第30節 いつか晴れた日に
高校をいつものように終えた俺は、
さいたま市内にある俺の通っている県立高校、『埼玉県立大宮第二高等学校』、
本当に好きなことをやりたい人間だけが
だが、俺のようにどの部活にも入らずに
先月の十月に俺は、宝くじが当たって三百億円を超える資産を持つ億万長者になってからの流れで、
それが
そんなことを考えながら、俺は高速エレベーターを出て、四十階以上の高層マンションの最上階にある
するといつものように、メイド服姿の
つい先月に
俺が一階の入り口で
俺は
その最中で、俺は
「
すると、
「はい……今日の
「へー、
そんな
表面が
そして、
アニメーションの映像に
無音のテレビモニターの前で、興奮したように体を揺らしつつ物語に見入っている妹の姿に、俺はため息を
俺は、ぐぅたらな妹の姿を見て
「
すると、
「はい……
これが、俺がどんなに大金を持っていても解決できない、見通しの立たない悩みのタネのひとつだ。
今月の下旬、11月の28日に十四歳の誕生日を
大学二年生の
俺は兄として、
俺はソファーに座っている妹に対して裏から近づき、後ろから声をかける。
「
すると、
そして、ワイヤレスヘッドホンを取り外して首にかけ、
「……あ、おかえり。お兄ちゃん」
「ああ、ただいま。パジャマ姿でないのは
「……うーん、
そんな妹の
「このアニメ、
「……そうだよ、
「20年前っつーと、2003年か。俺が生まれる前じゃそりゃ知らないよな」
「……正確には初放送は2004年の2月1日だけどね」
「
そんな
「……ねぇー、よかったらお兄ちゃんも
その言葉に俺は、子供のわがままをあしらうように
「いや、やめとくよ。そもそも俺、アニメとかのテレビ番組そんなに見ないし。小さな女の子向けのアニメとか見たら、多分全身がむず
すると、
「……ぷー、大人でも
すると再び、大画面のテレビモニター内の美少女変身ヒロインたちに命が吹き込まれ、
俺はもちろん
――こいつ、このまま引きこもってたらどんな大人になるんだろうな。
――せめて、現実世界に
妹の
メイドの
ブレザー制服を着たままだった俺はもう一度大きくため息を
「じゃ、俺は部屋で着替えてくるよ」
「はい……では、わたしはお
この
このノートパソコンは先週の日曜日、文化祭が終わった翌日にインターネット通販で届いた高性能ノートパソコンであり、部屋に飛んでいる
俺は以前に、
その
スマホ世代の俺は、慣れていなかったキーボード操作を一つ一つキーの位置を確かめながらタイピングをして、なんとかかんとかパソコンの使い方を勉強していった。
そんな
俺は、置いてある無線マウスをドラッグしてクリックして、とあるウェブページを表示させる。
そこには、十五億円ほどで売りに出されている、同じ
――
そして、俺は本心ではこの温泉旅館を買い戻してもいいと思っている。
――なんせ、
俺は自分の部屋にある窓から太陽のない
――でも、どうやってそんなことを切り出せばいいんだろうか?
――十五億円のプレゼントなんて、絶対に
そんなことを考えながら、俺はなんとなく
それからしばらくの時間が経って、
すぐ近くには妹の
「うーん!
すると、メイド服を着たまま近くに立って
「お
「もー、だからそのお
「いえ……
姉ちゃんと
「……お姉ちゃん、お姉ちゃん。せっかくお金持ちになったんだから、それくらい
「
「……はいはい、わかってるって」
「……ま、
すると、
「わたしの実家は、
「……うむ、よきにはからえ」
そんな妹の
「こら
俺の言葉に、
「……ごめん、お兄ちゃん」
――あ、やべ。
「あー、いや、たまにだったらピザくらいなら頼んでもいいぞ。いっつも和食ばっかりってのもなんだからな」
俺がそう返すと、
「……ホント!? さすがお兄ちゃん!!」
すると
「はい……
そんな
「ピザを頼んだら
すると、
「お
俺に対する
そして、
「あーあー、それにしてもだーれかイケメンがあたしを
「俺はオプションかよ」
姉ちゃんはそんな俺の文句を聞きながら、持っていた高級そうなロングビール缶をぐいっと上に
姉ちゃんは、アメリカの宝くじに当たってから、
そして、姉ちゃんが近くで
「
「はい、わかりました……」
メイド服姿の
そして間もなく、
その様子を見て、表情を明るくした姉ちゃんが言葉を放つ。
「あー、
「はい、わかりました……」
そう言って、
俺は、そんな姉ちゃんに文句を言う。
「ちょっと姉ちゃん、お
――
「ええー、別にいーじゃん?」
姉ちゃんの言葉に
「
そんな
そして
ドイツ語なのでラベルの文字はちょっと読みにくいが、姉ちゃん
すると隣に座っていた妹が、姉ちゃんに尋ねる。
「……お姉ちゃん。お姉ちゃんは、大学でいいなっていう男の人とかいないの?」
「んーっとねー、いないこともないんだけどー、
「……そっか、大学もやっぱり
妹のそんな言葉に、コップになみなみとビールを
「そーだねー。ほら、あたしってそんなに
――多分、そのゴリラみたいにムキムキな
そんな、
姉ちゃんは、コップに
「まーったく、世の中
姉ちゃんはそういった感じで一人ぶちぶちとくだを巻きつつ、コップの小麦色の泡立っているアルコール飲料を飲み干す。
そして俺は、夕飯を食べ終わったので
「ごちそうさま」
俺がそう言うと、再び姉ちゃんのコップに
「
「ああ、ありがとう
俺はそうお礼を言って、椅子から立ち上がりお風呂に向かう。
すると、ちょっとだけ酔っぱらった感じで姉ちゃんが後ろから声をかける。
「
そんな姉ちゃんの声に、俺は家族に背中を向けたまま応える。
「冗談はやめろっつーの」
俺は振り返らずに、姉ちゃんと妹、そしてメイドの
顔を見せなかったのはもちろん、
風呂に入っていた俺は、大きな窓から夜景を見ることができる、泡が出るジャグジー付きの広い広い
――背中流してもらいなよ、か。
先ほど姉ちゃんに言われた言葉の内容を
「……俺が、どんなに気を使ってると思ってんだよ。姉ちゃん」
上半身
何せ、他の家の女の子だ。
――
そんなわけで、
――まったく、姉ちゃんも
そんなことを考えながら俺は湯舟を出て、数人が同時に体を洗えそうな広い洗い場の脇を通り抜け、
洗面所には、浴室の扉から出て向かって反対側にある大理石でできた洗面所の上一面に、大きな鏡が設置されている。
そしてそこには、取り立てて特徴のない黒いミディアムヘアーの髪型をしている男子高校生である俺の、
鏡に向かって、少しだけ気取って笑顔を見せた俺は、体を
するとそこには、しゃがんでいるメイド服姿の
「って、えっ!
俺の声に、しゃがんだままの
「ああ、
そんな
「何で洗面所に?」
「妹さんに、お背中を流してもらいたいから一緒に入って欲しいと誘われまして……ですから、お
そんなことを言いながら、しゃがんでいた
――あの
――いや、
――そんないやらしい目で、
そんな風に
「あの……ところで
「え?
立ち上がって俺の顔を正面から見ていた
「
――え?
その言葉に俺は顔を下に向けて、
「って! うわっ! ごめん!」
俺は、
扉の外から、
「
「いや、だって……!
俺がドキドキと
「わたしは平気ですよ……?
「いや……気にしないでくださいって言われても……俺、体が冷えたからもうちょっと湯舟に入っとくよ」
俺が顔に熱を帯びながらなんとかかんとかそんな言葉を返すと、曇りガラスの扉の向こうから
「では、わたしは洗面所から出ますので……どうぞごゆっくり……」
半透明の扉の向こうからスリッパを鳴らす音が聞こえ、
まだ心臓がドキドキしている俺は、もう一度湯舟に入り、心ごと冷えてしまった体を温めなおす。
――完全に、俺の
――そりゃあ、
――ラッキースケベだったら、
――まさかあんなにも長時間、まじまじと
そんなことを考えながら俺は、広い窓から星の見えない
――
――明日は、晴れるといいな。
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