第5話「きっかけ」



「安藤くん、おはよう」

「あ、うん。おはよう……朝倉さん」

「安藤くん、今日は何を読んでいるの?」


 あれから私は努力の甲斐もあってついに安藤くんとふつうにライトノベルの話ができるようになっていた。


「ん? ああ、これはデデデ文庫の新作だよ。ほら、このまえ『このへんのライトノベルがすごい』で新人部門1位になった作品」

「ああ、あれね! 私もその作品気になっていたのよね。どう、面白いの?」

「うん、これが結構面白いんだよ! 昨日一巻を買ったんだけど、面白すぎて今は最新刊の三巻を読んでいるところ」

「へー、そうなのね。じゃあ、私も今読んでいるのが読み終わったら、それを読んでみるわ。安藤くんが面白いって言う作品で今まで私がハマらなかった作品ないものね」

「そうだね。是非、オススメするよ。因みに、朝倉さんは今は何を読んでいるの?」

「私は最近書籍化された『クラスの虐められっ子が異世界転生すると大抵チート』を読んでいるわ」

「アハハハ! 朝倉さんは本当に俺TUEEEものが好きだよね」

「何よ……悪い?」

「ううん、全然いいと思う……っていうか可愛いかな」

「かっ……って、何言っているのよ!」

「うん、ゴメン……そ、そうだよね」


 最近、安藤くんと話すようになってから、彼はこうして時々私に『ドキッ!』っとするような事を言ってくる。でも、それを私はそんなに嫌だとは思っていない……

 最初は挨拶を交わすことさえできなかったのにね。

 でも、今思えばあの時、私が安藤くんと話す事ができなかったのは全て私の所為だ。私が要らないプライドとか見栄を張っていた所為で私は自分から彼に壁を作ってしまった。

 でも、本当に彼と話したいのなら――


 大事なのは、私が勇気を出せばいいだけだったのだ。


「安藤くん、良かったら……今日の放課後一緒に本屋さんへ――

 その……い、行かない?」

「――っ! よ、喜んで!」




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 チャンチュンチュン




「夢か…………」


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