第69節 ショコラ




 そのは、裕希ゆうき先輩せんぱい生徒せいと会長かいちょうになったことを全校ぜんこう放送ほうそうによってらされてから翌日よくじつ水曜日すいようび


 つまり1がつ晦日みそかである31にち萌実めぐみの16さい誕生日たんじょうびのことであった。


 昼休ひるやすみになって俺と可憐かれんとう主役しゅやくである萌実めぐみ三人さんにんは、この俺たちのかよ高校こうこう購買こうばい隣接りんせつしている食堂しょくどうともなっている多目的たもくてきスペースにおとずれていた。


 この厨房ちゅうぼうせっする多目的たもくてきスペースには四角しかくつくえもたれのある椅子いす多数たすう定間隔ていかんかくならべられ、昼休みには食堂しょくどうにもなり、また始業前しぎょうまえ放課後ほうかごには自習室じしゅうしつにもなるようにしつらえられている。


 周囲しゅういには、厨房ちゅうぼうにてたのんだ定食ていしょくべている男子だんし生徒せいとらや、いえからってきたのであろう弁当べんとうひろげて会食かいしょくをしている女子じょし生徒せいとたちの姿すがたなどが随所ずいしょ見受みうけられる。


 所々ところどころつくえまえには、二人ふたり仲良なかよとなって食事しょくじをしている、ブレザー制服姿せいふくすがたのカップルらしき男女だんじょペアもわりかしおおすわっている。


 俺たちのかようこの高等こうとう学校がっこう二高ふたこうという通称つうしょうられる県立けんりつ高校こうこうは、自由じゆう校風こうふう評判ひょうばんだとこのあた一帯いったいにおいて人口じんこう膾炙かいしゃされているに相応ふさわしく、男女だんじょ交際こうさいかんしてもきわめて自由じゆう気風きふうとなっている。


 っている本人ほんにんたちの同意どういさえあれば、日本にほん国内こくない法律ほうりつ条令じょうれい範囲内はんいないでの常識的じょうしきてき行動こうどうもとづくかぎり、交際こうさいかんして不純ふじゅん異性いせい交遊こうゆうまるような校則こうそく慣例かんれいとくになく、大学だいがく推薦すいせん入試にゅうし進学しんがくするための内申点ないしんてん指定校していこう推薦すいせんにもとりわけ影響えいきょうおよぼさないらしい。


 悪友あくゆう仲間なかまからつたいたうわさでは、男女だんじょ同士どうしでペアを形成けいせいしているいわゆる世間せけん一般的いっぱんてき多数派たすうはカップルだけではなく、男性だんせい同士どうし女性じょせい同士どうし少数派しょうすうはカップルもこの高校こうこうには水面下すめいんかつね一定数いっていすう存在そんざいしているらしい。本当ほんとうかどうかはらないが。


 さて俺はいま、この多目的たもくてきスペースのつくええられている椅子いすすわっており、つくえはさんで真正面ましょうめんにはかたまでのながさのふわふわのくせ小動物しょうどうぶつみたいな雰囲気ふんいき文学ぶんがく少女しょうじょである萌実めぐみがいる。


 そしてそのとなりにはふぁさっとした金髪きんぱつポニーテールの髪型かみがたで、うえひらけたブラウスからはおおきなむね谷間たにませた、小学生しょうがくせいころにはおとこ友達ともだちだと勘違かんちがいしていたつややかでなまめかしいかんじのセクシーなしろギャルである可憐かれんがいる。


 俺たち幼馴染おさななじみ仲間なかま三人さんにんつくえうえ弁当箱べんとうばこつつみをそれぞれいて、これから昼食ちゅうしょく記念日きねんびらしく一緒いっしょ予定よていとなっている。


 俺は、かいがわ萌実めぐみすこおおきめのラッピングされたはこわたす。


「はいこれ。誕生日たんじょうびおめでとう、萌実めぐみ


 俺がそういながら萌実めぐみにプレゼントばこわたすと、その子供こどものころからのながいであるまえ幼馴染おさななじみが、うれしそうにそのつぶらなを細めて満面まんめんの笑顔でもってこたえてくれる。


「わぁ! ありがとう、啓太ケータ! 中身なかみなにかな?」

「ああ、萌実めぐみきそうなものをえらんでおいた」


 ちなみに中身なかみは、大宮駅おおみやえき東口ひがしぐち駅前えきまえちかくにある高級こうきゅう百貨店ひゃっかてんの『高島田屋タカシマダヤ』にてった、ひとはこ万円まんえんくらいするフランスさん高級こうきゅうチョコレートわせセットである。


――萌実めぐみむかしっから、お菓子かしとかのあまいものがきだからな。


 俺がそんなことを思っていると、萌実めぐみはこを持ったまま上目うわめづかいでもうわけなさそうな表情ひょうじょうになって言葉ことばはっする。


一学期いちがっきにはあんなことしちゃって、5がつにはアタシ啓太ケータ誕生日たんじょうびいわいできなかったってのに、いいのかなって」


 俺はおだやかな口調くちょうこたえる。


「ああ、あれはたんなるボタンのちがいでこった事故じこだし、萌実めぐみはクラスのみんなまえ勇気ゆうきしてしっかりとあやまってくれたんだからもういいよ。俺は全然ぜんぜんにしてないんで、萌実めぐみももうにすんなよ」


 俺が目の前の幼馴染おさななじみに本心をそうげると、萌実めぐみ表情ひょうじょうこころなしかゆるんだような気がした。


 すると、萌実めぐみとなりすわっている可憐かれんが同じくラッピングされた小さなプレゼント箱を渡しながらげる。


「よかったね、メグ。ハイ、これはアタシからのプレゼント」


「わぁ! 可憐カレンもありがとう! うれしい!」


 そんな可憐かれんたいする萌実めぐみ反応はんのうは、ほんの少しだけ、俺にたいしてより語気ごきつよがした。


 そんなことはだで感じていると、萌実めぐみが相変わらず表情をゆるめつつ、こう言ってくる。


「そういえば啓太ケータ、おかあさんが啓太ケータにおれいってたから。商品券しょうひんけんをありがとうって」


 俺はそんな言葉ことばかえす。


「あーっと……まあ、たからくじがたって住所じゅうしょがバレてからマスコミとかが近所きんじょてけっこう迷惑めいわくかけちまったらしいからな。俺たち家族かぞくなりの気遣きづかいだよ、気遣きづかい」


 としけてから俺は、元々もともとんでいたファミリー住宅じゅうたくたる一軒家いっけんやなら閑静かんせい住宅街じゅうたくがいにマスコミや YouTuverユーチューバー野次馬やじうまらがあつまって近隣きんりん家庭かてい迷惑めいわくをかけてしまった代償だいしょうとして、管理人かんりにんでもある幸代さちよさんをつうじておな町内会ちょうないかいぞくする周辺しゅうへん各世帯かくせたい均等きんとう三万さんまん円分えんぶん商品券しょうひんけんおくったのである。


 俺は当初とうしょ萌実めぐみいえふくめた三軒さんげん両隣りょうどなり、そしてかい三軒さんけんわせて九軒きゅうけんいえのみに、かく家庭かてい五十万ごじゅうまん円分えんぶん商品券しょうひんけん迷惑料めいわくりょうとしてわたすつもりだったのだが、その高校生こうこうせいらしい思慮しりょいた計画けいかくは、人生じんせい経験けいけん豊富ほうふ七十ななじゅうちかくのおばあさんである幸代さちよさんにはっきりとした口調くちょうめられてしまった。


 なんでも、ごくかぎられた家庭かていだけに五十万ごじゅうまん円分えんぶんもの大金たいきん相当そうとうする物品ぶっぴんおく行為こういというものは、感謝かんしゃされるどころか後々のちのちにはかえって不公平感ふこうへいかんからくる怨嗟えんさ禍根かこんのこたねになるのだという。


 そこで、あの俺たちのもといえにて管理人かんりにんとしてんでもらっている幸代さちよさんのかいして、俺たち家族かぞく元々もともと所属しょぞくしていたあの新興しんこう住宅地じゅうたくちなりの町内会ちょうないかいにある五十ごじっけんじゃくすべての家庭かていたいしてひとしく、おのおの三万さんまん円分えんぶん商品券しょうひんけんくばってもらうことになったのである。


――まったく、適切てきせつ助言じょげんをしてくれる年配者ねんぱいしゃがいてくれてかった。


――人生じんせい経験けいけん豊富ほうふなお年寄としよりってのは、なんだかんだで人間にんげん複雑ふくざつ感情かんじょう機微きびとしあなってのをっているものだ。


――かめこうより、としこうってやつだな。


 そんなことをかんがえつつ、俺はかなでさんにつくってもらった弁当べんとう布包ぬのづつみをつくえうえひろげ、俺と萌実めぐみ可憐かれんとの小学生しょうがくせいのころからの幼馴染おさななじみ三人さんにん同士どうしで、昼食ちゅうしょくりながらのささやかながらな誕生日たんじょうびパーティーをはじめることとなったのである。




 萌実めぐみ可憐かれんとで一緒いっしょに昼食の弁当を食べていると、可憐かれんの出したれい一連いちれんのクイズの話題になった。


 その内容ないようかんして、野菜やハムがはさまれた手作りのサンドイッチをそのお弁当箱から食べていた萌実めぐみが、こんなことを言う。


「ギャンブルやごとつよひと思考しこうパターン? そんなのかんがえたこともなかった」


 すると、お嬢様じょうさまらしい上品じょうひんかつコンパクトで、栄養えいようバランスのとれた品目ひんもくあざやかなお弁当べんとうべている可憐かれんが、どことなくつややかな口調くちょうで返す。


「んー、まーアタシらまだ高校生コーコーセーだもんね。ケータがてたたからくじとかならともかく、カジノであそぶようなギャンブルらしいギャンブルはできない年齢ネンレーだし」


 金髪きんぱつポニーテールで白肌しろはだせた、いかにもわかおとこ本能ほんのうたいして挑発的ちょうはつてきそうなギャルである可憐かれん物言ものいいに、メイド少女のかなでさんに作ってもらった和風わふうのおかずが入った弁当を食べていた俺は返す。


「ま、普通ふつうかんがえねーよな。俺らみてーな高校生こうこうせいがやるようなギャンブルっぽい勝負事しょうぶごとなんて、友達同士でやるようなトランプやUNOウノとかのカードゲームくらいしかねーんじゃね?」


 すると、可憐かれんがこんなことを言う。


「まーねー、でも高校生コーコーセーでもやろうとおもえばタトえばかぶ取引とりひきとか、土地とちったりとかもできるんだけどね。ケータもいまだったら実際ジッサイにそんくらいのことできるホド余分ヨブンなおかねはあるっしょ」


「まーな。でも、そういうことやるのはまだ俺にははやいだろ。社会しゃかいがどういう法律ほうりつうえっているかとか、株取引かぶとりひきとかの市場しじょうがどんなふううごいてるかとかの仕組しくみとか、俺はまだまだ全然ぜんぜんらねーしな」


 俺のこたえに、可憐かれん興味きょうみぶかそうにそのぱっちりとしたツリほそめて悪戯いたずらっぽくげる。


「へー、ってことはケータもそのうち不動産ふどうさん投資とうしとかはじめるつもりなんだ? もし、そのがあるんだったら、アタシらみたいなむかしっからの地主じぬしケーいえにしかはいってこないよーな、おもてには簡単かんたんてこないおとく不動産ふどうさん物件ぶっけん情報ジョーホー、あったら特別とくべつおしえてあげよっかなー?」


「そうってくれるのはめったにない有難ありがたはなしなんだろうけどな。ま、それはそのときそのときあらためてかんがえてみるよ」


 俺たちがわらいながらそんなふう昔馴染むかしなじみの親友しんゆう同士どうし軽口かるぐちたたっていると、萌実めぐみがそのつぶらなひとみをぱちくりさせてから遠慮えんりょ気味ぎみにこんなことを言う。


「すごいなー二人ふたりとも。株取引かぶとりひきとか不動産ふどうさん投資とうしとか、まさにお金持かねも同士どうしでしかできない会話かいわって感じ」


 そんな、どこにでもいるような普通ふつう庶民しょみんである女子高生っぽい萌実めぐみの発言に、友達ともだちおもいな金髪きんぱつ嬢様じょうさまギャルの可憐かれんが、昔から仲のいい幼馴染おさななじみに気を使った感じで手元てもとからしろいハンカチを取り出してフォローを入れる。


「ううん、おかねだけじゃえないものなかにはいっぱいあるし。この前のアタシの誕生日たんじょうびにメグがくれたこのハンカチ、すっごく大事だいじにしてるし」


 可憐かれんがそう言ってつくえうえに広げてみせたそれは、以前いぜんに俺が見たおぼえのある光沢こうたくある高価こうかそうなシルクのハンカチではなく、通常つうじょう木綿コットンでできているのであろう白いハンカチであった。


 一面いちめん模様もようのようなものはないが、四角しかくのひとすみしろ動物どうぶつあか野菜やさい刺繍ししゅうほどこされてある。


 どうやら、デフォルメされた漫画まんがチックなうさぎ人参にんじん刺繍ししゅうのようであった。


 俺も萌実めぐみに、ながい付き合いで小中学校と時間じかん共有きょうゆうしてきた気心きごころれた幼馴染おさななじみなりに、なごやかな気分きぶんはなしかける。


「そのしろいハンカチ、なんとなくお洒落しゃれでいいじゃん。もしかしてそのウサギとニンジン、萌実めぐみ刺繍ししゅうしたのか?」


 すると、萌実めぐみほがらかな笑顔になってげる。


「そうそう。刺繍ししゅうかた可憐かれんのために一生いっしょう懸命けんめい YouTuveユーチューヴ で勉強したんだから」


萌実めぐみむかしっから裁縫さいほうとかの家事かじ仕事しごと得意とくいだし、ふくとか小物こものとかのセンスも良かったもんな。美登里みどりが今頭に着けてる誕生日たんじょうびプレゼントのいてるように見える四角いリボン、あれも萌実めぐみが選んでくれたんだろ?」


 俺がそう言うと、萌実めぐみ温和おんわな表情のまま応える。


「うん、よかった。あのリボン、美登里ミドリちゃんつけてくれてるんだ」


 そんな、幼馴染おさななじみである萌実めぐみむかしからよくっているやわらかな声質こえしついて、ひさしぶりにかえってきた故郷こきょうにてはなさと昔馴染むかしなじみの旧友きゅうゆうともあるいているこころよさであるかのような、安堵あんど感情かんじょうが俺の胸中きょうちゅうまれる。


――やっぱり、なんだかんだで萌実めぐみはなしているときが一番いちばん気持きもちがいやされるな。 


 かつての俺が一学期に、俺と向き合うことができなかった萌実めぐみ執拗しつように追いかけてストーカーじみた行動を取ってしまったのも、幼馴染おさななじみ一緒いっしょにいることで感じ取れる、おだやかで心安こころやすらぐ感触かんしょくうしないたくなかったからだ。


 なんらかの手段しゅだん時間じかんもどすことができたりもする漫画まんが小説しょうせつのようなフィクションとはちがい、リアルでは人生じんせいにおいて間違まちがえてしまったボタンはけっして外すことはできないが、間違まちがっていたことをみとめてこれから元通もとどおりに修正しゅうせいなおすことはできる。


 こじれた関係性かんけいせいなお以前いぜんの俺と萌実めぐみは、おたがいがおたがいに相手あいて立場たちばになってかんがえることなどとてもできないような、年相応としそうおう未熟みじゅく高校こうこう一年生いちねんせい男女だんじょ同士どうしだったのだといまおもうことができる。


 ともあれかくもあれ、すくなくとも俺と萌実めぐみあいだにおいては一学期の出来事できごとに関してはきっちりとみずながしたということにしたので、そのことかんしてあれこれかえすつもりは、いまの俺のこころなかにはない。萌実めぐみもきっとそうだろう。そうねがいたい。


 俺がそんなことを思いつつもまえ二人ふたり談笑だんしょうしていると、話題わだい自然しぜんいもうと美登里みどりはなしうつった。


「……っつーわけでな、美登里みどりやつなに事件じけんまれねーかどーか、あにとして結構けっこう心配しんぱいなんだよ。誘拐ゆうかいとかな」


 俺がそんなことを話していると、萌実めぐみこたえてくれる。


啓太ケータ大変たいへんだね。美登里ミドリちゃん、夢中むちゅうになっちゃった物事ものごとにはちょっとまわりをずにすすんじゃうところあるから」


 萌実めぐみがそう心配しんぱいそうなこえ気遣きづかってくれてから、可憐かれんがこんなことを言う。


「ふーん、じゃーGPSヘルプタグたせたら?」


「GPSヘルプタグ? なんだそりゃ?」


 俺がたずかえすと、可憐かれん女子じょしブレザー制服せいふくうちポケットからなにやらおさまる程度ていどおおきさの、プラスチックでできたかどまるくろ小物こものしてせてきた。


「コレコレ、誘拐ユーカイ防止ボーシとか事故ジコ防止ボーシとかのためにアタシも親に持たされてるんダケドね。あらかじめ本人ほんにん声紋せいもんHELPヘルプワードを音声オンセー登録トーロクしといて、ナンかあったときにその言葉ことばさけべばアラームがってGPSの位置いちデータが警備ケービ会社ガイシャトドくヨーになってんの」


「へー……そんなものがあるんだな。見た感じだと、せんつなげるためのコネクタとかが見当みあたらないけど、電源でんげんとかはどうしてるんだ?」


 俺がその表面ひょうめんがプラスチックでできたガジェットをまじまじと見つめてそう質問しつもんすると、可憐かれんかえしてくる。


「んー、充電ジューデンプレートの上において無線ムセン充電ジューデンだね。完全カンゼン防水ボースイなんで、間違まちがえてふくとかと一緒イッショあらったとしてもそう簡単かんたんにはこわれないみたい」


 俺はその、つくえうえかれたヘルプタグとばれた四角しかく器具きぐをつまみげて回転かいてんとかをさせつつ調しらべてみる。


 金属きんぞく接触せっしょく器具きぐのようなものは一切なく、四角しかくいプラスチックせいのガジェットの一辺には充電じゅうでんされていることを示しているのであろう、緑色みどりいろのLEDランプが点灯てんとうにより表示ひょうじされていた。


 また、片方かたほう平面へいめんにはメーカーのものなのであろうロゴマークが黒地くろじ白抜しろぬきで印刷いんさつされていた。


 少し考えた俺は、その電子でんし機器ききを持ったまま可憐かれんに告げる。


「あーっと、なるほどな。音声おんせい反応はんのうする電子でんし機器ききだから、金属きんぞく部分ぶぶんやセンサー部分ぶぶんそと露出ろしゅつさせなくてもいいんだな。だからプラスチックのカバーで周囲しゅういおおって、比較的ひかくてき簡単かんたん防水ぼうすい仕様しようにすることができるってわけか」


 すると、可憐かれんがそのツリ目をぱちくりさせる。


「ケータ、あんたぱっと見ただけでソコまでわかるなんて結構ケッコー凄くない?」


「そっか? それほどでもねーと思うけど。それで、誤作動ごさどうとかこしたときはどうすんだ? アラームが教室きょうしつとか街中まちなかとかでいきなり鳴り出したら困るだろ」


 俺がそう返すと、可憐かれんこたえる。


「んーっとね、表面のロゴの部分にボタンがあるから、そこを二回にかいせばアラームはキャンセルされるみたい。あと、スマートフォンと Blueteethブルーティース無線むせん連携レンケーさせて、特定トクテーの時間帯とか特定トクテーの場所のあたりじゃ鳴らないヨーに設定セッテーすることもできんの」


 そんな可憐かれん説明せつめいに、萌実めぐみが感心したように声を発する。


「へぇー、色々いろいろいたれりくせりですごいなー。いつのにか時代じだいってここまですすんでたんだ」


 そして俺は、手元てもとのヘルプタグを可憐かれんに手渡して返しつつ伝える。


「ありがとな。家に帰ったら、俺の部屋にあるパソコンで自分なりに調べてみるよ」


 すると、可憐かれんほがらかな口調くちょうで応えてくれる。


「その方が絶対ゼッタイいいよ。安全あんぜん健康ケンコーにはいくらでもお金かけといた方が良いし。あ、でも真希菜まきなお姉ちゃんは ai-Phoneアイフォン とかのスマートフォンで同じ種類のが二台あれば、似たようなことできるって言ってたケドね」


 そう言われたので、俺は頭の中で考える。


――スマートフォン二台か。


――ねえちゃんから、いらなくなったスマートフォン、貰っておこうかな。


 俺がそんなことを考えてると、可憐かれんがこんなことをたずう。


「それよりさー、今日の主役はメグなんだから、もっとメグの話聞かせてよ。ケータしか知らないヨーな小中ショーチュー学生ガクセー時代じだいのメグのお話、アタシにももっといっぱい教えてくれるとうれしいんダケドな?」


 可憐かれんがにこやかに発した言葉を聞いた萌実めぐみが、少しだけはにかみつつほほめる。


 そんな、友達ともだちおもいなセクシーギャルである可憐かれんの言動に、俺は中学生時代の萌実めぐみとのエピソードにどんなものがあったのかを思い出しつつ、口を開く。


「ああ、それなら中学生ちゅうがくせいときに、明日香あすかねえちゃんとこんなことがあってな……」


 そんななつかしいむかしおもされる会話かいわわしつつ、俺たち三人は幼馴染おさななじみ同士で、萌実めぐみの誕生日をいわうためのなごやかな昼食の時間を過ごしていた。



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