第86節 マンマ・ミーア!



 あおいりによる脳震盪のうしんとうから回復かいふくした俺が、パジャマから普段着ふだんぎ着替きがえてリビングにはいると、明日香あすかねえちゃんといもうと美登里みどりひらたいテーブルづくえ三方さんぽうからかこんだソファーにかいってすわっており、それらのあいだにあるソファーにすわったあおいは、うしろになが亜麻色あまいろかみばした従順じゅうじゅんりょうみメイドのかなでさんに、甲斐かい甲斐がいしく紅茶こうちゃをサイドテーブルにて給仕きゅうじしてもらっていた。


 茶髪ちゃぱつショートカットでいつものようにタンクトップにショートパンツというラフな格好かっこうをしてそのきたげた腹筋ふっきんさらしている、体育会たいいくかいけいレスリング女子じょし大学生だいがくせいである明日香あすかねえちゃんがき、俺にあさ挨拶あいさつをかけてくる。


「あっ、おはよー啓太郎けいたろうー。今回こんかいあおいちゃんとの痴話ちわ喧嘩げんか無事ぶじんだみたいだねー」


「いや、毎回まいかい毎回まいかい帰省きせいたびうけど痴話ちわ喧嘩げんかじゃねーっつーの。それに気絶きぜつしてたんで無事ぶじじゃねーし、ちょっとくらいは心配しんぱいしてくれよ」


 俺がかえすと、陶器製とうきせいハイブランドティーカップのをつまんだあおいが、こんなことをう。


「それはけぃにぃちゃんの自業じごう自得じとくやん。でも、こんなふうなんでもこといてくれるみメイドさんにご奉仕ほうししてもらえるお貴族きぞくさまみたいな生活せいかつわるぅないな。こんならしがこれからできるのったわ」


 いた物語ものがたりのお姫様ひめさまであるかのようにあたまあお宝石ほうせき髪飾かみかざりをつけ、せわしない身動みうごひとつもせずレザーブラックのソファーに端然たんぜんすわっていたあおいは、背筋せすじばしたままティーカップをかたむけて行儀ぎょうぎよく紅茶こうちゃむ。


「へ? こんならしがこれからできるってどういうことだ?」


 疑問ぎもんかんじた俺がそう言うと、あおいよこのソファーにすわっていた小柄こがら細身ほそみ黒髪くろかみロングツインテールの、すぐちかくにしょぼんとしたかんじの顔文字かおもじクッションをたずさえたオタクけいゲーマー女子じょし中学生ちゅうがくせいであるいもうと美登里みどりこたえてくる。


「……あおいねえちゃんもこのはるからこのうちむんだって。おにいちゃん」


「はぁ!?」


 俺がけた返事へんじをすると、ねえちゃんがかえしてくる。


「なんかねー、聖子せいこ叔母おばさんたちとおとうさんおかあさんとのめなんだってー。あおいちゃんもこのおうち一緒いっしょんで、東京とうきょう大学だいがく目指めざすことにするみたいー」


 俺はあきれた心持こころもちこたえる。


「いや……このうちんで大学だいがく目指めざすって……高校こうこうはどうすんだよ、高校こうこうは」


 すると、あおいひらたいテーブルづくえうえいてあるクリアファイルに視線しせんをやった。


「もう、埼玉さいたま高校こうこうにはふたつかっとるよ。けぃにぃちゃんてみ」


「え、なにそれいつのに」


 俺があおいそばちかづき、かれてあるクリアファイルから書類しょるいしてみると、両方りょうほうとも埼玉県さいたまけん最難関さいなんかんきゅう進学校しんがくこうである私立しりつ高校こうこう合格証ごうかくしょうであった。


 その合格証ごうかくしょうとおした俺は、従妹いとこであるあおいのそのなさになかあきれつつはなしかける。


「……あおい、この二校にこうともたし入試にゅうし偏差値へんさち70だいだろ? よく両方りょうほうともかったな」


「あったりまえやん、ウチの偏差値へんさちいくらやとおもっとるんよ。もしウチがおとこやったら関西一かんさいいち進学校しんがくこうとして有名ゆうめい神戸こうべ灘校なだこうにも普通ふつうはいれるんやで」


 ティーカップをったあおいのそんな言葉ことばいて、俺はこころなかおもう。


――すげーな、あおい


――流石さすが父親ちちおや大阪おおさか旧帝大きゅうていだい出身しゅっしん医者いしゃ先生せんせいなだけのことはある。


 あおい紅茶こうちゃしたティーカップを、かたわらでかなでさんがかしこまって待機たいきしているサイドテーブルにいて、言葉ことばつづける。


「それにしても、けぃにぃちゃんのかよってる『大宮おおみや第二だいに高等こうとう学校がっこう』って偏差値へんさち60ちょっとしかないやん? けぃにぃちゃん、もっとあたまいはずやったのになんでこんなところかよってんの?」


「あーっと……まあ、それには色々いろいろと俺なりの戦略せんりゃくってうかわけがあってな……」


――きだった幼馴染おさななじみ萌実めぐみ一緒いっしょに、おな高校こうこうかよいたかったからレベルげたなんて今更いまさらえねーしな。


――まあ、そのおかげで親友しんゆう可憐かれんにもいつのにか再会さいかいしていて、たからくじがたったから結果けっかオーライなんだけど。


――そのことは、俺のこころなか一生いっしょうとどめておこう。


 そこまでかんがえて、疑問ぎもんたね芽生めばえた俺は、あおいたずねる。


「……いや、そもそもあおい、なんで二高ふたこう偏差値へんさちってんだ? 調しらべたのか?」


 すると、あおい若干じゃっかんほほあからめ言葉ことばまる。


「あーと……それはウチなりの理由りゆうがあってな……」


 すると、うしろのほうから明日香あすかねえちゃんがからかいげにこえをかけてくる。


あおいちゃんも啓太郎けいたろう一緒いっしょに、おな高校こうこうかよいたいんだってー」


めぃねぇちゃん! それちがう! そのほう色々いろいろとウチにとって都合つごうがええからや!」


 ほほめながら否定ひていしたあおいに、俺はこうかえす。


「え? あおい? おまえ二高ふたこうかようの?」


 すると、あおいかおあからめつつ俺から視線しせんはずしたままこたえる。


「……いや、ウチが明日あした試験しけんけてかったらな。ゆーか、入試にゅうし偏差値へんさちが60ちょっとなら確実かくじつかるとおもうけど」


 そんな従妹いとこのよそよそしい態度たいどに、俺はだいたいの状況じょうきょうめたので達観たっかんしたかんじでかえす。


「あー……だから試験しけんける前日ぜんじつにこのうちたってわけか。つーか、それなら事前じぜん連絡れんらくしておけよ。こっちもそれなりの準備じゅんびしなきゃいけねーんだからな」


 すると、明日香あすかねえちゃんがうしろからこえをかけてくる。


「あーそれ、あたしが聖子せいこ叔母おばさんから連絡れんらくけて幸代さちよさんにたのんどいたから問題もんだいないよー」


「え、なにそれ」


――ねえちゃんも、なんだかんだでねーな。


 そんなことを俺がおもっていると、あおいがサイドテーブルのうえいてあったディスクケースをり、なかはいっていた DVD であろうディスクをして美登里みどり指令しれいつたえる。


「まあ、くわしいことはこのディスクにはいっとるわ。みっちゃん、わるいけどディスク再生さいせい用意よういしてくれへん?」


「……了解ラジャ


 美登里みどりはそうってソファーからがり、テーブルのうえいてあったリモコンと、あおいからったディスクをって150インチモニターのちかくに設置せっちされているディスクプレーヤーキットにかう。


 これはモニターじょう動画どうが一緒いっしょながれだな、と判断はんだんした俺はあおいすわっているソファーのすぐとなりすわり、その従妹いとこたずねかける。


あおい、ディスクってなにはいってるんだ?」


具体的ぐたいてきにはウチもらへん。おとうさんとおかあさんからけぃにぃちゃんへのメッセージをおねえちゃんがったもんらしいけど」


――瑠璃るりねえちゃんか。


――瑠璃るりねえちゃん、ハンディカメラとかの精密せいみつ機器きき好きだからな。


 俺はこころなかに、去年きょねんはる現役げんえき京都きょうと旧帝きゅうてい大学だいがく農学部のうがくぶかったというみっ年上としうえ従姉いとこである瑠璃るりねえちゃんの容貌ようぼうおもかべる。なが黒髪くろかみうしろにばし、前髪まえがみをおでこでけているけた褐色肌かっしょくはだ健康的けんこうてきなスラリとした姿すがた子供こどもころから印象いんしょうぶかかった。


 美登里みどりがディスクをセットしてっていたリモコンを操作そうさすると、ファイル選択せんたく画面がめん大画面だいがめんのモニターじょうあらわれた。


 そこからまたなにかを操作そうさした美登里みどりが、ちかづいてきて俺のすぐよこすわっているあおいにリモコンを手渡てわたす。


「……はい、あと再生さいせいボタンせば再生さいせいされるよ。あおいねえちゃん」


「ん、ありがとみっちゃん」


 リモコンをったあおいが、美登里みどりがソファーにすわなおしたのを見計みはからって躊躇ためらいなくディスクプレイヤーキットにリモコンをけて再生さいせいボタンをすと、150インチあるモニターじょう子供こどもころからっている夫婦ふうふ姿すがたうつされた。


 モニターじょう映像えいぞうで、ひだりにはとうさんのじついもうとである黒髪くろかみおかっぱあたまで、どこか妖艶ようえん雰囲気ふんいきにまとった看護師かんごしの、聖子せいこ叔母おばさんがっているのがわかる。


 そしてみぎには茶髪ちゃぱつをツンツンととがらせて、きりっとまった顔立かおだちをした、大阪おおさか市民しみん病院びょういん内科ないか担当たんとうしている勤務医きんむい先生せんせいであるという、旦那だんなさんの宏一こういち義叔父おじさんがっていた。


 二人ふたりとも四十代よんじゅうだいだというのに相変あいかわらず若々わかわかしいその義叔父おじ叔母おば夫婦ふうふは、どこかの住宅街じゅうたくがいのようだがなに建物たてものってない広々ひろびろとした更地さらちまえならんでいる様子ようすであった。


瑠璃るり、もう録画ろくがしとるか?」


 みぎにいる宏一こういち義叔父おじさんがそういつものように大阪弁おおさかべんうと、おそらくこのビデオメッセージをっているのであろう、画面上がめんじょうにいない瑠璃るりねえちゃんのこえひびく。


「うん、もうってるよおとうさん」


――瑠璃るりねえちゃんは、むかしから聖子せいこ叔母おばさんとおなじで標準語ひょうじゅんごなんだよな。


 俺がそんなことをおもってると、モニターじょう宏一こういち義叔父おじさんが笑顔えがおって大阪弁おおさかべんびかけてくる。


啓太郎けいたろうくん、とるかー? アメリカのたからくじで7おくドルたったのおめでとうー」


 宏一こういち義叔父おじさんにいで、聖子せいこ叔母おばさんもこれまた笑顔えがおってモニターじょうびかけてくる。


けいくん、叔母おばさんたちねー、けいくんのおとうさんとおかあさんにけいくんのおかね病院びょういんててもらうことになったのよー」


「ええぇっ!?」


 俺が反射的はんしゃてきこえげると、モニターじょう動画どうが一時いちじ停止ていしした。どうやらあおい一時いちじ停止ていしボタンを押したようであった。


 ソファーですぐとなりすわっているあおいがこちらにかおけ、その猛禽類もうきんるいのようなくりっとしたおおきくまるで俺をる。


なに? けぃにぃちゃん、そんなにおどろいた?」


「いや……そりゃおどろくだろ。……ってゆーか義叔父おじさんと叔母おばさん、俺のかね病院びょういんてることになってんの?」


 俺がしどろもどろになりながらそううと、あおい淡白たんぱく態度たいどかえしてくる。


おおきな病院びょういんやないよ、住宅街じゅうたくがいによくある医師いし一人ひとりのクリニック。それでも土地とち建物たてもの医療いりょう機器ききとかそろえるのに一億円いちおくえん以上いじょうのおかねるから、一応いちおういま書類上しょるいじょうではおかあさんがおいであるけぃにぃちゃんから九千きゅうせん万円まんえんりてるって格好かっこうになっとる」


「いつのに……っつーかそんなの法律的ほうりつてきゆるされんのかよ」


未成年者みせいねんしゃであるけぃにぃちゃんの両親りょうしん当然とうぜんってる、『法定ほうてい代理権だいりけん』ってゆうの使つかったらしいわ。無利子むりし無期限むきげんだと税務署ぜいむしょ贈与ぞうよだとみなされるんで、そのあたりも上手うまいこと調整ちょうせいしてるってっとった」


 俺とあおいがそんないをしてると、明日香あすかねえちゃんが言葉ことばをかけてくる。


「それよりつづせてよあおいちゃんー」


 そんなねえちゃんのこえいて、あおいふたた再生さいせいボタンをす。


 映像えいぞうながれが再開さいかいし、画面上がめんじょう聖子せいこ叔母おばさんがこんなことをう。


くわしくはあおいいてしいんだけど、叔母おばさんもう借金しゃっきん九千きゅうせん万円まんえんおんなになっちゃったからー。叔母おばさんたち、けいくんに借金しゃっきん担保たんぽとしてあおいあずけることにしたのー」


 いで、宏一こういち義叔父おじさんもこんなことをべてくる。


「これから大学だいがく卒業そつぎょうするまであおいのことよろしくなー、啓太郎けいたろうくんならあおい仲良なかよらせてけるってこと叔父おじさんしんじとるでー」


 そして、聖子せいこ叔母おばさんがほがらかな笑顔えがおりながら言葉ことばはなつ。


「なんだったらけいくん、あおい夜這よばいとかしてそのままおよめさんにしちゃったりしても、叔母おばさんゆるすから大事だいじにしてあ――」


 ブツッ


 モニターじょう映像えいぞう途切とぎれ、くろ画面がめんわった。


 俺がすぐとなりると、あおいがリモコンをモニターの方向ほうこううで一杯いっぱいばし、したいたまま電源でんげんボタンをしていた。


「あの……あおい? 聖子せいこ叔母おばさん、なんか夜這よばいとかってたけど?」


 俺がそうたずねると、一拍いっぱくいてからあおいしたいたまま俺のかおずにこうう。


「……戯言たわごと


「ええっと……」


 俺がどうかえしていいかわからないでいると、あおいになったかおいきおく俺にけて、にらみながらさけぶようにげる。


「あれは年中ねんじゅう発情はつじょうしっぱなしの淫獣いんじゅう戯言たわごとや! はるからひと屋根やねしたむことになるけど、ホンマに夜這よばいなんかしてきたらけぃにぃちゃんのことうったえるで! いくら従兄いとこといえども!」


――自分じぶん母親ははおやのことを『年中ねんじゅう発情はつじょうしっぱなしの淫獣いんじゅうばわりするのはどうかとおもうぞ、あおい


 そんなことをこころなかかんがえた俺は、あきれたかんじでとなりすわっているあおいかえす。


「……いや、従妹いとこ夜這よばいなんかするわけねーだろ。常識的じょうしきてきかんがえろよ」


「あーと……まあ、それならそれでべつにええんやけど……」


 そんなことって、あおいきゅうにしおらしくなってほほあからめたまま俺から視線しせんはずす。


「けどまあ、夜這よばいしておよめさんにしていいとか、聖子せいこ叔母おばさんもかなり常識じょうしきはずれっつーか無茶むちゃ苦茶くちゃなことってるのはわかるけどな」


 俺がそううと、となりのソファーから明日香あすかねえちゃんがわらって豪快ごうかいこえをかけてくる。


「あはははー、啓太郎けいたろうはばっかだなー! 聖子せいこ叔母おばさんの冗談じょうだんだよじょーだん! 啓太郎けいたろうあおいちゃん、いくら子供こどもころからの仲良なかよしこよしだからって従兄妹いとこ同士どうしじゃんー? 従兄妹いとこ同士どうし結婚けっこんなんかできるわけないじゃんかー!」


 ねえちゃんのそんなわらごえに、サイドテーブルのちかくにてずっとおましがおかしこまり命令めいれい待機たいきしていた、ヴィクトリアンメイドふく姿すがたかなでさんが反応はんのうする。


明日香あすか嬢様じょうさま……たしか、従兄妹いとこ同士どうしでしたら日本にほん法律ほうりつでは結婚けっこんができるはずでしたよ……?」


「ええー!? そうなのー!?」


「はい、以前いぜんにそういうおはなしいたことがあります……。従兄妹いとこ同士どうしでしたらよん親等しんとう親族しんぞく同士どうしたるので結婚けっこんはできるはずでしたよ……?」


「じゃあさー、じゃあさー、もしかして兄弟姉妹きょうだい同士どうしでも結婚けっこんってできちゃったりするのー?」


「いえ、それは流石さすが無理むりではないかと……」


 ねえちゃんとかなでさんがそんなやりりをしていると、いままでだまっていた美登里みどりがポンとった。


「……ああ、そうか。なるほど……聖子せいこ叔母おばさんと宏一こういち義叔父おじさん、そういうことか」


美登里みどり、そういうことってどういうことだ?」


 俺がたずねると、美登里みどりうえゆびさして俺たちにはなしかける。


「……つまりこの同居どうきょ計画けいかくおや同士どうしめた政略せいりゃく結婚けっこんらしきものにけてのみでもあるんだよ。300億円おくえんっている大富豪だいふごうのおにいちゃんと、その従姉妹いとこであるあおいねえちゃんとの将来しょうらいのための布石ふせきってやつ」


 美登里みどり名探偵めいたんていぶった口調くちょうに、俺はむ。


「いや、それはいくらなんでも飛躍ひやくしすぎじゃね?」


 すると、かなでさんが俺に微笑ほほえがおけて、心底しんそこ主人様しゅじんさましあわせをいわうかのような柔和にゅうわたたずまいでうれしそうにげる。


啓太郎けいたろうさん、もしかして将来的しょうらいてきにはあおい嬢様じょうさまとご結婚けっこんなさるのですか……? それでしたらおめでとうございます……」


――いや、めでたくないから。


――かなでさんに笑顔えがおでそうわれるの、俺にとっては全然ぜんぜんめでたくないから。


 俺がこころなかこえにならないなげごえはっしていると、すぐとなりすわっているあおいかおあからめたまま、俺のほうないで言葉ことばはなつ。


「まあ、おとうさんとおかあさんの意図いとはともかく、ウチはどっちみちこのはるからこのうちむことになるから。けぃにぃちゃんもそこんとこよくよく勘違かんちがいしないでわかっといてや。もし、初心うぶ生娘きむすめ許可きょかなく変態的へんたいてき行為こういとかしてきたらぶっとばすで」


 なんとなくいつもの女王様じょうおうさまらしさがうしなわれたかんじのあおい横目よこめに、俺はこれからおとずれるであろうはるからの生活せいかつ暗澹あんたんたる気持きもちで思案しあんしていた。


――初心うぶ、ねえ。


――つーことはこのはるから俺は、ねえちゃんといもうとくわえて――


――みメイドのかなでさんと従妹いとこあおいの――


――全員ぜんいんまったく性格せいかくちがおんな四人よにんなかおとこ一人ひとりらすことになんのか。


 そんな、どう楽観的らっかんてきかんがえてもトラブルまみれになりそうな未来みらい危惧きぐしている俺にぴったりてはまる表現ひょうげんを、ひとえらぶとしたらこうなるだろう。


――なんてこったい、未来さきえない。


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