二幕 【異変】
ロキが学校に戻ってきたことを知ったその次の日。
俺たちは皆で外に遊びに来ていた。
今日は土曜日。
学生にとって
だがそれぞれ部活やらバイトで忙しいのが高校生というもの。
俺みたいな何もしていない
そんな中、君丈と縷々の部活が休みだと知った俺は、久々に遊びに行こうと誘ったのだ。
ついでに言うと蒼やありすも部活には参加していないため、五人で遊ぶことになった。
学校では仲良くしている俺たちだが、外で遊ぶのはこれが初めてだ。
2章 2幕【異変】
「ねーねー、これ買ってよ悠真君」
「バイトもしてない俺がそんな金あるわけないだろ」
「
「うぐっ」
縷々が痛い所をついてくる。
SAは
しかしその実質、本当に誰でも受けられるわけではない。
それと言うのも、最先端技術の為、
だが、成神市はそれを
とはいえ、数十万単位なのだ。
俺は去年の夏頃から冬にかけてバイトをいくつもかけもちしてそのお金を貯め、手術を行った。
だが、手術を行ってもチップを買うにはいたらなかった。
チップは国ではなく、個人で販売している物が多いのだ。
そのため、安くても数万円と言う価格に、俺はそこまで手を伸ばす気にはなれなかった。
なので今持っているチップも買ったものではない。
「そう悠真をいじめてやるなよ。ほら、あそこのゲーセンでも入ろうぜ」
助け船を出してくれたのは君丈だ。
君丈の中で遊ぶと言ったらゲーセンなのだ。
「ん?なんか新しいリズムゲームでもやるのか?」
ゲーセンの一角に起動していない見慣れないゲームがあった。
「あれでしょ。最近流行の踊るやつ。こっちにもやっと入ってくるってクラスの子が言ってたし」
ありすの一言で俺もそれを思い出した。
昔からあるような踊って足で入力するリズムゲームとは違い、完全に振り付けで得点をとる物らしい。
「ありすちゃんって踊り得意そうだよね」
確かに運動神経抜群のありすなら踊るのも得意そうだ。
君丈が言う事は一理あるだろう。
「あー、やめとけ。ありすに音楽は向かん」
「なっ!失礼ね!私だって!・・・まあ踊るくらいなら」
「じゃあこの後はカラオケいこうか」
「あ、それはパスで」
蒼とありすが言い争っている光景はもはや日常的な物だ。
そんなこんなでゲーセンを時間も忘れて楽しんだ俺たちは、時間もたっていたので帰る事になった。
ゲーセンから外に出ると。
―――
やっぱり遊ぶことにした。
皆はそれに賛成し、日が暮れるまで遊んだ。
遊んで、遊―で、遊ん―、―――
次の日も休みだたたた。
遊んで、あそんで、asonnde、―――
久しぶりにここまで遊んだだろう。
何年振りだろうか。
なかなか皆で遊ぶ機会などない。
明日は学校だ。
学校か。
また遊ぼう。
そうだ、明日は何をしよう。
明日も明後日も明々後日も一週間後も来月も来年も―
遊びまくろう。
ぼくたちはあそぶためにうまれてきたのだから
◇■●◆×
学校でも遊んでいた。
体を動かすのはいいことだ。
遊んで体を動かして。
そうしていれば体がなまる事もない。
いざって時も体を動かせるだろう。
いざってなんだ?
そんな時あるか?
いや
ない
そんな時は
もうこない
俺たちの日常は続いていく。
楽しいたのしい
ソレハタノシイガクエンセイカツヲ
何も考えることはない。
―――――――
何も考えたくない。
――――――ま
これが日常。
―う――――!
これがあるべき日常なのだ。
き―――お――し――――
皆が楽しそうだ。
―――――――――ゆうま
・・・ゆうま?
―――――――ゆうま!し――――
誰かが呼んでる。
―――――――――――
いや、呼んでないか。
でも聞き覚えのある声だった。
あれは誰だ。
ありす?
君丈?
蒼?
・・・縷々?
そうだ。
縷々の声だ。
でも目の前に縷々はいて、楽しそうにありすとお喋りをしている。
じゃあ誰だ。
―――ゆうま!
また聞こえた。
この声に励まされた気がする。
おい、――ま!
信じろと言ってくれた気がする。
しっか―――、ゆう―!
そうだ。
俺はこの声に
信じる事もまた戦いだと。
それを言ってくれたのは・・・
「フレイヤ」
そう、フレイヤだ。
でも目の前には縷々が・・・縷々?
いや、誰だこれは。
目の前にいるのは縷々じゃない。
次第に見ていた光景が
■■■
「悠真!私がわかるか!」
頭が痛い。
ここはどこだ?
学校?
「あぁ、なんとかな。フレイヤ、だろ?」
「そうだ。私はフレイヤだ。やっともどってこれたな」
まださえきらない頭をあげ、辺りを見渡すと、ありす、蒼、君丈が同じように頭を
「ここ、俺たちの教室か」
「悠真も起きたか。あー、なんて説明したらいいかわからんが、・・・
蒼が言葉を途切れ途切れに俺に
「つまり俺たちは・・・
「幻と言うよりは、脳にこういうもんだと
フレイヤが蒼に代わって説明を始めた。
「私も気づいたのは昨日の事だ。縷々の様子が変だったので、外に出ようと思ったが
幻術なるものがかかったとしたらゲーセンを出たとき辺りだろう。
その時からの記憶が
「とりあえずありがと」
フレイヤにお礼を言うと、私達が不覚だったと頭を下げられた。
「状況を整理すると・・・神二人と眷属一人、そして二人の人を幻術にかけた事になるよな。・・・今回の相手はちょっと厄介だな」
まだ
神様は三人ではないのか?
「なぁ、今、二人の人って言ったか?」
「悠真と縷々の事だ。縷々はフレイヤがついていると言っても表上はただの人間と何も変わらない」
何回も聞いた話を復習するように思い出していく。
俺は君丈にお礼として
やっとそんな頭が回復してきた時、教室の扉が
皆が
「・・・ロキ、が」
そこでフェンリルはばたりと倒れてしまった。
「次から次へと忙しいな、神の世界は」
フェンリルの事もあり、場所を保健室に移していた。
少し
ただ疲れていたのだ。
「私達もここまで連続と言うのは
いまだにフレイヤになっているのは、縷々も休んでいるせいだ。
眷属であるありすはわからないが、普通の人間にとって幻術をかけられると言うのは、ひどく
「こいつも寝かせてやってくれ」
開けっ放しの扉から入ってきたのは蒼だ。
続いて君丈も入ってくるが、その肩にはヨルムンガンドが
二人がベットに寝ていると、どうにも性別に
フェンリルは女で、ヨルムンガンドは男。
身長のせいもあるが、二人とも逆でも気にならない顔立ちをしている。
どっかで入れ替わったのではないだろうかとそんなファンタジーな事を考えてしまう。
・・・訂正。
神とかいるこの空間はすでに充分すぎるほどファンタジーだった。
「ロキとヘルはいなかったの?」
ロキ一派が学校にいることはすでに蒼の口から
蒼は無言で首を振る。
後でまた探すさ、と一言付け加えるとそこら辺にあった
「で?今回の敵は誰なんだよ」
俺は皆に問いかけたつもりだったが、誰一人として返事をする者はいなかった。
「目的は?」
答えたくないと言うよりかは答えられないと言った様子だ。
「何にせよ、神を含め五人も幻術にかけられるやつだ。油断はできないな」
蒼がそういうと、再び沈黙が流れる。
「ロキが・・・ロキが連れ去られた」
そんな中、沈黙を破ったのはフェンリルだ。
ゆっくりとベットから起き上がると、話を続けた。
「俺が見た敵は一人だけだ。俺も
状況から
一度くらいしか聞いてないので、なじみがなく覚えてはいないが、それぞれそんな名前だった気もする。
「連れ去られたってどこに?」
「わからん。あいつは何も言わないでいきなりさらってたんだ」
「結局振り出しか」
蒼にいつもの
さすがに相手が何の
「なぁ、今回の敵はロキの時より強いんだろ?まあロキ達は仕方ないのかもしれないけど、蒼たちが封じられるくらいなんだから。そんなのどうにかできるのか?」
ロキ一派は力を奪われていると蒼は言った。
だが、力を今回は奪われていないはずの蒼や君丈がいた状況でこれだ。
どう考えてもこちらが不利だろう。
「まぁそうだな。悠真だけじゃなくて多分ありすにもちゃんとは説明してないと思うからここで詳しく説明しとくか」
「なに、私にもってなんかあるの」
蒼がありすにも話していない事。
いや、そもそもありすは神についてどこまで蒼から聞いているのだろうか。
そんな疑問を考える前に蒼は話し始める。
「まず、俺たちは
趣味の話しなんて聞いていないが、やろうと思えばできると言う事だろうか。
つまりは
「私の事は自分で話そう」
フレイヤが話を引き継ぎ、話し始めた。
「私は基本的に魔術専門だ。
日本語は日本人ならできて当たり前だが、英語となると勝手が違うと言うような話か??
同じ言語でも持っているものが違ったりするわけか。
いや、この解釈であっているのかもかなりの疑問だが。
フレイヤに続き、君丈も話し始めた。
「まあ好き好みみたいなもんだ。日本人には合わない食事でも海外ではそれを美味しいと食ったりする。逆もしかりだ」
その説明はあっているのか、いささか不安だが突っ込まないことにした。
「ちなみに俺は近接と魔術両方いける。蒼みたいに多種多様な動きをできるってほどでもないし、フレイヤみたいにたくさんの魔術を使えるわけでもない。でもここ一番の力や火力は負けないくらいあるぜ」
なぜかドヤ顔になる君丈に俺は
「で?それがどう繋がるんだ?」
話しを本題に戻そうとすると、蒼が手で制止をかけてきた。
「まあ聞けよ。さっき相性って言っただろ?つまりは近接が得意なら近づいたら勝ち、魔術が得意なら離れた方が勝ちみたいな関係性があるわけだ。今回俺らがわかってる情報は、相手が幻術にたけていると言う事。幻術ってのは魔術の一種みたいなもんでな。
「じゃあ相手の幻術を封じたようなもんだから勝ち目があると?」
「まあそういう事だな。もちろんそれだけではないだろうが、幻術についてはもう考えなくてもいい」
考えなくてもいいと言われてもやはり知識がない俺には考えてしまう。
それともう一つ思う事があった。
「なあ、単純な事しか俺にはわからないから違うのかもしれないけどさ。なんか今の話聞いてると、三人の中じゃ蒼って弱い方なのか?」
もちろんこの三人の中ではと言う話だ。
皆が神の中でどの程度の実力を持っているのかもわからない以上、俺には優劣などつけられるはずもない。
「単純に考えればそうなる。だけど俺にも神器がある。俺の神器、グングニルは、遠くからでも命中すれば相手の力を奪えるって言うなかなかの
ロキ戦で力を奪っていたのは確かに見た。
正確には聞いていただけだが。
というか神ならだれでもできるのかと勝手に勘違いしていた所はある。
「あ、ちなみにありすの
「え、ないの?」
大人しく話を聞いていたありすが少し身を乗り出した。
「ありすは俺の
たとえばフレイヤの眷属なら近接は無理だが魔術はある程度使えると言う事か。
なら縷々が倒れた時、ありすがもしフレイヤの眷属なら結界を壊せたのかもしれない。
可能性の話しでしかないが。
「え、じゃあ私って結構弱くない・・・?」
不満を顔に出すありすを横目に、俺は話しを本題に戻す。
「じゃあロキはどうなんだよ」
そもそもロキ戦よりやっかいな相手なんじゃないかと言う俺の疑問からこの話は始まったんだ。
気になるのは
「前にフレイヤが言ってただろう?神器はその神にしか使えないって。でもロキは人の神器を使って自分の神器にできるとも言ったよな?」
待ってましたと言う表情でこちらを見る蒼。
ちょっとうざい。
「そう、ロキは
なんでさっきから関係のなさそうな機械の話しがでてくるのだろうか。
「でもな、ロキはいろんな事ができはするが、その専門家には勝てない。近接戦闘だけなら俺に負けるし、魔術ならフレイヤ、威力ならトールにも負ける。あいつの特異性は器用な事だ」
「じゃあ眷属が三人いるってのも器用の内なのか?」
ふとフェンリルの方を見るとすごくドヤ顔で話しを聞いていた。
ロキが
そしてその説明をドヤ顔のままフェンリルは話し始めた。
「ロキはすごいぜ。オーディンのやつが言ったように一つの事で一対一ならそりゃあ勝てないかもしれない。でも複数の事ができるから俺らのロキは強いんだ」
「なあちなみにそうなると眷属の力はどうなるんだ?皆いろんなことができるのか?」
そうだとしたらなかなかに優秀な眷属だろう。
「まあそうはならないんだけどな。俺こと、このフェンリル様は近接格闘が得意だ」
なぜ自分に様をつけた。
「ヨルムンガンドは近接と魔術・・・ってよりは幻術か。ヘルの椿姉は魔術と空間操作・・・になるのか?」
一人で考え込んでしまうフェンリル。
つまりはそれぞれに力が
「ロキの弱点って言ったら空を飛べない事じゃないか?」
そこに君丈が入ってくる。
確かに蒼や君丈、ありすは戦闘中に空を飛んでいたりしたような気がする。
逆に言えばロキ達は飛んでいる所を一切見ていない。
フェンリルに
「それともう一つ」
蒼が人差し指をたててさらに説明を始めた。
「俺たち神にも
蒼達とロキ達が争ったのはそういうのが関係しているんだろうか。
「そして大きく分けたらもう一つの所属がある」
わざとらしく一呼吸置くと、真剣な顔で続きを言った。
「神に
どこの世界にもそういう
「今回の幻術は神に対抗できる幻術だ。だとするとその反抗する神かそれに近い何かが敵な可能性が高い。逆に言ってしまえば悠真やありすは今回は襲われる心配はないはずだ。フェンリル達だっておそらくロキを連れ去られる事に
フェンリルが
空気が重くなったのは、俺たちは殺されなくてもロキはその
「とにかくもう遅い。俺らはヘルをもう一度探してみる。悠真とありすはとりあえず帰れ」
ありすも俺も残ると言ったが、蒼に強く
蒼が思っているのは自分たちの近くにいた方が危険な可能性があるからだろう。
負傷者もいるなかでお前らも守るのは無理と言う話しもあるのだろうが。
結局、ありすも俺もそれぞれの家に帰ることにした。
だが、俺の心の中では一緒に戦いたいと言う気持ちが
ロキとの戦いで自分は足手まといでもついていきたいと思った気持ちがまだ
最高のじこちゅー野郎だ。
俺の中では、まだ非日常を求めているんだろう。
どうしたら一緒になれるのか。
きっと俺は周りが神様なら自分も神様になりたいんだ。
自分が世界の中心にいたいんだ。
どうやったら神になれるかなんてくだらない事を、一晩中考えたりしていたのだった・・・
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