第26節 道
さいたま市から東京駅近くの丸の内にある大きな弁護士事務所にタクシーで乗りつけ、刑事事件の担当のために残業をしていた
「
法律事務所の
「え……そうなんですか?」
「ああ、
スーツを着て眼鏡をかけた
「でも……払わないとお
すると、
そしてそのガラケーを開いて、操作をしながら息を大きく吐いて
「……メールで脅すような間の抜けた業者って、まだいたんだね」
その言葉に、俺は尋ねる。
「まだいたって……どういうことですか?」
「ああ、この業者は支払いの義務がない者にお金を支払わせようとしていて、しかもそうしないと家族に危険が及ぶことも
「世間知らず?」
俺が返すと、
「こういうメールの
その言葉に、
その
「
すると、
「わかったよ、じゃあ
その言葉に、
「……お願いします……」
すると、
そして、
「……なんか、あっけなかったですね……」
俺は返す。
「あーっと……そうだね。
その言葉に、
もう午後九時を過ぎた夜であるせいか、公園に人影は俺と
少し離れたところから俺は、長い円柱を横にしたようなベンチに座っている
「はい、お茶買ってきたよ。温かいやつ」
そう言って俺は、ベンチに座っている
「ありがとうございます……」
俺は、
そして、お茶を飲んでいる
「
すると、
「……はい、それもこれも……何から何まで……
その言葉に、俺は返す。
「いや、
「ええ……
俺は尋ね返す。
「お
「はい……お
その言葉に、俺は考える。
――ってことは、俺と
――
――仲間の報復とかもありうるから、
――とりあえずは、俺たち家族が元々住んでいた家に住んでもらうって手も――
そこまで俺が考えていたところで、
「それにしても今日は……子供の頃からの夢が叶ってしまうなんて……思いもしませんでした……」
その言葉に、疑問を感じた俺は尋ねる。
「……夢? 子供の頃からの夢って何?」
すると、
「東京駅を、この目で見ることです……夢だったんですよ……子供の頃から……」
「……そうなんだ? 東京駅を見たことなかったんだ? っていうか、そんなに東京駅にこだわりあるんだね。東京駅の
「はい……わたしの実家だったあの旅館は……建物が建てられたのが
その
ベンチに座ったまま
「あの旅館は……わたしにとって……わたしたち家族にとって……いえ、あそこで働いていらした従業員の全ての
その言葉に、俺は返す。
「えーっとさ……そんなに大切な旅館だったんだね。そういうのがあるっていうことは、とても大事なことだと思うよ」
俺がそこまで言うと、
「はい……とても大事な大事な……夢の詰まった旅館でした……でもだからこそ……そんな掛け替えのない思い出があるからこそ……わたしはもう昨日までのことを考えたりしません……わたしはこれからは空を見上げる時……その空の向こうにある
その
――この
そう思ったところ、
「だから
――
――とうとう、
「ああ、
俺がそう言うと、
「もう一度……今度は日の光の下で東京駅を見てみたいので……いつかまた、ご一緒していただけませんか?」
「え?」
俺は声を出してポカンとする。
「……だめなら、いいですけど……」
「あーっ! いやいや! 大丈夫大丈夫! 約束する!」
そう言って焦る俺の目の前で、
「約束ですよ……?」
――まったく、この少女は。
俺がそう思ったところ、頭の中に考えが浮かんだ。
その考えはおそらく、俺の
「じゃあ、俺からも
俺がそう言うと、
「……はい、なんですか……?」
そして、俺はその
今俺たち家族が住んでいる家に入って、メイドとして働いて欲しいという、そのとてもではないが常識離れした意思と着想を。
俺は、少し歯切れが悪かったものの、しっかりと自分自身の意思として伝えた。
俺のその申し込みに対する
その笑顔はまるで、
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