第4話「挨拶」
(はぁ、昨日は結局トイレの話だけで、安藤くんとライトノベルの話できなかったわね。でも、今日こそは安藤くんとライトノベルの話をして見せるんだから!
下駄箱に靴があったから、このドアを開けたら教室に安藤くんがいるはずだわ。ドアを開けて挨拶をし、そのまま軽い調子で朝の雑談をするのよ!
その為にはもっと安藤くんと親しくならないとダメよね。そう、例えば休み時間の度に気楽にライトノベルの話をできるくらい……どうすればいいかしら?
はぁ、安藤くんってクラスでいつも一人だからどういう風に話しかければいいのか分からないのよね……てか、彼むしろ私を避けている気さえするわ。何故かしら?
うーん、どうすれば私は安藤くんに振り向いてもらえるの! もっと可愛さをアピールしてみる? それとも可憐さをアピール? それともさりげなく胸元を開けてセクシーに――……って、何で私がクラスでぼっちの彼を誘惑しようとしている流れみたいになっているのよ!
おかしくない!? 私って学校で一番の美人って言われているのよ! なのに、何でその私がぼっちの彼に恋しているみたいになっているの! 別にこの気持ちは『恋』なんて恥ずかしいものじゃなくてただ同じ趣味を語れる相手が欲しいという『同族欲求』なのよ!
だいたい、ふつうなら安藤くんの方から私に話を振ってくるべきなのよ! そのために私は彼に何度も何度もアピールをしてきたわ。わざわざ彼に見えるようにスマホで『なろう』のページを開いたり、彼の読んでいるラノベを聞き出したり、毎日寝る前には彼の事を考えてお布団であれこれ悩んだり、時々、彼とライトノベルの話をする姿を想像してボーっとしたりと……そう! 私はこんなにも彼の事を考えているって言うのに肝心の彼は私の存在なんか教室にいる生徒Aくらいにしか思ってないのよ!
ああもう! そう思ったら何かムカついてきたわ! ふん、このまま教室に入ってぶっきらぼうに挨拶して私が『怒っている』アピールをしてやるんだから!)
ガラガラ~
「…………」
「…………」
(うおっ! 誰かと思ったら朝倉さんだ。てか、なんかめっちゃ不機嫌そうな顔で俺の事を睨んでいるけど、俺何かしたかな?)
「……安藤くん、オハヨウ」
「あ、うん。おはよう……朝倉さん」
「…………」
「…………」
(あ、安藤くんが挨拶を返してくれたわ! えへへ~~どうしよう、顔がにやけちゃうわ!)
(うわぁ、今度は何か急にニヤニヤしてる……朝倉さんって美人なのに変な人だよな)
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