☯
リオンは急に頭のしんが熱くなり、何も考えられなくなってしまった。
なにかが燃える。身の内で盛んに駆り立てられる、命の火。それが目の前の青年にむかって、ほとばしった。
空中で身代わりとなった男はのびて動かない。あばらは折れたかもしれなかった。
砂漠で鍛えたリオンの蹴りが炸裂したのだ。当然だった。
「どうせ命など木の葉と同じ……くらえっ」
青年の言葉に策略など通じないと感じとり、リオンは本能のまま暴れた。
気がつけば青年とリオンのみがあい残った。
「やるな、みかけによらず。おまえ、名前はなんという? 初めて見るヤツだが、知ってる気もするな……おもしれえぜ……っ」
薄暗い照明の炎の中で青年はうれしそうに叫んだ。リオンの拳はあいかわらず防がれている。こうなればまぐれでも構わない。一矢むくいたい。
「俺の名前が知りたけりゃ、槍でも剣でも持ってきなよ!」
ふと、青年が炎を斜めに浴びながら笑った。
「そんな目で、俺はころせねえよ」
その言葉と共に、リオンは床に沈んだ。
どこをどうされたのかもわからなかった。熱いしびれが脳内を麻痺させていき、何も考えられない。目の前が暗くなっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます