第33節 カフェ・ソサエティ
新品のロードバイクに
土曜日のお昼前なので、大通りにはかなり多くの
後ろに乗っている
「よしっ、この
その言葉に俺がロードバイクのペダルに入れる力を
――俺もう、
俺はブレーキをかけて、人が
そして、後ろから追いついた
「それで、
そう
「ああ、あのビルの
俺がそう告げると、
「ええーっ!!? あのビルの、しかも
その叫び声に、周囲の人たちの視線が
「……そうだねーっ!! もしお金持ちになったら、あーいうとこ住んでみたいよねーっ!! あははっ!!」
その元気いっぱいの少女は、ごまかすように口笛を吹いて、俺からロードバイクのハンドル
そして再び、ヘルメットを外して返した俺とロードバイクを押している
「それにしても、今日起こった
「ああ、あんな
俺が返事をすると、
「ちがうちがうっ、そっちじゃないっ!!」
「え? じゃあ、ロードバイクが新しくなったこと?」
すると、
「それもちがうっ、
――あ、そうか。もう友達なのか。
俺が心の中でそんなことを思っていると、
「なーんてゆーかさー、
「あー、ははは、まあそうかもね」
俺がそんな風に生返事を返していると、隣を歩いている
「それにしても、今日はいいことばっかだなーっ! ジョセフィーヌはグレードアップして生まれ変わるし、
――よかった、俺が飛び出したせいで死なせかけてしまったことは気にしてないみたいだ。
俺がそんなことを後ろめたく思っていると、
「そうだ、
「お
俺が
「そっ、お
そんなことを言われて俺は、自転車を手で転がしている
俺が尋ねる。
「ここ? ここに、
「そうだよ。
その言葉に、俺は思い出す。
――ああ、そういえば昨日
――その商店街って、多分ここのことだろうな。
そんなことを考えながら、俺は自転車を押し歩いている
土曜日の昼前ということもあってか、わりかし狭い道でもそこそこ人が歩いている。
俺は
「
すると、
「そーでしょー、そーでしょー!? 数年前までは、シャッターが閉まったお店ばーっかりで、ライトもこんなに設置されてなかったから
「……多分、クラウドファンディングのことだと思うけど」
俺が
「そーそー、それそれっ!! クラウドハンディングっ!!
そんな話をお互いにやり取りしていると、
その道に面している
西洋っぽくてずいぶんと
その店舗の前に到着した俺は、視線を上げる。
アーケード天井の少し下には、二階部分のものなのであろう大きな窓が並んでいるのがわかる。
そして、二階にある大きな窓と一階部分との間に、横に長い看板がかかっているのが見える。
その看板には、ルビ付きの横文字でこう書かれていた。
『
俺は顔を上げたまま、すぐ近くにいる
「パティスリー・ソレイユ? ここが
「そうだよーっ! フランス
「お昼前? じゃあ、そろそろ開店時刻ってこと?」
「そーだねーっ! あと一時間か、もう30分くらいかなっ!?」
そして、
ドアの向こうの暗がりから、
「なにしてんの!?
その言葉に、俺はおっかなびっくりと、お店の関係者じゃないと絶対に入れないだろうドアを潜って細い路地に入る。
細い路地を数メートル行ったところにはもうひとつドアがあり、新庄さんは再びそのドアを鍵で回し開ける。
「さ、どーぞどーぞ。入ってよっ!!」
ただ普通の家と違うところとして、玄関のドアを入ったところから靴を履いたまま、店舗先にそのまま入ることができるのであろう引き戸がすぐ近くに構えられている。
玄関にあったバイクスタンドにロードバイクを縦に置いた
そして、元気な声で俺に告げる。
「お店に入るときは、このマットでしっかりと足の汚れを落とさなきゃいけないんだよ!
そんなことを言って、
入ってすぐの所には、
その厨房にあったのは、金属製のシンク、生地をつくるのであろう大きな台、
見たところ、置いてあるプラスチックの大きなパン箱の中には、
俺が
その人は、厨房にいる調理人っぽい白いコックコートを着て、頭には白くて長いコック帽を被っていた。
ただ、どこからどう見ても日本人ではない。
金髪で、
その男性が、
「
すると即座に、
「パパただいまっ!! 紹介するねっ、こっちは
「どうも、お邪魔してます」
俺がそう
「
――あ、まずいパターンじゃないかこれ?
「違う違うっ! パパ、
「
「
「
――あ、なんか
すると、後ろの
「
そんなことを言って出入り口から出てきたのは、同じく白い厨房用のコックコートを着て、白く小さめの帽子を被った、黒く長い髪を後ろで大きな三つ編みにして
すると、その女性はポカンとした顔で、
「……
すると、
「
「あら、そうなの?
「うんっ!! そーだよママっ!」
――あはは、俺が飛び出して死なせかけたのが、完全に書き換わってしまった。
そんな口にはとても出せない思いを胸に、俺は
――ああ、そうか。
俺は、彼女の髪色が何故、ほとんど色を抜いたかのように明るい色になっているのかを
――彼女のこの
――ただ単に、
元気いっぱいのこの
――おそらくは、
そんなことを俺は、開店前の洋菓子店の、
それは、まるでこの
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