四幕 【神々の意志】


 あまりにも唐突とうとつ展開てんかいに思考が一瞬いっしゅんついていかなくなる。

 探そうと決めた次の日にオーディンみずから転校生してきたのだ。

 

「ゆ、優斗!なんで!」


 大声をあげるありす。

 それに対して蒼希あおき優斗ゆうとはこう答える。


「なんとなく」


 先行さきゆきが不安になる事を理解した瞬間しゅんかんだった。




   1章 4幕【神々の意志】




 その場は先生にうながされ、HRが始まる。

 その後も転校してきた生徒にいつものようにクラスメイトがむらがり、ありすは話ができずじまい。


 しびれを切らしたありすは、昼休みに蒼希優斗を強引に屋上へ連れだしたのだった。

 俺はそれをとりあえず追っかけることに。


「で?何なのこれは」


「何って?転校してきただけだろ?」


「そういう事じゃなくて!」


 今まで見たことの無いような表情でありすが地団太じだんだを踏んでいる。

 この飄々ひょうひょうとしている男がありすが探していたオーディンなのだとしたら俺は盛大に勘違いをしていた。


 そもそもありすが育ての親などと言うから普通の大人を想像していたのだ。

 逆に言えば育てられたとはどういう意味なのだろう?


 二人は恋人で同棲どうせいでもしてたのだろうか。

 いや、だとしたら育てられたって言うのもおかしな話になる。


「ありす。そいつは?」


「ん?なに!今そんなのどうでもいいでしょ!」


 ありすはこれまでも口調が変わったり忙しいやつだったが、おそらくこれが本当の姫野川ひめのがわありすなのかもしれない。

 それほどまでに感情がむき出しなのだ。


「俺は桂木かつらぎ悠真ゆうま。よろしく」


「おう、よろしくー」


「のんきに自己紹介してる場合じゃない!」


 ありすが激怒げきどしてさけぶ。

 だが、さすがにつかれたのか、息を切らしていた。


「はぁ・・・はぁ・・・神の事なら悠真は知ってるから」


「ほう、もう名前で呼び合うなかなのか」


「注目するところはそこじゃない!」


 またもやありすが叫ぶ。

 ありすは自分の髪をかきみだしてすでに見た目もぼろぼろだった。


「まあ神の事を知ってるのは大体予想よそうがついてた。まあ昨日の戦い見てたし」


「はぁ!?」


 次は動揺どうようを見せるありす。

 だが、今の発言には俺もおどろきだ。


 事と次第によっては今までの事が全部オーディンのせいと言う事もあり得る事になる。

 俺はさとられないように一人警戒けいかいを強くした。


「見てたんなら加勢かせいしてよ!」


「無理。神器じんきとられてるし」


「はぁー!?」


 蒼希優斗が何のことを言っているのかはさっぱりだったが、ありすの反応はんのうを見ているとからかう気持ちもわかってくる。

 それほどにありすは乱れていた。


「まあ詳しい話はフレイヤを見てからにしよう」


「誰よその女!」


 もうしっちゃかめっちゃかだ。


「ありすも知ってるんじゃないか?そこの桂木悠真君のお友達だよ」


 どうやら【フレイヤ】と呼ばれた人物は縷々るるの事らしい。

 先程さきほどの発言もあり、不信感ふしんかんはあったが、犯人はんにんだとしたら今更縷々に合わせても何も変わらないだろう。




 そして放課後、俺とありすと蒼希優斗の三人は縷々の病室に来ていた。

 蒼希優斗は、縷々の前に立つとしばらく様子を見て―


「見事な結界だな。まあすぐ壊せるけど」


 そう言ってと縷々に手のひらをかざす。

 すると魔方陣まほうじんのようなものがき上がり、ガラスが割れるような音でその魔方陣は粉々こなごなくずれていった。


「ん・・・」


「縷々!大丈夫か!」


 俺は縷々にかけより、起きるのを手伝う。

 縷々は手で目をこすりながら眠気ねむけまなこでしゃべり始めた。


「んー?悠真君おはよう」


 心配しんぱいさせておいてやはりのんきな奴だ。

 まあだがいつもの調子ちょうしで少し安心した。


「体は大丈夫か?」


「ん?何が?・・・あぁここどこ?病院?なんか人多いね。イベント?」


 まだ寝ぼけてるのか、わけのわから無い事を言い出しす縷々。

 病院でイベントって結構けっこうはた迷惑めいわくではなかろうか。


「とりあえず一件落着だな」


「何も落着じゃない!早く説明して!」


 またもや蒼希優斗とありすのコントが始まる。

 二人が言い争っている姿を俺と縷々は二人でながめていた。


「なんか悠真君の周りにぎやかになったね」


「・・・おかげさまでな」


 縷々のマイペースのせいで俺は一人なごんでしまう。

 だが本題は違う所にあるのだ。


「で、だ。えっと、埜口やぐち縷々るるちゃん、でいいんだよな?」


「縷々でいいよー」


 誰と話しても縷々のマイペースはくずれない。

 すっかり調子を取り戻したと見える。


「早速で悪いが、フレイヤを出してくれないか」


 めずらしく縷々が目を丸くしてだまる。

 そして数秒たったのち、誰に話しかけるでもなく「わかった」とつぶやいた。


 次の瞬間、縷々のまとっていた空気が変わる。

 それは神と判別はんべつできない俺でもわかる変わりようだった。


「お前は誰だ」


 強く、いさましい。

 そんなイメージ。


 縷々とはあまりにもかけ離れている。

 それが俺にも、いや、俺だからこそ縷々ではないとわかった証拠しょうこだ。


「俺は蒼希優斗。またの名をオーディン、って言えばわかるだろ?」


「・・・波動はどうを確認した。確かにオーディンだ。ひさしいな」


 オーディンと昔あった事があるような口ぶりだった。

 まさか神話の話しは実在じつざいの出来事だとでも言うのだろうか?


 いや、二人が本当に神様だと言うのならそれもあり得る事なのだろう。

 少しずつ俺の中では神と言う存在そんざいみとめつつあった。


「まあ名前は好きに呼んでくれ。優斗でも、オーディンでも」


「ふむ。優斗か。悠真に似ているな。ややこしいからオーディンと優斗をかけあわせて【おうと】などはどうだろうか」


「できたらそれ以外で」


「ふむ」


 喋り方のわり冗談じょうだんを言う神様らしい。

 それにしてもまさか本当に縷々が神様だったなんて・・・


 ありすの言っていたことは本当だったという事になる。

 さすがにおどろきがかくせないのを、フレイヤに見透みすかされる。


「悠真、すまないな。今まで隠していて」


 そんな言葉をフレイヤから投げかけられる。

 だが、俺には現状げんじょうでなんて言っていいか判断はんだんしかねるところだ


「いや・・・なんていうか。別にいいよ」


 そしてそんな曖昧あいまいな返答になってしまった。

 正直な所、縷々に隠し事をされるのはかまわない。


 だが、事が事なのだ。

 ちょっとした隠し事でもなく、だからと言って糾弾きゅうだんするような話でもない。


「それでオーディン。私を呼んだのは何故なにゆえだ?」


「その事なんだが・・・フレイヤ、神器じんきはちゃんと持ってるか?」


「ふむ。・・・なるほど、そういうことか。おおよそオーディンの思っている通りで間違いないだろう。私は今現在、神器【スキーズブラズニル】を所有していない」


「やっぱりか」


 俺とありすをそっちのけで会話を進める二人。

 じんきと言うのは朝、蒼希優斗からも聞いた言葉だった。


「何が起こってるのか私達にもわかるように説明してくれる」


 ありすが率先して話を聞き始める。

 すると、蒼希あおき優斗ゆうとは頭をポリポリとかき、少しためらってから話し始めた。


「ありすは少し気づいているだろうが、この街にはおそらくロキが潜伏せんぷくしている。ロキは過去に神器を集めて作ったレーヴァテインという神器を作り出したんだ」


「ラグナロクと言う言葉を聞いたことはないか?」


 蒼希優斗に代わり、フレイヤに言葉を投げかけられる。

 ラグナロク、確か神話に出てくる戦争だったか。


「神話の話しでいいなら戦争的な話しじゃなかったか?」


「あたらずとも遠からず。ラグナロクとは終末の日の事をす。それはつまり世界の終り。ロキが神器を集めているとしたらそれを起こすのではないかと私とオーディンは考えるわけだ」


 フレイヤによって説明されたラグナロクの話しをすんなりと受け止めることはできない。

 現実味げんじつみがないのだ。


 そもそもこの現状げんじょうが現実味もなにもないのだが。

 説明もあえてくわしくいっていないのか、正直終わりの日だのと言われてもどうなるかがわからない。


「ロキの目的はわからん。ラグナロクをいまさら起こした所で意味があるとも思えんしな。」


「優・・・おー・・・蒼希くん」


 蒼希優斗をなんて呼んだらいいかわからず言葉につまる。


「あー名前か。あおって呼んでくれ」


「わかった・・・で、蒼的にはどうするって話なんだ?俺には神様の難しい話はわからん。俺は縷々にちょっかいかけたやつをやっつけられればなんでもいい」


「シンプルでいい考えだ。俺もロキを探さなくてはならんと思う。だがそれと平行してトールを探したいんだ」


 また新しい名前がでてきた。

 オーディン、フレイヤ、ロキ、その次はトールか。


「誰なんだそれ」


「トール。俺、オーディンとフレイヤに並ぶ神の一人だ。そいつの持っている神器がロキの手にあるかどうかで事情はかなり変わる。フレイヤ、心当たりは?」


「・・・いや、私もトールについてはわからないな」


「そうか・・・近くに入ると思うだけどなぁ」


 よくわからないがトールと言う神様を探さなくてはいけないらしい。

 いるかもわからない、特徴とくちょうもわからない人物(神?)を探すのは困難こんなんだろう。


「まあとりあえずはこんなもんか。当面の目標はトールの捜索そうさくだな」


 蒼がその場をめくくり、解散かいさんしようとする。

 だが、そこにっかかったのはありすだった。


「待って。ロキがなんかやろうとしてる事も、トールを探さないといけないのもわかった。でも私が聞きたいのはそんな事じゃない。・・・優斗、なんでいきなりいなくなったの」


 ありすはこの街にオーディンである蒼を探しに来たのだ。

 それが最大の理由であり、他の事など後回しの話しなのだろう。


「俺はなくなった神器を探しに行っただけだ。むしろすぐ戻るつもりが、戻ったらありすの方がいなかったんだぞ?」


 朝と同じように口をぱくぱくさせるありす。


「すぐ!?今、すぐって言った!?私は一か月も待ってたのよ!?」


「ん?そんなたってたか?そりゃすまん」


「すまんじゃないわよ!」


 オーディンと言う神様はすごく適当な存在だった。

 ありすが怒るのも無理はない。


「まあなんだ。お前がこの街に来たおかげで神器の手掛かりがようやっと見つかったんだ。ほめてやろう」


 ありすの頭をぽんぽんとする蒼。

 それをありすは払いのけた。


「そんな事はどうでもいいのよ!いや、神器がとられたのはどうでもよくないけど!」


「なあ、なんでありすは蒼の事がわからなかったのに蒼はありすがこの街にいたってわかったんだ?」


 俺はそんな素朴そぼく疑問ぎもんを口にしてみた。

 ありすが蒼の事を察知さっちできないから捜索していたわけだし。


「ん?まあありすは俺の眷属けんぞくだしな。ありすが力を使えばある程度ていど遠くにいても感知かんちはできるさ」


 その言葉にありすは少し顔を赤くしていた。

 力を使ったというのは不良狩りの時だろう。


「じゃあなんで学校に転校してきたのさ」


「あの学校には何かがある。そう思ったからだ。ありす、お前もそう思ったから転入したんだろ?」


 その場はそこでお開きとなった。

 蒼が言うにはうちの高校に神の気配けはいがうっすらとあるらしい。


 それがトールのものなのか、ロキのものなのか。

 はたまたそれ以外のものなのか。


 詳しい事はわからないらしい。

 だが、そうなると俺は知らずに神様と(縷々はとりあえず置いといても)学園生活を送っていたことになるわけだ。




 次の日からトールとロキの情報を集めることになった。

 学校が休みの間は学校の外を。


 学校の日は学校の内部を重点的じゅうてんてきに。

 だが、当てのない物を探すのは一苦労どころではなく、何の情報も得られずに日にちはすぎて行った。


 ロキからの襲撃しゅうげきがあるかもとも思い身構みがまえもしたのだが、何もなかったのだ。

 それから約一週間もたたないある日。


 昼休みにいつものように俺と君丈きみたけは屋上に来ていた。

 縷々はまだ退院していないが、明日には退院できると言う話の最中だ。


「よかったな、縷々るるが戻ってこれそうで」


 君丈は売店で買ったパンを食べながらそう言う。

 だが心境的しんきょうてきには複雑ふくざつなもんだ。


「まあな」


 君丈に神様の話しをしたらどんな反応をするだろう。

 そう思わないでもない。


 だが、変に巻き込むのもいけないとも思ったのだ。

 おそらく話せばなにかしらの協力はしてくれるかもしれないが。


「だから言っただろ?すぐ目覚ますって。結局けっきょく誰が犯人なのかはいまだにわかってないけど」


「まあな」


「・・・悠真ゆうま、なんか疲れてるか?」


「まあな」


 色々考えながら君丈の言葉を聞いていると適当な返事ばっかりしている自分がいた。

 神様の事を考えていた手前、あきらかに不信ふしん態度たいどに少しばつが悪い表情になってしまう。


「なんかあるなら話してみろよ」


「・・・別に。まあいつか話すよ。お前こそサッカー部の大会近いんだろ。俺にかまってる余裕よゆうないんじゃないか?」


「俺は大丈夫だ。なんてったって天才だからな!」


 自分の事はやはりそっちのけで俺の事が気になるのだろう。

 やっぱこいつホモなのか?


「ちなみにあれから姫野川と進展しんてんはあったのか?」


「うぐっ・・・ごほっ・・・なんでありすがでてくるんだよ」


「ほら、そうやって下の名前で呼び合ってるから付き合ったりしたのかなってよ」


 特に気にしていなかったが、確かに最初に色々あったのに、下の名前で呼び合っているのは君丈からしたら不自然だろう。

 とりあえずのどにまったパンを飲み物で流し込み、会話を続けた。


「・・・一回喧嘩けんかした方が仲良くなるだろ?それだよ」


「悠真、それは男の理屈りくつだ」


「ありすはそれが通るやつなんだよ。多分」


「あんなかわいい子を男と一緒にするとはなぁ!お前もやるやつになったもんだ!」


「うるせえ。だまって飯食ってろ」


 いつもの日常に戻った気がした。

 そうさせてくれるのは君丈の配慮はいりょだろうか。


 こいつと縷々だけはつねに俺の味方だ。

 それは俺も変わらない。


 でも、縷々が隠し事をしていた事はちょっとショックというかおどろきだったのは事実だった。

 この数日の中で縷々と何度か話している時にいつから神様だったのか聞いたことがある。


 縷々が言うにはフレイヤは幽霊ゆうれいみたいなもので、縷々自体は神様ではないらしい。

 最初は妄想もうそうだとも思ってたらしいが、フレイヤが神様だと次第に分かっていったようだ。


 この街は神様が集まるという伝承でんしょうは本当なのかもしれない。

 ちなみにフレイヤと会ったのは小さい頃で、俺とも会う前からだったと縷々は言った。




 放課後、縷々の病室に集まり、ここ数日恒例こうれい報告会ほうこくかいを始める。

 だが、結果は昨日までと同じ。


 誰も情報は持ってこれなかったのだ。

 やはりいるかもわからない人物を探すのは並大抵なみたいていの事ではない。


「なあ、トールもロキもいないんじゃないか?」


 そう切り出したのは俺だ。

 正直あきらめかけている。


「トールにかんしてはわからんがロキはいるだろう。この前フェンリルがおそってきたことが何よりの証拠しょうこだ」


 と蒼は答えた。

 だがしかし、俺もこう続けるのだ。


「その時だって誰かに呼ばれて撤退てったいしたんだぜ?その誰かがロキだとしても襲撃しゅうげきをやめる理由があったんじゃねえか?って事はもう用事がすんでこの街にいないかもしれないだろ」


「あー、それに関しては俺のせいだ。お前らの戦い見てたって言ったろ?その時に俺がいることがばれたみたいでな。そのフェンリルは俺の事をうために手を引いたんだ」


 オーディンを見つけたから排除はいじょするため。

 だとしたらありすの時と同じで邪魔じゃまされない為って事だろうか。


「だとしたらおそってこないのも変だろ」


 邪魔をされたくないなら徹底的てっていてきに排除すべきだろう。

 だけどあれから襲撃は一切ない。


 俺はそこに違和感いわかんを感じているのだ。

 少なくとも俺ならそうするだろう。


「私は悠真君やありすちゃんが襲われないならー、その方がいいけどなー」


 縷々は相変わらずのんきな事を言う。

 それは俺のセリフだと言うのに。


「あれあれー?縷々ちゃんは俺の事は襲われてもいいのかな?」


「蒼君はオーディンでしょー?それにフレイヤも自分の身くらい自分で守れって言ってるよー?」


 縷々もフレイヤも何故か蒼には厳しかった。

 二人的には神様なんだから大丈夫と言う見解けんかいなのだろうか?


「俺も神器じんきとられてるんだけどなー」


 そんな話をしていると、不意ふいに病室のとびらが開く。

 入ってきたのは君丈だ。


 お見舞みまいに来たのだろう。

 手にはコンビニで買ったであろうお菓子かしを持っていた。


「お?なんか勢揃せいぞろいだな。・・・なんで転校生の二人までいるんだ?」


「悠真のおさなじみだっていうんで着いてきたんだ。どんなかわいこちゃんかなってな」


 蒼が君丈みたいなことを言い始める。

 案外この二人は気が合うのかもしれない。


「ふーん。まあいいや。縷々、明日は学校にこれそうなのか?」


「さすがに朝からってわけにはいかないけどー、三時間目くらいには学校にいけそうだよー」


「そうかそうか。ならよかった」


 そこにはやはり日常があった。

 俺が思っていたような非日常はおとずれないで、いつまでも日常が続く方がいいのかもしれない。


 そんな事を最近思うようになった。

 というか三時間目からならいっそのこと学校休めばいいのに。


「さて、お邪魔虫じゃまむしの転校生組は帰りますか。」


 そう言って蒼とありすはその場を立ち去ろうとする。


「悠真、お前は後悔こうかいしてないか?」


 いきなり君丈が小さい声でそんな事を言い始めた。


「どしたんだよいきなり。後悔って言うなら縷々がこんな目にあったのに後悔しないわけはないぞ」


かたきとりたいか?」


「まあ命に別状べつじょうがあったわけじゃないから仇って程じゃないけど。まあ一発殴ってやりたいとは思ってるぞ」


「・・・わかった」


 君丈はかえり、帰ろうとする蒼とありすに声をかけた。


「まあ待てよ転校生。そんな気を使わなくていい。なんてったって俺達は旧友きゅうゆうなんだ。なあオーディンとその眷属けんぞくさんよ」


 空気が変わった。

 一瞬で警戒けいかいする蒼とありす。


 そして俺はその言葉を理解りかいするのに時間がかかった。

 なぜ君丈は二人の事を知っている?


「悠真は何故なぜとか思ってるんだろうな。まあ、なんだ。ごめんな。俺がトールだ」


 俺の日常は、最初から非日常だったのかもしれない。

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