「いかさま師!」


 瞬間、そばの男たちが声もなくすっとんでいくではないか。


「けっ、この程度のいかさま見抜くのに三日とかかったのはおまえさんだけだぜ」


「んだとぉ!」


 仲裁に入ったかのように見えた男二人が結局、殴りあいのきっかけを作ったらしい。


 それを囲んだ数人の男は用もないのに腕まくり。血の気にはやった輩はとっくに喧嘩の輪の中だ。


「よしっ、やれっ。そこだ、いけっ」


「おおーっ、おもしれえっ。やってやる!」


 一人が叫ぶと、よってたかって殴りつけた。


 倒れると、そこへ馬乗りになってなおも殴りつけるの応酬だ。すったもんだで収拾がつかない。大騒ぎだ。


 呼ばれもしないのに次々と乱闘に加わる者もいて、リオンはあっけにとられて、事の次第を見守っていた。


 彼は累のおよばぬうちに逃げるつもりだった。みじんも迷わないが足が逆らった。


 喧騒の中にいて、チャンプという青年の横顔が瞬間、異様な輝きを増したのだ。


 リオンはとっさにすぐそばのテーブルを蹴倒した。的確に狙った青年の拳がめりこんだ。髪をふり乱した相手はテーブルの脚を折って平然と輪の中へと戻っていく。


 まっさきに気配を察知していなければ、くらっていた。


 頭に血がのぼったリオンは一言、言いかける。


 そうせずにはいられなかった。


「へっ! 文句があるのなら、拳で言いなっ」


 青年はリオンの胸ぐらをつかむと、放り投げた。リオンが歯噛みしたとたん、青年の顔が目に飛びこんできた。それが笑っているので、ついに本気になってしまった。


「では、ゆく!」


 受け身ですぐさま跳ね起きる。


 ジャンプした。


 テーブルを踏み越えての、頭上からの攻撃にどう出るのか?


 青年があえいだ。


 だが相手はとっさに、飛びかかってきた近くの奴をつかんで、そのままリオンにぶつけてきたではないか。


「ひきょうなっ」

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