第17節 靴をなくした天使
以前に俺はその少女を、高級な西洋人形のようだと
後ろに
その、
「
俺はベンチから立ち上がり、内心ドギマギしながら返す。
「あ、ああ! 元気だったよ! えっと……
すると、
「ええ……何回かお電話は掛けようと思ったんですけど……
「
俺が応えると、
「
その言葉に、俺は内心
「えっと……? だったら SMS でメールを送ってくれたら良かったのに」
すると、
「わたしはガラケーですから……スマートフォンに SMS は送れないんです。探せば方法があったのかもしれませんけど……ほら……わたし、機械オンチですから」
その言葉に、俺は
――やっちまった!
俺はなんとか言葉を
「えっと……ってことは
すると、
――しまった、
そう思った俺は、
「えっと……ごめんなさい。そこまで気が回りませんでした」
俺が謝ると、
「いえ……
彼女のその言動は、俺の深く
俺は返す。
「あー、いや。写真撮られたりして顔を知られるのが
すると、
「
――え?
俺は、少し後ろめたく
「えっと……ごめん。ひとつ
「ええ……なんですか?」
「
俺がそこまで言うと、
「はい……お
その
そして、一言だけ伝えることしかできなかった。
「えっと……とりあえず、ベンチに座って話さない?」
ベンチの隣に座った
なんでも、
その言葉の
――ってことは、
――家にテレビもないし、スマホも持ってないんだったらそうだよな。
――なんて
――そんなありえそうな可能性も
俺は、ベンチの
そして、
俺が口を開く。
「えっと……
すると、
「はい? 何でしょうか……?」
――俺、実は
――んなこと言えるかぁー!!
三百億円も
黙って
「
顔を上げた俺は、気を取り直して
「あー、いや。だったらちょっと大変だろうなー……って思って」
すると、
「去年の初めまで
俺は返す。
「
「はい……その家はもうわたしの家じゃありませんけど……お
そこまで言うと、
経験不足な高校生の頭で精一杯考えた俺は、できるだけ
「
「はい……お父さんとお母さんとも今は離れて暮らしていて……二人とも元気で働いてはいるんですが……お
俺は頭の中で、
――もし高校を卒業しているのならば、中学を卒業しているなんてわざわざ言わないはずだ。
――ってことは、
――平日の昼間に働いていたってことは、つまり。
――経済的な理由で高校に行けなかったってことか。
――なんてこった、言葉を
「えーっと……」
少しだけ考えた俺は、言葉を
「あーっと……俺、実は
すると、
「いえ……迷惑なんかじゃありません……! わたしだって……ずっとお友達が欲しかったですから……! わたし、この市に来てから
段々と小さくなるその言葉に、俺は少し焦って返す。
「あーっと!
俺がそうフォローを返すと、
「
「あーっと、
「でも……お姉さんと妹さんとで一緒に暮らせてるってのは……
その
――
――つまり、俺に助けを求めてる!?
俺の心臓は相変わらず、ドキドキと鳴っている。
――いや、落ち着け。落ち着け。
――俺は
――
なんと言おうかあれこれ言葉を考えていた俺に、
「
その言葉に、俺は焦ってスマートフォンを取り出す。
「あ! ああ! 喜んで!」
そして俺は、あまり使ってなかったスマートフォンのメール設定を確認し、メールアドレスをお互いに交換した。
すると、
「これで……わたしたち……メル
「ああ、そうだね」
俺が精一杯のぎこちない顔で返したところ、昼間の公園に音が鳴り響く。
ぐー きゅるるる
彼女自身の細い胴体から発せられた、腹を
「ご、ごめんなさい……! お昼を抜いてたので……お恥ずかしいです」
俺は口を開く。
「昼ごはん、食べてないの?」
すると、
「えーっと……以前に
その言葉に、俺はコンビニの中年女性が言っていた言葉を思い出す。
――そうか、
――
「あ……でも気にしないでください。今はもう……新しい仕事を探している最中ですので……
「そうだったんだ……頑張ってるんだね」
俺は色々と
つまり
そして、俺は考える。
あの宝くじが当たって、今の俺は億万長者になっているけど。
もし、そのことを伝えてあからさまにアピールしたら、どうなるのか。
もしかしたら、金で
それとも、目の色を変えて
そんな
そう思った俺は、
「あのさ
その言葉を聞いて、
「
ぐー きゅるるるるるる
今度は、さっきより音が少し長かった。
俺は少々焦りつつ、立ち上がりながら言葉を渡す。
「あーっと!
俺の言葉に
コンビニに入った俺は、さっきのレジ番をしていた中年女性に頼み、例の東京駅百周年記念
結果的にこの
サンドイッチを数個入れたコンビ二袋を揺らしつつ、先ほどの公園に走る。
そこで
「
俺がサンドイッチの入った袋を掲げると、
そして、昼過ぎの公園で俺は
実は俺は、もうすでに昼飯を食べていたのだが、ちょっと無理をしてサンドイッチを胃の中に押し込んだ。
なお、
――なんていい
――本当に、
ベンチの上で一緒に軽い昼食を取っていた俺は、そのうち彼女と別れてそれぞれの家に帰らなければいけないことを、心の中で深く深く惜しんでいた。
楽しい昼食時間が過ぎて、残念ではあるが
片側二車線道路の歩道を並んで歩き、俺は
「では……
「あーっと、いや。こちらこそ長い事連絡しなくてごめん」
「いえ、別にかまいませんよ……少し
そして俺は自分の財布から、
「あーっとさ……これ、お
すると
「いえ……そんな
俺は返す。
「いや、新しいカードをこの前に申請したばかりなんだよ。デビットカードっていう奴なんだけど……だからこのカードは、もう使わないんだ」
――嘘ではない。
俺はついこの前に銀行で、使った分だけ現金が銀行から引き落とされる便利なキャッシュレスカード、デビットカードの発行を申請したばかりなのである。
おそらく、この東京駅百周年記念
俺は言葉を続ける。
「この百周年記念の
俺がそこまで言うと、
「
その、無表情な少女の感謝の言葉を受け取れたこと。
そして、俺がお金持ちかどうかに関係なくまた会ってくれるという彼女の意思。
その二つが、俺は嬉しかった。
――俺が、あの宝くじが当たって億万長者になったってことは。
――まあ、きっかけがあれば言えばいいか。
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