第3話 女神です勇者よ

「勇者よ…、勇者よ・・・」


 聞きなれない女性の声が頭の中に直接響く感覚…。はっきりしない意識の中、言われるがまま俺は目を開けた


「うう・・・ここは?」


「起きましたか勇者よ」


 目を開けるとそこには女神?の様なの輪郭の光る人型物体がそこに居た。俺が目覚めたのは正に虚無の空間、世界にはては無く床もない、だが、こう浮遊感と呼べるものも無いのだ


「貴様ッ!宇宙人か!?まさか俺を解剖しようとでも!?」


「夫婦そろって同じような反応ですか。女神です勇者よ、断じて地球外生命などではありませんからね、まったく」


 女神を自称するこの人型物体は呆れたように手を広げて首を振っている


「そうやって人間らしい仕草をしても無駄だ、騙されんぞ! それにさっき夫婦と言ったが俺は既婚者じゃない!」


 自称女神は手をポンと叩いて ”あっ、そうか” とでも言いてげな仕草をした後、俺に言った

 

「そうでしたね。それより勇者よ、急ぎある世界を救っていただきた・・・」


「嫌だね!俺をすぐに返せ!!ゲームの発売日が迫ってるんだ!宇宙人とじぁれあってる暇はない!!!」


 間髪入れずに否定して来た俺を見て、女神は眉をぴくつかせた後にこう言った


「そんな作り物なんかより本物を味わえますよ?いいのですか?」


 ふざけた事をぬかしたので言い返してやった


「本物がどうした!作り物だから楽しめるんだよ。本物が良いって言うのなら世界観が現実に近いジャンルのFPSプレイヤーは全員戦闘狂か?違うだろ!」


 女神は更に眉をぴくつかせた後にこう言った


「しかしですね~…異世界に召喚された勇者は満足してる方が多いですよ。科学社会で出来ない力と未知の冒険の数々が・・・」


「その科学の申し子であるゲームが良いって言ってるだろさっきから! いきなり異世界にほっぽり出されて、ゲームやる感覚で実際にモンスターと殺し合いをして楽しめるヤツが居たら、ソイツはサイコパスだ!」


「まあ・・・その様な事を言われてましたね、異世界の住人がある勇者の事を」


「そうだろ!てか、何故オレを選んだんだ!?」


 なんか女神が一瞬 ”お前が言うな” 的な目つきで睨んできたが何故だろう?


「時間が無かったのです。本来なら世界に影響を与えない様に死者から勇者を選抜するのですが、今回特例として生きてる者から適格者を選びました」


「迷惑過ぎるわ!死んでから地獄行きなるんだったら、まだ理解できるが」


「地獄とまで言いますか・・・」


「だってその異世界ってアレだろ?ファンタジーでよくある、街の外には魔物がウジャウジャ居て人間側が勇者に頼らざる負えない状況なんだろ。地獄じゃなかったら何なんだ」


 女神は作り笑顔をうかべて、何かを呼び寄せるゼスチャーをしながら言った


「まあ、地獄と言えばそうかもしれませんが勇者よ。もうメンドクサイのでさっさと送り込みますからね」


 俺はタイヤ付きのベットの様な物に拘束された


「え、ちょっと!拒否権は無しか!!」


「ありませんね~、時間が無いんですよ。必要事項や能力は直接精神に叩き込みますね♪」


「なんだと!? ッグババババグバ!」


 電極だ付いた輪っかを頭につけられ、脳内を電気か駆け巡る


「チン♪」


 電子レンジのような音がして電気は止まった


「これで良し、良い仕上がりです」


「貴様!やっぱ俺を解剖する気だろ!」


 ベットを押しながら女神は俺の顔を覗きながら告げる


「そんなことしませんよ、ご心配なく。その異世界のダンジョンのボスを一匹倒して祭壇に戻ってくれば直ぐに元の世界に戻してあげますからね」


「本当か!本当に返してくれるんだな!?」


「ええ、もちろん。ですがご用事に間に合うよう早めに済ませることをお勧めします」


 理不尽だが、無力な俺は覚悟を決めるしかなかった


「最速でクリアしてやる・・・」


「そのいきです勇者よ。ではいくのです!」


 女神はベットを光の扉に押し込んで姿を消した


「まぶしい・・・」


 これが俺の不本意な冒険の初めの一歩だった

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