第2話「タイトル」



 二時間目休み時間



(こ、今度こそ安藤くんと会話して見せるわ! その為に、今度は私から話しかける! 安藤くんは……よし! いつもどおりラノベを読んでいるわね。大丈夫、この時の為に家で話しかける練習はバッチリよ!)


(なんだろう……朝倉さんがめっちゃこっち見てる気がする。もしかして、朝倉さん教室でラノベ読む人間は毛嫌いするタイプか?)


「あ、安藤くん、何を読んでいるの?」

「え」

「…………………………」

「…………………………」


(やったぁああああ! ついに話しかけれ……ってぇええええええええええええええええええ! 返事それだけぇええええ!? 『え』って何? 『え』ってええええええええ!!)


(うぉ! ヤッベ、朝倉さんに話しかけられた!? しかし、焦るな俺! これは興味があるフリしてぼっちの俺に話しかけ『クラスのぼっちにも声をかける私って優しい!』って印象を与える為の演技に違いない。だから、浮かれるなよ、俺!)


「…………」

「…………」


(い、今のはクラスで一番可愛い私に話しかけられて焦っちゃっただけよね? だから、これから今の質問に答えてくれるのよね? だ、だから、私を無視しないでお願い! じゃ、無いと作品名を聞いて『あ、それ私も読んだことあるわ~』からのラノベ仲間アピールができないじゃない!) 


(こ、これは作品名を答えていいのか……? しかし、結構無言で返してしまったが今更答えても大丈夫だろうか……え、てかもし答えるとしても俺このタイトルを朝倉さんに言うの!? たっく……なんで「なろう」の作品ってどれも人に言うのが躊躇われる作品名ばっかりなの?

 ええい、ままよ!)


「……て、」

「っ!?」


(キタキタキターーッ! 『て』? 『て』ってことは始まりは『転生~~』よね? よし! 「なろう」の転生モノなら私結構な量を読んでいるから何でも来いよ! さぁ、何が来るの!)


「て『転生したら悪役令嬢だった件』……」

「…………」


(まさかの『悪役令嬢モノ』ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? しかも、私読んで無いしぃいいいいいいいいいいいいい! え!? てか、安藤くん『悪役令嬢モノ』も読むの!? まって! 私の専門は『異世界転生俺TUEEE』だけで『悪役令嬢』は勉強不足なのよ!)


(ほらミスったぁあああああああああああああああああああああ! これ盛大に自爆してるじゃん! 空気死んだじゃん! 朝倉さんの顔見てみろよ! 何か盛大に『まったく想像してないタイトルが来たわ……』みたいな顔してるじゃん! 分かってたよ! 朝倉さんが「なろう」の作品あまり詳しくないって! でも、この前「八男転生」読んでたからもしかしたら、いけるかもって思ったんだよ! よし、決めた! 俺もう朝倉さんの前で一生「ラノベ」の話はしないもんね!)


「……………………」

「……………………」


((ヤバイ! このままだと空気が重すぎる……何か話さないと!))


「「……あ、あの――」」


 キンーコーンカーンコ~~ン


((お、終わった…………))





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