二幕 【ヴァルキュリア】
3章 2幕【ヴァルキュリア】
「来るよ!」
戦闘知識はあまりないが、この前のオーディンチップのせいか、少し
「いきます」
小さくつぶやいた一言を
だが、
少女は分身を使うと聞いていたが、その様子はなく、足技が主な攻撃手段のようだった。
「くっ、早い!」
避けられない速度ではない。ないが、その一蹴り一蹴りの速度は
相手がどこに攻撃してくるのかを
少女は二人を相手しているのにもかかわらず、表情一つ変えずに上手く二人に攻撃を
不安は残るが、オーディンチップを起動させた方がいいだろう。
「ありす!力を使うぞ!」
相手の少女に集中している目をありすの方へ
今までのありすは兵装などしていなくても、見えない
だが今見るとどうだろう。
槍を持っている
「まさか」
力を使えないのか?
ありすが相手に
ならば何故?
いや、そんな事を考えている
今ありすを助けられるのは俺一人だ。
「オーディンチップ、起動!」
少女の攻撃がありすに集中している
手には
そして自分の周りには盾のようなものがある感覚が生まれる。
異常はない。
「いける!」
相手もそれに気づいたようで、ありすに攻撃するその足が、こちらに向かってくるのがわかる。
だが、こちらの方が早い。
「はっ!」
槍と相手の足が
最初にありすが戦っているのを見た時と一緒だ。
つまり、相手の足にはありすの風の槍と同じような物があるのだろう。
「ありす!大丈夫か!」
少女の足をはねのけながらありすの方へ声をかける。
相手の少女は、ターゲットを完全にこちらに
「悠真ごめん!力が出ない!」
なんとなくそうだろうとは思っていたが、本当に力がでないなんて・・・
「こいつは俺がなんとかする!ありすは自分の―」
ありすに話しかけていると、
「いてて・・・って痛くはないな」
なんとか槍で攻撃を防ぐことには成功していた為、攻撃をじかに
壁に
「戦いの
冷たく言い放つ言葉には気になる言葉が
自分たちの状況??
どういう事だ。
どのみちこのままではじり
ありすは力を使えないし、ジークフリートほどではないとしても、あの動きの速さとぬかりのない攻撃は戦闘のプロと言っていいだろう。
手を
「なにか勝つ
兵装。
神、もしくはその
いや、技なのかはわからないが。
とにかくそれを試してみる
「ありす!兵装はどうやってやるんだ!」
「兵装?でも今の悠真は・・・いや、兵装状態じゃないのかな・・・自分の、自分の一番強い姿をイメージするの!もし兵装できるんならそれでいけるはず!」
自分の強い姿・・・
そういえば蒼の兵装の姿は見ていない。
となると蒼と一緒の姿を想像することはできない。
オーディンという神の兵装があるわけではなく、自分の
「兵装!!」
ここ一番の声をあげ、強く自分の理想の姿をイメージする。
光に
少しひらひらした布がついているが、戦闘の
「できた・・・」
「私も兵装なら・・・兵装!」
続いてありすが兵装する。
髪が黒がかった茶髪のショートから、金髪のロングへ。
服が軽い鎧をつけた騎士の姿へ。
槍ももちろん持っている。
力は使えたようだ。
これで完全なる2対1。
「どうするよ、これで
相手の少女に投げかけるが、表情一つ変えないその姿はなんとも余裕がある。
いや、余裕というよりかはきちっと冷静に、
「そうね。これじゃ私が
少女の
だが、その言葉は
「ありがとうございます」
その
びりびりと肌を
これが神の波動というものなんだろうか。
「
謎の一言ののち、少女の体がピキピキと音を立て始める。
こちらからはよく見えないが、少女の背中から何かが出てきている。
この状況で動ければよかったのかもしれない。
だが、俺の足は
サナギからまるで
俺も動けないままだが、あのありすですら
これはなんだ?何が起こっている。
頭が
そんなうちに少女の体から完全にもう一人の少女がでてくる。
全く見た目が同じ姿だ。
「うそだろ・・・」
目の前には二人の少女が立ちふさがる。
ありすと
2対2どころか、これは
「これでどうかしら。
同じ言葉を二人が
だめだ、
どうにかしてこの少女を倒さないといけないんだ。
先に動いたのはありすだった。
体を地面から
そんな所だろう。
だが俺は飛ぶ方法まではしらない。
こちらはなんとか地上でありすと合流できるのを待つしかないわけだ。
ありすが動いたのを見て、少女の
相手も飛べるらしく、
空中での
「またよそ見?」
ありすの方を見ていたせいで
俺には集中力が
「俺だけ勝てても意味ないんでね」
そんな
「そう、なら心配しないで。二人ともここで倒すもの」
それを槍で
また蹴り。
正直持ちこたえるので精一杯という所だ。
だが、
これが兵装か。
さっきほど
だが
槍を振り回してみても、隙を見て突いてみても、その攻撃は当たらない。
当たるどころか完全に動きを読まれ、遊ばれている感じだった。
少女は
と言う事は殺すつもりはないはずだ。
つくとしたらその隙だとも思ったが、そんな隙すらない。
こちらが力をあげると、あっちも力をあげてくる。
体力の
力がなくなった所で拘束すれば一番危害はないだろう。
そのあかしに、相手はまだ兵装を使っていない。
「なめやがって」
「失礼な事を言うわね。なめてなんかいない。あなたには力を使ってほしくないとさえ思っているわ」
「じゃあいますぐ俺らを
「それはできない相談。力を使ってほしくないのと、あなたを倒すのは一緒だもの」
理解ができない。
そもそも話が通じる相手ではないのかもしれない。
俺は考えるのをやめ、攻撃に
◆◆◆
金属音が
ありすの槍と敵の少女の足がぶつかる音だ。
私の風の槍と一緒。
これはヴァルキュリアの力。
「あなた、なぜ私達を
その言葉に彼女は攻撃をやめる。
表情は読み取れないが、何かを考えているようだった。
「それに答える
ご主人とは
天界で何かがあったのかもしれない。
そうなると優斗の助けは来ない可能性もある。
優斗のグングニルがあれば
でも、オーディンである優斗と違って、悠真は神様の力を使える一般人だ。
そもそも悠真のグングニルに力を
「
悠真の方を
「知らないから
どういうこと?
「悠真は一般人よ!」
「これ以上答える義務はない」
くそっ、情報が少ない。
彼女からこれ以上は聞ける
私が動かなければあちらも動かないだろう。
また悠真を
いや、今度こそ守るんだ。
私が守って見せる。
一瞬で間合いをつめると、彼女は
槍を
そこから槍を回して
でもそう簡単に攻撃を
地面がない分、彼女の動きは
上も下も関係なくくるりと回転して見せ、攻撃をするりとかわされる。
そこからの
槍で
地上で戦った方が
彼女が二人で一人を攻撃してきたものなら、
ならばそのリスクも
そう思っていた。
だが、そう簡単に行くはずもなく、むしろこちらが完全に分断されている形になっている。
あいにく、悠真の方も倒せるには
逆に言えばそれくらいにしてもらっているのだ。
「はぁ!」
槍で突く、回す、
すでに何十回繰り返しているかわからない
体力の
でも悠真の方は先に体力が
ならここで全力で彼女を倒した方が
気合を入れろ、
「たぁ!はっ!・・・そこ!」
槍と蹴りの攻防がさらに激しくなり、こちらが
「やはりあなたには
まずい。
今兵装なんてされたらこちらは完全に不利だ。
「させない!」
高速の突きを彼女に
「
神様の力の事は全てを知っているわけではない。
むしろ知らないことの方が多いだろう。
まず、他のヴァルキュリアと
兵装が部分的にできるなんて話は聞いていない。
彼女の足には、そこだけ
すねあてと言うものだろう。
そもそも兵装をするときは一瞬でも隙ができる。
ならばその隙を与えなければ兵装はされないはずだった。
その隙はなかったはずなのに、彼女の足には部分的に兵装と思われる
早い、早すぎる。
「なにそれ・・・」
「ただのヴァルキュリアと思われても
「くそなまいき」
さらに激しくなる槍を、次はかわすのではなく、兵装したそのすねあてで防御してくる。
攻撃を一切許さないその防御力に、こちらは何の手出しもできなかった。
それでも攻撃をやめることはできない。
これ以上兵装されてしまっては本当に
ここで
「はぁぁぁぁ!負けない!」
その言葉むなしく、私の一撃は完全に防御され、さらには蹴りの一撃までも喰らってしまう。
「ぐっ・・・
さっきまでの攻撃にはなかった強力な一撃。
彼女の兵装はそこまでの力を引き出すと言うのか。
これじゃ勝算なんてなにもない。
負ける。
「ありす!」
その時だった。
悠真の声とは違う、聞きなれた声が私を呼んだ。
「優斗!無事だったのね!」
空中から高速で現れた優斗は、相手の少女を
「すまんな、遅くなって。なんとか間に合ってよかった」
「ほんとに遅い!優斗はいつも遅い!」
少し涙が出そうになるのを必死で止め、優斗に
優斗はすまんすまんと軽く
「ヘルメス様、オーディンが。・・・はい、では
彼女はあっさりと空を飛んでいき、ふと悠真の方も見ると、そちらも空に飛んでいくのが見えた。
さすがにオーディンである優斗とは戦わないらしい。
なんとか乗り切れたことに
そのまま優斗と一緒に悠真の元に戻った。
「で、あれは何なの」
優斗に今回の事を問いただそうとするが、優斗は
「今日はもう遅い。明日話すから今日は
疲れていた私と悠真はそれをとりあえず
つくとそこにはロキ
優斗はと言うと、魔術研究会につくなり用事があるとすぐさま出て行ってしまったのだ。
私と悠真はいったい何に
その夜はあまり
◆◆◆
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