第46節 蒸気船ウィリー
クリスマスが
今日は十二月の二十六日。
先日の二十五日にパティスリー・ソレイユでの短期アルバイトを無事に終え、
そしてもちろん俺の隣には、俺がアルバイトをするきっかけとなった張本人が歩いている。
「しっかしよー、ボンボンのクセして
「けっこう大変だったけどな。ま、ちょっと本気出せばこれくらい」
俺はそんな
そしてもちろん、冬の街を
俺たちの
話を聞いてみると、
ま、なんだかんだで
「ところでさー、
「ああ、あっけど? 今度こそカラオケか?」
「実はアルバイト先のご主人さんがな、
俺がそんなことを言うと、
「マジで? ケーキ
俺は返す。
「ああ、俺は別にいいんだ。何より、
すると、
「いや……でもよー……
そんな
「俺はもうそのご主人さんに、ケーキは
すると、
「ま、そーゆーことならしゃーねーか。付き合ってやらぁ!」
そんな感じで、
さて、
――
まあ、そんなことは取り立てて言う必要もないので、俺はとりあえず
カランカラーン
パティスリー・ソレイユの大きな正面ドアを開けると同時に、ドアに付けられた
そして、
「いらっしゃいませーっ!! その
俺は、少女チックなウェイトレス制服を着た
「ああ、この人が
すると、後ろからついてきた
「ちーっす」
「わーっ!! カッコいい女の子ーっ!!」
そして
「じゃーさっ、どれでも好きなケーキ選んでよっ!! どれも
そんな様子に、
「マジで、好きなの選んでいーのかよ?
「ああ、本当にいいってば。選んで選んで」
俺がそう言って
「えーっとよ……じゃーこれとこれと……あと
そんな感じで、
ケーキボックスを用意されたところで、店番の
「じゃっ! これどーぞ!」
「あー? あんだこれ?」
そのチケットを受け取りつつ
「
すると、そんな予想していなかったのであろう展開に、
「くじ引き?
「そーそーっ!! 一応、
そんな
「引いてみたら? せっかくだし」
「ま、だったら引いてみっけどよ」
ケーキボックスをその場に残して、どことなく決まり悪そうな顔の
そして、パティスリー・ソレイユの二階スペース、コーヒーと一緒にパンやケーキを
そのハンドベルが置いてあるテーブル台の上にある
「
「福引会場はこちらとなっております」
そんな
そして、
「ま、こーゆーのってたいてーロクなんあたんねーんだよな」
ガラガラガラ
そして、ポトリと玉がひとつ、受け皿の上に転がった。
その玉の色は、キラキラ光る
「ん?
そして、
リンリンリンリーン
「
「おめでとうございまーす!!」
パチパチパチパチ
そんな
そして、
「
「これ、なんすか?」
そんなヤンキーっぽい
「
「おおぅっ!!」
「って……えっ!!?
本当は
「よかったじゃん、
俺がそんなことを言うと、
「……まさかとは思うけどよー。
ぎくり。
「っつーかさ、話がうますぎんだよ! もしジョーダンとかだったらブッ
すると、
「その
そんな声を聞き、
その封の中に入っていた二枚の券には、
「……っ!? マジじゃねーか!? しかも二枚!!?」
そして、
そこで俺はようやく、このプリン頭の
――やっぱりそうだ。
――
――どことなく俺の親友である、
二枚あわせて二十万円近くすると
内側から『準備中』の文字プレートが掲げられた洋菓子店のドアを開け、
「ご
「イイってことデース!!」
「
今、
そして、その
この
そして今日は実は、パティスリー・ソレイユは定休日である。
お店が開いている時にはいつもプレートが『営業中』の面を見せて扉の内側からかかっているのだが、先ほどは他の人が間違って入らないようにと、プレートそのものを取り外しておいてもらっていたのだ。
俺はただ億万長者バレをしないまま、
もちろん、あの
――
俺は
後片付けをしてくれている
「じゃあこれ、
この封筒の中には、俺の
しかし、
そして、近くにいる
「
俺がきょとんとすると、
「
そんな
俺はたどたどしく言葉を出す。
「えっと……でも、お店まで使わせてもらって、何かお礼はしなきゃいけないと思うんですが……」
すると、下の階から二人の
その様子を見て、
「デハ、コーしましょう! リンナ!
すると、階段を登りきった
「えっ!? だったら船に乗って、南の島に連れてってもらいたいなーっ!!」
そんな娘の声を聞いて、
「と、イウわけで、
――え?
「危ない目には合わさないでね?」
――ええーっ!?
――俺、二十万円なんかよりずっと凄いもん背負わされたぞ?
そんなことを思わざるを得なかった。
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