第2話 不本意な初恋
面接を始めたところ変な筋肉女が来てしまい、疲れてしまった俺は次の被面接者を待った
「コンコンコン」
ドアがノックされた。俺は ”来い、まともな人” と願いを込めながら中に入れた
「どうぞお入りください」
「失礼します」
落ち着いた声で入って来たその女性に――――――
「あ・・・」
「どうかしましたか?」
――――俺は心を奪われた
「あの・・・・」
戸惑いながら首をかしげる彼女のしぐさを見て、俺はギリギリの所で正気に戻った
「あ、すみません! そこにお座りください」
「は、はい。失礼します」
どうにか理性を保った俺は、安心してため息をついてしまう
「ほ・・・」
「?」
俺の様子を見て、彼女はキョトンとしていた。俺は焦って弁解した
「あっ、すみません!色々あって疲れがたまっていたもので!こう、予想外の事態が立て続けに・・・」
「えっと…ああ。前の方の事ですか? 色々濃い方でしたもんね。悪い方では無さそうでしたが」
彼女は俺が前の面接で疲れていたと思ってくれたようだ ”ナイス筋肉!ナイスデコトラ!” と心の中で叫んで面接を始めた
「では、まず自己紹介を」
「はい、
俺は面接の内容はほとんど覚えてなかった。何かこう…記憶がフワフワしている。これが恋か?恋に毒されてるのか?
「では、合否の連絡は履歴書と一緒に返させていただきます」
「はい、よろしくお願いします。本日は、ありがとうございました」
「はい、お疲れさま」
「失礼します」
何かあっという間に時間が過ぎて、彼女は帰ってしまった。俺は一人取り残された部屋で勝手に苦悶する
「申し分ない人材だ・・・だがこんな気持ちで雇ってしまっていいのか? いやしかし不採用理由をアナタに恋をしたから・・・・なんて書くわけにもいかないし!・・・・て、わざわざ書かなくていいよな不採用理由・・・どうしよう!・・・!?!?」
ふと、彼女の履歴書を見た俺は、履歴書のある一点に目が釘付けになった
白鳥 冬紀 ㊚
「え……。でもコレ間違って男にマルしただけッ…だよね?」
混乱している俺の隣にいつの間にかここの女性店員が顔を覗かせていた
「店長ぉ、どうしたんですか?」
「ああ、如月くん…。先ほどの面接に来た彼ぇ?の履歴書に男と書いてあるんだが」
勇気を出して彼女に聞いてみたら、明るく答えてくれた
「ああ!さっきの男の子ですか!男とは思えないほど可愛かったですよね」
「やはり・・・男なのか」
「なんです店長、もしかして彼を女性だと思ってたんですかぁ?」
「うん…まあ…」
如月君は俺の答えを聞いて笑い転げてしまった
「ぎゃははは! ホントにぃッ、何言ってるですか。男手が足りないからって男性従業員募集したの店長でしょう! 体力あれば女性でも可という条件付きだったけど・・・ははは」
「そうか、だからあの筋肉デコトラ女子が面接に来たのかッ」
俺は絶望に跪いた。そして次の疑問を彼女に問いかけた
「ところで如月君? どこで彼を男性だと見抜いたんだい?」
「どこって、全体的な雰囲気からなんとなく?でも一番の決め手は・・・」
「決め手?」
「あのシャツの隙間からわずかに見えたあの鎖骨のライン、あの鎖骨で女って無いわ」
「鎖骨!?そんな所で見分けられるの!?」
驚いてる俺に、如月君は落ち着いた口調で言った
「そんな事よりレジ交代してくださいよ店長。さっきから女性が苦手な佐藤さんが店の外でウロウロしてるんですから」
「あ、はい!少々お待ちを!」
・
・
・
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「お疲れ様でしたー」
「お疲れ様、明日は休みだから間違えない様に」
「はーい、何時もの休みね。ホント好きね店長は」
「じゃあな」
営業時間が終わり店の片付けをした俺は部屋に戻った。そう!今夜の決戦に備える為だ!
「ついに!あの超人気RPGの続編、リーサル・ファンタジー51の発売日が明日! 午前0時に発売だ!フヘヘ・・・」
自分でも分かるほど頬を釣り上げて不気味な笑いをあげて準備を進める
「トレインカードの残高は確認済み。防寒具・・・よし。懐中電灯…よし。ゲームしながらでも食べれる食糧の備蓄は・・・よし。ふん!!」
「バチン!」
俺は拳を握り手の平を思いっきり殴った
「夜をさまよう、俺の邪魔をする不届き者を排除する俺の拳の調子・・・よし。仕上げはコイツだ!」
冷蔵庫を勢い良く開けてケーキを取り出した
「ふへへへ・・・。この高純度カカオチョコとガゼインプロテインとナッツ、その他もろもろを使用した特製スタミナチョコケーキ! これで眠気と疲れ対策はバッチリよ!・・・だがカフェインの利尿作用は警戒しないとな。ここで1個食って出しとくか」
俺は試作品のそのケーキを貪った。その時
「モグモグモグ・・・うぐ!」
俺の身体の感覚が消えた、視界も歪み浮遊感を感じるようになる
「これは・・・一体?…変な物は入れてないはずだが…」
身体から魂を無理矢理剥がされるような感覚・・・俺の意識は天高く昇って行った・・・
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