外伝 【ありすとオーディン】
「お前・・・もしかして一人か」
少女はうなづく。
ゆっくりと。
「
今度は少女はうなづかなかった。
おそらく言葉の意味をわかっていないのだろう。
無理もない。
こんな小さな少女に
おそらく
いつからここに
それとも毎日毎日いつか家族が戻ってくるかもしれないとこの場に
いや、おそらくずっとここにいたのだろう。
目には
「お
こくり。
ひとつうなずく。
どうやら声は聞こえているようだ。
俺は少女の
もしかして目をやられているのだろうか。
いや、それもないだろう。
ただただこの現実を受け止めようとする心と受け止めたくないと言う心がせめぎ合って心ここに
だがここは日本ではない。
「どうしたもんかねぇ・・・ま、ほっとくわけにもいかんか」
なんでほっとくわけにもいかないのか。
別に
なんせ
何百年も生きているとこういう事にも出くわすんだと
これも
何を言っているかわからない?
まあそうだろうな。
俺が言っているのはこの状況、つまるところ戦争で家族や帰る場所をなくした状況。
それが昔の俺と
だから、俺はオーディンとして、そして
それが運命ってやつなんだ。
きっとな。
ヴァルハラ外伝 ありすとオーディン
「で、お嬢ちゃんはいつまでここにいる気なんだい?」
言葉通じてるんだよな?
「
ふるふる。
少女は首を横に
「
こくり。
どうやら
もしくはいつかこうなる事を親が教えていたから
何にせよ子供ってのは
この子はもう現実を受け止めきっただろう。
ってのは
「とりあえずご飯食べようぜ。俺は腹ペコだ」
こくり。
そして少女は立ち上がり、初めてこちらを見た。
その目には何が
少女の目の前にはいかにも
まあ村で
とにかくちゃんとついて来てくれるなら
安心安心。
「っぁ」
「ん?なんだ?」
言葉が話せないのか?
「まあ話すのは
こくり。
こうして俺と戦争孤児の少女は近くの森まで歩くこととなった。
歩いている最中も
だがここまで警戒しないってのもある意味
ボロボロのおっさんにさらにボロボロで
これ
「
と
こちらを不思議そうに見るばかりだ。
まあいっか。
そんなこんなで森へついいたわけだが。
「とりあえず外も中も綺麗にしてやらんといけねぇよな」
少女は首をかしげる。
まあそりゃわかんないだろうよ。
「
水と風が
少女は何が
たちまちに少女の体は綺麗になっていった。
さすがに服はボロボロのままだったが。
服は白のワンピースだったようだ。
「すごい・・・あ」
「声もでたな。
「・・・ありす」
「ん?ありす?不思議の国の?」
「そう。私の名前」
「ふむ。ありすちゃんか」
名は
「よしわかった。ありす。とりあえずお
「うん。で、おじさんの名前は?」
「俺か?俺は・・・そうだな・・・そうた・・・いや、ここは新しい名前にするか。んー」
ふと空を見上げた。
何百年生きている俺にとって名前などどうでもいいのだ。
今日は
青・・・
そして
優斗なんてどうだろうか。
「俺の名前は蒼希優斗だ」
「・・・あ、お、き・・・ゆーと?」
「あー、こっちの言葉だと発音しづらいのか。
「ゆーと。
「・・・ま、いっか」
そうして俺、蒼希優斗とありすの生活は
最初こそ笑わない子だったが、一緒に生活をしていくうちに実は
よく食べよく笑ういい子だ。
ありすという名にちなんで服はロリータっぽい服やワンピースなどを
何とも服が
勉強も教えてやった。
頭はいい方らしい。
天は
これは
そしてありすを
俺達は多少
町などにはたまに食料を買いに行く
その生活にも一切の
まあありすの
昔からそういう生活をしてきたのでそっちの方が
それにつき合わしているのも悪いとは思ったが、
ありすも成長し、日本で言うなら中学生にもなろうという
そろそろ元の生活に
俺もそろそろ
そして俺はある一つの決心をしたのだった。
「なあありす」
「んー?なあにー?」
「俺が神様だって言ったらどうする?」
「・・・あははははは!ゆーとが神様?なにそれ、今
まあそういう反応になるようなぁ。
でも信じてもらわないといけないんだなぁこれが。
「まあ気持ちはわかるけど、お前も一度俺の
「魔法?そんなの見たっけ?」
「まあ俺が
「じゃあ魔法見せてよ!ゆーとの魔法みたい!うふふ」
こいつ完全に馬鹿にしてやがるな。
いいだろう、見せてやろうじゃないか。
「
俺が一本の木に
燃え盛る木を見てありすは
「・・・すごい・・・って!木が!森が火事になっちゃうよ!」
「
燃え盛る木に次は大量の水が
ジュージューと燃えては消えるのを
「すごーい!あ・・・でも木が
全てが燃え
そんな木を見て可哀想と思うありすに心からそのまま優しい子に育ってくれと
「
「わー!木が!木が戻ってく!すごいすごい!よかったねぇー!木さん!」
木さんってなんだとも思うが・・・。
まあ今の魔法は治すと言うよりも木を
「これでわかったか?」
「うん!わかった!ゆーとは神様!」
「うむ。
「神様、どうかこの私にステーキを食べさせてください」
「じゃあ今夜はステーキだ」
「やったぁ!」
「ってそんな話じゃないんだよ」
ありすの頭を
まだまだ子供だなぁとも思いつつ、子供だからこそ今ここで
「それでだありす。もしこの神様の力がありすも使えるとしたら、お前はどうする?」
「え、私も使えるの?」
むくっと体を起こすありすを
ありすは
だからこそ俺が近くにいるのは
ありすには
おそらくこの時代で俺が
だが、俺はそもそも眷属を作った事はない。
それには
もし初の眷属を使った場合、ありすが悪い方に力を使ってしまわないか。
俺の
後は普通の生活がしたいようであれば普通の家族の元に魔法で記憶を書き
それをありすの意見を
「もし、の話しだ。もし使えたら、ありすはどうしたい?」
「んー、ステーキ食べ
「あ、いや、そういうのじゃなくてだな・・・」
「・・・
「・・・そうだな」
俺の考えていることが読めてしまったのだろう。
なまじ頭がいい分最近はその
「復讐、したいか?」
「別に?」
ズルッ。
という効果音と共に俺は切り株から
「
「んー、ゆーとは私に復讐してほしいの?」
「そんなことはないけどよ。だって自分の親も
「それが普通なら復讐するよ」
「・・・」
「
「・・・あぁ・・・その
昔の自分に聞かせてやりたいもんだ。
俺の
だが今となってはむなしいだけだ。
自分の道が
だからこそ
同じ
自分と同じ判断をすると思っていた。
あぁ、思っていたさ。
やっぱり俺は間違ってたんだな。
師匠、ふがいない
「・・・ゆーと、泣いてるの?」
「泣いてねーよ。ちょっと過去に
「んー・・・まあすごく
「お前の故郷は
「ちーがーうー!ここ!」
「・・・ここ?こんな一年ぐらい
「それもちーがーうー!ゆーとのいる場所が私の帰る場所!」
「・・・」
言葉を
確かにいい子に育ってくれとは願いながら育ててきた。
だがこんな事を言ってくれるとは・・・。
俺はひたすらに顔を
「私はゆーとと居れて楽しいよ?」
「もうわかった。わかったからそれ以上言うな」
「・・・泣いてるの?」
「泣いてない!」
「ってかなんでゆーとが泣くの?ここ私が泣くところじゃない?」
「大人は色々あるんだよ。・・・まあ復讐する気がないのはわかった。じゃあもう一つ
と言っても、今の反応からもう答えは見えてる気がするけどな。
そう思いながらも俺はありすに質問する。
「普通の生活はしたくないか?」
「んー、
「普通の生活に戻ればもっと美味しいもの食べられるかもしれないぞ?」
「それは
「・・・そうか。わかった」
この子なら大丈夫だ。
確信した。
オーディンの
きっと道を
「ありす、俺の眷属にならないか?」
「眷属・・・?なにそれ」
「神様の使いみたいなもんだ」
「なったらどうなるの?」
「俺の
「じゃあなる」
「また即答だな」
「だって私の命はゆーとの物だもん」
「ん?どうして」
「さっきも言ったけど、私は諦めてた。村が燃えて、皆いなくなって、わかってたけど何もできなかった。何もする気になれなかった。だから私の命はあそこで一度なくなってるの。だからいまここにいる私の命はゆーとのもの!」
なんと無理やりな
まあそういうならそれでもいい。
それも運命なのだろう。
「・・・じゃあ眷属の
「なにするの?」
「んー、まあ眷属になる方法は色々あるんだが、ここはちゃんとした方法をとるのがベストだな。
「ヴァル、キュリア・・・?」
「まあそこらへんは後でおいおい教えるさ。そこら
「はーい!」
「天界のゼウスの名を
俺がその
天界の眷属契約でもっともポピュラーな契約方法だ。
「ありす、
呪文を唱え終わると、
数秒後には
「よし、これでありすは俺の眷属だ」
「・・・なんか今ずるしなかった?」
「いーんだよ。俺くらいのすごい神様となると多少ずるできるもんなの」
「えー、なんかずるーい」
「じゃあ30分ぐらい
「う・・・それはやだ」
「そうだろ?」
「それでそれで?どうやってさっきみたいな魔法使えるの?」
「あー、それなんだがな。実を言うと、ありすはほとんど魔法を使えないんだ」
「・・・えー!なんで!」
「まあその辺もおいおい・・・そうだな・・・ありすが使えるのは風魔法くらいかな」
「・・・なんか
「そんな事はないぞ!オーディンの眷属となれば眷属としてはかなり強いんだからな!」
「ふーん」
こうして最後には
それからというもの、俺とありすはいろんな国を
俺は天界からも少し
といっても昔からオーディンは
いわゆる神同士の
まあロキのやつは
つまるところありすも眷属としては平和な日々を送る事となった。
一般人としては中々に特殊だろうけども。
神としても人としても戦えるように。
オーディンの
ある
眷属となってからのありすは
そうして頭もよく、
そして月日は流れ、
とはいかないんだがな。
まあ俺からは以上って事だ。
時代はそれから約2年後。
ありすも高校生くらいの年になり、
俺は思った。
今のままでは
主に身長差だったのだが。
外国にいることが多かったため、年を30
ありすのさらなる成長の為に俺は
俺の
俺が
使用者の見た目すらも変えれてしまうこの
と言っても
それ故に天界から制限を受けている今でも使える秘術だ。
俺は悠久の黄昏を使って年齢を17歳に凍結した。
これでありすとの身長差は
おそらく10センチくらいかな?
今ありすは森に魚を
戻ってきたときの
◆◆◆
「ただいまー・・・あれ?
「よう」
「・・・誰あんた。私達に
「俺だよ。優斗だよ」
「んなわけないでしょ。そっちがその気ならこっちからいかせてもらうよ。はぁ!」
私はもっていた魚を
優斗の名前を
それとも私の
「痛い痛い!本当に優斗だってば!」
「まだ言うか。優斗はそんな
「信じてくれよ!あ、そうだ。グングニル!」
突っ伏した敵がそう
武器を出したという事は神の
「そんな
武器に
そして
「・・・あれ、これ本物のグングニル?」
「だからそうだってば!俺!優斗!」
「え・・・え?えぇ!」
あんなおっさんだったはずの優斗が・・・なんでこんな
「
「ご、ごめん・・・」
「確かに話し合いを求めてきながら
「・・・はい」
言われている事実の真っ当さにただただしゅんとなっていく。
もし本当の敵だとして、優斗ほどの強さだったなら私は勝てなかっただろうし、相手が話し合いを求めているならこちらも相手の
と、今の一瞬でそこまで頭が
つまるところ、目の前にいる優斗がオーディンであるから、そして私が眷属であるからその
優斗、オーディンの眷属になってから約二年。
私はある程度の神への
といっても
まさに神の
「それで、その姿は何なの?」
「あー、これな。まあちょっと驚かそうと思ったのも事実なんだが、
「実戦的?それなら今まで何回も戦ったりはしてるじゃない」
「俺が言う実戦ってのは神との戦いだ」
「神・・・」
今まで私は人間しか相手にしていない。
それだけならば眷属であるこの体と今まで
神同士の戦いがあると言うのは話には聞いていた。
だが優斗についてきて今までそんな戦いは一度もない。
正確には優斗は裏で戦っていたりもするのかもしれないが。
私個人としては全くの
「そろそろロキとか動き出す
「ロキって何度も優斗に戦いを
「百年に一度は来るからなぁ、あいつは」
「・・・ちょっと待って、優斗って実はものすごくおじいちゃん・・・?」
「あれ?言ってなかったか?俺はもう400年は生きてるぞ?」
「・・・神様ってやっぱ死なないのね・・・」
「んー、そういうわけでもないんだが・・・まあ俺はそうそう死なないな」
優斗が
なんかそんな気はしてたし。
でも、同じような年齢になっていることに
だって今まで中年のおっさんだったんだよ?
それをすんなりわかれと言う方がおかしな話だよ・・・。
まあでも、
「で、その神と戦うための修業をこれからするってことでいいのね」
「お?もっと突っ込まれると思ってたけど、
いや、
でも理由はとりあえずわかったから飲み込んであげるのよ。
ってのは言葉には出さなくてもきっと優斗はわかってくれる。
それが神と眷属の
「とりあえずご飯にしよ。・・・あーあ、魚ちょっといたんじゃった」
「・・・俺のせいじゃないぞ」
「優斗のせいでもあるから」
そんな感じで、見た目が変わった優斗との生活が
と言っても
それから数か月。
私は街に出てきていた。
森で過ごすのが基本の
食べ物は基本的に自分たちで
服やちょっとした小物など、買うものは割とあるのだ。
といっても優斗は自分で服などを作ったりもしている為、
「ちょっとちょっと、そこのお
「ん?何?」
特に警戒もせずに
振り返った先には
手にはサイレンサー付きの
男たちの顔には
パシュ。
「くっ・・・お前たちは・・・この間の・・・」
私は振り向きざまに右足の太ももを
目の前にいたのはつい先日あしらったばかりの地元マフィアだった。
かといって一般人に眷属の力は使わないように言われていた。
「女の子一人で歩くのは
「あなたたちが一番危ない人だと思うんだけど」
「え?何?足が痛いって?しょうがないなぁ俺が
パシュ。
「ぐぁっ!・・・こ、の・・・!」
「アハハハハハ!俺達に
「ういっす」
私は
「さーて、そろそろ
「全て話したわ。私達は
「んなわけねぇだろ!どこの手の者か早く言え!」
「ぐっ・・・!だから・・・私達だけだと・・・」
「まだ言うか!」
私は腹や顔を
時にはスタンガンによって電流を流される。
私が
そろそろ優斗も
優斗が来ればお前たちなんか・・・。
いや、それでいいのだろうか。
いつまでも優斗に守られているだけの生活。
それで本当にいいのだろうか。
いつだか優斗に言ったことがある。
優斗をいつか守れるように強くなると。
優斗が来なくても私は大丈夫な事を示さなければ。
私がそんな事を考えている間もマフィアたちの
この拷問に
だが、そんな考えも、爪を
「あぁぁぁぁぁぁ!」
「ちっ。
「ひぎっ!ぁぁ・・・あ・・・」
「おい、そこで何してるんだ?」
何時間経ったかももうわからなかった。
だが、その聞き覚えのある声はすぐに誰かわかる。
「ゆう・・・と・・・」
「ナイト様のお出ましか。てめえら、死なない
「俺は何してるんだって聞いてんだ。うちの
眠ってろと言われても、こっちは全身が焼けるように痛いのだ。
だが
優斗の体の周りには
「なんだ!なぜ
「・・・確かにそう呼ばれた時代もあったな。でも俺にはお前らの方がよっぽど
「くそ!ガキの見た目の化け物め!」
「すまんがお前らにかまってる余裕はないんだ。うちの姫様の
優斗はゆっくりとこちら側へ歩いてきた。
周りの人間は銃を
「くそガキが!死ね!」
「ブルーランス」
勝敗は一瞬だった。
優斗はオーディンの力で、敵の力を
動く気力もなくなった敵はバタバタと倒れていった。
私の元に
「ゆうと・・・」
「全く・・・
「でも、一般人には神の力を使うなって・・・」
「こいつらは一般人じゃねえよ。
目の前が一瞬とてつもない光に
目を開けると、そこは現在私と優斗が
「
優斗は私をそっと地面に下すと、何やら
それを私の
「本当はフレイヤにでもお願いして
「・・・大丈夫」
「よし、いい子だ」
私の頭を
痛いと言う
おそらくもう痛覚が
むしろかかっている液体が気持ちよくすら感じてくる。
「
みるみるうちに私の傷は
おおよそ一分くらいで体の傷は消え去ってしまった。
「・・・ありがと、
「お前は俺の眷属なんだ。傷を治すのは当たり前だ」
「それもそうだけど・・・助けてくれ・・・て・・・」
敵の
単に私の目に涙が
とにかく、言葉に言い
ここで泣いては
私は強くならないといけないんだ。
優斗に守れるくらい、強く―
「泣きたいときは泣けよ」
優斗が私の思いを
そんな事をされたら・・・私は・・・。
「・・・うっ・・・うわぁぁぁぁぁん!怖かったぁぁぁぁぁ!痛かったよぉぉぉぉぉ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「おー、よしよし。まだ子供らしい
「ぐす・・・そも・・・そもそも来るのが・・・ぐすん・・・遅いのよ」
「それは悪かった。
「優斗のばかばかばか!」
「いたいいたい」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
きっとこの日からなんだろう。
私が優斗に恋心を
私が
最初は父親のように思っていた。
でも姿を変え、同じ年頃のように感じるのはそう時間はかからなかった。
そして
私にとって
優斗さえいればそれでいい。
他には何もいらない。
優斗だけが私の全てになっていた。
優斗がいればどんな場所にも行ける。
どんな敵にも立ち向かっていける。
どんな
私が優斗を守れることなんて一生無いかもしれない。
でもきっといつかは優斗に
きっといつかは・・・
「わぁ!こんなちゃんとした家初めて!」
「悪いな、今まで森の小屋だけで」
事件から数か月後、私達は日本に来ていた。
日本では森の中だと色々と問題がありそうだと言う事で、小さなアパートを借りることになったのだ。
「別に私は森での生活に
「言ってることがぐちゃぐちゃだぞ。まあ日本だと外にずっともいられないからな。すぐ見つかっちまうし」
「これからはお風呂も毎日入っていいのよね!」
「かまわないぞ」
「やったぁ!」
「まあはしゃいでるとこ悪いんだけどな、ありすにはちょっとしたイメチェンをしてもらおうと思うんだ」
「うふふふふ!・・・イメチェン?」
「日本に来る時も言ったが、今回の時代は俺の連れであるフレイヤとトールが日本で
「だからとりあえず日本にいつでもこれる
「あぁ。ここを拠点に外国の方に
「で、なに、イメチェンって」
「・・・お前は日本では
日本人は黒髪が主流。
外国人も数多くいるが、外国に比べて私の金髪は目立ちすぎる。
おそらくそう言いたいのだろう。
身長は日本人の女子平均くらいだろうが、さすがに金髪で外を歩くと相当に目立つだろう。
「まあ確かにここに来るまでもすごく見られてたわね」
「ありすは見た目も
「かっ・・・」
可愛い?
今可愛いって言った?
「だっどっ!どうするのよ!そんな事言ったって!
「・・・なんか怒ってるのか?」
「お、怒ってなんかない!」
むしろ
喜んでない!
「染めてもまた金髪に戻っちゃめんどくさいからな。
「魔法で?そんなことできるの?」
「そんな
最終的には腰まである長い髪が少し茶色がかった黒色になってしまった。
「すごーい!あいかわらず魔法って何でもできるのね」
「まあ俺の場合は少し
「私も魔法使いたいなぁ・・・」
「ふふん。そんなありすに
「え!もしかして風を
「そのまさかだ!じゃじゃーん!」
優斗がふところから取り出したのは小さな二つの石だった。
いや、石と言うには
「その石を使って魔法を覚えられるのね!」
「んー、
「すごい!そんなのがあるならなんで今まで出してくれなかったのさ!」
「
「・・・なんかもう
「言う前から
「やっぱりそんな事だろうと思ったわよ。で、その中にはどんな魔法が入ってるの?」
「二つともありすに見せた事がある魔法だ。一つは【
「へー!中々いいじゃない!」
「だが、俺はともかく、こいつには
「・・・できの悪いドラ○もんの秘密道具みたいね。そんなもの使うくらいなら優斗の魔法に
「俺とありすが
「・・・まあいいわ。で、もう一つは?」
「こっちは
「・・・確かによく優斗がやっているのは見てたけど、人の記憶を操るってかなり危ない魔法に見えるんだけど・・・」
「んー、記憶を操っていると言うよりも
「これも
「緊急と言えば緊急用なんだが・・・」
何故か
「まあ、なんだ。ありす」
「なによ」
なにか
「学校、行ってみないか」
「別にいい」
「おい!
深刻な表情に
優斗は何もわかってない。
確かに昔は学校に行きたいと思う事もあった。
でも今は優斗がそばにいるだけで何もいらないのだ。
「だって学校に行くより、優斗の元で強くなりたいもの。それに学力とかならそこら
「確かにありすはトップレベルで頭がいい。眷属の力抜きにしても運動神経もあるしな。学校に入ったら
「有名人になりたいわけじゃないし。私は優斗を守れるようになれればそれでいいよ」
「お前なぁ・・・学校に行くのも大事な・・・まあいいや。とにかくこれはお前に
「400年もたったら死んでるわよ」
「俺がお前に助けられる事はないって言ってんの。お前は
優斗に守られるのは
むしろ
でも、いつか
一度でもいいから、優斗を守れるように、そんな強さを身につけたい。
そんな日からまた半年くらいたった。
日本の家をベースに、各地を回り続ける日々。
だが、優斗はあえて会おうとすることもない。
神とは基本的に
それに昔と今は違うとも言っていた。
私にはわからない神同士の何かがあるのだろう。
そんな中、私はある一つの決意を胸にした。
やっと言葉にすることを決めたと言うべきだろう。
日本から遠く
そこでいつもより
どういう反応をされるのだろう。
いや、どんな反応をするかなんておおよそ見当はついているのだ。
困らせるつもりなんてない。
でも、どうにも言わないで押さえておくこともできなくなってしまったのだ。
そう、私は優斗に告白する。
今は返事をもらえなくとも、私と優斗は今後ずっと一緒にいるだろう。
今は私の気持ちを知ってもらうだけでいい。
それで一瞬気まずくなったとしても、私と優斗なら大丈夫。
そんな
「ねぇ、
「んー?なんだー?」
今から告白されると知らない優斗は、いつものようにこしらえた
優斗が
「私ね」
「おう」
「優斗の事が好き」
「・・・俺も大事な家族だと思ってるぞ」
「そうじゃない!一人の男として好きって言ってんの!わかってるのに
「・・・あのなぁ、確かに今の俺の見た目はありすとさほど変わらないようにはしてるけど、俺は400歳を超えるおじいちゃんだぞ?」
「それでも優斗が好きなの。一生そばにいたい」
「・・・」
優斗は困り顔で頭をぼりぼりかいていた。
この反応は
きっと優斗はとっくの昔に私の思いなんて気づいていたはず。
それでも、いや、だからこそ
でも今私は伝えてしまった。
これで優斗は考えざるをえない。
「ちょっと外の空気
「・・・
いや、まあわかってたけど。
どう話に終わりをつけようか
私もわざわざ
だって、優斗は私の元に戻らないといけないし、私も今動ける
心臓がうるさい。
一世一代の告白だ。
これから先、優斗以外の事を好きになる事なんてないだろう。
なんて。
わかっている。
好きなんて気持ちはそう思わせるものだ。
未来の事なんて誰にもわからないのに。
それこそ、神様にだってわからないはずなのだ。
それでも、今この
私には優斗ただ一人。
・・・・・・・・・
半日が
優斗のやつはどこまで行ったのだろう。
一日
まだ優斗は帰ってこない。
三日経った。
さすがに
一週間経った。
半月経った。
神の力が消えていない事から優斗が死んだりしているわけではない事はわかっていた。
だが、何かがあったのだ。
もしくは私に会いずらくなってしまって遠くに行きすぎて兵装が使えなくなったのか。
何が理由なのかはわからないが、優斗は
一か月経った頃、私は優斗を探しに日本に旅立つことにした。
食べ物もお金にも困ってはいなかったので、一人で生活することはできる。
日本の家に行けばもしかしたら優斗がくつろいでいるかもしれない。
そんな
だが、
逆にいたらタコ
私は優斗を探す道中である
それが日本に戻ってきた理由でもある。
神が生まれるという成神市には、神にまつわる伝承がいくつもあるそうだ。
最初はただの昔話くらいにしか思っていなかったが、いざ成神市についてみると私の考えは一気に変わった。
街には神の
個々の神が漂わせている気配はない。
それでもなんとなく
「気持ちいい風・・・」
辺りはすっかりと夜になっている。
そんな中、私は
ここに来たのは特に理由はない。
なんとなく高い所の方が気配を
そんな事で
だが、長く黒い髪はひとしきりに
そんな髪をかき分け、私は風から情報を得る。
オーディンは空の神。
といってもそこまで使い勝手のいいものでもないが。
その風魔法の一種ともいえるのが、風から情報を得る事だ。
はっきりとわかるわけではない。
私は風からこの街には少なからず神がいることを知った。
きっと神に会えば優斗、オーディンの
「ここならきっと手掛かりがあるはず」
そしてなによりここには
なんでも、科学技術によって
それが一部の人が使えると言うわけでもなく、一般人にも開放されていると言うから
それゆえに
「でもこの街なら眷属の力も多少は目立たないはずよね」
この街で力を使って神を
ついでに情報収集をかねて街の
SAによって
今私には
でも、不良共のSAに
万が一神との戦闘になったら・・・
「そのときはそのとき考えよう。・・・それにしても学校か」
ここで言う不良というのは学生の事なのだ。
SAを持ったチンピラもいるが、悪さをしている大半は不良らしい。
おそらく力を持ったことによって自分が大きく見える者が学生には多いのだろう。
それでふと思い出してしまったのだ。
いつだか優斗は学校に行かせたがっていた。
ふところからおもむろに
「まあ
成神第一高校。
あの学校には一層神の気配が
実際そこに神がいるとも限らない。
だが、神が集まってくる何かがある可能性はある。
「何にしてもまずは情報収集ね。借りてる家とも
さすがに
ならば魔石の力を借りて家を借りていた事にした方が早い。
そのついでに高校生となって成神第一高校に潜入するのも悪くはないかもしれない。
だが、今とりあえず私がしたい事は不良狩りだ。
情報集めと世直し。
それからでも遅くはあるまい。
「オーディン・・・必ず、見つけ出す」
そして私は夜の街に身を投げたのだった・・・
ヴァルハラ外伝 ありすとオーディン
―完―
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