第7話 ダンジョン・ダンシング

 ゼリーアメーバ軍団を殲滅し、勇者は


「ここかぁ!エレなんちゃって野郎のアジトはああぁぁぁぁぁぁぁあ!」


 敵ダンジョン目前まで迫っていた。接近して来る勇者を見つめて門番の魔物が武器を構えた


「モフゥゥゥ、一人で来たのか人間よ。勇敢な事だがここを通すわけには・・・」


「ミノタウロスか!? しゃらくさい!食らえ秘剣ッ」


 勇者は武器を構えミノタロスに迫る


「秘剣?何かのスキルか!くっッ」


 一瞬だった―――――――


 「な・・・・」


――――勇者は大きく踏み込み間合いを詰め、ミノタウロス懐に入る


 ”斬られる!?しかし一撃をどうにかしのげればッ!”


 と考えたミノタウロスは筋肉を固めて防御し、勇者は叫ぶ!


「ツバメが・・・えさないぃ!!」


 勇者はそのままミノタウロスの股をスライディングして通り抜けた


「え…なにぃ!?」


 混乱するミノタウロスを勇者は笑いながら挑発する


「はははは! ゲームみたいに技名を叫んだら攻撃すると思うなよバーカ!」


「おっ、おのれえええええ!!」


 激高したミノタウロスはダンジョンの中へ入いろうとする勇者を捕まえようと全力で突進する


「うっ」


 だがミノタウロスは思う様に走れない、勇者が股を潜ったさいに足の腱を斬られていたからだ。そして転んでしまい


「ガズウウウウウン!」


「あ、しまった!」


 ミノタウロスの角は見事に入口の天井に突き刺さった


「ああ、クソッ!抜けない!」


 このミノタウロスの様子を見れば。彼が門番をしていたのは、中に入れなかった為なのは言うまでもないだろう


        ・

        ・

        ・

        ・


「エルゲムってヤロウはどこだああ!!!」


 ダンジョン内に入った勇者はカンを頼りに突き進んでいった


「「待てぇええぇぇええ!」」


 道中無視した魔物達を引き連れて


「むっ!? 勇者レーダーにサブクエストの気配が!」


 勇者が勝手に名付けた空間探知能力で何となく横を見てみると


「異界の装束・・・まさか勇者!?」


「助けて下され!勇者殿!」


 牢獄の中に囚われる人々が居た。それを見た勇者は哀れな囚人に、こう言い放った


「知るか! 勇者と見ると雑用をドンドン押し付けやがって! 他に頼め!!!」


「そんな!?」


 囚人に罵声を浴びせて勇者は駆け抜けて行く。しかし勇者は牢屋の近くに宝箱を見つけ


「これは貰っていく!」


「ガチャガチャ」


 勇者は宝箱を開けようとしたが鍵がかかっていて開けられなかった


「カギィイ!? 探してる暇はないっつうの!」


「パキンッ」


 勇者は箱の隙間にサクスを突っ込み無理矢理開けようとして、サクスを折ってしまった


「今だ!ギャハアア」


 魔物の一人が武器を失った勇者に飛びかかった


「どりゃあ!」


「バコン!」


 勇者は宝箱を持ち上げて魔物を殴り飛ばした


「なんて悪足掻きを」


「死ねええ!」


 次々と襲い掛かってくる魔物共を勇者は宝箱で、吹き飛ばす


「キェエイ!エイ!エイ!エェェェイ!」


「グオ!」

   「ピニャ!」


「アグン!」


 勇者はレベル4になった。そして吹き飛ばされた魔物の一体が牢屋にぶつかり


「ガビィィィィィン」


 檻が衝撃で歪んだ。そうこうしてる中に宝箱の鍵は壊れ


「ジャラジャラ」


 宝箱の中から囚人から没収したであろう装備がこぼれた


「これだけでもっ!」


 勇者はその中からロングソードだけ手に取り再び走った


「逃がすかあ!追え追えぃ!」


 魔物達は勇者を追いかけて去ってしまった。残された囚人は壊れた牢屋から脱走した


「おい!その隙間から出られるか!?」


「ああ行けそうだ。カギとってくる」


「勇者様が奇声を上げて魔物達を引きつけている中に早く!」


「おお勇者よ、やはり我らを救ってくださいましたか」


 囚人たちが勘違いで勇者に感謝していると、遠くから奇声が響き、囚人たちの耳に入った


「キエエエエエエエエエイ!」


 勇者はロングソードの鞘を捨て前に居た魔物の一体で試し切りした


「ザシュ!」


「グバァ!」


 魔物は一刀両断され塵になって消える。勇者は剣の手ごたえに少々戸惑う


「長いな…刀身が三尺はあるぞ、野太刀クラスか。にしては軽い…1キロちょっと? 切先が細くなってるからか? 諸刃って使い辛れぇ・・・・あ!!!!!」


 勇者はいかにもボス部屋らしき扉を発見した。勇者センサーもビンビン反応している


「そこかぁぁぁぁ!!!」


 勇者はドアを蹴破ると殺気を感じとり、とっさに身をかがめた


「っ!?」


「グワン」


 頭上の空気が歪み、静寂が訪れた。そう今まで勇者を追いかけていた魔物達の声が一切消えたのだ


「ア、アア・・・」


「ボ…ス・・・」


 勇者は後ろが気になったが、前の男から目が離せない。そこでロングソードの刀身を鏡代わりにして後ろの様子を見てみた


「ズリィィィ・・・……ドス」


 刀身に映ったのは真っ二つにされ、ずり落ちる魔物の上半身が地面に落ちてから塵になっていく姿だった


「ちっ、カンの良い事だ」


 前に居る男は舌打ちし勇者を睨みつけた。自分が切り裂いた部下の事など気にも留めていない様に


「お前がエルゲムか」


 勇者の問いに男は静かにうなずいて答えた


「そうだ。そして何用かな、客人よ」


「カチッ」


 剣を真直ぐ相手に構え直して立ち上がり、勇者は答える


「お前を斬りに来た・・・ケーキ屋の店長さ。エルゲム!」

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