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「ったく、急になんだよ」

 ドカッとスツールに腰かけると、隣に大きなピンクのクマが座った。いや違ったネコだった。猫耳着用厳守の方針だそうだ。

「んもう、怒んないでよ。乱暴したことは謝るわ。ちょっと話を聞いてもらいたかっただけよ」

 話を聞いてもらいたかっただけ!? あんなに無理やり連れてきておいてか!

 じとっとした目でデカいネコを睨み付けると「何か飲みたいものはある?」と聞いてきた。いつものパターンだ。ミケはいつだってそうやって酒を飲ましてから話を聞かせるのだ。まるで先払いで悩みを聞いてもらうかのように。

「この店で一番高いやつ」

「もう、はなちゃんはいつもそう言う。分かった、一番いいやつだすわ」

 そう言って出されたのは澄んだ濃い琥珀色の液体が入ったボトル。そのラベルを見てつい声を上げてしまった。

「ちょっ、まじ! マッカランって!」

「お客さんからの差し入れなのよね。確実にここにあるお酒の中で一番高いわよ」

 ボトルのラベルにはマッカラン25の文字。それはロールスロイスと称されるシングルモルトウィスキーの名前だ。確かにこの店にある酒の中で一番高級かもしれない。

「もちろんストレートで」

「はなちゃんザルなんだからほどほどにしてよね」

 呆れたようなミケの声が聞こえたがムシムシ。基本的に無口だと自負しているが、酒の事となるとついテンションが上がってしまう。しかもマッカラン25。飲むのはいつ振りだろう。

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