第7節 僕らのミライへ逆回転


 よく水曜日すいようびあさ制服せいふくかばんかたからげてウィークリーマンションの一室いっしつから出発しゅっぱつした俺は、ほか生徒せいとより若干じゃっかんおくれて高校こうこう自分じぶんのクラスのうしとびらまえにやってきていた。


 すで始業しぎょうチャイムはっているので、廊下ろうかひとはもういない。


 もう十分じゅっぷんくらい遅刻ちこくしているのだが、中々なかなかとびらける勇気ゆうきはないままであった。


 先週せんしゅう金曜日きんようび昼過ひるすぎに早退そうたいしてすぐにアメリカにって小切手こぎってって、そのまま月曜日げつようび火曜日かようび無断むだんやすんだのである。


 一昨日おととい月曜日げつようび昼過ひるすぎにはじめて俺のかおこえがニュースでながれたのであるから、昨日きのう火曜日かようびにはクラスにて相当そうとううわさになっていたであろうことは容易ようい想像そうぞうがつく。


 とびらこうからは、担任たんにん教師きょうしである佐久間さくま先生せんせいはなごえこえる。


 だれのかわからないクラスメイトのざわめきがこえる。


――そうだけ、け。人生じんせいなんてなるようにしかならないんだからな。


――それに、ひょっとしたらクラスのやつらが気付きづいてない可能性かのうせいだってあるし。


 深呼吸しんこきゅうをゆっくりと一回いっかいした俺は、けっして金具かなぐをかけちかられる。


 ガラリ


「おはよーございまーす。すいません、遅刻ちこくしま――」


 普段ふだんわらぬ素振そぶりでとおそうとしたのだが、やはり無理むりがあったようだった。


 俺のこえ教室きょうしつひびくと同時どうじに、先生せんせいふくめたクラスの人間にんげん全員ぜんいん視線しせんが俺のほういたからだ。


 途中とちゅう言葉ことばめてしまった俺はいなおす。


「えっと……遅刻ちこく……しまし……」


 静寂せいじゃく、そして山体さんたい崩落ほうらくのようなこえ濁流だくりゅう


「「おお――!!」」


「「たよ!!」」


「「マジかよ!!」」


「「もうないかとおもった――!!」」


 男子だんし女子じょしも、おおきくざわめいてそれぞれのこえす。


 そして、同級生どうきゅうせいらが次々つぎつぎせきっては俺のほう近寄ちかよってくる。


「ねぇねぇたちばなくん! たからくじてたのたちばなくんだよね!?」


たちばな! おまえ昨日きのう学校中がっこうじゅううわさだったんだぞ!!」


たちばなくん! いやたちばなさん! 百万円ひゃくまんえんでいいからめぐんでください! いや十万円じゅうまんえんでいいから!!」


たちばなくん! たちばなくんってさ、彼女かのじょっていたっけ!? もしかしてまだ募集ぼしゅうちゅう!?」


「おねがい! 吹奏楽部すいそうがくぶ寄付きふしてよ! もう楽器がっきがぼろぼろなのよ!」


寿司すしおごってくれよ! 寿司すし! 焼肉やきにくでもいいからよ!」


今度こんど一緒いっしょにカラオケこうぜ! 可愛かわい紹介しょうかいするからさ!」


 俺のまわりにあつまったクラスメイトは、口々くちぐち勝手かってことさけぶ。


――え、なにこの対応たいおう


――俺、たしかクラスではカースト下位かいだったよな。


 俺はひやあせをかきつつ、ほほ人差ひとさゆびいて視線しせんななうえにする。

「え……えーっと……たからくじ? なんのことやら……」


 なんとかごまかそうとするも、どことなく不自然ふしぜんであることが自覚じかくできる。


 すると、俺のまわりにあつまっていた人波ひとなみるように悪友あくゆう三人組さんにんぐみ近寄ちかよってきた。


 そのうちの一人ひとり眼鏡めがねをかけたヒョロながすぐるが俺のまえ大声おおごえげる。

「だーらっせー! 啓太郎けいたろうのがれしようとしてもそうは問屋とんやおろさんぞ!」


 そして、お調子者ちょうしもの小柄こがらさとしわらいながらっているスポーツ新聞しんぶんひろげる。

「これ、どうても啓太郎けいたろうだよなー。グラサンかけてるけど、バレバレだっつーの」


 そのスポーツ新聞しんぶん一面いちめんには、サングラスをかけてキャップぼうかぶった、ピースサインをしている俺の写真しゃしんがでかでかと掲載けいさいされていた。


『超ラッキーマン! 七百億円の宝くじを当てた日本人!』というあお文句もんくがあり、顔写真かおじゃしんしたにはご丁寧ていねいに『埼玉県在住 タチバナさん』とかれている。


――やっぱり、気付きづかないなんてありえなかった。


 俺がそうおもったところ、いしんぼうふとっちょの高広たかひろがのんびりとげる。

七百ななひゃく億円おくえんあったら、世界中せかいじゅう美味おいしいものが放題ほうだいだよね。いいなぁ」


 するとクラスのみんな次々つぎつぎと、七百ななひゃく億円おくえんという金額きんがくについてこえげる。


 その言葉ことばに、俺は弁明べんめいをする。

「いやいや、もうすで七百ななひゃく億円おくえんなんてないからな!」


 すると、すぐるが俺にたずねる。

「なにぃ? 貴様きさままさか、もう使つかっちまったのか!?」


 その言葉ことばに、俺はかえす。

税金ぜいきんとかで色々いろいろかれたんだよ! 俺の手元てもとにはもう三百さんびゃく億円おくえんしかないんだからな!」


 俺のうったえに、教室中きょうしつじゅうみずったようにしずまりかえった。


 その静寂せいじゃくあいだすぐる無言むごんで俺の背後はいごまわってくびうででガシリとはさみ、チョークスリーパーをかける。


 そしてさけぶ。

三百さんびゃく億円おくえん……だと!? 三百さんびゃく億円おくえんもあったら充分じゅうぶんじゃオラァァァァ!!」


くるしいくるしい! ギブギブ!」


 俺がわざをかけられながらすぐるうでたたいていると、赤茶色あかちゃいろめられたながかみりょうサイドにけてくるくるしたたてロールをかけた、ミニスカートのレディスーツをている担任たんにん佐久間さくま雫音しずね先生せんせいが、ぱんぱんとたたいて近寄ちかよってきた。


「はいはーい、そこまでにしときましょうね。もうすぐ授業じゅぎょうはじまるわよ、みんなせききなさい」


 その合図あいずともに、クラスメイトたちは悪友あくゆうふくめて渋々しぶしぶとそれぞれのせきかえっていった。


 そして佐久間さくま先生せんせいはにこやかに俺にげる。

昨日きのう一昨日おとといやすみは家庭かてい事情じじょうってことにしておいてあげるから安心あんしんしなさい」


「ああ、すいません」

 俺がそうったところ、先生せんせい紙切かみきれをし、俺の制服せいふくむねポケットにそっとれた。


「あの、いまかみはなんですか?」

 そうたずねると、先生せんせいは俺のみみくちちかづけて小声こごえこたえる。

「先生の連絡先れんらくさき。先生、たちばなくんが高校こうこう卒業そつぎょうするまでってるからね」


――俺はってません。


 そんなことをかんがえながら、どことなくルンルンとした足取あしどりで教卓きょうたくもどっていく先生せんせい背中せなか見送みおくる。


 窓際まどぎわ一番いちばんうしろにある自分じぶんせきすわるまでのあいだも、何人なんにんものクラスメイトが俺のほうて、なにやらひそひそ噂話うわさばなしをしているのをうかがうことができた。




 ところでさっきから俺は、たった三人さんにん女子じょしだけがそれぞれのせきからうごかず、おのれせきすわったまま俺のほうていたのを確認かくにんしていた。


 まず一人目ひとりめ、『ギャル』のグループにぞくするクラスメイトの花房はなぶささん。


 金色きんいろあかるくめられているながめのふぁさっとしたかみを、うしろにてシュシュでまとめてポニーテールにしてらしている、ぱっちりしたツリ白肌しろはだ巨乳きょにゅう女子じょしである。


 クラスメイトのなかでも制服せいふくのスカートがとくみじかく、いつもブラウスのうえのボタンを、そのあふれんばかりにおおきなむね谷間たにまえるくらいにひらけている、いかにもせい奔放ほんぽうそうな雰囲気ふんいき女子じょし生徒せいとだ。


 以前いぜんからちょくちょく視線しせんけられていたようながしていたが、多分たぶん侮蔑ぶべつ視線しせんだろうとおもっていてとくにはしていなかった。




 つぎ二人目ふたりめ、『真面目まじめけい』のグループにぞくするクラスメイトの西園寺さいおんじさん。


 内巻うちまきのヘアスタイルで、つややかななが黒髪くろかみ腰元こしもとまでばしていて、頭頂部とうちょうぶちかくには上品じょうひん模様もようのあるレースでできたヘアバンドをつけている、じりの若干じゃっかんがったやわらかい目付めつきの女子じょしである。


 俺の所属しょぞくするクラスの学級がっきゅう委員長いいんちょうをしており、性格せいかく温厚おんこう物静ものしずかで清楚せいそでおしとやか。

 以前いぜんからのうわさでは、おや大企業だいきぎょう社長しゃちょうであり大金持おおがねもちのいえ御令嬢ごれいじょうであるらしい。

 俺がクラスのなか悪評あくひょうけていたときでも、へだてなくせっしてくれた数少かずすくない親切しんせつなクラスメイトだ。





 そして三人目さんにんめ、『文化ぶんかけい』のグループにぞくするクラスメイトの――

 そこまでかんがえたところで、俺はこころなかおおきくためいきをついた。

 

 最後さいご三人目さんにんめは、栗色くりいろのふわふわしたクセのあるかみかたまでばした、つぶらなひとみ女子じょしである、俺の幼馴染おさななじみ天童てんどう萌実めぐみだったのだ。


 萌実めぐみ教室きょうしつはいってきた俺をたものの、クラスメイトにかこまれている俺をたまませきとうとしなかった。そして俺が萌実めぐみ視線しせんわせようとしたら、ぷいっとそっぽをいてしまったのだ。


――なんでだよ、せっかくはなしができるとおもってたのに。


 昨日きのうにベッドのうえで俺がいだいた一縷いちる期待きたい萌実めぐみとの仲直なかなおり』という希望きぼうは、すくなくとも今日きょうかなえられないようであった。


 いくらかねがあっても、かなえられないねがいもある。


 そんなことをかんがえていると、一限目いちげんめ古典こてん授業じゅぎょう時間じかんはじまったことをしめすチャイムが教室きょうしつひびいた。





 キーンコーンカーンコーン


 五十分ごじゅっぷんぎ、一限目いちげんめ授業じゅぎょう時間じかんわったことをしめすチャイムが教室きょうしつひびいた。


 日直にっちょく女子じょしが「起立きりつ」「れい」「着席ちゃくせき」とい、生徒せいとがそれにならい、古典こてん授業じゅぎょうわった合図あいずとなる。


 すると、あさおなじようにクラスメイトが我先われさきにとせきって、俺にわらわらと近寄ちかよってきて口々くちぐちしゃべりかけてくる。


 内容ないようはというと、「一緒いっしょあそびにかない?」といった下心したごころみえみえの誘惑ゆうわくから、「かねくれ!」といったストレートな欲求よっきゅうまで様々さまざまであった。


 俺がせきすわったままなんとかかんとかさえぎって誤魔化ごまかしていると、よく見知みしったクラスメイトの男子だんし三人さんにん、俺をまもるようにかこんで俺にたいして背中せなかせてちふさがった。


「じゃかーしー! 気安きやすはなしかけるんじゃねーぞ! このかね亡者もうじゃどもが!」

「まーまーみんな、興奮こうふんするのはわかるけど、ここはちょっといて」

大丈夫だいじょうぶだよ、啓太郎けいたろうくんはげないから」


 すぐるさとし、そして高広たかひろの三人だった。


 すぐる意気いきさかんにクラスのみんな大声おおごえげる。

第一だいいちなんなん貴様きさまら! いままで啓太郎けいたろうのことをどうあつかっていたかそのむねいてみろ! 億万おくまん長者ちょうじゃになったからといっていきなりのひらクルーくぁ!? 貴様きさまらの精神せいしん構造こうぞう人間性にんげんせいごとうたがうぞオラァァァ!?」


 その怒号どごうに、いままで勝手かってっていたクラスメイトたちのこえまる。


――そうだそうだ、もっとってくれ。


「そもそも今まで貴様きさまらは啓太郎けいたろうのことをどうんでいたぁ!? やれ『ストーカー』だの、やれ『変態へんたいネクラ』だの、やれ『視線しせん卑猥ひわい』だの、やれ『エロメガネ』だの、やれ『ある十八禁じゅうはちきんAIエーアイスピーカー』だのと勝手かってなことかしおってからに!」


――いや、最後さいごほうのはおまえけての言葉ことばだろ。


 そして、さとしみなをなだめるように言葉ことばべる。

「いや、わかるんだよ? クラスメイトがいきなり数百すうひゃく億円おくえんってるちょう大金持おおがねもちになったんだからさー、ひょっとしたらおこぼれにあずかれるかもって期待きたいするのはわかるんだよ? 正直しょーじきオレだってそうおもってるし」


 さとしはそこまでうと、一旦いったん呼吸こきゅう区切くぎって言葉ことばつづける。


「でもさー、啓太郎けいたろうがこのクラスがいやになって、この学校がっこうからいなくなったらもともないわけじゃん? なんせ啓太郎けいたろうはもう、一生いっしょうはたらかなくてもらせるくらいの大金持おおがねもちになったわけだからさー、明日あしたから学校がっこうなくてもかまわないわけじゃん?」


 その言葉ことばに、俺たちをかこんでいたクラスメイトらの態度たいどがあからさまにわる。


 俺が明日あしたから高校こうこうないという選択肢せんたくしえらべるという事実じじつに、やっと気付きづいた様子ようすであった。


 すると、高広たかひろがのんびりとげる。

啓太郎けいたろうくんはべつ自分じぶんのことしかかんがえないようなひとじゃないし、旅行りょこうったらお土産みやげってきて気配きくばりとかもしてくれるほうだから、クラスのみんなのこともちゃんとかんがえてるとおもうよ? 定期的ていきてきにクラスかいかたち食事しょくじくらいならおごってくれるんじゃないかな?」


 その高広たかひろ言葉ことばに、俺はこたえる。

「ああ、それくらいならべつにいいけど? たまに寿司すしとか焼肉やきにくとかでければ」


 すると、クラスメイトの半分はんぶんくらいが「「おおー」」と歓声かんせいげた。


 歓声かんせいげなかった女子じょし一人ひとりがぼそっとこえす。

吹奏楽部すいそうがくぶにも寄付きふしてもらいたかったんだけど……」


 すると、さとしがこんなことをった。

吹奏楽部すいそうがくぶにだけ寄付きふするのはフェアじゃないからさー、学校がっこう一括いっかつ寄付きふしてもらうってのはどーかな? そんで、それぞれのぶん生徒会せいとかいとかのはなってめてもらえばいいんじゃねーの?」


 さとしが俺にかえり、片目かためをつぶる。


 その意味いみがわかった俺は、すぐさまこたえる。

「ああ、そのほうがいいな。どっかひとつの部活ぶかつにだけ寄付きふするとえこひいきになるからな。ちかいうちに一千いっせん万円まんえん二千にせん万円まんえんくらい、まとめて学校がっこう寄付きふするよ」


 すると、のこりの半分はんぶんも「「おおー」」とこえげた。


 クラスメイトの一人ひとり、『オタク女子じょし』のグループにぞくする女子じょし両手りょうてんでまえのめりになる。

「ねぇねぇたちばなくん! 文化祭ぶんかさい人気にんき声優せいゆうおとこひとんでもらうことってできない!?」


 すると、それに呼応こおうして『オタク男子だんし』のグループの男子だんしこえげる。

「あっ! 女子じょしずるいよ! 声優せいゆうぶんだったら女性じょせいのアイドル声優せいゆうにしてよ!」


 すると、『ようキャ』のグループにぞくする男子だんし興奮こうふんしたかんじになる。

文化祭ぶんかさいぶんだったら一般いっぱんけするメジャーバンドのほうがぜってーいって!」


 そのこえ皮切かわきりに、あるもの東京とうきょう美少女びしょうじょトップアイドルのを、あるもの最近さいきん急成長きゅうせいちょうしている芸能げいのう事務所じむしょ三人組さんにんぐみ男性だんせいアイドルグループのを、といったふういたい有名人ゆうめいじん名前なまえ次々つぎつぎげはじめた。


 そんな声の中、すぐる片手かたててんけておおきくかかげてはなつ。

「ウェイウェイウェイウェイウェーイ!! かんかこのたわものどもが! これから啓太郎けいたろうなにたのみごとをしたいのならば、まずはおれたち三人さんにんはなしとおしてからにしてもらおーか!!」


 そのすぐる宣言せんげんに、クラスメイトが「えー、なんでだよー」とか「あなたたちの権限けんげんじゃないでしょー」とか次々つぎつぎ不満ふまんらす。


 しかし、そんな不満ふまんめていなすかのようにさとし言葉ことばかえす。

「まーまー、啓太郎けいたろうたしかに大金おおがねちになったわけだけど、これまでずーっとそこらへんの一般人いっぱんじんだったからさー。一歩いっぽ間違まちがえればかねちからですっげー我侭わがままになったり、クラスで暴君ぼうくんのようにっちまう可能性かのうせいもあるわけよ」


 そのさとし言葉ことばに、クラスメイトはたがいにかお見合みあわせる。

 そしてさとし一呼吸ひとこきゅういて言葉ことばつづける。


啓太郎けいたろうがそんないややつになってクラスの空気くうきわるくなるのはみんないやだろ? だから、たまーに啓太郎けいたろうができる範囲内はんいないで、クラスのだれかのねがいをかなえてくれるかもしれねーって状況じょうきょうにしておく方が、よっぽど健全けんぜんなんじゃねーかなってオレおもうんだけどなー?」


 そのながるような弁舌べんぜつ内容ないようにクラスのみんな納得なっとくする。俺も、さとし弁論術べんろんじゅつなかほうけて感心かんしんする。


 そして、高広たかひろかえって俺にたずねる。

啓太郎けいたろうくんはそれでいい?」

「え? ああ、じゃあそれでいいけど」


 反射的はんしゃてきかえしてしまったあとで、俺は三人さんにん真意しんいさっした。


――そうか、俺が直接ちょくせつかね無心むしんことわるとカドがつから。


――ことわるときはこいつらに間接的かんせつてきことわってもらえばいいのか。


――こいつら、かね目当めあてじゃなくて俺のことを本当ほんとう心配しんぱいしてくれてるんだな。


 と、そこまでおもったところですぐる公然こうぜんべる。

「ま、そういうわけなんでなぁ! まずはおれたち三人さんにん啓太郎けいたろう存分ぞんぶんにたからせてもらうことになぁる! 貴様きさまらはそのあとだなぁフハハハハハ!!」


――思惑おもわく修正しゅうせい


 三人さんにんうらやましそうにているクラスメイトをて、俺はあることに気付きづいた。


――視線しせんしつちがう。


 先週せんしゅうよりまえに俺たち四人よにんけられていたクラスメイトの視線しせんは、いかにもクラスカースト下位かい人間にんげんおくられるような、あなどりやあざけり、同情どうじょう色合いろあいをった視線しせんだった。


 しかし、現在げんざい俺たちにけられているその視線しせんはあからさまにいろちがう。


 明々白々めいめいはくはくあこがれやうらやみ、熱望ねつぼう色合いろあいをった視線しせんになっている。


 そこで、俺は自分じぶんかれている状況じょうきょうをようやく把握はあくした。


 窓際まどぎわ一番いちばんうしろのせきすわっている俺をかこむように悪友あくゆう三人さんにんち、クラスメイトのほぼ全員ぜんいんが俺たちに羨望せんぼう眼差まなざしをけている。


――これって、まさか。


 ほかのクラスメイトが一般いっぱん庶民しょみんならば、すぐるさとし高広たかひろは、庶民しょみん意見いけんおうとどける貴族きぞく立場たちばにあるといえる。


――そして、そのなか玉座ぎょくざすわっているおうってまさか。


――ええーっ!? 


 どうやら俺は、たからくじがたったことによりクラスのなか革命レボリューションこしてしまったらしい。


 嗚呼ああ、かつてクラスカースト下位かい所属しょぞくしていた俺の未来みらいは、青春せいしゅんは、いったいどこにかっているのだろうか?

 


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