三幕 【合宿】
「じゃあー
フレイヤの
そして無人島には俺とありす、ロキとフェンリル、ヘルメスと
5章 3幕【合宿】
「俺様達は個人的に
と言ってロキとフェンリルも森の奥に入って行ってしまった。
ヘルメスたちに教わると言うのはちょっとした
「して?俺とありすは何をすればいいんだ?」
ありすが明らかに暗い空気をまとっていたが、体を動かせば気分も変わるだろうと思っていた。
いや、それくらいしか思いつかなかったのだ。
本当は合宿に来るまでになんとかできればとは思っていたのだが・・・
まだまだ色んな意味で力不足の甘ちゃんな俺にはどうすることもできなかったのが
この合宿で少しでもありすの気持ちが変わるのを今は
「そうですねぇ。まずは自分のできることを
「できる事・・・?んー・・・
ヘルメスの言葉に返すため、おもむろに兵装し、自分でも
「俺ができることはこの兵装くらいなもんだが」
「
千里の
「何のって・・・オーディンだろ?」
「その手に持っているのはなに?」
「グングニル」
「グングニルでできることは何かしら」
「・・・力を
「神には
「ふむ」
力を奪うってのはたしかにすごい能力だとは思っていたが、俺が思っている以上にすごい力らしい。
ただ、俺はこの力の
「でもこれって体に当てないと意味ないだろ?」
「そのとおりですねぇ。直接
「無効化?そんな力があったのか」
魔法の盾についてはすでに何度も見ている。
はじめてあった時からその
あれを無効化できると言うのは確かに
「まあだからと言って、フレイヤさんのような
「確かに近づかないと意味がないもんな」
「そこでまず
「魔法・・・でもオーディンって魔法がほとんど使えないって聞いたぞ?」
「その通りです。今の神としてのオーディンにはその力はありません。オーディンの
「引き継がれた?」
ヘルメスの言葉を聞いて
学校の図書館で神について調べた時、オーディンは魔法の
「まぁ、その
「固有?オーディンの能力は力を奪うグングニルだけじゃないのか?」
「もちろんその通りです。なので、固有魔法もエナジードレインの能力を持った魔法という事になりますねぇ」
グングニルと同じ能力を持った魔法なんてもはやグングニルがある意味がないんじゃなかろうか。
「ですがこの魔法はグングニル
「まぁそうか。そんな強かったら本当にグングニルの意味ないもんな」
「この魔法は数こそありますが、少し当たった程度じゃ少し
この魔法を覚えることによって
「じゃあ早速教えてくれ」
「いいでしょう。魔法名は【ブルーランス】。
「わかった」
魔法は
それを頭の中で何本も
「ブルーランス!」
俺が魔法を
自分の後ろだったこともあり、
「・・・すげぇ。こんな
「まあ固有魔法ですしねぇ。グングニルを出すのと感覚は一緒ですよぉ。普通に魔法を覚えようとしたらこう簡単にはいきませんねぇ」
「でもこれ、あんまり使えなくないか?」
背中から発射される上に扇状に一直線。
これでは真上にいる相手にしか
「もう忘れたのかしら?そのための合宿なのよ」
と言われても今出したブルーランスは何十本、
だとするとこれを
背中だけではなく手からも出せるようになったりするのだろうか。
「まぁまぁ千里、あまりきつい事を言うもんではありませんよ。今回ブルーランスに
「なんか大変そうだな・・・とりあえず時間が
「と、その前に」
「まだ何かあるのか?」
「固有魔法と言うわけではありませんが、もう一つオーディンが使える魔法を
「まだあるのか」
固有魔法ではないとすると魔法としてはそこまでレベルが高くなさそうだ。
そんな感想をこの時点では
「簡単に言えば風魔法ですねぇ。オーディンは
魔法という言葉を聞いて少しおじけずいてしまう自分がいた。
オーディンが特に使えたという事は魔法のレベルとしては高い可能性がある。
「・・・で、それはどうやって使うんだ?」
と、聞いてみたはいいものの、ヘルメスに普通に魔法を覚えるのは
どうしても
「そうですねぇ。普通の魔法なら私が
そこでヘルメスは
ヘルメスが言っているのはありすにやってもらった方が早いという事だろう。
ありすは目線に気づいてはいなかった。
無人島に来てから俺が説明を受けている間、ぼんやりと海を
だがこんな
「あの・・・ありす」
「・・・ん。聞いてた。風力でしょ」
話は聞いてたらしく、すぐに海から目を話しこっちを向く。
だが、その
「風力はね・・・風を感じるの」
「・・・」
何と
完全に
千里は深いため息をつきながらも、こちらに
「別に頭がおかしくなっているわけではないわ。
「・・・そうなのか?」
だがその瞳はまたもや海の方を見ている。
「千里、お前風力使えるのか?なんか
「あなた
「おい、千里!」
千里の言葉にふと声をあげてしまったが、本来なら俺がやらなければいけない事だ。
強く千里に
「・・・そうだね。・・・悠真、風力やってみせるからちゃんと見てて」
「お・・・おう」
ありすがやる気を見せてくれるのはいいのだが、これでは何の
俺がありすを
何やってるんだ俺は。
そんな
だが、近くと言っても木との
ありすは何の合図もなくおもむろに右手を左の方へ持っていく。
そこで俺が感じたのは風が何か変わったという誰でもわかるような感想だけだ。
次の瞬間、右手を思いっきり横に振り払うと、目の前の木が
何の木かはわからないが、そう簡単に
だとしたらこの風力という力は台風、いや、もしかしたらそれ以上の力があるのだろう。
「・・・すげぇ」
ありすは得意げな顔をするわけでもなく、相変わらず
「わかった?」
と、一言口にした。
それに対する俺の答えはこうだ。
「さっぱり」
「
そうして、千里にばっさりと
ブルーランスを
どこか虚ろなありすと共に。
合宿の始まりとしてはいいスタートを切れたとは
その後ももちろん
ブルーランスは少量なら操れるようになったが、自分の背中以外から出す方が困難で、まだ1、2本しか他の場所から出す事が出来なかった。
風力に関してはなんとなく風を起こす
ありすの件もあり、魔法はとりあえず後回しにして武器での
大会は9月初めと言っていたし、合宿をやったとしてももう一回が
だとすると普段の生活の中で特訓する事も必要なわけだが、ありすが元に戻らない事にはそれもかなわないだろう。
ならばひとまず自分の事は
そんな事を考えていたらいつの間にか俺の
「・・・ン。おい、・・ディン。オーディン、いるんだろ」
なんだか
「オーディン、俺様が来てやっているんだ。早く扉を開けろ」
声の主はロキらしい。
もう朝だろうか。
寝ぼけ
俺が開けると鼻をフンッと
外を見ると辺りはまだ暗い。
おそらく俺が寝てしまってからそれほど時間は立っていないだろう。
「なんだよロキ」
特訓でバキバキになっている体を少し動かしてほぐしながら俺も部屋の中に入って行く。
ロキは
ロキは俺にも座れと目で合図してきたので、俺もベッドの方に座る事にした。
「まあこれと言って用事があったわけではない。だが
「・・・つまり
「心配?はっ!誰が
そんな義務は今初めて聞いたが。
まあだが口ではこう言っているが心配してくれているんだろう。
最近ロキの事がわかってきた。
割とかまってちゃんでいい奴だと思う。
口は悪いしいたずら
最初に戦ったときだってわざわざ専用空間で
ロキ
俺もとっくにやられている。
でもそうしないのはロキの
「ありがとうな」
「・・・何に
「ん?
単純に様子見をしに来たわけではないらしい。
まあさすがにロキと言っても用事がなければ俺のところまで自ら来ないか。
「さっきも言った通りだ。修行に身が入っていないのではここまで来た意味がないからな。まあ理由は主に貴様の
「まあ・・・そうだな」
ロキが言うようにありすが
俺も明日はありすの回復に
「貴様が大会で
「計画??」
「いずれ貴様に協力してもらおうと思っている計画だ。今はまだ教えないが、貴様にしかできん。お
「ふーん。まあなんでもいいけど。確かに今のありすは俺にはどうしていいかわかんねぇよ」
俺はそのままベッドに
そこには何も
今の俺はこの天井と一緒だ。
何か
ここに神様が落としたかのような雷でも降ってみろ。
一瞬でこの小屋ごと消し炭になってしまう。
それくらい今の俺は
「はぁ・・・貴様は下らんことを考えるな」
「・・・心読んでんじゃねぇよ」
「心の声がだだ
「うっせ」
「とにかくそんな事考えてる
「・・・結局強くなってもありすの心が変わるわけじゃねぇだろ」
「ったく、俺様が全て説明しねぇと貴様は何もわかんねぇのかよ。貴様の
「・・・そうだな」
ロキの言葉は
最初はこいつと
「俺様を仲間ごっこに引き入れるな。とにかく、貴様は今何をしなきゃいけなくて、何をしたいのかだけ考えてろ。じゃあな」
ぶつぶつと文句をいいながら出ていくロキ。
その背中を見送ってから俺はもう一度ベットに倒れこむ。
俺の悪い
こんな事じゃ
でも蒼の
声が聞こえたんだ。
きっとオーディンとなった事で蒼の残ってる気持ちとかが流れてきてるんだと俺は思った。
(ありすを
心の中の蒼が言っている。
もちろん俺の
それでも、今俺はありすと一緒に戦っていきたい。
そのためには
ありすがまた立ち上がれるその時まで、俺が倒れないように・・・
◆◆◆
風が気持ちいい。
不安になった時は
それは風を一番感じられるからだ。
今日
でも、風力があるおかげでここまで風が気持ちよく感じるとは思う。
無人島の真ん中にある山とも言えなくもない
悠真に悪い事してる
でもどうしても心の
私が今悠真に協力して一緒に強くならなければせっかく
わかってはいる。
「わかってる・・・けど」
顔を足と体の間にうずめて一人
今の私みたい。
そんな事をふと考えてしまう。
「なんで・・・死んじゃったのさ」
私達の
優斗だけが死んだら意味がないのに。
恋心が
一緒に戦えるだけで、それだけでよかった。
「なのに・・・なんで」
止めることはできない。
止めようとも思わない。
今はこの感情を少しでもなくさないといけないのだ。
周りに心配されないように一人だけで感情を
一緒にどうするんだろう・・・
「おやおや、女の子が一人でこんな所で泣いているなんて。皆様と一緒じゃなくていいんですか?」
「いいの。今は一人になりたいから」
「よければ話だけでも聞かせてもらえませんか?」
「・・・優斗が・・・オーディンが私達の為に死んだのよ」
「それはそれはご
「うん・・・でも、私の親みたいな兄弟みたいな存在だったんだよ・・・悠真の事フォローしなきゃいけないのはわかってるけど、どうしてもそんな気分になれなくて」
「前のオーディンに恋心もあったわけですか・・・」
「まあ、振られちゃったし、
「気持ちの整理をつける前に死んでしまったと」
「そう」
「なんともおいたわしや。それではこれからどうするのです?」
「わかんないけど、しばらく一人になりたいなって」
「そうですか・・・では私達がいい所に連れてってあげましょう」
「いい所?」
「えぇ、誰にも
「・・・優斗に?それは・・・いいかもし・・・れない」
「では連れて行って差し上げましょう。死後の世界へ・・・」
「・・・えぇ・・・おねが・・・い・・・っ!するわけないじゃない!」
夢うつつな気分からやっと
今私は誰と会話していた?
ジークフリートにやられた時のような
どうやらいつの間にか何かしらの
「ヒハハハハ!やはりそこまでうまくはいかんもんだな!」
「インドラ様が
「ヒハハ!ニーシャよ、それでは
「んー、それもそうですね!でもでもー、
「ふむ、それもそうかもしれん。ニーシャよ、やはり
なんだこいつらは。
私を殺そうとしていたのか。
敵はなんらかの神だろう。
男は身長がかなり高く、ヘルメスに
上半身はほぼ服をまとっておらず、代わりと言わんばかりの
こちらが神でほぼ
反対に女の方はかなり小さい。
おそらく身長が小さい方のロキよりもさらに小さいだろう。
その
だがその
二人の
だがこの二人はどこから入ってきた?
この島はだれも住んでいない無人島だ。
その上、ヘルメスが
この
後ろは
前には敵。
後ろに
「ありすとかいう少女よ、そう
「君も
ただひたすらにこの
「くっ・・・
私はパートナーである悠真の名前を口に出してしまう。
それほど
だが、後から思えばこの時口に出したのが
そうでなければ私はきっとここであきらめて死んでいたかもしれない・・・
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