☯
まなざしがちょっと小粋な青年だ。耳にシガレットをはさんでいる。
「おおい、チャンプがきたぞ」
どこからかそう声がして、中にいた人の頭が軒並みそろってこちらを見た。
仲間らしい男たちと手を打ちあわせて、青年がゆうゆうとして中へ入っていった。
その様子はいかにも慣れている。
こう言った場へなじみこめる性質というものが、どういうものかは考えなかった。
物事には年季がものをいうことが多い。そこは敬意を表したいところだった。
賭場のカウンターに陣取って、チャンプは水割りを頼んだ。そして仲間らしい男とふたことみこと言葉をかわすと、次はバーテンダーと話しこむようだ。
背後で扉が閉まる音がしたので、リオンは飛び上がった。こうなるともはや引き返せないところへ来てしまった気がする。さりげない動きで扉を閉めたドレスの女が客席へゆく。
リオンは思わずカウンターのはしに腰かけ、視線をさまよわせた。賭場というより、先の酒場と変わらない。落とした照明がいかにもそれらしいのを除いてだが。
テーブルを囲む人々がいたるところで、薄暗い中、ひそかにカードをやりとりしている。
そのときだ。店の奥でさかずきのわれる音がした。かと思うと、だみ声がきこえた。瞬間、周囲が殺気立つのが感じられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます