第3話「トイレ」


(こ、今度こそ! 次の休み時間こそ安藤くんと会話して見せるわ! ……って、ちょっとまって。何かこれって私が安藤くんに恋してる乙女みたいじゃない……

 べ、別に、安藤くんとはラノベの話がしたいだけで男女の仲的にどうこうなりたいってわけじゃないんだから! そうよ! むしろ、私は隠れラノベオタクだとしても、学校一の美少女! そして、彼は学校一のぼっち。本来なら、向こうから私に話しかけてくださいってお願いされるレベルの差があるんだからね!

 っと、言う事で今回はなんとしても安藤くんから私に積極的に話しかけさせるわ!

 計画はこうね――


私『やぁやぁ、安藤くん。ところで、前の休み時間に言っていた「転生したら悪役令嬢だった件」って面白いの?』

彼『うん! 面白いよ!』

私『ふーん……』

彼『(あれ? 話題を振ってきたのに反応それだけ? もっと、ラノベのお話したいよう……よし、僕から話しかけよう!)』

私『…………』チラ? チラ?

彼『朝倉さんもライトノベル読むの?』

私『そうなのよ!』


 ――よし、完璧だわ!)



 そして、次の休み時間



(よし、行くわよ!)


「ねぇ、安藤くん」

「……え、何? 朝倉さん」


(うぉ! 何だ? また朝倉さんが話しかけてきた)


(よし、今度はちゃんと返事してくれたわね! じゃあ、仕掛けるわよ……)


「さっきの休み時間に言っていた『転生したら悪役令嬢だった件』って面白いのかしら?」

「あ、うん……面白いけど」

「ふーん……」

「…………」

「…………」


(あ、あれ? 私が話題を振ってあげたのに反応無し? う、嘘でしょ……? ちょっと、まって! まさか本当にこれで会話お終いなの!? 私は安藤くんともっと、ライトノベルのお話がしたいのよ!

 こうなったら、もう一度だけ私から話して話しかけるしか……)


「…………」チラ? チラ?

「…………」


(って、違ぁああああう! 安藤くんから話しかけさせるのに何でまた私が話題振らなきゃいけないのよ! もう、安藤くんもこんなに可愛い女の子がわざわざぼっちの貴方に話しかけてあげているんだから少しは会話を盛り上げなさいよね!)


(やべ……何故か朝倉さんが超こっち見てくる。え、もしかして今の何か会話続けなきゃダメだった? でも、俺……朝倉さんに振るような話題ねぇよ。ラノベ関係はこの前盛大に自爆したしな。でも、何か話題……うーん)


「こ、この前さ……」

「ッ!?」


(キタァーーーーッ! ついに安藤くんが私に話しかけてくれたわ! それで何? この前何があったの!)


「モックバーガーで個室のトイレに入ったんだ」


(…………ん?)


「そこで個室のドアを誰かにノックされたんだけど、あれって扉が閉まってるんだから中に人が入っているの分かるよね。なのにノックをするって事は『早く出ろ』って意味じゃん。でも、そんなのこっちだって好きで長くトイレにいるわけじゃないし、むしろ急かされると逆に時間かかるわけで、意味無いどころか逆効果なんだよね……

 つまり、トイレのドアをノックする奴を俺は『自己中』な奴らだと思うんだ」


「…………」

「…………」


(やっちまったぁああああああああああ! 何で俺は学校一の美少女に『トイレ』の話なんか振っているんだあああ! アホ過ぎるだろ俺!?)


(もの凄い分かるぅぅうううううう! でも、安藤くん。なんで最初に振る話題が『トイレ』の話なのよ! 貴方って言ったら『ラノベ』でしょ! ラノベの話題振ってきなさいよ! 何が悲しくて私は気になる男子から『トイレ』の話題なんか聞き出さなきゃいけないのよ!

 これじゃ、共感できても話題を膨らませる事ができないでしょうが!)


「…………」

「…………」


 キンーコーンカーンコ~~ン


((終わった…………))


「…………」



(でも、今回は安藤くんと会話できたわ……えへへ)



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