第39節 アリス・イン・ワンダーランド
11月28日、火曜日。
わがままで勝手気ままな妹、
学校からなるべく
夕方の日の光が
俺は妹に声をかける。
「
「……ああ、お
長い黒髪を二つのリボンでツインテールに
そして、借りられてきた
「……
「久しぶり、
だから
そして、
「やっほー、ミドリ。変わってないねー」
「……え?
そんな
「
そんな
「……
そしてもちろん、その後を
「もー、
リビングを
その後を、
そんな、リビングで展開される
「たっだいまー! 今日は部活行かないで早く帰ってきたよー! あれ!?
その声は当然のごとく、
大学帰りの
「
「あー、やっぱり
そんな姉ちゃんの目の前に、助けを求めるように妹の
「……お姉ちゃん、お姉ちゃん、助けて。知らないギャルがいる」
そんなことを言って
「へへっ、ミドリっち
そんな嬉しそうな
「あれっ! レンくんも来てたのー!? ひっさしーぶりー!!」
「えっ!!」
「……
「そりゃまー、最初見たときにねー。レンくん、言って欲しくなかったっぽかったから
その言葉に、
「あーもー、アスカ
すると
「……レンお
むにゅ。
むにゅ むにゅ むにゅ。
「……
リビングで展開される妹の
「あはは、
「……それでなんでここまで大きくなるの? もしかして好きな人のことを想って自分で何かエッチなことをしてたとか?」
――
胸を揉まれながら顔を真っ赤にした
「そんなことを言うミドリっちには、こうだー!!」
「……ちょっまっ、ちょっまっ、くすぐったい! やめて!」
「じゃ、俺はパーティールームでみんなの手伝いに行ってくるよ」
「あー、いってらー」
下の階の共用パーティールームでは、悪友三人組と
――なんせ、俺が
――
そんなことを考えつつ、俺は下のフロアへと向かった。
それからまたしばらくの
二時間ほどが経過して、既に時刻は午後7時少し前くらいになっている。
共用パーティールームにて行われる誕生日パーティーの準備は、既にきっちりと整えられている。
会場を
そして何より、テーブルの上に置かれているいくつもの皿に盛り付けられている数々の料理。
クリームソースのパスタ、イベリコ豚のアスパラ炒め、アボカドの生ハム巻き、えびのパエリア、トマトのモッツァレラチーズ添え、牛ミンチのロールキャベツなどなどの、種々多様の
これらの料理は全て、コックコートを着た
メイド服を着た
俺も一応、白いコックコートを着て
――人間、意外なところに意外な才能があるもんだ。
そんなこんなで準備が整って、俺はもちろん悪友三人組にもパーティーに参加してもらうつもりだったのだが、三人は別にいいと言って帰ってしまった。
「カラオケとかゲーセンとかで色々と
「はっ!
「
――なんつーか、俺には
――
そんな
ちなみに、
あとは、テーブルの中央のぽっかりと空いたスペースにこれから
そんなことを
電話を取ると、電話口の向こうのコンシェルジュさんにより、俺に対して来客があることを告げられた。
そして俺は、近くにいる
――とりあえず。
――あらかじめ、やれることは全部やった。
――
そんな、兄としての
大きなバースデーケーキの上にある
妹の
そして、備え付けられている電子オルガンにて、世界一有名なバースデーソング、『Happy Birthday to You』が演奏される。ほんの少しばかり遅れてやってきた演奏者はもちろんのこと、今日学校で
それとシンクロして電子オルガンのすぐ近くにいる
「
そんな、
一瞬だけ部屋が真っ暗になり、スイッチ近くにて待機していた
「「おめでとー!!」」
「「十四歳、おめでとー!!」」
姉ちゃん、
そして俺は
「ほら、誕生日プレゼントだ」
「……うん、ありがと。お兄ちゃん」
俺からの誕生日プレゼントを受け取った
なんせ
「ミドリっち、アタシからもプレゼントあんの。受け取ってくれる?」
俺は尋ねる。
「
「そ、れ、は、いまのところは
そんなことをはにかみながら言う
「
俺から貰ったプレゼントと、
そして、
「……ありがとう、
そんな感じで、感謝の言葉を恥ずかしそうに伝える
「あー! もー! かわいー!! ナニナニ、ミドリっちすっごい
「……か、
そんな、妹と親友のじゃれあいを見て、俺の心の中に小学生だった頃の過去の状景が浮かぶ。
――ま、昔は男だと思われてたからな。
そして、いつのまにか近づいていた
「
「いやいや、全然! そもそも今日いきなり誘ったのは俺だったし!
「あら、そうでして?
そんなことを言って口元に手をあてて微笑む
「気にすることなんかないよっ!!
――本当に、
そんなことを考えながら、乾いた笑顔で
「それにしてもさーっ!! 西洋の
俺は返す。
「ああ、
「ふーん?
そんなことを言いながら、
そんな様子を見て、俺の中に
――ちょっと、アレだな。
――
――この
そんな、第一印象からはとても想像できなかった、目の前の
姉ちゃんが
そして、姉ちゃんは
姉ちゃんが
俺は少し離れたところから姉ちゃんに尋ねる。
「姉ちゃんのプレゼントって
すると、姉ちゃんが答える。
「あー、
――
そして、そのプレゼントを手に持っている
「……デジタルビューフレームだね」
ああ、デジタルビューフレームか。保存しているデジタル写真や動画とかを表示してくれて、しかもそれを遠くにいる友達とネットワークで共有したり同期したりできるやつ。デジタルフォトフレームが進化したタイプの家電だったっけか。
姉ちゃんは
「みどりにはねー、これから
そんな姉ちゃんの、
「……うん、ありがとう。お姉ちゃん」
そんな感じでパーティーが進行していたら、出入り口の扉に備え付けられてぶら下がっている鈴の音が鳴り、扉を開けてメイド服姿の
「ただいま、戻りました……」
すると、料理を口に含んでもぐもぐしていた
「キター! うわーっ! やっぱ
そんな感じで
そんなこんなで、
――
そんなことを俺は思っていた。
みんながみんな立食パーティーを楽しんでいるところで、パーティードレスで着飾り、小皿に料理を載せた
「
「……うん、それは大丈夫。ところでお兄ちゃん、気になることがあるんだけど」
「なんだ? 何でも
俺がそう返すと、
「……お兄ちゃん、ハーレム形成しはじめてない?」
「え?」
あまりにも
「ハーレム? いや、別にそんなことないだろ」
すると、妹はぷくっと頬を膨らませてパーティールームを流し見る。そして、俺に不満げな言葉を告げる。
「……ふーん? この状況を見て、まだそんなことが言えるんだ?」
俺は改めて、妹の誕生日会が開かれているパーティールームを見渡す。
そこで俺は、気付いてしまった。
栗色のふわふわした髪の毛を肩上まで伸ばしている、俺が小学生の頃から好きだった
ちょっと性格がウザいとはいえ、日仏ハーフでルネサンスの
上品なレースのヘアバンドを付けて、いかにもお
そして――
俺はなんとなく、男友達を相手にしているかのようなノリで接しているので、あんまり異性としては
おそらくは
――あ。
――これって、もしかして。
それは、
――俺
「……やっと気付いたみたいだね、お兄ちゃん」
妹が、そんなことを言いながらジト目を俺に向けてくる。
「いや、そうはいっても……ハーレムじゃないとは思うぞ……ハーレムじゃ……」
――
――
――
――
――
俺が着地点に
「……ま、いくら三百億円持ってるったって、お兄ちゃんにそんな
そんな
「あー、そうだな。もしこれで
「……ヘタレだもんね、お兄ちゃん」
そんな、少しだけニヤリとした感じの
「まーな。
――担任の
――いくら金持ちでも、そんなこと実際に出来る奴はよっぽどの奴だろ。
――
そんなことを思いながら、俺は料理を食べる。
――そう、そんな
――リスクを考えたら、実際には行うわけにはいかねーからな。
若い女子たちの
パーティーの終盤に、
参加している女性陣はみな、それまで料理を食べていたことなど気にしないかのように、ケーキを美味しそうに
もちろんのこと、
さて、これからパーティーを終えて、楽しい
そろそろ
「あっ! じゃーさ、
その言葉に、
「……写真?」
「ソーソー! せっかくミドリっち、アスカ
すると、姉ちゃんが反応する。
「あー、いーねー。じゃー、誰に撮ってもらおっかー?」
その言葉に、俺が応える。
「あー、じゃー俺が撮るよ。
俺はそう言って
しかし、
そこに、後ろから近づいてきた
「
すると、
「え?」
何故妹がスマートフォンを渡してくれなかったかがわからなかった俺は、一瞬だけポカンとする。
そして
すると、姉ちゃんがその強い力で俺の手を引っ張って、俺の体を
「もー、
俺は、姉ちゃんと
正面にいる
「ほらほら、
姉ちゃんが笑顔でそんなことを言うので、前列でしゃがんだ俺と姉ちゃん、そして立ったままの
そして、
「はい、チーズ」
ピピッ カシャッ!!
フラッシュの
――いつかの
――どうか
そんなことを、ただただ兄として
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