第24話 恋する気持ちを○○にのせて


 誰もが驚いたであろうその点数。

 もちろんそれは久怜羽さんも同じで、先程までの表情とは一変して苦虫を噛み潰したような顔になっていた。

 本来ならば社長の感想は最後に取っておきたかったのだろうが、この展開は予想されていなかったらしく司会は揃って社長の元へ。


 「本来なら別の人からの予定でしたが……すみません、ジャン社長、この点数は」

 「みんな意外そうな顔をしているけれど、これはわたしなりの点数だ」

 「あんなにも美味しかったのに、ですか?」

 「ああ、確かに美味しかった……でもそれだけだ。わたしはね、この大会で美味しさよりももっと大切なことがあるということを知って欲しいんだ」

 「美味しさよりも大切なこと……ですか?」

 「はっはっはっ、少し難しすぎたかな。でもそんなに難しく考えることは無いさ、要は気持ちの問題だ。ほんの少しの違いだがそれを大切にして欲しい」

 「つまりこの点数はそこら辺が関係している、ということですか?」

 「その解釈で問題ない。美味しいものを食べれば笑顔になる、だがわたしはそれ以上のものがあるということを知っている。だから期待しているよ」


 社長はカメラの方を見てそう言い放った。まるで先生と僕達に向けたように。

 それからは至って普通の感想が続いた、どこが美味しかったとか形や生クリームの塗り方や飾り付けなど……。でもどんなに翔さんの言葉を送られてもその場にいる久怜羽さんの顔が晴れることはなかった。



 「──さてと、そろそろだな」

 「「……はい」」


 コールが鳴ったのを確認すると、僕達は立ち上がる。覚悟は決まっている、色々な人達からの期待を背負って会場へと向かう。

 ……そして会場裏まで来て、あとは僕達が司会に呼ばれるまで待機していればいい。ただ、それだけなのに……。


 (……やばいな)


 気がつけば手や足がガクガクと震え、心臓は痛いくらいにバクバクと跳ねている。

 何度深呼吸しても収まる気配はなく、ただただ緊張感や不安のみが膨れ上がっていくのがわかる。

 そのとき、愛音さんが僕の手を握る。


 「ソラさん」

 「愛音さん……」

 「私達なら大丈夫ですっ!」


 この小さくて暖かい手に何度救われてきただろう。だけど今はそれだけじゃダメだ。

 僕はお返しに手をぎゅっと握る。

 すると愛音さんは柔らかく微笑み、


 「ふふっ、ありがとうございます♪」

 「僕こそありがとう」

 「……二人とも準備の方は大丈夫そうだな」

 「「はいっ!」」


 前の人の審査が終わり、もうすぐ僕達が呼ばれるだろう。

 でも大丈夫、僕には愛音さんがいて、愛音さんには……僕がいる。そして僕達にはみんながいる。


 「いいか、決して勝とうだなんて思うなよ」

 「勝とうと思ったらダメなんですか?」

 「そうだ。その気持ちが優先されて、お前さんたちの本来の強みが出なくなるし、その気持ちは食べている側にも伝わってしまう」

 「でもそれですと……」

 「愛音ちゃんの気持ちはわかってる。別に負けてもいいとは言わない、ただ一番大切なのは」

 「気持ち、ですよね?」


 僕の言葉に先生は嬉しそうに笑う。


 「あぁ。そしてこれが俺が送る最後の言葉だ──」


 最後の決戦の舞台を前に、先生は今日……いや、今までで一番の笑顔を浮かべると、


 「お前さんたちの気持ちをケーキにのせて、みんなを幸せにしてやれ!」


 僕達はその言葉に後押しされるように会場へと踏み出す。

 しっかりと手を繋いだまま、これが僕達のケーキだとみんなに、久怜羽さんに伝えるために……。


 「さぁ愛音さん、行こっか僕達の舞台へ」

 「……はい」

 「愛音さん?」

 「……その、一つ提案があるんですが」



 司会に案内され調理台の前に立つ。

 目の前には調理器具、そして複数のカメラ、視線を少しズラせば審査員が。

 作る前に軽い質問などに答えながらも僕達はずっと手を繋いだままだ。こうでもしないと冷静さを失ってしまいそうだったから。


 「……これが最後、なんですよね」

 「えっ?」

 「正直に言うと、なんとかしようと思っている反面どこか諦めていたところもあった気がするんです。ここからはどうやっても無理だって」

 「…………」

 「でもあなたが来てから、ソラさんが来てから少しずつ変わりました。ダメだと思っていたのが気がつけばまだ大丈夫って。それも全部ソラさんのおかげです」

 「僕はそんな大層なことはしてないですよ。まだひとつとして結果を残せてないので」

 「それを言ったら私達もですよ」


 そんなことを言いながらも僕達はずっと笑顔だった。


 「だったら……」

 「今日この大会で残せばいい、ですよね?」

 「うん」


 僕達が作るのは食べた人が笑顔になるだけじゃなく幸せになれる、そんなケーキを……。


 「それではスイーツエンジェル、潮乃夜空さんと櫻宮愛音さんスタート!」


 司会による開始の合図で僕はすぐさま器具を手に取り、生地を作り始める。

 初めは柔らかくして、なるべく気泡のないように……。

 決して手際が良いとは言えない手つきながらもしっかりと回す。

 それから生地を少しすくい上げ、完成度を確かめる。


 「……よし!」


 生地を型に流し込み、オーブンへと入れる。ここからは愛音さんの出番だ。

 スポンジの具合を見ながら調度良いタイミングでクリーム作りを始めなければいけない。とはいえ熱いままのスポンジに塗ることも出来ないのでここのタイミングはかなり重要だ。だけど僕達なら……。


 「……っ!」


 練習の時と同じように始める。このタイミングならば問題ないだろう。

 だがどうしても僕の目は愛音さんを追ってしまっていた。スイーツエンジェル……まさにその名の通り、今の彼女は天使がケーキを作っているようだったから。


 「ソラさん!」

 「はいっ!」


 それでも僕は僕のやるべきことを

 僕がスポンジを焼くところから始まり、愛音さんが生クリームを作る。そして最後の仕上げ……僕が最も上手いと言われたナッペ。

 ただクリームを塗るだけではない、僕の作業の中で一番わかりやすく人に伝わるところだ。

 表面を塗るとき、丁寧にやり過ぎて時間がかかるとムラが出来てしまう。

 なので自然とこの時ばかりは緊張してしまうが……。


 (……僕なら出来る)


 スポンジを3つに切り分け間に生クリームといちごをつめていく。

 本当ならこのいちごもただスライスしたものを入れるのではなく、ペーストしたものを入れれば子供でも食べやすくなるのだが、今回ばかりはそうはいかない。

 ……愛音さんと僕で決めた、始める直前に決めた約束。



 「私たちも橘さんと同じものを作りませんか?」

 「同じもの?」

 「はい。その、対抗意識……とかではなくて、純粋に橘さんの気持ちにも応えたいなって。もちろんソラさんさえよければですが……」


 僕は考える……こともなく、答えはすぐに出た。


 「愛音さんがそうしたいならそうしよう。それに僕達ならきっと大丈夫だから」

 「ありがとうございますっ!」



 (とはいえ、流石に全く同じように……とはいかないか)


 そこは経験の差だ。僕がどんなに頑張っても届くはずのない領域。

 それでも僕は諦めない。僕なら大丈夫だと信じてくれてる人がすぐそばにいるから。

 瞬きするだけでテレビで見た光景がまぶたの裏に浮かぶようだった。

 僕は持てるチカラ全てを注ぎながら作業を進めていく、僕達のことをライバルだと言ってくれた久怜羽さん、僕達の勝利を信じてくれているみんな、そして何よりも今ここで一緒に立ってくれている愛音さんに感謝の気持ちを抱きながら。

 そして食べた人が幸せになるようにと、願いながら。


 「──ふぅ」


 僕は均等に生クリームでスポンジを飾り、丁寧に最後のいちごをケーキにのせる。

 その瞬間、肩の力がすぅっと抜ける。

 これは正真正銘、僕達の全力。勝ちたいという気持ちを一切捨て、ケーキに幸せになって欲しいという気持ちを込めた、昨日の最高傑作だと思われたケーキさえ越えたケーキ。


 「「完成ですっ!」」


 出来上がったショートケーキ、それは愛音さんの提案によって直前に決めた久怜羽さんと見た目が同じ作りのものだったためか、市長を含め審査員達は少し困惑した様子だった。しかし社長だけは『なるほど……』と納得していた。

 ケーキを愛音さんが綺麗にカットすると、それは司会や審査員たちの元へ運ばれる。

 緊張の瞬間だ、それぞれが僕達の作ったケーキを頬張ると……。


 「むむっ!」


 審査員たちが一斉に顔をしかめる。


 「……ソラ、さん」

 「大丈夫、大丈夫だから」


 僕達は不安から手を握る。だけどそれとは裏腹に審査員たちは……。


 「…………」


 目配せをして頷き合う。そして次々に点数を入れ始める。


 (出来ることは全てやった……。あとは天に祈るだけ、なのか……)


 そして点数板が数字を示し始める。

 100……200……300と点数はどんどん上がっていく。


 (お願いだ、このままいってくれ!)


 自然と握る手に力がこもる。

 点数が確定する瞬間、僕は思わず目を瞑ってしまう。

 きっと今にして思えば何となくでも分かっていたのかもしれない。

 点数が確定すると、僕は恐る恐る目を開く。そしてそこに書かれている点数に僕は、僕達は────。



 「……そん、な」

 「愛音さんっ!?」

 点数が出されると同時に、その場座り込む彼女を抱きかかえる。

 点数は471点。暫定2位で3位の人(460点)ともかなりの点数が離れている……しかし、橘久怜羽の点数には及ばなかった。

 スフィールの社長が出した95点、それは久怜羽さんよりも6点も高い。それでも僕達は負けたのだ。




 その後、僕達は会場から離れる。

 なんとも言えない空気のままなんとか先生の後をついていく。

 そして会場から時計塔を挟んで反対側へ着く頃には人は全くいなくなっていた、同時に先生が立ち止まると僕達の瞳からは大粒の涙が溢れ出した。


 「せっかく教えてもらったのにすみません……」

 「……ソラさんは、悪く……ぐすっ、ありません……悪いのは──」

 「お前さんたちのどちらでもねーよ、この負けは」


 そう言って先生は優しく僕達の肩に手を置く。


 「お前さんたちは負けた。これは覆ることの無い事実であり現実だ。だからと言って俺はお前さんたちに『俺の中では一番だ』とかそんな言葉はかけねぇ」

 「……はい」

 「確かに元々素人に毛の生えたような二人がたった三日でここまでなったのは評価できる。が、あくまでそれはそれだ。勝負の世界では結果が全てなんだ」


 先生のその一言は凄く正論だ。

 僕達がどんなに影で努力していようと、どんな状況で大会の場に立っていようと関係ない。この勝負の場では結果が全て、それ以外はただの過程にしか過ぎないのだ。

 だからこそ2位という好順位を手にしたとて、この敗北は変わらない。


 「──だが、だからこそお前たちはたった一つだけ、だけど他の誰にもなし得なかった勝利を手にした」

 「勝利ですか?」

 「あぁ、お前さんたちは社長から95点をもぎ取った。あの橘久怜羽でさえ89点までしか到達出来なかった社長からな」

 「それでも負けは変わりませんよ……」

 「そうだ。でもな、俺が知る限りでは社長が90点以上を出したことはない。橘でさえ今回のものが一番高い。だがお前さんたちは軽々とそれを超えた。これの意味がわかる人は少ないがこれだけは誇ってもいい」


 先生はこもってしまった熱を出すように、ふぅと息を吐く。

 そして僕達の目を見添えると、


 「だからお前さんたちは堂々と表彰台に立て。俺たちはあの社長から橘久怜羽よりも高い点数を貰ったんだぞって」

 「僕達が……」「橘さんよりも……」

 「そうだ。これはお前さんたちだけなんだから、な?」

 「「……はいっ!」」

 「それに橘久怜羽には負けたが、それでもお前さんらは2位なんだからもっと誇れ。もうすぐで表彰式が始まっちまうぞ」

 「愛音さん、行こうか」

 「はい」


 (……なんだよ、さっきまでとはまるで別人のようじゃねぇか)


 このとき先生は二人の姿を見てそう思った。

 二人のことを知ったのもつい最近だったけれど、俺が知る限りでは一番いい笑顔を浮かべてやがる。

 こいつらは十分に頑張った。そして十分に苦しんだ。だからここからは俺の、大人の仕事だ。

 俺は手を繋ぎ表彰式へと向かう二人が消えてしまわぬうちに声をかける。


 「お前さんたちに言い忘れたことがある」

 「えっ?」

 「店のことは俺に任せておけ、たとえどんなことがあろうともなんとかしてやるよ」

 「…………」


 二人は目を大きく見開きお互いを見つめあうと、


 「「ありがとうございます!!」」


 頭を軽くさげ、そのまま会場へと駆け足で向かっていった。

 そして二人の姿が完全に消えたのを確認するとそのままの状態である人物に語りかける。


 「……表彰する側の人間がここにいていいのかよ社長」

 「なんだバレていたのかハッハッハッ」


 愉快に笑いながら木陰から現れたスーツをきっちりと着こなした男性。

 男性はそのまま先生の隣に立つと、空を見上げながらぽつりぽつりと話始める。


 「君の教え子たちのケーキ、あれはとても素晴らしかった。私は今日という日まであんなにも幸せになれるケーキを食べたことはなかった」

 「だが結果は見ての通りだ。どんなに上手く出来ていても結果が全て。それは勝負の世界なら仕方ないこと……社長が良く言っていたことだ」

 「はっはっはっ、それもそうだ。とにかく美味しいケーキを出せば良い、そう思っている人が多いけれどやっぱりケーキというものはこうでなくてはな」

 「……それで、一体なにをしに来たんだ? まさかさっきの言葉を俺に伝えるためだけじゃないんだろ?」

 「流石は親友だ、なにもかもおみとおしだな」

 「そりゃもう何年も一緒に仕事してきた仲でもあるからな」

 「ま、それでもわたし、キミがいきなり辞めると言った時はいくら親友とはいえ、どうしてこんな個人でやっているお店のために……なんて思ったりしたけど。でも今ならわかる、キミの判断は正しいかったと」


 すると社長はすっと手を伸ばす。


 「……なんだこれは?」

 「誓いの儀だ。キミはスイーツエンジェルをどうにかすると言った。ならば親友のわたしは何をすればいいのか……」

 「へっ、別に何もしなくてもいいだろ」

 「そんなわけにはいかない。わたしもスイーツエンジェルに魅せられた一人なのだから」

 「……すまんが今はまだその手を取れない」

 「それはなぜだ?」

 「俺にも通さなければいけない筋ってもんがある。その手を取るのはスイーツエンジェルのみんなに聞いてからだ」

 「ははっ、キミは変わったと思ったが、そういうところは変わってないな」

 「そうそう変わることなんてないさ、俺もお前も」

 「違いないな……。さて、わたしはそろそろ行くとすると。さっきの話、いい返事を待ってるよ」


 そう言い残すと社長は会場へと戻っていく。


 「……んじゃまぁ俺も行くとしますか」


 社長の後を追うのもあれだから、俺は反対側から会場へと向かう。

 俺の自慢の教え子たちの勇姿を見るために。




 「──終わっちゃいましたね」

 「……うん」


 表彰式も終わり、今は後夜祭のようになっている会場を時計塔の上から見下ろす僕と愛音さん。

 僕達はそのまま抜かれることなく2位で収まった。

 とはいえジャン社長から良い点数を取れたから集客とかは望めそうだけど、それでどこまで伸ばせるか……。

 そんな心配をしていると、愛音さんは思い出したかのようにある場所を見つめながら、


 「……ねえソラさん。あそこ、覚えていますか?」

 「……ベンチ?」

 「はい。私たち、あそこで出会ったんですよ」

 「そういえばそうだったね。僕がどうしようもなく途方に暮れていたら愛音さんが現れて……」


 商店街でたまたまぶつかった女の子、それが気がつけば一緒に住みケーキを作る関係になっているのだから人生は何が起こるか本当にわからない。


 「僕は何度も心の中で誓ったはずなのに、結局なにも出来なくて……」

 「……そうだったんですか」

 「うん。みんなのために僕にできることは何かってずっと探してた」

 「……でしたら、今だけソラさんにしか出来ないことありますよ」

 「──えっ?」


 僕が愛音さんの方を向くと、ふわっと優しいケーキの香りが僕に飛び込んできた。

 そして同時に、聞こえてくるのは……。


 「ぐすっ」

 「……何があっても僕はここでのことを心の中に留めておきます。幸いここには僕達しかいませんから」


 あの場では収まりきらなかった想いが溢れてくるのだろう。僕は言いながら優しく愛音さんの頭を撫でる。


 「あぁ……うあぁ……あああぁぁぁ!」

 「……僕達はやれることをやったんだ。だから我慢しなくていいんだよ」


 僕は子供みたいに泣きじゃくる愛音さんを強く抱きしめる。

 二度と彼女にこんな顔をさせないと誓ったのに……。

 今はこうしてやることしか出来ない。


 「ごめん、ごめん愛音さん……」

 「ソラ、さんは……悪くないです……ぐすっ……」

 「それでもだよ……」

 「うっうぅ……うわああああああ、ああああぁぁぁん! ソラ、さぁん!」


 それから愛音さんは、今まで溜め込んでいた分も全て吐き出すように泣きじゃくった。

 僕は愛音さんが泣き止むまで、黙ってそのまま抱きしめ続けた。

 それが彼女のために、今の僕に出来る一番のことだから。



 どれくらい時間が経ったのだろうか、涙が枯れるくらい泣いた愛音さんはどこか疲れ気味に僕に寄りかかった。


 「すみません、あんな姿を見せてしまって……」

 「ううん、気にしないで。それに少し嬉しかったので」

 「嬉しかった、ですか?」

 「こんなこと言っていいのかわからないけど、愛音さんが僕をこうして頼りにしてくれたことです」

 「ふふっ、いつでも私はあなたを頼りにしてますよ」

 「それはいいことを聞きました」


 世界は茜色に染まり、下の方では騒ぎが衰えるどころかむしろ逆にさっきより盛り上がっていた。


 「そろそろ行きますか?」

 「…………」

 「ソラ、さん?」


 不思議そうにこちらを見つめる愛音さん。

 愛しい彼女に向けてのこの言葉は本当なら優勝して、気持ち良く伝えたかったけれど仕方ない。


 「愛音さん、聞いて欲しいことがあるんです」

 「……はい」


 心臓が寄りかかっている愛音さんに聞こえるのではないかというくらいうるさく鳴っている。

 いや、きっと聞こえているだろう。彼女の頬はほんのり赤くなっていた。

 僕は気持ちを落ち着けるために、深呼吸をする。

 この気持ちをケーキにのせることが出来るんだ、言葉にのせるくらい簡単だと思っていたのだが、実際はそう上手くいかないものだ。でもいつまでも止まっているわけにもいかない。

 そして僕は言葉を放つ。


 「愛音さん、僕は君をことを──」


 この街にきて出来た、大切な彼女に向けて……。

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