第9話「その時、安藤は思った」
「じゃあ、安藤くんはここにいてね。私は何か飲み物を取ってくるわ」
「う、うん」
そう言って朝倉さんは部屋から出て行った。
……てか、何で俺はいきなり告白された女の子の家にいるのだろう……?
「いや、マジで何で俺、朝倉さんの家にいるの!」
待て待て待て、待ちつけ俺……こういう時は素数を数えて落ち着くんだ。1、2、3……素数ってなんだっけ? って、そうじゃない! まずは朝倉さんが飲み物を取りに台所へ向かっているうちに俺に何が起きたのかを思い出すんだ。
確か――
あ……ありのまま起こった事を話すぜ!
俺は、朝倉さんにラノベをプレゼントしようとしたら、彼女に告白された。
な、何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起こったのか分からなかった……
頭がどうにかなったのかと思った……
ぼっちを拗らせすぎたとか、童貞の妄想だとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねぇ、
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
うん、改めて状況を思い出しても意味不明だな……まぁ、あの後に朝倉さんも――
『……ふぇ! わ、わわわ、私今何を――まって! 違うのよ! いい、今のは言葉が足りなかったと言うか練習不足で……いやぁああああああああ! 私なんて事を口走っているのよぉおおおおおお!』
『あ、朝倉さん……つまり、今のは言い間違いなんだよね? だ、大丈夫! おおお、俺はぼっちだからこんなことで変に勘違いなんてシナイヨ? だ、大体あの朝倉さんがぼっちの俺を好きなんてありえないもんね! じゃ、じゃあ! 俺は先に帰るから――』
『ちょッ――ちょっとお待ちになって!』
『……はい?』
『安藤くん……今から私の家に来なさい。大丈夫、私の家はここの近くなのよ……だから、そこでお話しましょうか?』
――って、感じで朝倉さんの部屋に案内されたんだよな。
……え、俺マジで告白されるの!?
「お待たせ」
すると、朝倉さんがジュースを二つ持って部屋に戻ってきた。そして、彼女は俺の目の前にジュースの入ったコップを『ガツンッ!』っと音をたてながら置きものすご形相で俺を睨みつけながら言った。
「さぁ、話をしましょうか……」
あ、違うな。これ告白とか甘い雰囲気じゃない。きっと、俺ここで殺されるんだわ。
そう思うほど、彼女の顔は鬼気迫るものがあった。
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