第34節 欲望の翼
スポーツウェア姿の俺が、商店街にある
「
「ああ、ただいま。これお
俺はそう言い、
「あ……ケーキ……お買いになられたんですか……?」
「ああ、買ったっていうか……さっき友達になった人に
そんな俺のセリフを聞きながら、
そして、メイド少女である
廊下を歩いている最中で俺が振り向くと、
「えっと……確か……妹さんが太ってしまうといけないから……ウォーキングのコースを下見されてたんじゃなかったんですか……?」
「いや、なんか、高級な砂糖を使っているからあんまり太らないって言われたからさ。たまにはいっかなって思って」
その言葉に、
「やっぱり、
「いやー、自分でも妹に甘い性格を、いつかは直さなきゃいけないとは思ってるんだけどね」
そんなやり取りをしつつ廊下を抜けてリビングに出たところ、妹の
妹が両手で持っていたそれは、ブルーグリーンの色をした見たことがない新型の小型携帯ゲーム機であった。
リビングには、その携帯ゲーム機から出ているのであろうゲーム音楽と、
俺は、背中を
「
「……あ、おかえりお兄ちゃん。てやっ!! そいっ!!」
「そのゲーム機、またネットで買ったのか?」
「……そだよ、いまちょっとアクションゲームに集中してるから話しかけないで。おりゃっ!! うりゃっ!!
そんな感じで、子供っぽく精いっぱいゲームに集中している妹を見て、俺はため息をつく。
先月に、家で引きこもっている妹が不自由しないようにと大手インターネット通販サイトである
――もし、デビットカードの
――ソーシャルゲームのアイテム
――多分、
俺は妹に尋ねる。
「すぐやめられないのか?」
「……もー、しつこいなー。ゲームなんだから簡単にやめられるわけない、あっ! クリティカル食らった!
「じゃ、ケーキはおあずけだな」
俺がそう言うと、ゲーム画面に対して前のめりになっていた妹は背筋を伸ばしてシャキッとした姿勢になった。
「……はい、
ゲームの音声が
「ったく、調子いいな」
俺がそう告げると、妹は携帯ゲーム機をソファーの上に置いてうきうきした感じで立ち上がり、ケーキボックスを乗せたダイニングテーブルに早足で向かう。
俺もダイニングテーブルに向かうと、
「
開けられたケーキボックスを覗き込んだ妹が、うきうきと
「……おお、四つとも
少し離れた所から俺は返す。
「わがまま言うなっつーの」
「……言ってみただけだよ。じゃー、このチョコレートケーキでお願いね、
そんな妹の言葉に、メイドの
そして
「
俺は返す。
「ああ、いや。俺は
その言葉に
「いえ……わたしはただの
「じゃ、改めて
俺がそう言うと、
「……
そんな
俺は、
「ほら、
すると、
「えっと……でしたらこのショートケーキを……食べさせてもらってもかまいませんか……?」
「ああ、いいよ。食べて食べて」
俺がそう伝えると、
そして、椅子に座ってから両手を合わせて食事前の挨拶を述べる。
「いただきます……」
そんなことを言って、フォークでショートケーキを食べる
「
――
そんなことを心の中で思いつつ、俺は告げる。
「そのケーキ屋の主人であるパティシエさんが、フランス出身の人なんだよ。お菓子作りの腕は本場仕込みなんだって」
すると、
「本当に……
すると、チョコレートケーキを食べきりつつある
「……そこまで違うもんなの、
そんな言葉に、俺は妹に対して
「
「……はいはい、わかってるって」
妹はそんなことを言い、チョコレートケーキの最後のひとかけらを口に運ぶ。
そして、口元にチョコレートクリームをつけたままもぐもぐと食べてから間を置かずに一言。
「……ふー、ケーキ
フォークを小皿に置いた妹が椅子から立ち上がり、ソファーに急いで向かうので俺は追いかける。
「こら
しかし、妹はわがままな小動物みたいに俺の
俺が近くに置いてあったティッシュ箱からティッシュを抜き出し、ソファーに座っている
「そういやそのゲーム機、いくらしたんだ?」
「……ソフトとかも色々と買ったからね。
すると、妹が一時停止を解除してプレイを再開したのであろう、ゲーム音声が再び部屋の中に
――本当にこいつ、自分の
ゲームを再開して、アクションゲームに集中しつつソファーの上で懸命に体を揺らしている妹に、俺は
「そんなんじゃ、誕生日プレゼントはなしだな」
すると、再びゲーム音声がぴたっと
「……えー、誕生日は誕生日で、ちゃんとプレゼント欲しいよ。お兄ちゃん」
そんな感じで、妹は甘えたような
「つっても、
俺がそこまで伝えると、妹の
「……だったら、お兄ちゃんの
「
俺がオウム返しに尋ねると、
「……お兄ちゃん? コミック
そんな妹の質問に、俺は答える。
「ああ、
「……そ、それ。昔はドラマ
「それがどうかしたのか? まさか誕生日プレゼント、そんなんでいいのか?」
――コミック
すると、妹がこくりと
「……うん、アメリカの宝くじで何百億円もの超大金を当てたそのお兄ちゃんの
「そんなの、まず当たらないと思うぞ」
俺が即座にそう返すと、妹はわかってるといった表情で俺に伝える。
「……当たらなかったらそれでいいから。とりあえず今月の誕生日プレゼントはそれでお願い、お兄ちゃん」
そんな妹の
「わかった、じゃあ
すると、妹がほんの少しだけ
「……ありがと、お兄ちゃん」
そんな
「来月にはクリスマスもあるしな。そっちのプレゼントは俺が勝手に決めさせて
すると、妹の
「……そういえばお兄ちゃん? お兄ちゃんの好きな色って、青っぽい色でよかったんだよね?」
「え? そりゃ、昔っからずっとそうだったけど、
俺がそう
「……それは、教えてあげない」
妹はそこまで言うと、
――なんだろな?
俺はそんなことを思いながら、リビングと接しているカウンターキッチンの方向にあるダイニングテーブルに視線を移す。
ダイニングテーブルにはもうすでに人の姿はなく、
そんな
――
――やっぱ、
――母方のお
――温泉旅館のオーナーだった母方のお
――多分、お父さんが外国出身の方なんだろうな。
そう考えた俺は、
――ま、そんなことなんて。
――非常にデリケートな
そんなことを考えながら、俺は妹がゲーム音声を
――あ、そういやロードバイクの
そんなことを思っていた。
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