第41節 運動靴と赤い金魚
週末の土曜日、
そのことを
そして、
だけど、
だからこそ、高校生になって初めて男女共学の学校に入ることになって、わざと女性っぽさを主張するようなスタイルを選んだのだという。
つまり、あいつのあの
――あいつが、本当は
――まさかあの、俺と一緒に
そんな俺の心の中には、俺と一緒に
――本当に。
――人の本心なんて、わかんねーんだな。
俺は
――そういうもんなのか?
それから
というのも、来年の一月に選挙によって決まる次の生徒会長というのは来年度、高校内で絶大な権力を振るえると見込まれているかららしい。
理由はいうまでもない。
俺が生徒会を通じて学校に寄付した、二千万円という大金の
来年の二月ごろから各部活動の代表者は、
そして、その
つまり、生徒自治の代表者である生徒会長が、その
そして、
――それに、おそらくは学校内で
――だからこそ
――やっぱり、あの人は敵に回さないようにしよう。
そんなことを思って、
文化祭が終わってからしばらくして、俺は
それは、俺が
その質問が頭の中で
「第二問。この世の中にはお金持ちになれる人と、お金持ちになれない人がいますが、その一番の違いは何でしょうか?」
そこらへんにいる
なぜならば、この人間社会という
そして、持っているお
これも、いままでずっと俺が考えてきた
しかし、この電車内の窓から
目の前の
そして、それら不動産が使用者以外の
――いくら会社とかで
――そりゃそうだ。人間は文明社会にいる限り、お
――どこかに住むにも、何かを食べるにも、服を着るにも、必ずお
――だからこそ、この世界に生きる人たちはみんな必死にお
――だけど、それらのお
――そして、それらのお
――結局この世界は、元々からお
――いくら
――お
そこまで考えたところで、
――お
――お
――でも、
――この世に、
――けれども、世界中に
――それともその人たちは、全員が全員、数百億円の宝くじに当たるような超強運の持ち主だったのか?
――お金持ちになれる人と、なれない人の違い?
――いったい、何なんだ?
もう億万長者になってしまったので考えなくてもいいはずのその
電車で
何か着信があったのかと思って画面を開いてみると、俺のスマホにインストールされている『パラサイト』というアプリアイコンに、1件の更新があったということを表す数字が浮かび上がっていた。
俺は、その『パラサイト』というアプリをタップして開いて、中身を確かめる。
その画面には、たった一人の登録者として『Yuri』というアプリネームのメンバー表示があり、こんな数値が単位と共に示されていた。
『方位271° 西 295メートル』
つまり、二週間前の日曜日に
ちなみに、俺の設定していたアプリネームは『K-TARO』となっている。
俺がスマホを水平に回転させると、矢印も回転し、コンパスのように必ず一定の方角を向く。
――
駅を出た俺がその方角を見ると、
――向こうも、気付いたのか?
そんなことを考えたが、俺はそこで方向と距離を示している表示の隣に『通知』という名前のスイッチボタンが用意されているのに気付いた。
そして今、
――あー、そっか。
――このスイッチを ON に入れると、こっちの
――
そう
すると、
こちらに気付いて、まっすぐこちらに向かっているということだ。
――せっかくの俺の事を億万長者だと知らない、貴重な知り合いだ。
――また会ってみるのも、悪くないかな。
そんなことを思いつつ、俺も
その、いかにもヤンキーっぽい
その
なんでも
また、彼女も今年の四月に高校生になったばかりであり、俺と同じ高校一年生であることがわかった。
二週間ほど前に、ガラの悪い不良二人に
そんな感じで、俺は
――
そんなことを思いながら、とある小物ショップにて人間のドクロをかたどったアロマキャンドルを手に持って掲げていると、
「でもよー、その
――
「いや、
「なんだよ!
「まー、
そんなやり
そういった店には、女子高生などの
俺が
――こういう店、あんまり慣れてないのかな?
――ま、ヤンキーだからな。
そんな身勝手なことを思いつつ、色々な店を渡り歩いていると、途中でファンシーグッズショップに
少し興味が沸いた俺は、
そして色々と
また、俺の頭の中では、妹の
――そういや、俺は大金を自分自身のためにはあんまり使ってなかったな。
――少しくらいは、無駄遣いしてもいいか。
俺はそこで、すぐ近くにいるヤンキー少女、
そして、頭の中で考える。
――
――完全に隠し通そうとしたら、多分どこかでボロが出る。
――親がそこそこお
そこまで考えた俺は、
消費税を入れて三万円を超える金額が
靴を買い終わったあと、
そして、俺に対して尋ねかける。
「
俺は返す。
「あーっと、親がそこそこ
――
アメリカの宝くじが当たってから、両親は二十億円という大金をゲットしているのである。
――
すると
「かーっ! なんだよ! ボンボンかよ! こん
「たまたまラッキーだったってだけだよ」
そんなやり取りをしながら、買ったばかりのスニーカー箱の入ったプラスチック袋を
俺の隣を歩く
「いーや、
「あくどい
「そっか?
その
――
――確かにそれは、正しいのかもしれない。
――お
――誰かが
そして、
――ちょっと
――やっぱ
――学校でも、みんなが俺をちやほやしているのは
――本当は、
そんな、暗い気持ちになるようなことを考えた俺は大きなため息を吐き出す。
すると、隣を歩いている
「どーした
「あーっとな……色々とこっちにも思うところがあるんだよ」
「ふーん? ボンボンのクセに悩みなんかあるんだな?」
――ボンボンのくせに、か。
――
俺がそんな暗い気持ちになっていると、ただでさえ暗かった天から声が鳴り響いた。
……ゴロゴロ……
……ゴロゴロ……
――ん?
――ってことは、すぐに雨が降るはず――
俺がそう思って空を見上げた瞬間のこと。
ポタリ。
そして、コップに溜まっていた水が溢れてきたかのような加速度的な増加。
ポツ…………ポツ……ポツ
パッパッパパパパ
ドザアアアアアアアア
どこかに
俺と、隣を歩く
「
俺は、
――
――だったら、
数十秒ほどずぶ
その狭いガード下の向こうには横断歩道があるのが見え、その更に向こうには
十二月に入ったばかりの時期に降る冷たい雨は、道路をひとしきりに叩き続けていた。
そして今、この
びしょ
「ったく、ゴリラ
「
「……っ! どーでもいーだろ、んなこたよ! あーあ、ずぶ
「そーだな。
「……」
「
俺が尋ねると、
「なー
――え?
「えーっと、金持ちだって事がわかったから?」
「んなわけねーだろ。それだけだったらここまで
ガード下の外からはしきりに雨粒がアスファルトとコンクリートに叩きつけられる音が
十二月の冷たい空気の中で、俺たちは二人きりだった。
そして、身体が冷たい。
ずぶ
――なんで、こんなときにまで考えなきゃいけないんだ?
――できれば、すぐにでもタクシーを呼ぶなり、喫茶店に入るなりでも――
だが、俺は考えていた。
考えなくてもいい、その問いを。
――
そこで、俺の
――俺が考えてあげるってことが、何よりのプレゼント、か。
――多分、
――でなきゃ、
――おそらく
そして言葉を
「……じゃあ
――多分、正解のはず。
すると
どうやらこれでよかったようだ。
俺は
それよりも、十二月の冷たい雨は確実に俺の体力を奪いにかかっている。
俺はポケットからスマートフォンを取り出し、動作確認をする。
――良かった、
暗証番号を入力してロックを
「
『ハイ、150分後には
「あと二時間半? まいったな……このままじゃ
俺がそんなことを
「
俺が
「ああ! 走れるけど!?」
「だったら
そう言うが早いか、
「ちょっと! 待てよ! どこ行くつもりだよ!!」
俺もそう叫び返して、雨よけのためにプラスチックバッグを頭上に掲げて後を追いかけた所、
「
俺は、
そして、俺の頭の中では
――まさか、こないだ
――
そんな俺の
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