第三話もう眠りたい
景色がぼやける。全てのものがかすんで、よく思い出せない。
なにがあったのか、自分はどうなったのか、そしてここはどこなのだ。
片腕を動かそうとしたが動かせない。感覚がなく、自分のものではないかのようだ。
息をついたが、全身に痛みが走った。急に恐怖が襲いかかってきた。あたりは暗闇だ。
少ない可視範囲に明かりがあって、どうやら地べたではないらしい。
穏やかな光の中に見れば、体の上に乗せられているのは、暖かいかけ布だ。
だれかが介抱してくれたのだろうか? それにしても左腕がぴくりとも動かせないのはどういうわけだ。
痛む首筋を巡らせてみると、柔らかなものが頬に触れた。明かりが届かずよく見えない。が、生き物のようだ。
香草の匂い。リオンはなんだか草原にいるような気がした。
うっとりと目を閉じると、金の草原の隅から目玉が現れる。それはじーっとリオンの表情をうかがっていた。
リオンが気配に気がついて目を見開くと、それはゆっくりと細められる。
忍び笑いがした。影の中で動くものがあり、小刻みに震えている。
「な……んだ?」
笑い声が止まった。
「だれかいるのか……」
声は驚くほどしゃがれている。
「……ここはどこなんだ……」
ぬっと影がふくれて、金の草原が甘い唇でものを言った。
「……俺様の家の中だ」
声だけでだれかわかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます