第5話 スイーツエンジェルの仲間入り
「ということで、今日からソラさんもスイーツエンジェルのメンバーの一員になりました」
「改めてよろしくお願いします」
あの後、すぐに二階にあるリビングに移動した僕はこの場を借りて昨日あった事を手短に説明しつつ今日から一緒に働くということを伝える。
「おー! 新しい仲間だね♪」
「うんうん、男手も欲しいなと思ってたしソラさんが働いてくれるのは本当に助かるね♪」
「「これからよろしくね♪」」
そう言うと二人の少女は僕の手をぎゅっと握る。
昨日と同じ元気いっぱいな笑みを浮かべている凛菜さんに対しこんな状況なのに……そう言いたげにしている愛優さんに大丈夫と言うように優しく微笑む。
「もぅ……ソラさんったら……」
「どうしたの愛優姉?」
「ううん、なんでもないっ♪」
この時にやっぱりみんな諦めきれないんだと感じた。
僕はまだこのお店のことは全く知らないけれど、それでも分かることはひとつだけある……それはみんなにとってスイーツエンジェルはとても大切なお店ということだ。
「あ、そう言えばソラさん」
「はい?」
「今思ったんですがソラさんは着替えとか持ってますか?」
「…………」
気合が再び入った僕に、彼女のその一言はとても深く突き刺さった。
スマホやらカバンやら財布やらは持ってはいるが、衣類などは全く持っていない。
あるとしたら昨日着ていた服くらいで、今は愛優さんが下着と一緒に手配してくれたパジャマを着ている。
しかし昨日の服は全て洗濯済み。今日はいい天気になりそうだからよく乾くだろう……ってそんなことを言っている場合ではなくて。
「えーっとですね……その、着替えはこの街に来た時はあったんですけど……火事で全部……」
「萌えちゃった?」
「はい、萌えちゃっ……てはいないですけど、燃えてしまいました」
「なるほど、うーん。そうなると着替えはどうしようか……」
愛優さんは顎に手を当て考える仕草をする。
「あの……昨日頼んだところにまた頼むってのは出来ないんですか?」
「それは出来ないかな、残念だけど。昨日頼んだ時なんだか明日は忙しいからとか言ってたし」
「それは困りましたね……」
……今更ながら昨日のうちに少し買っておくべきだったなと。
これが俗にいう。「気付いた時には、時すでに、遅し」ってやつか……しかし、困ったぞ。僕一人ならまだ我慢とかは出来るが流石にお店を経営している上に女の子ばかりなのだからそこら辺も気にしなければいけない。
だけどこうなってしまってはどうしようもない……他の二人もうんうんうなっているけれど思いつかないみたいだしどうしたものかと考えていると。
「ソラさんに合うような服……あっ!」
愛音さんは少し考えた後、何かを思いついたのか階段を駆け足で登っていく。
「えーっと、これは……」
「とにかく追いかけてみようか。あ、凛菜悪いけど朝食の準備お願いできる? 料理はもう出来てるから」
「まっかせてー!」
それだけ言うと僕達は愛音さんの後を追った。
とはいえ大きいとは言っても普通の家なので追いつくのには時間はいらなかった。
部屋の前で立ち止まっている愛音さんを見つけ駆け寄る。
「愛音さんここは?」
「今は物置になっちゃってる部屋なんですが……」
「あっ、なるほど。確かにここならあるかも!」
部屋に入る。
中に入ると物置と言っただけはあって、色々な物が置いてあった。
特にダンボールが多く部屋の半分近くダンボールで埋まっていた。
そしてその中の一つを愛音さんは漁っていた。
「あの、愛音さん何を探しているんですか?」
「多分ここにあるはずなんです」
愛優さん達は愛音さんが何を探しているのかわかっているため、一緒にダンボールを色々と開けて漁っていた。
「うーん、ないなぁ……」
「でもここにあるはずなんです」
手当り次第にダンボールを開けるふたり。
「あの……愛優さん、もしかしてこの中から見つけ出すんですか?」
「そうだけど?」
当たり前でしょ? と言わんばかりの顔をされ僕の方がぽかんとしてしまう。
「だって私達はもう家族みたいなものなんだし、家族が困っていたら助けるのが普通でしょ」
「家族……ですか」
「うん、家族だよ。愛音も凛菜もみんな……もちろん君もね」
「……正直まだ全然実感が湧かないです」
「まあ、そうだよね。いきなり住むところを失ってまだ状況が飲み込めていない時にいきなり女の子しかいないところに住むことになって家族なんて言われても……そりゃそうなるよね」
「すみません」
「ううん、木にしてないからいいよ。私だって同じようなことになったら君と同じようなこと言っちゃいそうだもん」
「……その、これは聞いていいかわからないんですけど」
「どうしたの?」
「なんで三人は一緒に暮らしているのかな……って」
「確かにそれは聞き辛いよね。でも確かに家族って言っちゃったからにはこれも教えておいた方がいいかもね」
「あ、いや、別にそこまでして聞きたいわけじゃなくて……ただなんでだろうって思っただけなので」
「まあ大したことじゃないからいいんだけどね。……元はと言えば私達の両親が原因なんだよね」
「両親?」
「……というよりも、愛音の両親が一番の原因かな。変に渋ると勘違いしそうだから最初に言っておくけど、別に亡くなったとかそういった理由じゃないの。ただ……なんというか……二人とも自由なところがあるから……」
「旅行とかに行ってしまわれた?」
「修行に出るって言って海外に……」
「はあ!?」
「まあそうなるよね。連絡とろうにも二人ともドが付くほど機械オンチだから連絡も取れないしいつ帰ってくるかもわからない。それを見越してか私と凛菜の両親に愛音を託して……こうなったってわけ」
「……そんな理由が」
なんというか予想以上にスケールが大きいというか、修行に行くって……。
それもなんだか慣れているような感じだったからもしかしたら愛音さんの両親はそういった人達なのかもしれないけど。
「まあ私達も昔から愛音と遊んでたりしたから別に抵抗は無かったし、それに年に一度は帰ってくる日があるから別にいいんだけど……。せめて連絡手段くらいは用意してほしいよね」
「まったくですね」
と、そんな会話をしているとふいに愛音さんの手が止まる。
「ありました……」
探し物が見つかったようで、愛音さんが嬉しそうな笑みを浮かべる。
「ソラさん、これですっ!」
「これは……」
そう言って手渡されたのは、男モノの洋服だった。
「父が昔着ていた物なのでサイズが合うかはわかりませんが、一回試してみる価値があると思います」
「ありがとうございます。では少し着てみるので……」
そう言って僕は愛優さんの方を見る。
「えっ? あ、わかってるよ? みんなと一緒に部屋の外で待ってるから。さ、行こっか愛音」
「はい」
そうして愛音さん達は部屋(物置)から一旦出て行った。
ちゃんと出たのを確認し、僕は愛音さんから手渡された服を着てみる。
「よいしょ……凄い、ピッタリだな」
渡された服は僕にピッタリのサイズだった。
しかし、渡された服は自分が普段着ないタイプの服だから少し恥ずかしかった。
「っと、もう入っても大丈夫です」
僕は身だしなみを少し確認した後、外で待機しているみんなに声をかける。
「失礼します。サイズの方は……大丈夫、のようですね。良かったです」
「ええ、ピッタリすぎて自分でも驚いてます」
愛音さんは少し安心したみたいだ。
少し遅れて二人も入ってくる。
「どれどれ……ってカッコイイじゃん」
「おぉ、ソラくんってこういう服を着るともっとかっこよく見えるね♪」
「そ、そうですかね?」
「うん、カッコイイよ!」
「そんな、褒めすぎですよ」
お世辞でも女の子に褒められるのはかなり嬉しいものだ。少し照れるけど。
「……それなら多分お店の制服の方も大丈夫だと思います。同じサイズの制服が何着かあるので」
「それは良かったです」
着替えの方に気をとられていたが、今思えばお店の制服の方も考えなくてはいけなかったな……。
今回はたまたまあったが今度からは気を付けよう。
「うん、制服の方も大丈夫そうだね。じゃあ早く朝ごはん食べちゃおうか。凛菜も待ってるよ♪」
こうして僕達はリビングへと向かった。
リビングに着くと既に朝食は用意されていた。
「ソラくんにカノちゃんおはよー!」
元気に挨拶してきたのは凛菜さんだ。席に座って待っていてくれたのか。
「「凛菜さんおはようございます」」
ハモった。
「あはは、二人とも朝から仲いいね~」
「あはは……」
「あ、君はここの席に座ってね」
「わかりました」
愛優さんに言われた場所に座る。
隣には愛音さん、前には愛優さん、斜め前には凛菜さんという配置だ。
「それではいただきます」
こうして朝食を食べ終えた僕がリビングで座っていると、隣に愛音さんが座る。
どうしたのかと声をかけようとしたらあちらからかけてきた。
「ソラさんすみません。これは質問なのですが……」
「大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。では……ソラさんはやった事ありますか?」
僕の表情が一瞬にして凍りついた。
この娘……ナニを言ってるんだ……。
え? 何? やった事?
やった事ってつまり……ヤった事!? それを彼女いない歴=歳の数の僕に聞きますか!!?
それなんて公開処刑? いや待て、落ち着くんだ僕よ。もしかしたら間違えたという可能性もあるじゃないか。
「あの、愛音さん。やった事……と聞こえたのですが、何かの間違いですか?」
「いえ、やった事です」
間違いじゃなかったよコンチキショー!
などと頭を抱えていると、キッチンからこの話を聞いた愛優さんがすかさずフォローに回る。
「あの、愛音……多分その言い方だと、誤解を招くというか……とりあえずちゃんと説明して上げて」
「あっ、すみません。私が聞きたかったのはお店でバイトとかやった事あるか……ということです」
「え、バイト?」
「はい、バイトです。私時々変な言い方になってしまうみたいで……本当にすみません」
「い、いやいや! 僕の方こそ勘違いしちゃってごめん!」
勘違いで本当に良かったと、心の中で安堵する。
「それで、した事はありますか?」
「あー、バイトの話だよね。いえ、ありませんよ」
うーん、これは僕の心が汚れているからだろうか。
さっきからやった事とかした事とかなんか……もう。いやこれは僕が悪いな、少し落ち着こうか。
「そうですか……ならこれが初体験ということですね♪」
「そうだけどなんか違うくない!?」
「えっ? な、なにか間違ってましたか?」
「あ、いや……ごめん、大丈夫だよ」
「くすくす……」
僕と彼女のやり取りの意味をわかったのか後ろの方でくすくすと笑う愛優さん。
「愛優姉〜、朝はどれくらい運ぶのか……って、どうしたの?」
丁度いいタイミングで部屋に入ってきた凛菜さん。
恐らくこの話はこのままわかっている人だけで済ませるのが正解だろう。
「いえなんでもありませんよ。とりあえず僕は初めてのバイトなので色々教えて貰ってもいいですか?」
「はい、元々そのつもりでしたので。私はホールの方を教えるので他を二人にお任せてしてもよろしいですか?」
「任せてカノちゃん!」
「お姉ちゃんに任せてね♪」
二人は愛音さんのお願いに対して元気よく返事をした。二人ともやる気満々のようだ。
──スイーツエンジェルにて。
まずは凛菜さんが教えてくれるようだ。
「凛菜さん、それでまずは何をすれば」
「ふっふっふっ……まずは、掃除からだ!」
そう言ってモップを手渡される。
「このモップを使って床を磨けばいいんですね?」
「うん、でもねモップがけにもコツがあって……こうやってやるといい感じにホコリとか取れるからこのやり方でやってね」
「こう、ですか?」
言われた通りにやってみるが、余りモップとかを使わないので難しい。
「ちょっっと違うかな~」
そう言って凛菜さんは僕の後ろへと回り込む。
「り、凛菜さん?」
「?? こっちの方が、直接教えられるし、わかりやすいかな~って」
突然だがここで問題だ。よくあるこのベタなシーン。今の僕の状況を答えなさい。
答えはそう……後ろから直接教えて貰っているのだ、もっとわかりやすく言うと……凛菜さんが後ろから抱き着いているような形で、僕にモップの持ち方とかかけ方を教えているのだ!! もちろん後ろから抱き着かれている形で教えられているので、凛菜さんの決して大きくはないがそれなりに膨らみのあるおっぱいが背中に当たっているのだ!
もう一度言おう、凛菜さんのそれなりに膨らみのあるおっぱいが僕の背中に当たっているのだ!!
これはなんというかアイツらに見つかったら、いやアイツらじゃなくても死刑だな。
おっと、勘違いしないで欲しいが、僕はロリコンじゃないぞ? どちらかと言うと今は無いよりある方が好きだ。
『今は』ってなんだ『今は』って。
こほん。とりあえず僕は本当にロリコンじゃないからな?
「もしもーし。ソラくーん? 聞いてるー?」
はっ! いかんいかん。あんな事を考えていた間にも凛菜さんは僕に教えてくれていた。
「僕はロリコンじゃないので大丈夫です!」
「えっ?」
しまったああああああ!! やらかしたああああああ!!
「あ、あの……凛菜さん?」
「そのなんたらコンってなに?」
良かった、凛菜さんはどうやらロリコンと言う言葉をちゃんと聞き取れなかったようだ。
「何でもないです。それよりも動かし方とかはこれで大丈夫ですか?」
「気になるなぁ~まぁいいけど。うん! それで大丈夫!」
「それにしても、このやり方少し難しいですね……」
「う~ん。まぁ最初は難しいかもしれないけど、段々慣れてくるから!」
そうは言ってるものの、これは慣れるのに時間がかかりそうだ。
こんな小さい体でこれを毎日やってるんだもんな……こりゃ凛菜さんにも頭が上がらなくなりそうだ。
「ボクは少しやる事があるから、ソラくんモップお願いしても大丈夫かな?」
「大丈夫です」
「もし何かわからない事があったらバックヤードまで来てね~」
そう言い残し凛菜さんは店の奥へと消えていった。
「よしっ!」
一人になった所で僕は気合いを入れ直す。
「確かモップはこうして……おおっ! 本当によく取れる!」
凛菜さん直伝のかけ方でやると驚くほどかけた後が綺麗なる。
かけた後が綺麗になるのが嬉しくなって、僕は知らない間にモップがけに夢中になっていた。
──数十分後。
「……こんなもんかな」
そう言って額の汗を拭う。
「思ったよりも楽しくてついやりすぎたかな……」
なんか部屋がさっきより眩しい気がする……日が入ってきたのだろう。
それに伴い磨いたところが少し輝いて見える。
一通りモップ掃除が終わると僕は凛菜さんにチェックしてもらいに行く。
「凛菜さん終わりました」
「どれどれ……って、なんだこれっ!!」
凛菜さんの声に導かれるように愛音さんと愛優さんもやってきた。
「そんなに大きな声を出してどうしたの……って、すごーい!」
「愛優さんまでどうしたんですか……わ!」
愛音さんは大きな声を出すことは無かったが、とても驚いた顔をしていた。
「あのっ」
「なんでしょう」
「これってソラさんが……やったんですよね?」
「はい。少し気合いを入れすぎてしまいました」
「これで少しって……もしかしてソラくんって掃除の天才!?」
「まさか。凛菜さんの教え方が上手だったからですよ」
お世辞ではない、確かに少し(?)刺激的な教え方だったが、あのやり方のおかげですぐに覚えられた。
「そ、そんな照れるなぁ~。えへへ……」
褒められたのが嬉しかったのか、凛菜さんの顔が少し赤くなったような気がした。
いや気のせいか、僕なんかに褒められてもあんまり嬉しくないよな、うん。
お次は場所が変わってスイーツエンジェルのキッチン。
制服に着替え、エプロンを着けたり消毒液で消毒してキッチンへと入ると、そこには色々と見た事の無い物があった。
「え~っとここでケーキを作ってるんですか?」
「そうだよ。それでソラはケーキ作りとかの経験は?」
「ケーキ作りとかの経験ですか……僕の姉がお菓子作りが好きでたまに手伝っていた事はありますが、ケーキは作ったことないですね」
「なるほど。それならクッキーとか作れないかな?」
「それなら出来るかと」
クッキーなら姉さんと昔からよく作っていたから。ただ何回やってもクッキーだけは姉さんには勝てなかったけど。
「それじゃあ材料はここにあるのを好きに使ってね、君が作るのを私はここで見ているから」
「わかりました」
早速作業に取り掛かる。
まずはボールにバターを入れ、泡立て器でよく練り混ぜる。
「ふむふむ」
じっと見られてる……まぁ見ていると言ってたから当たり前だけど、いざ自分が作るのを見られるとなんか恥ずかしいな。
その後も作業は順調に進み、オーブンで焼くところまで出来た。
「……あれ?」
しかし、ここで問題が発生する。
ここのお店のオーブンは家にあるのと種類が違うではないか!
仕方ない、ここは愛優さんを頼るしかないか。
「あ、あの……愛優さん」
「どうしたの?」
「このオーブンの使い方教えてください」
「あっ!」
愛優さんもそこまで想定していなかったようだった。
「気付かなくてごめんね……」
「いえ、僕もはじめに確認するべきでした」
「ここはこうしてこうするの。それでね────」
愛優さんから使い方の説明を受ける。
「なるほど、ありがとうございます。これでなんとか最後まで出来そうです」
僕は軽く礼をして作業に戻る。
──数分後。
キッチンにクッキーの良い香りが漂う。
「愛優さん出来ました」
僕はお皿にクッキーを並べ、愛優さんの元へと持っていく。
自信はあるものの、やはり緊張してしまう。
「どうぞ」
お皿を前に置く。すると愛優さんはクッキーを手に取る。
「見た目は……ふむふむ、いい感じだね。それでお味の方は……あむ」
クッキーは口元へ。
見た目は良く出来ていたとしても、味が悪ければダメだ。しかし、今日始めてここのオーブンを使ったというのもあって少し不安だ。
愛優さんの口の動きが止まる。
やはり「これではダメか……」と、僕が呟いた時。
「うん、合格!!」
「……えっ?」
「合格だよ! と言うかこんなに美味しいクッキー私でも作れないよ」
え? 愛優さんでも作れないクッキーを作った?
僕の頭は混乱していた。
「美優姉そんなに大きな声を出してどうしたの~?」
「愛優さん一体どうされましたか?」
愛優さんの声を聞きつけ、凛菜さんと愛音さんもやってくる。
「今ね、ソラにクッキーを作ってもらったんだけど、それがすっっっっごく美味しいのっ!」
「それは褒めすぎですよ」
実際に食べた事は無いけれど、こんな僕が愛優さんよりも上手く作れるなんて思わない。
「どれどれ……うわっ本当だ! 凄く美味しい!」
「で、では私もお一ついただきますね……っ!? 本当にとても美味しいです」
「お二人まで……」
「いやいやいや! 本当に美味しいから! これならお店の商品として出せるよ! ね、カノちゃん?」
「はい、お店の商品として出しても全然問題無いです」
「それは流石に恥ずかしいです」
僕は愛優さんの方をチラリと見る。
流石にここに来たばかりの僕なんかがここのお店の商品として売られるのは少し気が引ける。
そんな気持ちを愛優さんは汲み取ったのか。
「あっ! 大丈夫だよ、私ってケーキは作れてもクッキーとかは全然だからさ。それにこんなに美味しいのに商品として出さないのは勿体ないって思ってるから♪」
それならいいのだが。
「でも意外だな~」
「と、言いますと?」
「ソラくんはボクと一緒でお菓子とかは食べる専門だと思ってたけど、愛優姉サイドだったなんて」
「愛優さんサイドって……」
「そうなると私達は仲間だねっ! イェーイ!」
そう言ってハイタッチの構えに入る愛優さん。
僕もそれに会わせて手をあげると……。
「イェーイ!」「イ、イェーイ?」
たったこの数時間で凛菜さんや愛優さんや愛音さん……、特に愛優さんとより一層仲良くなれた気がした。
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