第5話 俺のブーツはマスターキー


 召喚された勇者は、そのまま城外に飛び出し城下街を迷わず駆け抜けていた。さっさと面倒事を終わらせて帰る為に


「わかる…わかるぞ街の様子が!まるで画面左下にミニマップが表示されている様に! しかしだ・・・」


 勇者は丸腰だった。武器も無しにどうやって魔物と戦えばいいのだろうと悩んでいると、脳裏にノイズがチラついた


「なんだ、街のあちこちに何かあるような気がするぞ? これはアレか、オープンワールドの箱庭ゲームの序盤によくある、マップのあちこちにあるサブクエスト的なアレか? 地図が見難くなるから嫌いなんだよなアレ」


 ダンジョンに向かってる途中にある、何かあると直感した場所を見てみると、困ってそうな人達が居る


「ふん!サブクエなんてやり込み要素なんぞ要るか! メインクエスト一択よ!! たとえ便利アイテムもらえたとしても、それが無くちゃクリア出来ないって訳じゃないだろぅ・・・・・む!?」


 勇者が裏路地を直感で何となく見てみると―――――


「へへ、姉ちゃん金出しな」


「ついでに服も脱いでもらおうか? ヒハハ!」


「誰か助けて・・・」


    ―――――暴漢二人にナイフで脅されている。美少女が居た


「これは行かねばぁ!!!」


 勇者は目の色を変えて暴漢に突撃した


「ガシッ」


 勇者は暴漢の一人のナイフを掴む腕を引っ張り


「な、何だテメッ」


「さっさと武器よこせやゴラァ!!」


 暴漢の頭を掴んでそのまま壁に叩きつけた


「ビタアァァン!」


 勇者は気を失った暴漢からナイフを取り上げた。もう一人の暴漢は突然の乱入者に混乱する


「な、なにぃ!?」


「ひいぃ!」


「あ!まて女!」


 逃げる少女に気を取られている暴漢に、勇者はナイフを突きつけた


「待つのはテメェだ」


「このッ」


 暴漢は突き付けられたナイフを退かそうと勇者の前腕を掴んだ。だが勇者は手首を相手の腕に絡める様に回しナイフのグリップを押し付け関節技をかけた


「痛てて!」


「ナイフを持ってる相手の手首から後ろを掴んじゃいけませんって、同族に習わなかったのか?常識だろ!」


「痛てッ、知るかそんな常識!」


 勇者は混乱する暴漢に呆れてしまった。冷めた目で暴漢を見つめている


「なんて低レベルな暴漢なんだ・・・。お嬢様学校出身の如月くんだって知ってたのに…な!」


 勇者は暴漢の股間を蹴り上げ、地面に押し倒す


「ガシッ」


「うぐ!」


 勇者は暴漢の身体をまさぐりながら尋問した


「さあ、武器を出せ! お前も何か持ってんだろう?ん?」


「そう簡単にっ!言う事を聞くとでも・・・痛てえ」


「ん~ここに固いものがあるぞ?」


「あ!くそ!止めッ!」


「はわわ・・・男同士でそんな・・・はしたないですわ」


 何故か逃げたはずの少女は頬を赤くし物陰から勇者の様子を見ていた


「シュ・・・」


「ほら、こんなデカいナイフを背中に隠しやがって!・・・・鞘が取れないな、どうやるんだ?」


「テメェ!こんな事してタダで済むとでも…」


 逆上する暴漢に勇者は静かに強く命令した


「もう面倒くさい。全部脱げ」


「な、な、なな、何言ってる!? お前そう言う趣味でもあるのか!?!?」


「貴様こそ何を言ってる? 道中ぶちのめした敵の身ぐるみ剥いで裸の死体の山を作るなんざRPGで良くある光景だろ。生かすだけでも感謝しろ、それとも命も置いてくか?」


「わ、わかった!直ぐ脱ぐ!」


「ガサゴソ・・・」


「キィマァァシタワァァン!!」


 勇者は少女の奇声に気を取られ、暴漢はその隙に全裸のまま逃げた


「なんだ!?」


「今だ!」


「あ、こら待て! しかたないもう一人の方も漁るか」


 勇者は大振りなサクスとブーツナイフを手に入れた


「よし、武器を手に入れたぞ!いくか!」


 勇者は少女に一生消えない性癖を刻み付けて走り去っていった


        ・

        ・

        ・

        ・


 アルガントゥム王国城下街は外側を城壁で囲まれている。その城壁は魔人エルゲム軍との戦闘によりボロボロになっており。石壁が乱れてデコボコしていて、所々崩れていた


「おい何かこっち来るぞ」


「馬か?」


 そんな城壁の外に出る門の一つを守る衛兵は、土煙を上げて迫ってくる謎の物体を目視した


「どけどけ!急いでるんだ!」


 土煙を上げて走る勇者は衛兵に叫ぶ。その声を聞いた衛兵が勇者の前に立ちふさがった


「まっ待て! ここを通りたければ通行手形を・・・」


  勇者は衛兵を見て ”反応が遅い、未熟!” と判断し、衛兵の頭に飛び蹴りを食らわせた


「代わりに貴様の頭に俺の足型をくれてやるぅ!!」


「ガァァン!」


 蹴られた衛兵を見て警備隊長が命令を発した


「直ぐに門を閉めろ!」


「了解!」


 町の外に出る為の門は閉められていく。勇者の足でも間に合いそうもなかった


「余計な事を…だがそれがどうした!!」


 勇者は蹴り上げた衛兵を踏み台にして城壁に飛びついた


「とう!」


「カチッ、ズガガガガガガ・・・・!」


 そして勇者はボロボロになっている城壁の凹凸にブーツの先で小刻みに蹴り上げ、高速で城壁を上った!


「ゴキブリかキサマ!」


 警備隊長のツッコミを意に返さず、勇者は捨て台詞を吐いて街の外へ跳んで行った


「そんなにエリア外に行ってほしくないのなら、ちゃんと壁をデバックしなかった製作者を恨むのだな!」


 勇者は始まりの街を飛び出した

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