? この『学校一の美少女』の私が突然中二病キャラにジョブチェンジとか斬新すぎるわよ!)


「いやいや、待って違うんだよ。俺はただ『中二病キャラ』だから『め●みん』が好きなわけじゃなくてね。純粋に『あの素晴らしい世界に復讐を!』の『めぐ●ん』というキャラクターそのものが純粋に好きなんだよ!

 朝倉さんだってラノベを読むならあるでしょ? 今まではこの『●●キャラ』は好きでもなかったけどこの作品のキャラだけは別だ! って存在のキャラ?」

「ま、まぁ……確かにいなくも無いけど」


(そ、そうね……今まではラノベ特有の冴えない『ぼっちキャラ』の主人公って何でこんな男の子がヒロイン達にモテるのかしら? って思ってたけど、最近では何となく分かるようになってきたとか――ッ!?)


「そそそ、そんな事よりも! 安藤くんは最近ならって言ってたけど……じゃあ、数年前のラノベで好きなヒロインはいるのかしら?」


(流石に安藤くんの好みを聞いてそのヒロインを参考にすれば安藤くんも私を見るようになるかと思ったけど『中二病キャラ』はリアルでやるにはハードルが高すぎるわ……だから、せめて別の参考になるキャラを――)


「そうだね……『我の妹がこない可愛いはずがなかろう』の『●猫』かな」


「やっぱり『中二病キャラ』じゃないのよぉおおおおおおおおおおお!」





【その日の夜】


 朝倉さんの家


「わ、我が名は……朝倉・エレオノーレ・スカーレッド!

 真紅の桜(はな)を夢みて虚構(そら)に消失(きえ)なさい…………フッ」


(って…………は、はずかしすぎるでしょぉおおおおおおおおおおお!)





 安藤くんの家


「…………あ」


(今日の朝倉さんの『どんなヒロインが好きか?』って、質問……よくよく考えたら俺が好きになるラノベのヒロインって『中二病キャラ』って言うよりも、普段はしっかり者で出来るヒロインなんだけど、こと主人公が絡むと恋愛事情がダメダメな『残念系ヒロイン』に惹かれるんだよな……

 ま! 朝倉さんも『そんなこと』特に聞きたいわけでも無いだろうし、どうでもいいか!)





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