第10章 秘密を守るためには何をすればいいのだろうか?

第64節 スチュアート・リトル





 美登里みどりがコミックCDの声優せいゆう握手券あくしゅけんたったことを俺につたえてから、一週間ちょっとが経過けいかしていた。


 一月下旬にある今月こんげつ最後さいごの土曜日の昼過ぎに、俺と美登里みどり兄妹きょうだいは二人してタクシーに乗車じょうしゃして池袋いけぶくろにある目的地もくてきちへとかっていた。


 もちろん、その目的地もくてきちとは美登里みどり愛読あいどくしている漫画まんがのコミックCDでやくえんじている、声優せいゆうさんとの握手あくしゅ会場かいじょうである。


 どうやら、俺がコミックCDを買ったあの池袋いけぶくろにあったオタク向けコミックけい専門店せんもんてん隣接りんせつするビルが今回こんかい声優せいゆうさんとの握手あくしゅイベント会場かいじょうであるとのことであった。


 タクシーの後部こうぶ座席ざせきには、それぞれシートベルトをめて俺と美登里みどりならんですわっており、余所よそきのおかけよう衣服いふくけてそのうえにベージュいろ子供用こどもようコートを羽織はおったいもうとは、さきほどからワクワクとしたかんじでおのれのスマートフォンを操作そうさしている。


 メイドのかなでさんからもらったあおいマフラーを首周くびまわりに巻いている俺は、ふたつのリボンでった座席ざせきまでとどながいツインテールをらした、となりにいるいもうと美登里みどりに話しかける。


美登里みどり、ちょっといいか?」

「……ああ、どうしたのお兄ちゃん?」


 いもうとが俺の方をもせずにこえかえしてきて、そのまま俺はたずねかける。


「あーっと……池袋いけぶくろからの帰りに、別のところに寄ってってもいいか? 銀座ぎんざ有楽町ゆうらくちょうあたりに」

「……別にいいけど、なにか買いたいものでもあるの?」


 俺は応える。


「ちょっと、萌実めぐみへの誕生日たんじょうびプレゼントを百貨店ひゃっかてんあたりでえらぼうかと思ってな」


 そんなことを言うと、美登里みどりは横顔を見せたままジト目で俺の方を見てくる。


「……お兄ちゃんって大金持ちになってから、なんかそういうの実直じっちょくっていうか、マメになったよね。それとも何? 萌実めぐみお姉ちゃんもお兄ちゃんのハーレムメンバーに入れるつもりとか?」


「だーかーらー、ハーレムとかなんか、これっぽっちも作るつもりなんかねーっての。小学生以前からしたしんできた幼馴染おさななじみへのならいっつーか普段ふだん習慣しゅうかんだ、習慣しゅうかん


 俺がそんなふうこころあせをかいて釈明しゃくめいするも、いもうと相変あいかわらず横顔よこがおけたまま側目そばめにて視線しせんおくってくる。


 もちろん、俺は子供の頃からの幼馴染おさななじみである萌実めぐみをハーレムメンバーに入れるつもりなんかないし、そもそもからしてハーレムなんぞを形成する予定よていも少なくとも今のところは一切いっさいかんがえていない。


 俺が数日後すうじつご、1月31日の萌実めぐみ誕生日たんじょうびなにかしらいものをプレゼントしようとしているのは、別に下心なんかではなくて幼馴染おさななじみたいする俺なりの流儀りゅうぎだ。


 それに、萌実めぐみたいしてではなくクラスメイトにたいする態度たいどにしても――


 一学期いちがっきに、萌実めぐみが俺にたいして取ってしまった態度たいど端緒たんしょとして、ひょんなことからクラスメイトにストーカーの冤罪えんざいをかけられるハメになってしまったことも、俺はすっかりとゆるしてみずながした。


 もとからを辿たどれば、いもうとにやりりをせたかったがためにラインで大事だいじはなしをしようとした俺に責任せきにん一端いったんがあったわけだし、萌実めぐみ悪意あくいがあったわけではなくて臆病おくびょうであったがゆえ事態じたい深刻化しんこくかしてしまっただけだし、クラスのみんなも萌実めぐみまもろうとしてくれただけだし、俺はもう一切いっさいにしていない。


――ゆるすことはむずかしいが、ゆるすことによってられる利益りえきはそのむずかしさにあたいする。


 そういう理由わけで俺は、クラスメイトの面々めんめんたいしては一学期にあった凄惨せいさん出来事できごと過去かここってしまったたんなる過誤かごということにして、すっぱりと清算せいさんしてったのだ。


――人間にんげんだったら、だれだっておのれそしりたくてしたい黒歴史くろれきしがある。


――だが、現在げんざいおのれなにより肝要かんようなのはその過去かこゆる寛容かんようさなのだ。


――わすれることはできなくても、ゆるすことだったら不可能ふかのうではない。


――それはほかだれのためでもない、自分じぶん自身じしんらの精神せいしん衛生上えいせいじょう健康けんこうのためだ。


――いや過去かことらわれてしまっては、なにより現在げんざい自分じぶんそこなうことになってしまう。


――過去かこわすれられない。けどわすれないがゆるす。


 俺はそうかんがえ、無理むりすることなく自分じぶん自身じしん納得なっとくさせていた。


 高校こうこう一年生いちねんせい身空みそらで三百億円をえるような資産しさんつ億万長者になってしまってからというものの、精神せいしん強制的きょうせいてきにギリギリの状態じょうたいかれ、この16歳という年齢ねんれいには似合にあわずにこころ否応いやおうなしにびたかのように老成ろうせいしてしまったかのような気がする。


 そんなことをおもっていると、埼玉県さいたまけん大宮おおみや駅近くから池袋いけぶくろ目的地もくてきちまでのタクシー行程こうていわりにかる。


 池袋いけぶくろのある豊島区としまくに入ったタクシーが、オタク向け大規模だいきぼアニメ専門店せんもんてんまであとちょっとの大通おおどおりで停車ていしゃし、一万円をえるタクシーだい提示ていじしてきたので、俺は財布さいふからデビットカードを取り出し、その料金りょうきん精算せいさんした。


 いもうと一緒いっしょ歩道ほどうり、歩行者ほこうしゃうビルなら繁華街はんかがいをしばらくあるいたところ、男性だんせいアニメキャラクターが何人なんにんえがかれた看板かんばんかかげられた、俺が以前いぜんおぼえのあるおおきなおおきなビルディングのもとにたどりいた。


 そのビルの下にはカプセルトイのマシーンがいくつもかれた駐車場ちゅうしゃじょうくらいのひろさのスペースがあり、様々さまざまなオタクふう女性じょせいひとたちがひつじれをなしているかのように出入でいりしている。


 その天空てんくうかって屹立きつりつするビルのもと、カプセルトイ広場ひろばにて、いもうと美登里みどりまえにあるおおきなビルを悦楽えつらくひたっているかのような表情ひょうじょううれしそうに見上みあげる。


「……おお、キター! 池袋いけぶくろ乙女おとめロード! その中心地ちゅうしんちにそびえ淑女しゅくじょ社交場しゃこうばにして聖地せいちAnimaiteアニマイト 池袋いけぶくろ本店ほんてん!」


 そんなことをさけ中学生ちゅうがくせいいもうととなりで、俺はあにとして注意ちゅういうながす。


まちのどなかで、奇抜きばつ大声おおごえげるんじゃありません」


 すると、いもうとほほふくらませてくちをすぼめてからかいげな表情ひょうじょうになる。


「……えー、ここにればわたしのようなオタク女子ガールがハイテンションにならないのなんて無理むりだよ。ここは、日本にほん全国ぜんこくのアニメファン女子達ガールズにとってみれば、女子じょしけサブカル文化ぶんかになとしてふたつとない聖地せいちなんだよ? おにいちゃん?」


 ながいツインテールがみいもうと美登里みどりがそうってくるので、首周くびまわりにあおいマフラーをいている俺はそのまえにある、かつておとずれたビルをあらためて見上みあげる。


「へー、ここってそんな有名ゆうめい場所ばしょだったのか。俺はオタク界隈かいわい話題わだいとか常識じょうしきとか、そーゆーのはまったくっつーか、全然ぜんぜんらねーからな」


 ここは、俺が美登里みどりへの誕生日たんじょうびプレゼントである、声優せいゆう握手券あくしゅけんたったあのコミックCDをったオタクけアニメ専門店せんもんてんであるのだが、そんなよしある場所ばしょだったということはらなかった。


「……ま、一般人いっぱんじんのお兄ちゃんにとっては、こっちがわのことにかんしてのくわしい文化ぶんか知見ちけんらないのなんて当たり前だけどね」


 そんなことをいもうとに、俺はたずねる。


「俺がコミックCDを買ったのってここなんだけどな……もしかして、ここでったら声優せいゆう握手券あくしゅけんが当たりやすいってのもあるとかか?」


「……それはわたしらないけど……声優せいゆうさんとの握手あくしゅ会場かいじょうによって、地域的ちいきてきかたよりがまれるように調整ちょうせいして抽選ちゅうせんされてるってうわさもあるんだって。だから、おな書店しょてんおなじコミックCDをったひと同士どうしが、握手あくしゅ会場かいじょうでまた出会うってのもよくくこと……らしい」


 そんな妹の言葉ことばにより、俺の脳裡のうりにかつてこのアニメショップで遭遇そうぐうしたゴスロリ服を着た婦女子ふじょし二人組ふたりぐみ、おそらくは二人とも腐女子ふじょしだったのであろうBLボーイズラブ同人誌どうじんしを買っていたそれぞれくろしろ衣装いしょうたゴシックロリータ少女しょうじょ二人組ふたりぐみ様子ようすが浮かび上がる。


 二人とも、ぐせであるかのようなおなかたちがったおおきなアホあたまうえからぴょこんとた、それぞれ漆黒しっこく純白じゅんぱくのふりふりのロングスカートゴスロリ服をまとった、なかさそうな以為おもえらくは姉妹しまいだったのであろう少女しょうじょたちの姿すがたであった。


 一人は、こしくらいまでとどなが黒髪くろかみを後ろに伸ばし、あたまにフリルでかざられた黒いヘッドドレスをつけた、けられた前髪まえがみからおでこが見えていた、背丈せたけ美登里みどりと同じか少し低いくらいの漆黒しっこくのゴスロリ服を身に着けた、もう一人にお姉ちゃんと呼ばれていた少女しょうじょ


 もう一人は、ボブカットのショートヘアー黒髪くろかみに小さな白いフェルトハットを取り付けた、そのお姉ちゃんより少し背が高い、純白じゅんぱくのゴスロリ服を身に着けた、ゾクリとするようなうつくしい顔立かおだちをしたひーちゃんと呼ばれていた少女しょうじょであった。


――あの二人ふたりも、たしかこの店舗てんぽで俺とおなじコミックCDをっていたよな。


――だったら、もしかしたらこの会場かいじょうでもう一回いっかい出会であうかもしれねーな。


――ま、もしそうなるとしてもあやしくもないっつーかなん不思議ふしぎもねーか。


 俺はビルを見上げながら、呑気のんきにそんなことを思っていた。


 隣にいるいもうとやると、美登里みどりはそのひだり手首てくびにつけた腕時計うでどけい時間じかん確認かくにんしているようであった。


「……まだ、握手会あくしゅかいまでは時間あるね。グッズとかいにこう」


 そんな言葉ことばはっしている美登里みどり左腕ひだりうで装着そうちゃくされた小さくシンプルなブルーグリーン色の腕時計うでどけいが、透明とうめい水晶すいしょう太陽たいようひかり乱反射らんはんしゃするかのようなかんじでキラリとひかる。


 俺はたずねる。


「その腕時計うでどけい、もしかして Amazinアマジン で買ったのか? たかそうだけど」


「……そうだよ、けっこういいやつ。盤面ばんめんにダイヤモンド入ってるし」


 そんないもうとこえきながら、俺はふたたかお正面しょうめんけつつ声を出す。


「ふーん、ダイヤモンドねぇ……っておい!」


 注意をしようと再び妹の方を向くと、そこにはただ広場のざわめきがあるだけだった。


 念願ねんがん聖地せいちいもうとは、あたらしいあそにやってきた小動物しょうどうぶつのように一足早く、その大勢おおぜいの女性が出入りしているビルへとっていた。


 いもうとがその長いツインテールを揺らして俺に対して振り向きつつ、こえをかけてくる。


「……なにしてんの? お兄ちゃんもはやくきなよ」


「いやいやいや! そーじゃない! そーじゃない! 美登里みどり、おまえ浪費ろうひグセついてんぞ!」


 すると妹は、きまり悪そうな顔になって一人でビルの中へ飛び込んでいった。


 このカプセルトイ広場ひろばに一人残された俺は、深いため息をつきあたまかかえたいような気持きもちでアスファルトに視線を落とす。


――ったく。


――いくら俺が、300億円をえる大金たいきんを持つちょう大金持おおがねもちになったからって。


――物欲ぶつよくのままにかね使つかっていいってわけじゃねーんだぞ。


 そんな感じで放蕩ほうとう気味ぎみいもうと将来しょうらいたいする心配しんぱいこころいだきながら、俺はあきれた足取りでオタク女性の聖地せいちと言われたその建物たてものの中に入っていった。





 さて、美登里みどりのオタクグッズの買い物に付き合って小一時間こいちじかん経過けいかした。


 声優せいゆうさんとの握手会あくしゅかいがそろそろ始まる時間帯になって、俺たちはそのアニメ系専門ショップのとなりにある大きなビルに移動いどうした。


 美登里みどりはなしによると、このビルは元々もともと東京とうきょう豊島区としまく所有しょゆうするビルだったのだが、Animaiteアニマイト と呼ばれるその専門店が数年前すうねんまえ買収ばいしゅうしてイベントなどを展開てんかいする場所ばしょ改装かいそうされたのであるらしい。


 妹と一緒にエレベーターで上昇して、かなりの人がいる握手券あくしゅけん当選者とうせんしゃ待機たいきするホールに入ったところ、おぼえのある、以前いぜんにアニメショップの階段かいだんにてまえあしすべらせて俺のほうっこちてきた少女しょうじょこえみみに入った。


「あ、ああーっ!! おにいさん? おにいさんですよね!?」


 そのこえのした方向ほうこうを見ると、がったおおきなアホあたまうえからそろってした、なかさそうなフリフリのロングスカートゴスロリふく二人ふたり姉妹しまいがそこにいた。


――ああー、やっぱりいたかー。


 俺はとりわけ意外いがいにもおもわず、そんなことをただ漠然ばくぜんかんがえていた。


「……なに? おにいちゃん、このるからに美少女びしょうじょおんないなの?」


 ジト目でいもうとたずねてくるので、俺はこころあせをかきつつ内心ないしんあせりながら返す。


「ああーっと、 CD を買ったに階段から落ちてきたのを受け止めたことがあってな」


 すると、そのゴスロリ少女しょうじょ二人組ふたりぐみのうち純白じゅんぱく衣装いしょうほう肩上かたうえくらいのながさでりそろえられたショートボブカットの黒髪くろかみに小さくしろいフェルトハットをけた女の子が近寄ってきて両拳りょうこぶし胸元むなもとにぎって、かたむけてくる。


「わーっ! 感動かんどうです! 本当ほんとうにおにいさんにまたえるなんて! じつはぼく、今日きょう握手会あくしゅかいでもう一度いちどえるんじゃないかなーってなんとなく思ってたんですよ!」


 すると、俺の隣にいる美登里みどりが反応をする。


「……ぼくっ……だと?」


 その純白じゅんぱくゴスロリ服の少女が、妹に視線を移す。


可愛かわいらしい女の子さんですね。お兄さんのいもうとさんですか?」


 その言葉に、俺は少し困りつつも応える。


「ああ、そうそういもうと名前なまえは……えーっと」

「……うぐうぐ、うぐうぐってのがハンドルネーム」


 いもうとがあからさまに俺の言葉ことばさえぎるかのように、咄嗟とっさくちす。


――そうだよな。


――こういう場面ばめんでは、実名じつめいをあまり名乗ったりしないんだよな。


 以前に妹から、こういうネット上の趣味の集まりでは本名を必要以上にさぐるような言動げんどうは、いちじるしく失礼しつれい行為こういたるのだということを教えられた。

 

 すると、目の前の純白じゅんぱくゴスロリ衣装いしょうのショートボブカットアホ毛少女が微笑ほほえんで美登里みどりに声をかける。


「そうですか、よろしくおねがいしますね、うぐうぐさん。……それで、お兄さんの名前をいてもよろしいですか?」


「ああ、俺は太郎たろう。ただの太郎たろうって呼んでくれたらいいよ」


 そんな俺の言葉を聞いて、純白じゅんぱくのゴスロリ少女が俺のかお真正面ましょうめんにじっと見定みさだめつつ、その美少女びしょうじょかおにあるやけにおおきなひとみ若干じゃっかんかがやきをせる。


「お兄さんの名前、太郎たろうさんとうんですか……ぼくは姫子ひめこといいます、どうかよろしくお願いします」


――姫子ひめこちゃんか。


――姫子ひめこだから、ひーちゃんってばれてたわけだな。


――ま、おそらく本名じゃねーんだろーけど。


 俺がそんなことを思っていると、姫子ひめこちゃんがどことなく顔を赤らめつつ身を乗り出して、今回の声優握手会の主題たるマイナーな漫画の内容について質問してくる。


「やっぱり、お兄さんもSOWソウのファンなんですか? お兄さんは登場人物の中では誰が好きなんですか? ぼくが一番好きなのはスサ師匠ししょうで、スサ師匠ししょうがナムくんにいのちあずけて背中せなかせるシーンが一番好きでして……」


 と、そこでゴスロリ少女二人組のもう一人、漆黒しっこくのゴスロリ服を着て後ろになが黒髪くろかみばし、頭頂部とうちょうぶくろいフリフリのヘッドドレスを装着そうちゃくしたやはりアホ毛が頭の上からぴょこんと飛び出た小柄こがら細身ほそみ少女しょうじょが、姫子ひめこちゃんのうでをそのでしっかりとホールドする。


「はいはい、ひーちゃんそこまで、そこまで。あまりしょっぱなからグイグイいくとお兄さんにきらわれちゃうよ」


 そんな淡然たんぜんとした言葉を発したのは、この姫子ひめこちゃんにお姉ちゃんと呼ばれていた、けられた前髪まえがみからおでこがのぞいているロングヘアーなもう一人の少女であった。


「それはいやだよ、お姉ちゃん」

「じゃあ、ちょっと落ち着かなきゃ。いい子だから」


 ゴスロリ姉妹がそんなやりとりをわし、そのお姉ちゃんっぽい漆黒しっこくのゴスロリ服の少女が俺たちにたいしてりんとした表情ひょうじょうせて他意たいのない声をかける。


「じゃああらためまして自己じこ紹介しょうかいしなきゃね。アタシのハンドルネームは軒端月のきばづきで、こののおねえちゃん。よろしくね、太郎たろうくんにうぐうぐちゃん」


 そんなことをめたかおう、美登里みどりおなじくらいの背丈せたけ小柄こがら少女しょうじょは、自身じしんいもうとの目の前で精一杯せいいっぱいねえちゃんらしく振舞ふるまおうとしているのだと、少なくとも俺は感じていた。



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