第4話目覚めたら……



 次の日、リオンは多大な無理をおして体を起こした。


 持ち金から宿泊費を払うと、チャンプは感心した。


「よっぽど鍛えてんな。こいつは筋入りだぜ」


「ちがう……」


 ただ厄介になりたくないだけだったのだ。――どうしても。


 息を継ぎながらやっとのことでたどり着いた扉は、決して軽くない。


 渾身の力をこめて握りをつかんだところ、


「ぐう」


 と、腹が鳴る。小さな個室に響いてしまった。


 部屋の隣は調理場だった。


 扉が開くと、ふくいくたる香りが部屋にただよった。


 戸口の外では宿の女将がシチューをかきまわしつつ、愛想をうかべている。きっと食べる人の笑顔を思い浮かべていたのだろう。それはそれは幸せそうだった。


 扉を開くと、もろに彼女と目が合った。


「おや、チャンプのお友達かい。煮込みがまだまだだから、もうちょっと寝てておくれよね」


 なにか言おうとしたときだった。浅く焼けた腕が伸びてきて、戸口にひょいと手をかけてリオンをさらってしまった。


 顔中しかめて抵抗してみても、しょせんは無駄な事。


「ていうことだ。もうちょっと寝てな、リオン?」


 相手は冗談みたくあっけなく、リオンに言うことをきかせる。乱暴に放り出されて身がきしむかと思うほど、痛みが走った。


 もともと無理だったのだからしかたがない。寝台に放りこまれて息もできないでいると、チャンプが駄目押しにのしかかってきた。


「ぐ……ッ降参! こうさん! やめてくれっ」


 チャンプはリオンの上に全体重をかけてシガレットに火を着けた。


「へええ、こんぐらいで音をあげんのか。まだまだだな――」


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