夜の高速船

うらぐちあきら

夜の高速船

みなとあかり以外には何も無いまっ暗い闇の中で

さながらその船だけが安全地帯であるように

見えない夜の獣から僕らを光で包み、まもる。


だいだい色のみなとあかりは

ぞんざいにピーラーでひん剥かれた人参の皮のように

黒い水面にグニャグニャと浮かぶ。


たっぷりの墨汁をざばばと恐ろしき力でかき分ける姿

窓から黒いみなもを見下ろす僕をぞわりとさせる

終発から二番目の便。


そして僕は一年ぶりにこの島に来た。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜の高速船 うらぐちあきら @akirauraguti

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る