二幕 【姫野川と言う少女】
「これからよろしくお願いします」
「んー、まあ君には関係のない事だ。・・・しいて言うなら人探しかな」
「お前には関係のない事だ」
転校生。仮面の少女。そして屋上での
いったいどれが本物なんだ。
昼休みからの授業は全くもって頭に入らなかったのは言うまでもない。
姫野川はとっくにお
それだけの実力と
別に協力したいとかそんなものではない。
ただの興味本位であることは自分がよくわかっている。
姫野川がどんな事情で何をしているのかは知る必要はないし、関わる事でもない。
それでも納得はできなかった。
1章 2幕【姫野川という少女】
「おいおい
放課後になり、俺は
「別に・・・暗くねーよ」
「そういえば悠真君、お昼に姫野川さんに学校案内してあげたんだよね?」
君丈も縷々も変に感がいいから
付き合いが長いからだとは思うけど。
「まあ・・・してやったよ」
「悠真君と姫野川さん別々に帰ってくるし、もしかして
縷々は特に隠す事もなく
幼なじみの一人である
それだけ気を
姫野川ほどではないが、髪が長く、胸もでかいので男子からしょっちゅう告白などもされている。
そのせいで女子からはやっかまれているのも事実だ。
もしかするとやっかまれているのは素直な性格の方かもしれないが。
「喧嘩はしてねぇよ。・・・ただ、俺がトイレに行きたかったから先に教室に戻っててくれって、そう言っただけだ」
「でも悠真君が暗くなったのってそこからだよね?」
「・・・」
どうしてこうもあっさりと
俺ってそんなわかりやすい性格してるのか?
そんなはず・・・ないよな・・・?
「るーるー?悠真は嘘ついてんだからわかってやれよー。女子と男子が二人で出て行って片方が暗くなって帰ってくるなんてあれしかないだろぉー?」
君丈にいたっては
もうすでに突っ込む気すらもおきん。
「え?なになに?」
男子人気ナンバー1の縷々には、
天然なのかそれともわかってて言っているのか・・・。。
「そんなの、悠真が告って姫野川さんに振られたに決まってんだろー!」
「えぇー!そうなのー?悠真君・・・振られたの?」
もう好きにしてくれ。
「
「またまたー?ま、何があったかは知らないけどよ、なんかあったなら言えよ。力になるぜ?」
何かあったら?
ありまくりだこんちくしょう。
信頼している二人になら言ってもいいんだろうが、まだ今ではない。
まだ俺が気にしないで終わるならそれが
転校してきて早々変な
それに俺も噂を回す側にはなりたくはなかった。
「そんな時が来た日にはお願いするかもな」
そんなこんなでその日はお開きとなった。
というより、皆で一緒に帰る道が終わったのだ。
今日は三人で一緒に帰ったが、実はこれは
高校に上がってから三人で遊ぶ機会もめっきり
ちなみに俺は帰宅部。
次の日。
いつものように登校し、下駄箱に靴をしまおうとすると、そこには一通の手紙が入っていた。
「なんだこれ」
名前などは書かれておらず、
昨日の放課後を思い出し、そんなまさかと思いつつラブレターであることに胸を
だが、そんな
なにせ、中には
「「お前のせいだ」・・・って何が?」
何が俺のせいなのかもわからず、気味も悪かったが、もしかしたら
それにしてもまだ何も言ったりもしていないのに勝手に俺のせいにされても困るのだが。
手紙への
今日はすでに姫野川はいるようだ。
だが姫野川はこちらを見向きもしない。
代わりに声をかけてきたのはいつものように
「おー、おはよう
「知らねぇよ。部活関係じゃねぇの?」
いないと言う事は用事か
「HR始めるよー」
先生が入ってきていつものHRが始まる。
「えーと・・・今日は少し
いつものHRのはずだった。
はずだったのだ。
俺の耳はとんでもない一言が
なぁ、今なんて言った?
「命に
事故?
寝たきり?
誰が。
縷々が?
昨日一緒に帰ったんだぞ?
別れてから縷々が家に着くまでなんてほんの数分だぞ。
それともそのあとに出かけたのか?
いや、なんだよ事故って。
ありえない。
冗談だろ?
俺は授業が終わると
縷々は
「縷々・・・なんでだよ・・・くそっ!」
先生によると犯人は
確かにあの
完全な住宅街の
「俺が必ず見つけ出してやるからな」
事故にあったなど信じられない
絶対に犯人を
もしこれでずっと縷々が起きないことがあったならば俺は犯人を殺してしまうかもしれない。
縷々とは幼なじみでもあったが、初恋の相手だったりもするのだ。
だが、いつの間にかそんな感情は流れていき、今では大切な友人の一人となった。
縷々をいじめるやつは
恋心が
病院に来て何時間がたっただろう。
もしかしたら数分かもしれない。
永遠にも感じるくらいの時間、俺は縷々の隣で
せめて家まで送って行けば結果は変わっていたのかもしれないと言うのに。
「くそ、誰が縷々を・・・まさか」
ふと一人でぼやいていると、俺は一つの事を思い出した。
【お前のせいだ】
朝、下駄箱に入っていた
まさかこの事を言っているんではないだろうか。
俺は
少しの
「・・・ない」
バックにしまったはずの手紙はなぜかどこにも入っていない。
どこかに落としてきただろうか。
だとしたら自分の
ノートなどに
「あんたが探してるのってこれでしょ?」
後ろからかけられる声に
なぜ姫野川がここにいるんだ?
「姫野川・・・いつの間に」
「ノックもしたし声もかけた。あんたがあまりにもその子に
周りの事など気にしていなかったのは事実だ。
俺の頭の中は今、縷々の事しかないし、姫野川の事などどうでもよかった。
「出てけよ。・・・お前には
ちょっとした
だが姫野川は
「・・・悪かったわよ。昨日のは私もやりすぎた・・・と思う。それに私がここに来たのはこれを見たから」
今の一言で心を少し開いたのか言葉づかいが
だがそんな事よりも俺の目と頭は姫野川の持つ手紙にいっていた。
「それ、俺の手紙じゃねぇか」
「あんたが急いで帰った時に落としていったのよ。中身を見るつもりはなかったんだけど、見えちゃってね・・・」
朝の手紙が手渡される。
きちんと見ていなかったが、そこに書いてある文字はパソコンによるものだった。
これでは何の手掛かりにもならない。
「届けてくれてありがとよ。お前が
俺は手紙に
だが俺にはそれを教えることはしてくれないはずだ。
「そのことだけど、私の見立てが間違いでなければ私は無関係じゃない」
「・・・どういうことだ」
わざとではないが
姫野川は
「その話をするには私の話しをしなくちゃね。そして君にもこの話を信じてもらう必要がある」
姫野川は
病院に
どんな話しかはわからないが、おそらくあまり他人に聞いてほしくない
「で?お前の話しって言うのは?」
「その前に。いつまでもお
それで口調がその
相手に合わせて性格や口調を変えると言うのは中々疲れるだろう。
「わかった。姫野川。これでいいか?」
「水をさしてすまない。私は桂木、と呼んでいいか?」
「好きに呼んでくれ」
さすがに二人とも下の名前で呼び合うほど
昨日の一件の事もそうだが、そもそも俺達は会って三日目なのだから。
「それで本題だけど。まずは昨日、桂木がなんで?と聞いた質問に答える」
確かに言ったがあれはふと口に出してしまったような一言だった。
まあそれは姫野川にはわかるまいだろうが。
今回の事に
そして
「私がこの街に来たのは一人の人を探すためだ。その人は私の育ての親なんだけど、いきなり行方をくらましてね。生きているのはわかってるんだけど所在がわからない。雲をつかむようにこの街を訪ねてきたってわけ」
「それは・・・
SAの
少し前の成神市ならまだしも、今のこの街ならいろいろな情報も確かに集まるだろう。
「まあ・・・それもあるけど・・・」
SAによる人口増加ではないとしたら他に何があるのだろうか?
「その・・・この街には神の伝承が多いでしょ?」
「まあそうだな。成神市って街の名前に神が入ってるくらいだし。・・・ってそれ関係あるのか?」
全く
だが、そんな俺の考えとは
「私が探しているのは・・・神なんだ」
「・・・は?」
時が止まる。
そのまま一日が立ったのではないかと思うほどの長い
まあ俺がそう感じただけなんだが。
姫野川は多重人格で
俺の中で姫野川の
「信じて・・・と言うのも無理な話よね・・・」
話しが見えてこないので俺はベンチを立ち上がる。
「信じようが信じまいがその話が縷々にどう繋がるんだよ」
まさかその神が
そんなわけのわからない話に付き合っている時間があるなら、もっとましな時間の使い道があったはずだ。
「もうちょっと話を聞いて!私がその神を探すために昨日の事に繋がるの!」
「昨日って・・・不良狩りの事かよ」
「そう。あいつらの中には情報を持ってるやつも多い。私が探している神は
同じ力。
確かに昨日姫野川が使ったのはSAではないようには見えた。
でもそんなものはSAに見えないがSAかもしれない。
「・・・何が言いたいのか全くはっきりしないんだが。・・・つまりその
「・・・半分正解」
「じゃあなんだよ」
「君の、桂木の友人・・・
【神】だ。
再び
姫野川が何を言っているのか全くもって理解できない。
縷々が神?神って言ったか?
そんな
今まで幼なじみとして付き合ってきたが、神様とだと思うような行動は一切見た事はない。
頭がおかしい姫野川とこれ以上話す意味はない。
「・・・そうかよ。よかったな、神様が見つかって。じゃあな」
「待って!話を聞いて!」
姫野川があまりにも必死な口調だった為、少しだけ足を止める。
背を向けちらりと姫野川を見るその姿は、昨日の光景を正反対にしたようだった。
「・・・なに?」
「その・・・
「その話はもう聞いた。神様ね。はいよ」
俺は
姫野川の
「だから!私のせいだから!桂木に協力したいんだ!」
その言葉に俺はまた足を止める。
そして姫野川の方に完全に
「お前の協力はいらない」
姫野川は
だがそんなものに今の俺の心が
冷たくあしらって俺はその場を去る。
その立場は昨日の俺と姫野川の立場を完全にひっくり返していたのだった・・・
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