第68節 ダ・ヴィンチ・コード



 そのは、休日きゅうじつけの1がつ最後さいご月曜日げつようびであった。


 月曜日げつようびのこのに、俺たちのかよ二高ふたこう生徒せいと会長かいちょう選挙せんきょ立候補者りっこうほしゃ最終さいしゅう演説会えんぜつかい体育館たいいくかんにておこなわれ、一年生いちねんせい二年生にねんせい学年がくねんぞくする全生徒ぜんせいとによる投票とうひょうさきほどわったところであった。


 最終さいしゅう演説所えんぜつじょでもあり投票所とうひょうじょともなっていた体育館たいいくかんから、ブレザー制服せいふく姿すがた襟元えりもとあおいマフラーをいた俺はクラスメイトの悪友あくゆう男子だんし三人組さんにんぐみ一緒いっしょにクラスへの帰路きろにつき、廊下ろうかあるいていた。


 いま、俺のとなりにはすぐるが、そしてすこうしろにはさとし高広たかひろならんであるいている。


 周囲しゅういには、俺たちとおなじくさきほど投票とうひょうえたばかりの一年生いちねんせい生徒せいとがぞろぞろとあるいている。


 悪友あくゆうわしている話題わだい内容ないようはというと、きこもって中学校ちゅうがっこうにもかよっていないいもうと土曜日どようび声優せいゆう握手会あくしゅかい参加さんかして、きなキャラクターをえんじている声優せいゆうさんと握手あくしゅをし、その声優せいゆうさんと連絡先れんらくさきをこっそりと交換こうかんしていたことにかんしてであった。


「……っつーわけでな、美登里みどりやつがねーっていうか、俺やねえちゃんのぬすんでこっそりとらないひといにったりしねーかどーか心配しんぱいなんだよ」


 俺がそんなことを愚痴ぐちると、となりあるいているヒョロながノッポの眼鏡めがねをかけた悪友あくゆう大友おおともすぐるが俺にたずねかけてくる。


「ふぅむ、それならば啓太郎けいたろう貴様きさまいもうと自分じぶん部屋へや使用しようしているというデスクトップパソコンのOSオーエス種類しゅるいおしえてくれるか」


「へ? いもうとのパソコンはゲームようってことで、このまえった俺のノートパソコンとおなじで Microcoftマイクロコフト しゃWindowzウィンドウズ だけど? それがどうした?」


 俺がきょとんとしてすぐるいかけにこたえると、すぐる質問しつもんかさねる。


「では、貴様きさまいもうと使つかっているスマホのOSオーエスなんだ? 貴様きさまおなじく ApplesアップルズaiOSアイオーエス か? それとも googolグーゴルAndraidアンドレイド か?」


 そんなすぐる真意しんいえない矢継やつぎばやいかけに、俺は律義りちぎこたえる。


「ああ、いもうとはゲームようのパソコンとの連携れんけいがしやすいようにってスマートフォンを Andraidアンドレイド にしてるんだ。俺も明日香あすかねえちゃんもスマホは ai-Phoneアイフォン なんだけどな」


 俺がまえ悪友あくゆうにそうつたえると、すぐるとなりにいる俺から視線しせんはずし、なにやらあごててぶつぶつつぶやはじめた。


「ふぅむ……それならば……あーして……こうすれば……イケるかもしれんな……」


 すると、すこうしろにて高広たかひろ一緒いっしょあるいていたさとしってきて、まえにいるすぐるはなしかける。


すぐる、おめーぶつぶつひとごとってなにかんがえてんだ?」


「ああ、ちょっとばかり日頃ひごろ世話せわになっている啓太郎けいたろうのためにひとはだいでやろうとおもってな。なに、ほうにひっかかるわけではない」


 すぐるきつつニタリと口元くちもとゆがめ、そんな不穏ふおんなことをさとしげる。


――おまえなにたくらんでんだよ? すぐる


 俺はそんなことをおもって、となりあるいている眼鏡めがねをかけたヒョロながノッポの悪友あくゆうめた視線しせんやる。


 悪友あくゆう三人組さんにんぐみ一緒いっしょ廊下ろうかけてクラスルームにいたろうとしたところで、以前いぜんったことのある生徒会せいとかい委員いいん二人ふたり二年生にねんせい女子じょせい生徒せいとが、教室きょうしつまえっていた様子ようす視界しかいはいった。


 一人ひとり茶色ちゃいろあかるくめたかみあたまかって左側ひだりがわでお団子だんごにしてそこからふわっとしたサイドテールとしてらしている、スタイルの天然てんねんっぽい女子じょし生徒せいと


 そしてもう一人ひとりは、ショートカットの黒髪くろかみふか青色あおいろえる紺色こんいろのヘアバンドをつけた、ましたかお毒舌どくぜつ気味ぎみ大人おとなしいかんじの女子じょし生徒せいとであった。


 もちろんのことその二名にめいとは、次期じき生徒せいと会長かいちょうとしての最有力さいゆうりょく候補者こうほしゃである毛利もうり裕希ゆうき先輩せんぱい友達ともだちである二年生にねんせい生徒会せいとかい委員いいん女子じょし生徒せいと斎藤さいとう沙羅さらさんと都築つづき鈴弥すずみさんの二名にめいである。


 その二年生にねんせい女子じょし生徒せいとである先輩せんぱい二人ふたりは、廊下ろうかあるいてきた俺の存在そんざい気付きづくと、ちかづいてきて俺にはなしかける。


たちばなくん、ちょっといいかな? おねえさんたちとおはなしてくれるかな?」


 そんな、いかにもゆるふわなかる言葉ことば同時どうじに、あかるい茶髪ちゃぱつのお団子だんごサイドテール女子じょし斎藤さいとう沙羅さらさんが俺のかおのぞむ。


「ああ、どうしたんですか? 斎藤さいとうさん?」


 俺がそんなふう先輩せんぱい女子じょし生徒せいとたずねると、おなじく近寄ちかよってきた黒髪くろかみショートカットヘアバンド女子じょし都築つづき鈴弥すずみさんが言葉ことばをかぶせる。


「ここではちょっと人目ひとめがありますので……たちばなさんと沙羅さらさんとわたしとの三人さんにんきりでちょっとばかりはなしをしたいんですね」


 そんな鈴弥すずみさんの要望ようぼう言葉ことばいで、となりにいるすぐる沙羅さらさんのゆたかな胸元むなもとけていたのであろう視線しせんはずしてから俺にかおちかづけて、すごむようにくぐもったこえをかける。


「うぉぉい啓太郎けいたろぉぉー? 貴様きーさーまーこのゆるふわなボインちゃんとどういうご関係くゎんけいだぁー?」


――初対面しょたいめんひとまえでボインちゃんなんてうのはどうかとおもうぞ、すぐる


 俺はそんなことをひそかにおもいつつ、すぐるふくめた悪友あくゆうども三人組さんにんぐみこえをかける。


二人ふたりとも生徒会せいとかいメンバーで、毛利もうり先輩せんぱい友達ともだちだよ。ちょっと俺にはなしあるみたいなんで三人さんにんさき教室きょうしつかえっといてくれ」


 そんな俺の説明せつめいいた、にやついているさとしといつもとわらぬ表情ひょうじょう高広たかひろ、そして俺をなんとなくにらみつけているすぐる教室きょうしつはいっていったのを見送みおくり、俺は二年生にねんせい女子じょし生徒せいと二人ふたり廊下ろうか移動いどうする。


 廊下ろうかはし階段かいだんからすこはなれたおくまったところにある、ひとながれからはずれたところに、俺たち三人さんにん位置いちする。


 そして、俺がいかける。


「で、斎藤さいとうさん? 都築つづきさん? おはなしってなんですか?」


 すると、ゆるふわガーリーけい女子じょし沙羅さらさんが笑顔えがおになってげる。


「いやいや! たんなるこのまえのおれいだよ! タクシーにって校門前こうもんまえ待機たいきしていたマスコミをくだけで五千円ごせんえんもくれた気前きまえのいいたちばなくんに、もう一度いちどじかっておれいをしなきゃいけないとおもってたんだよね!」


 鈴弥すずみさんも、ました表情ひょうじょうのまま言葉ことばつなげる。


成金なりきん億万長者おくまんちょうじゃたちばなさんにとっては端金はしたがねなんでしょうが、おやからつき数千円すうせんえんのお小遣こづかいをもらってやりくりしている一介いっかい女子じょし高生こうせいであるわたしたちにはそれなりに大金たいきんですからね。一応いちおうあらためておれいわなければいけないとおもちまして。ちなみに四千円よんせんえんじゃくほどおりがのこりました」


 俺はそのなんとなくどくはいった言葉ことばに、できるかぎ表情ひょうじょうゆるめてかえす。


「ああ、それくらいならべつにいいですよ。ところでもう、可憐かれんねえちゃんの真希菜まきなさんが経営けいえいしているらしいねこカフェにはったんですかね?」


 すると、沙羅さらさんが明朗めいろう表情ひょうじょうのままこたえる。


「いやー、それがまだなんだよね。そのおかね花房はなぶさ会長かいちょうねこカフェにはわたし鈴弥すずみちゃんだけでいかないで、もちろん裕希ゆうきちゃんもさそったんだけど、裕希ゆうきちゃんには笑顔えがおで『せっかく二人ふたりかせいだおかねなんだから、二人ふたりってきなよ~』ってかえされたんだよ」


「そうですか……やっぱりあのひとうつわおおきいっていうか……いかにも生徒せいと会長かいちょう相応ふさわしいってかんじのひとなんですね。そういや裕希ゆうき先輩せんぱい実際じっさい生徒せいと会長かいちょうにはなれそうなんですか?」


 俺がそうたずねると、沙羅さらさんがまわりに俺たち以外いがいだれもいないことを確認かくにんしてから、小声こごえかえしてくる。


じつはここだけのはなしなんだけど……九割きゅうわりがた、裕希ゆうきちゃんにまりそうなんだよね」


 鈴弥すずみさんも言葉ことばつらねる。


生徒会せいとかい独自どくじ匿名とくめいのアンケートをって、その結果けっかWebウェブ じょう統計とうけい処理しょり予測よそくサービスにほうんでみたんですけどね。すると、91%くらいの確率かくりつ裕希ゆうきさんが最高さいこう得票数とくひょうすうるって判定はんていたんですね」


 その生徒会員せいとかいいん二名にめい言葉ことばに、俺はおおきくいきいてげる。


「ああ……やっぱそうなんですか……裕希ゆうき先輩せんぱい、なんかうらでいろいろとひとのためにうごいてそうでしたものね」


 ちなみに、可憐かれんへのはじめての誕生日たんじょうびプレゼントをえらぶにあたって裕希ゆうき先輩せんぱいにお世話せわになった俺も、さきほど体育館たいいくかん投票所とうひょうじょにて、投票箱とうひょうばこれた投票とうひょう用紙ようしには、掲示けいじされていた裕希ゆうき先輩せんぱい名字みょうじである『毛利』といておいた。


 そんなことをおもかえしていると、鈴弥すずみさんが俺につたえる。


たちばなさんが二千万円にせんまんえん生徒会せいとかい寄付きふしたおかげで、予想外よそうがい激戦げきせんとなってしまいましたが、そこはさすがの裕希ゆうきさん、逆境ぎゃっきょうをむしろ利用りようして全校ぜんこう生徒せいとこころつかんだようなかんじなんですね」


 俺はこたえる。


「まあ、二千万円にせんまんえんなんてのは高校生こうこうせいとかの未成年者みせいねんしゃ普通ふつうじゃあつかうことなんかない、かなりの大金たいきんですからね……俺がうのもなんですが。それほどの大金たいきんあつかうのに不適切ふてきせつひとには生徒せいと会長かいちょうになってもらいたくなかったってのもあるでしょうね、多分たぶん


 すると、沙羅さらさんがかえしてくる。


「そうそう! それに裕希ゆうきちゃん、生徒せいと会長かいちょうになったら直接ちょくせつ予算よさん権限けんげんるえる学校がっこう公認こうにん部活動ぶかつどうだけでなく、いろんなひと水面下すいめんか活動かつどうしている非公認ひこうにん同好会どうこうかいにも、なんらかのかたち予算よさん配分はいぶんするみたいなことをってたんだよね!」


非公認ひこうにん同好会どうこうかいにも、ですか……でもそれってぶっちゃけ予算よさんりるんですかね? 二千万円にせんまんえんで?」


 俺がそんなふう憮然ぶぜんとしてかえすと、沙羅さらさんがこたえる。


「そこは、既存きぞん予算よさんわせて、不満ふまんないようにうまーいこと各方面かくほうめんからの要望ようぼう調整ちょうせいしてはからうみたいかな」


――やっぱあのひとそこえねぇ。


 どうても小学生しょうがくせいのようにしかえない、まる髪留かみどめでふたつのおげをったちいさな先輩せんぱい姿すがたあらためておもかべていると、毒舌どくぜつ気味ぎみ先輩せんぱい女子じょしである都築つづき鈴弥すずみさんがましたかお一言ひとこと


「まあ、それにかんしてはたちばなさんが追加ついか寄付きふをしていただければこれ以上いじょううことはないんですけどね」


 俺はかえす。


「……前向まえむきに検討けんとうしますが、期待きたいはしないでください」


――なんか、昨日きのう美登里みどりが俺にったことなおしみてーだな。


 俺がそんなことをこころなかおもっていると、鈴弥すずみさんがこんなことをう。


「それにしても、高梨たかなし生徒せいと会長かいちょうはある意味いみラッキーでしたね。もし選挙せんきょえらばれるのが今年度こんねんどでしたら、あの外見がいけんだけさわやかイケメンな変態へんたい生徒せいと会長かいちょうになっていたとは到底とうていおもえません」


「あははー! われてみればそうかもしれないよね! わたしたちと同学年どうがくねんだったら、高梨たかなし先輩せんぱいじゃなくて高梨たかなしくんだから、どんなかんじになってたのかな!?」


 そんな沙羅さらさんのあかるい物言ものいいに、鈴弥すずみさんがそのゆび女子じょしらしいつるつるのあごてて、あたまなかなにかをシミュレーションしているみたいな真剣しんけん表情ひょうじょうかえす。


高梨たかなしくん……コンビニで中華ちゅうかまんってきて、とかになってたかもしれませんね」


――相変あいかわらず、あの生徒せいと会長かいちょうあつかいひでーな。


 俺がそんなことをおも苦笑にがわらいをしていると、とある疑問ぎもんこころなかかんだのでまえ女子じょし生徒せいと先輩せんぱい二人ふたりたずねる。


「そういや、生徒せいと会長かいちょうした名前なまえってなんなんですか?」


 すると、沙羅さらさんと鈴弥すずみさんはおたがいにかお見合みあわせる。


 鈴弥すずみさんが沙羅さらさんにかおけつつくちひらく。


「そう、われましても……ね」


わたしたち二人ふたりとも、高梨たかなし会長かいちょうした名前なまえらないんだよね」


 そんなことを沙羅さらさんに、俺は再度さいどたずねる。


「……生徒せいと会長かいちょうですよね? そんなことってあるんですか?」


 すると、沙羅さらさんがこたえる。


「いや、本当ほんとうらないんだよね。した名前なまえ何回なんかいいたことあったんだけど、はぐらかされただけだったんだよ」


 俺はかえす。


「えーっと……でも、昨年度さくねんど生徒せいと会長かいちょう選挙せんきょ立候補りっこうほしてたんですよね? さっきのように投票所とうひょうじょ掲示けいじには名字みょうじしかいてませんでしたが、ポスターにならフルネームがいてたんじゃないですか?」


「いや……ポスターにも名字みょうじしかいてなかったんだよね」


 沙羅さらさんの返答へんとうに、俺はポカンとかえす。


本当ほんとうですか?」


 そして、鈴弥すずみさんがおのれのスマートフォンをして操作そうさし、俺に画面がめんせてくる。


証拠しょうこならありますよ。これが去年きょねん高梨たかなし生徒せいと会長かいちょう生徒せいと会長かいちょう選挙せんきょ立候補りっこうほしたさい候補者こうほしゃポスターの写真しゃしんです」


 鈴弥すずみさんがそうって俺にせてきたスマホの画面がめんには、たしかにあのたかくてさわやかなだが、空気くうきまない生徒せいと会長かいちょう立候補者りっこうほしゃポスターの様子ようす写真しゃしんとして表示ひょうじされていた。


 その立候補者りっこうほしゃポスターには、あの生徒せいと会長かいちょう一年前いちねんまえ姿すがたなのであろう写真しゃしんと、こんなフレーズが掲載けいさいされていた。


『俺の名は高梨たかなし げんきです!』


――本当ほんとうだ、名字みょうじ簡潔かんけつなキャッチフレーズしかいていない。


 俺がそんな感想かんそういだいていると、鈴弥すずみさんがくちひらく。


何故なぜだれにもした名前なまえおしえようとしないかがなぞで、未知みち領域りょういきなんですね」


 そんな言葉ことばに、ひらめきをた俺はこたえる。


「もしかしたら……した名前なまえが、だれにもられたくないキラキラネームとかなんじゃないですか?」


 すると、沙羅さらさんと鈴弥すずみさんはふたたびおたがいにかお見合みあわせて口々くちぐちしゃべる。


「おおー、なっるほどー! それならしっくりくるよね!」

皇帝カイザーとか、宇宙コスモとか、あるいはゲームにてくるようなモンスターの名前なまえとかなのかもしれませんね」


 そんなことを先輩せんぱい女子じょし生徒せいとたちに、俺はそれならばとげる。


ひとには、れないでいてしいものがひとつやふたつ、あるものですからね」


 すると、沙羅さらさんがあかるくべる。


「そうだよね! 鈴弥すずみちゃん、高梨たかなし先輩せんぱいした名前なまえかんしてははそっとしておいてあげておこうかな!」

「……そのほうさそうですね。せっかく卒業そつぎょうまであとすこしなんですから」


 天然てんねん沙羅さらさんと、ましたかんじな鈴弥すずみさんの使つかった返答へんとうに、俺はこころなしか表情ひょうじょうゆるめた。





 で、沙羅さらさんと鈴弥すずみさんとわかれ、俺が教室きょうしつもどると窓際まどぎわ一番いちばんうしろにある俺のつくえちかくにいつものように悪友あくゆう三人組さんにんぐみがたむろしていた。


 俺がもどると、すぐる開口かいこう一番いちばんこうった。


茶髪ちゃぱつほうエフだなありゃ」


「おめーは、むねでしかおんなれねーのかっつーの」


 俺が半笑はんわらいになりながら、身長しんちょうが181センチあるとっていたヒョロながノッポのすぐるかる見上みあげつつそうげると、すぐる得意とくいげなかおになってかえす。


なにうか啓太郎けいたろう観察眼かんさつがんがあるとでもとえ。ふくうえから乳房ちぶさのサイズを推測すいそくするのは暗号コードしめされた宝物たからものさぐてるようなもので、詳細しょうさい情報じょうほう分析ぶんせきたしかなデータ解析かいせき、そしてそれらの蓄積ちくせき実績じっせき必要ひつようなのだぞ」


宝物たからものさぐてるって……トレジャーハンターにでもなったつもりかよ」


「いいや、どちらかというと追求ついきゅうしているぶん探検家たんけんかというよりは芸術家げいじゅつかちかいかもな。レオナルド・ダ・ヴィンチのえがいたウィトルウィウスてき人体図じんたいず絵心えごころがあったらおれいてみたいものだ。もちろん女体にょたいでな」


「おまえはダ・ヴィンチにあやまれ」


 俺がそんなみをすぐるれると、とうすぐるからこんなかえしをける。


「しっかし啓太郎けいたろう貴様きさま大金持おおがねもちになってからどんどんおんなまわりにあつまってくるようになったな。いくらかね目当めあてのおんなばかりとはいえ、正直しょうじきって不格好ぶかっこうだがすこにくたらしいぞ」


 すると、小柄こがらさとしがやれやれといったかんじでこたえる。


「それはうんだからしゃーねーって。まー、啓太郎けいたろう学校中がっこうじゅう人気者にんきものになってからオレたちもクラスのなかじゃけっこうおこぼれもらってるほうだからいーんじゃねーの?」

 

 そして、大食漢たいしょくかんふとっちょの高広たかひろくちひらく。


「そうだね。啓太郎けいたろうくんには池袋いけぶくろでの高級こうきゅう焼肉やきにくとかピザとか、いもうとさんの誕生日たんじょうびパーティーでつくった御馳走ごちそうとかもべさせてもらったし。それで、三学期さんがっきのクラスかい高級こうきゅう海鮮かいせん料理りょうりなんでしょ? もうたのしみでたのしみで」


 そんな悪友あくゆうのいかにもいしんぼうらしい発言はつげんに、俺は気持きもちをゆるめながらこたえる。


高広たかひろ、おめーはまったくもってものにはがねーよな。ちゃーんと高級こうきゅう海鮮かいせん料理りょうりのクラスかいかんしては俺が責任せきにんをもって新宿しんじゅくあたりのみせさがして予約よやくしといてやるから心配しんぱいすんな」


 俺がそんなかんじで軽口かるぐちたたき、俺たち悪友あくゆう男子だんし仲間なかま四人よにん仲良なかよわらった。


 そんなふうに、俺たちを和気わき藹々あいあいとした空気くうきつつんでいた、ある生徒せいと会長かいちょう選挙せんきょ当日とうじつのことであった。



 

 なお翌日よくじつ全校ぜんこう放送ほうそうで、あたらしい生徒せいと会長かいちょう選出せんしゅつされたことが、全校ぜんこう生徒せいと相手あいてつたえられた。


 勿論もちろんことそのあたらしい生徒せいと会長かいちょうというのは、あのちいさなからだおおきなうつわあわった二年生にねんせい女子じょし生徒せいと毛利もうり裕希ゆうきという先輩せんぱいであった。




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