第20話 僕達の最高傑作

 

 今日は土曜日、大会前の最後の練習日だ。

 朝の日が昇り始める頃……いつもよりかなり早めに起きてしまった僕と愛音さんは再び時計塔の最上階へ来ていた。


 「誰かが街は生きている、なんて言ってたけど本当にその通りかもしれないね」

 「街は生きている……ですか?」


 首を傾げながら、隣にいる彼女──愛音さんは訊ねてくる。


 「うん。まぁ今はこういった俗に言う田舎、限定なんだろうけど……」


 言いながら街を見渡す。


 「夜になれば店も閉まり静かになって、朝になれば店も開き活発になる。これを繰り返しているんだからまるで人と同じように生きてるって感じがしない?」

 「……今まで考えたこともなかったですが、言われてみたらそう言えるかもしれません」

 「僕が前に住んでいたところはね、ここよりもっと田舎だったんだ。それこそここみたいに海なんか無くて、見渡す限りの山!」


 言いながらスケールの大きさを表現するために両腕を開く。

 が、それがおかしかったのか、愛音さんはくすっと笑う。


 「いちおう塩崎市も海の反対は山なので少しはわかりますよ」

 「いやいや、しおり市から見える山を馬鹿にしちゃいけないよ。本当に山しかないからね!」

 「そ、そんなにですか?」

 「うん。ってあんまり自慢できることでもないけどね。よく言えば自然に囲まれている……けれど、悪くいえばそれくらいしかない、そんなところだよ」

 「そう言われると、逆にソラさんの故郷が見たくなりますよ。でも突然どうして故郷の話に?」

 「あー、うん。僕って実家にいた頃は夜型の人間でさ、勉強とかは深夜帯にやってたんだ。それでその時、ふと外を見ると明かりもあまりない真っ暗な街が見えるんだ」

 「ほら、こっち来てからは早寝早起きが当たり前のような生活だったし、早く起きても準備やらで見れなかったからこんな風景を見たのは久しぶりで」

 「故郷の事を思い出した……ということですね」

 「うん。いつか僕の家族にも紹介したいよ愛音さんのこと」

 「ふぇっ?」

 「僕はこんなにも素敵な人と一緒に暮らして働いているんだって」

 「そ、ソラさん、それはいくらなんでも……」

 「もちろん凛菜さんや愛優さんもだけど。あ、先生のこと忘れたら怒られるかな?」

 「…………」

 「ん? 愛音さん?」

 「いえ、なんでもありません」


 なんだか明らかに落胆しているように感じたが、本人がなんでもないと言っているのだから気のせいだろう。

 そうこう話している間にも、街はどんどん朝日に照らされていく。


 「街のお目覚めだ」

 「はい」


 次々と商店街のお店が開いていく、きっとそこで「おはよう」の挨拶が飛び交っているだろう、だから僕達も。


 「愛音さん、おはようございます」

 「はい、おはようございます」

 「今日が最後の練習日だけど頑張ろうね、お互い悔いの残らない様に」

 「もちろんです♪」




 それから僕達は家に帰り、約束の時間より早めに部屋に着くように出発した。


 「──よっ、おふたりさん。待ってたぜ」

 「先生?」


 部屋に入るなり、先客がいたことに驚いてしまう。

 いつもは時間ぴったりに来るはずなのだが、僕達が着いた約束の三十分前には既にいたのだ。


 「どうせ最終日だから早めに来ようとか思ってたんだろ?」

 「バレバレでしたか」

 「クリーム一つでそいつの人柄がわかるように、お前さん達の作ったケーキを見てる俺からしたら朝飯前ってことだ」


 得意げにニヤリを笑う。


 「ま、俺が早く来たのには他の理由もあるんだけどな」

 「他の理由?」

 「あぁ。今日は実際の大会と同じようにお前さん達が作っている横で俺も作ろうと思う」

 「先生もですか?」


 僕の問いに先生は頷く。


 「今まではお前さん達ふたりだけの作業だった。が、大会ではそうもいかない。みんな一斉に作り始めるんだ、そうなると何が起こると思う?」

 「私達以外の人がいると起こること……」

 「焦り、ですね」

 「正解。試験の時とか周りに人がいると、そのペースに惑わされることがあるだろ? それが起きる可能性があるということだ。ま、普通の大会であればお前さんたちより上のやつが出ている可能性のところから始まるが……」

 「……今回は僕達より圧倒的に上の存在、久怜羽さんがいますからね」

 「そういうことだ。きっとこのまま大会に行ってしまえば橘久怜羽のペースに飲まれ、間違いなく負ける」

 「…………」

 「だからこそ、今日は俺が隣で作る。本気の俺は凄いぞ、橘久怜羽なんか比にならないくらいにな」

 「先生ってそんなに凄いんですか?」

 「おいおい愛音ちゃんそれはちょっと傷つくぜ……ま、それは見てからのお楽しみってことで、とりあえずお前さん達はすぐにケーキを作れるように準備をしてくれ。今日が最後の練習日、無理しない程度に無理をしろ!」

 「「はいっ!」」


 数分後、準備を終えた僕達は先生の隣の台を使い、大会と同じように同時に始める。


 「いくぞ、さん、にぃ、いち……スタート!」

 「ッ!!」


 先生の合図で同時に腕を動かし始める。

 まずはスポンジ作りからだ。ショートケーキにおいて、外見からは一切見えないため、目立たないスポンジだがそれは間違いだ。

 良い土台あってこその作品であり、その土台となるのがこのスポンジなのだ。

 大会は味と見た目で判断されるため、力を抜くということはありえない。

 普通なら全て一人でやるのだが、僕達は分担して作るためこのスポンジを作るのは僕に任されている。

 横目でチラリと確認する。まだ始まったばかりなので当たり前だが、先生も同じ作業を始めるところだ。


 「…………」


 ここで注意しなければいけないのは、かき混ぜる時に大きな泡を作らないことだ。

 大きな泡を残したままスポンジを焼いてしまうと、その泡が穴となって現れてしまう。そのためスポンジとしての完成度グッと落ちてしまうのだ。

 なのでめいっぱい回すのではなく、丁寧にやらなければいけない。

 ……が、


 「ふぅ……」


 やはり経験の差だろう、ずっと慎重に丁寧にとやっているうちに先生はスポンジの生地を作り終え、次の工程へと進めていた。


 「…………っ!」


 つい手に力が入ってしまう。差があるのはわかっていたし、それを気にしていてはいけないということも頭では理解していた。だが、実際にやるとなるとそう上手くはいかなかった。

 気がつけば腕は先生に追いつくようにと焦るばかり、


 「くっ!」


 もちろんそんなことになっていれば、出来上がるのはいつも通りの物ではなく、いつもより粗く泡も多い生地となってしまう。

 だが僕はそれに気が付かないほど焦りを感じていたのだ。

 意識してはいけない、そう何度も心に呼びかけるものの体は言うことを聞かない。

 そうしているうちに、先生が生地をオーブンに入れる。その頃には僕も型に生地を入れるところまでは追いついていた。

 そして僕がスポンジをオープンに入れると、そこで選手交代……ここからは愛音さんの出番だ。


 「焦っちゃダメ……私、がんばれ……」


 そう何度も自分に言い聞かせ、予め生クリームを入れて冷やしておいたボウルをたっぷりの氷水にあて、グラニュー糖を一度に加えて泡立てる。

 ここもスポンジの時と同じで、早くかき混ぜてしまうと泡が出来てしまいクリームの質が落ちてしまう。

 初めは中速、そして徐々に低速へと変えていかなければいけなかったのだが……。


 「先生はもう終わりかけてる……」


 チラッと横目で先生の方を見てしまい、やはり焦りを感じてしまった。

 どれくらいの速さでかき混ぜればいいか、完璧に熟知している人とまだその入り口にすら立っていない人では圧倒的な差がある。

 とはいえ、ケーキ作りは速さが勝負でない。

 しかしそんなわかりきったことなのに、僕は、愛音さんは……忘れてしまっていた。



 「……ま、最初はこんなもんだろう」

 「「…………」」


 お互いに完成したケーキを並べる。

 一つは完璧という言葉以外なにも浮かばないようなケーキ、そしてもう一つは見た目だけはなんとか保っているものの、生クリームのキメは粗く、ど素人が作った感まるだしの物となっていた。

 試しに先生は一切れ口に頬張る。

 何度か咀嚼し、それを飲み込むと「まあこんなもんか」と呟き僕達の方へと向く。


 「お前さん達、どうしてこうなったのかはわかるな?」

 「……はい」


 僕達は揃って頷く。

 こんなことになってしまった原因……それは、僕達が先生に翻弄されてしまったからだ。

 どんなに技術があっても、そのチカラを最大限に発揮出来なれけば意味がない。

 それをするための自分たちのペースを見事に乱してしまった、それが最大であり唯一の原因だ。


 「僕達はそれが失敗する原因だとわかっていた……でも、避けられなかった」

 「はい。意識してはいけない、そう思えば思うほど意識してしまって……」

 「……この三日間、俺はお前さん達のケーキ作りをずっと見ていた。元々の素質もあるが、それでもお前さんらの成長具合にはびっくりしたもんだ」

 「はい……」

 「記憶を失っていているとはいえ、少なくともここ数年は全く器具にすら触れていなかったはずだ。それは愛音ちゃんも同様に。だが、お前さんたちはそんなブランクすら感じさせないほどだった」


 言いながら先生はまたひとくち、僕達のケーキをつまむ。

 そんな失敗ばかりのものを食べても……そう思っていたが、


 「……うん、美味い」

 「「えっ?」」


 しかし先生の口から出たのはその一言。

 僕達は鳩が豆鉄砲をくらったような顔になってしまう。

 それを見た先生は笑い飛ばしながらまたケーキをつまむ。


 「あはは、そんなにびっくりすることはないだろ。ま、確かに昨日のお前さん達のケーキと比べれば味も見た目も落ちてはいるが……ほれ」


 僕達は差しだされたケーキを食べてみる。

 やはりと言うべきか、味は落ちていた、それは愛音さんが一番わかっていてわかりやすいくらいに落ち込んでしまう。


 「…………」

 「ふっ、俺が美味いと言ったから期待でもしたか? だが残念ながら味はしっかりと落ちているぞ」

 「先生……」

 「お前さん達はケーキにとって一番大切なのはなんだと思う? 味か、見た目か?」

 「私は、その両方だと思います」

 「僕も同じです」

 「あー、まだまだだなぁ……」


 答えを聞いた先生はやれやれと頭をかく。


 「いいか、ケーキに限ったことじゃないけどな、味や見た目よりも大切なのは気持ちだ。誰かのために……そう思いながらやるだけでいいんだ、俺も言っただろ、簡単に上手くなる方法は誰かのためにやることだって」

 「はい、それは忘れてません。だから僕達も──」

 「じゃあ聞くが、さっきのケーキにその“誰かのためにという気待ち"はこもっていたのか?」

 「「──ッ!?」」


 雷に打たれたような衝撃が走る。

 そうだ、さっきの僕達は、先生のことを気にして……。

 それは愛音さんも同じみたいで、互いに顔を合わせる。


 「正直に言うとな、味や見た目なんて二の次でいいんだ。俺は何よりも気持ちを大切にしてほしい。そりゃ大会だから中々そうはいかないかもしれないが、だからこそだ」

 「だからこそ?」

 「あぁ。大会で緊張したり、他のことに気を取られるかもしれない。が、そんなことすら跳ね除けちまうような強い思いを、気持ちを、お前さん達の手でそのケーキにのせるんだ」

 「僕達の気持ちを」

 「ケーキに……」

 「想いの力、今の俺には無くて夜空くんや愛音ちゃんにはあるものだ」

 「……今の先生には無いんですか?」

 「いい質問だ。その答えはあるにはあるが、お前さん達の想いには勝てないってところだ。今の俺を支えているのは、プライドだ。きっと愛優ちゃんも同じだろうよ」

 「そう、でしょうね」

 「もちろんお前さん達にはプライドがないなんて言わないが、その強さとかは段違いだ」

 「…………」


 僕は、視線を作ったケーキの方へ。

 そこにはこれが俺のケーキだと主張するケーキとまだまだそれには遠く及ばない弱々しいケーキ。

 クリームの質感から、見た目の均一感まで全てが違う。

 だけど、先生はそのケーキをさらに一口食べ、


 「さっき俺はお前さん達の武器は想いの力だって言っただろ?」

 「はい」

 「そんなに心配しなくても大丈夫だ。お前さん達ならきっと出来る、自分を、パートナーをもっと信じろ!」

 「「…………」」


 僕達は視線をぶつけ合う。二人でやっていく以上あたりまえのことを教えられただけなのに、どうしてかその言葉はすっと心に入る。

 それは愛音さんも同じように感じたらしく、彼女は僕の手にそのちいさな手を重ねると、


 「私もう惑わされません。私達なら、ソラさんと一緒なら大丈夫って信じます。なのでソラさんも私のこと信じてくれますか?」


 愛音さんは真っ直ぐ僕の目を見つめる。

 だけど、そんなことは必要ない。なぜなら──


 「そんなお願い必要ないですよ」

 「えっ?」

 「僕は愛音さんのこと信じてます。あの時、公園で再開したときからずっと。今の今まで疑ったことなんてないです。むしろそれは僕の台詞ですよ」

 「そんなことないです! 私だってソラさんのこと……」

 「ははっ、二人とも信頼関係はばっちりのようだな」

 「「はいっ!」」

  「んじゃ俺から最後にもう一つだけアドバイスをしてやる──」


 こうして僕達は本日二回目のケーキ作りを開始する。

 もちろん条件は一回目と同じ。だけど違う点は三つ。

 一つは、先生が本気だと言うこと。

 さっきのでさえ、惑わされたのに今はそれ以上の気迫を感じる。これは始めてたかが数日や数年程度では決して身につくことのないものだ。

 でも僕達はもう大丈夫だろう。

 それは二つ目、僕達がお互いに絶対なる信頼を置いていること。

 僕には愛音さんが、愛音さんには僕がいる。それの有無は心の余裕という点においてはとても大きい。

 そして三つ目は──


 「……これを食べた人が、ほんの少しでも幸せな気持ちになれる」

 「そんなケーキを私達で」


 始める前に視線を絡み合わせ、指先をちょんと触れ合わせる。

 たったこれだけのことなのに、身体の奥底から今まで以上の力が出せると思ってしまうから不思議だ。


 「それじゃ、いくぞ!」

 「「はいっ!」」


 先生の合図によって二回目のケーキ作りが開始される。

 やることは一回目と同じだ、大きな泡を作らないように丁寧にかき混ぜる。

 同時に隣から軽快なリズムが聞こえてくる。

 その音に嫌でも反応してしまう。


 「…………」


 だけど、もう惑わされない。

 僕には……僕達には僕達のペースがある。それに速度で劣っても大丈夫、この勝負は味と見た目であって速さは評価に入らない。

 それに僕の後には愛音さんがいる。僕は何が何でも完璧なスポンジを彼女のために用意する必要がある。

 だからここでミスをするわけにはいかない!


 「ふぅ……。愛音さん!」

 「はいっ!」


 なんとかいつもの調子で生地を完成させ、型に流し込んだ生地をオーブンの中へ入れ、後ろで見守ってくれていた愛音さんとバトンタッチ。


 (ソラさんが繋いでくれたバトン……ここで私が失敗するわけにはいかない)


 胸の前に手を当て軽く深呼吸をする。

 その手の指先にはまだ彼と触れ合った時の感触が残っている。それを感じるだけで自然と緊張感が和らいでいく、まるで彼がすくそばで「大丈夫、愛音さんなら出来る」と応援してくれているように。


 「うん!」


 私は泡立て器を手に取る。

 先生曰く別にこの大会ではハンドミキサーを使ってもいいらしいが、私は決して使わない。

 私が初めて父からケーキ作りを教えてもらった日、ハンドミキサーで混ぜたクリームと父の手で混ぜたクリームの両方を食べさせてもらった。

 そのときの私は物凄く感動したのを今でも覚えている。ハンドミキサーで作ったクリームも決して美味しくないというわけではないけれど、父が手で混ぜたクリームは別次元だった。

 コクがしっかりとあるのに、舌触りはまるでとろけるような……あのとき私は初めて本物の生クリームを食べた気がした。

 多分それに影響されたからだろう、私はいつの間にか生クリームの事に関しては、両親共に賞賛するくらい上手くなった。

 だからこそ春野さんとやった時も、今と同じように私が生クリーム担当、彼がナッペ担当となった。

 きっとそれ以上のケーキは作れない、彼からの音信が消えた時にそう思っていたのに……。


(どうしてだろう、今の私なら、ソラさんと一緒ならあれ以上の物が作れる……そんな気がする)


 隣では既に生クリーム作りを終えて、ナッペの段階に移っている。

 だけどそれがどうした。これは、このケーキは私とソラさんふたりのケーキだ。ほかの人がどうとかなんて関係ない。

 私は、私達のために食べた人が幸せになれるようなケーキを作る。

 ただそれだけなのだ。


 「ソラさんっ!」

 「こっちは準備オーケーだよ、あとは任せて!」

 「はい、お願いします!」


 生クリームが出来次第、彼とすぐさま交代する。

 ここは流石のコンビネーションといったところだろう、彼は私が生クリームを完成させるより少し早いくらいのタイミングでケーキのカットを終えていた。

 そのためナッペの作業はすぐに入れる。

 今回大会で作るケーキはショートケーキ、そこに何かを入れてもいいし、逆に何もいれないというのもありだ。

 さっきまでは普通にクリームだけのショートケーキだったけれど、今の私達なら……。

 私がいちごを手に取ると、彼にアイコンタクトを送る。

 彼も私のやりたいことを理解してくれたようで、軽く頷くと、


 「さぁここからが本番だ!」

 「はいっ!」


 彼が生クリームを一段目に塗り終える間に必要な分だけのいちごを十分に洗い、適度な大きさに切る。

 本当なら一度にやってしまった方がいいのだが、今回は急に決めたことなのでそんなことをしている暇はない。

 ここのいちごの大きさだって初めてやるはずなのに、まるで誰かがこの大きさに切るんだよと教えてくれているかのように、サッと終える。

 終わったものはすぐさま彼の元へ届ける。


 「いちごの数がこれだから……配置はこうだ」


 そして彼もまた、初めてなのに的確にバランスよくいちごを置いていく。

 それを一段目、二段目とする頃には、先生は自分のケーキを作り終えていた。

 もちろん先生も同じいちごのショートケーキだ。

 それを横目で確認し、


(流石の速さだけど、でも味と見た目なら僕達は負けない!)


 僕はナッペの作業を終える。しかしショートケーキで一番難しいのはナッペではない。

 円の外周に対して均等にクリームを落とす、これこそ本当の難関だ。

 いつもならそれっぽく出来ていたものが、さっきは大きさもバラバラだったけれど……。


 「……よしっ」


 今度は大丈夫。確信を持って言える、今回のケーキが今まで一番うまく出来た。

 あとはその上にいちごをのせ、二人で終わりの合図。


 「「──完成です!」」


 こうして僕達の最高傑作が出来上がった。

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