第3話 それが問題

 目が覚めた、当たり前のように寮の上の段のベットで。


 (えーっと、今日は、、、月曜日か、なんか体がだるい、、、んっ、あれ何時いつの間に帰ってきたの、、、ととにかくトレーニングに)

 時計を見る、七時を少し回っていた。


 下で起きていた子が「めずらしい、蒼井ちゃんがこんな時間にいる」

と少し驚いている。


「あほんと、どうしたのトレーニングお休み?」

「起きれなかった、わたし何時ごろ帰って来たか知らない?」

「えー記憶無いの、彼とデート?」

「えっ、、、」

「あ図星、何か有ったんだ、わー」

「えーあのいっこ上の人、かっこいいよね、いいなあ」


 私は枕元に有ったタオルをひっつかんで急いでベットから降り「いやデートじゃないの、何人もで山でトレーニング」

「変わったデートだね」「うん、体育系だからね」

背中で二人の会話を聞きながら部屋をでた。


 洗面所でゴシゴシと顔を洗った、昨日はお風呂に入ってないから、記憶がない、体も重い。(休んじゃおうか)

 

そのまま食堂へ行ってご飯を食べる、(あれ、昨日晩ごはん、あ寮で食べた、でもどこかでお肉を食べた様な、、夢?あれ私どうやって帰って来た?あっフタギ、ベットに居たっけ)


 食欲ないと思っていたが、食べだしたら止まらない、いつものようにご飯だけお替りして、お替りしない子より早く食堂を飛び出し部屋に戻り、自分のベットを確認した。


 (居たー良かったー)フタギは私の横に寝かしていた様だ(やれやれ)、

でも昨日の解散後の自分の行動が気に掛かる、どうやって帰って来たかまるっきり思い出せない。


 仕方ない、影丸に聞きいたほうがはっきりするだろうが、「わたしどうしてました」なんて質問は彼女にバカにされそうでしたくない、与一に聞くしかない。


 二時間目の休み時間に二年木星組に行った、いつもなら彼の席までズカズカ入って行くのだけど、外に居た顔見知りの女子に友部先輩呼んでくださいと頼んだのがいけなかった。


「ともべー、毎日会ってる可愛い彼女来てるよー」と大声で叫んでくれた。

 (いや彼女じゃないです)

「お昼休み反省会するから屋上で待ってる」とだけ言って退却、さんざん周りから冷やかされる。



 お昼休み、寮のおばさん手作りの(手で作らなかったら何で作るの?)お弁当を持って、光と屋上に上がって昨日の出来事を話していると、与一がやってきた、黄昏たそがれさんも連れて。


「お待ちー、伊佐宵いさよ、頼みがある。こいつも仲間に入れてくれ」

「与一、黄昏さんは何が出来るの(特別な力の事)」

「いや、無い。強いて言うなら帰りが遅くなるとき、こいつの家で勉強と言っとけば出やすくなる、頭良いから」


 するとヒカルが「伊佐宵いざよいの事、秘密でございます、それに友部さんのけったいなお力も」

「光様、けったいは無いでしょ」

「黄昏様、友部さんの、、変梃へんてこりんなお力はご存じなのですか」

「へ、へんてこりんですか」

「風を吹かせる事なら知っています」とかすかに聞こえる、ヒカルの耳にはおそらく届いてないだろう。


「ヒカル、風を起こすことも、空船そらふねの事も知ってるの昨日手伝ってくれたから、秘密をばらしたら影丸が体を真っ二つにするって言われてたし」

「左様ですか、ならば誰にも秘密を語らないとお約束して頂けるのですね」

 黄昏さんは黙ってうなずく。


 「分かりました、後程誓約書せいやくしょを作りますのでご署名ください、友部さん何か有ればあなたも連帯責任で腹をいて頂きます、覚悟はよろしいですね」

「こ、怖いですよ光様、もちろん責任は取りますけど」

「じゃあ黄昏さんの事は了承でいいわねヒカル」

「仕方御座いません」

ヒカルが了承したので私が昨日の事の反省を口にする。


「昨日はごめんさない、最後に倒れてしまって迷惑を掛けました、与一わたしその後の事を全然覚えてないの、その後どうしたの、私どうやって帰ったか知ってる?」

「影丸さんが総長と言う人に連絡して、カツラギさんと言う人が車で迎えに来てくれた」

「あー、連絡しちゃったの、迎えまで来てもらったのか」

「覚えてないのか、焼き肉どんぶりガツガツ喰ってけど」

「焼き肉どんぶり?何それ」

「姫様が空腹で倒れたって連絡したから全員丼貰って車の中で食ったんだ、お前だけフタギの分まで二杯食ったぞ」

「ゲッ、そんな物まで用意してくれたの、わたし二杯?しょうがないでしょあの子食べられないから、その分私から体力あげているんだから、あーおいしかったんでしょうねー、くやしいどうして覚えてないんだろ、、あっそれより何かお返ししないと」

「その分働いてもらうって、頑張りますって返事してたぞ、すぐ寝ちまったが」

「起きてる様でも半分以上寝ていたのよ、体力ゼロだったもの」

伊佐宵いざよい、そんなに体力消耗したのですか」

「うん、着地する前に意識なくなってしまった、体が軽くなった分体力が落ちてたのかも知れない」


「おいイノシシ吹っ飛ばしたの覚えてないのか?」

「えっ、イノシシ?イノシシが出て来たの」

「あー、大騒ぎだったじゃねーか、牛くらいのイノシシとあと二頭、一頭はやっつけて影丸さんが持って帰ったが」

「それ影丸がやっつけてくれたの?」

「お前と二人でな、でかい方はお前が風で吹き飛ばしたから全員無事で助かった」

「ほんとに?全く記憶無い、、、えっとわたし何かヘマしなかった?」

「あー、イノシシ吹っ飛ばしたときに伊佐宵いさよも後ろに飛ばされ、黄昏に受け止めてもらった、黄昏の顔面直撃したから黄昏が鼻血出してたんだぞ」

「えーそうなの黄昏さんごめんなさい、もう全然記憶にないんです」


伊佐宵いざよい、体調が悪かったので御座いますか?」

「そうじゃなくて、わたし十五夜に向かってどんどん体重が減っちゃうの、十五夜が過ぎたら徐々に回復して新月頃に最大になる」

「いつもですか」

「いつもって言うか空船を見つけてから、あれを見付けてから色々体に変化が起こったの、これとかさ」


 と言って、わたしは長袖のセーラー服の袖を肘まで上げて見せた、腕の産毛が鳥の羽毛のように白くフワフワになっている。


「えっなにこれ羽毛?それで半袖にしないので御座いますか」

「うん何か意味が有りそうだから、そのままにしてるんだ」

「こりゃますますバケモノだな」

「友部さん、口が過ぎます、たとえ伊佐宵いざよい許嫁いいなづけと言えど姫様なのですよ」

「ヒカル、違う、まだ分からない、そう言うのどうしていいか分からないんだ」

「あっごめんささい、伊佐宵の気持ち考えるとそうなのかなって」

「それはまだ置いといて、好きなのは違いないけど、彼とかってまだよく分からない、ヒカルも好きだし、フタバも好き、彼とかは当分お預け」

「ああ、それでいいんじゃないか、俺は光様命だし」

「や、止めてくださいませ、鳥肌が立ちます、わたしの彼は伊佐宵でございます」

「あー、光様はいつだってそうですから、困ったものだ」



伊佐宵いざよい今日は何のために集まったので御座いますか」

「ああ、ごめん、まずわたしの体力不足、これを何とかしないと一キロ程くるりと回って終わりじゃ、何の意味もないでしょ」

「そりゃあ確かに何やってんだ、だな」

「それと仮に、10キロ、20キロ飛べたとして、それが何になるの、しかも夜限定

だよ、車の方が早いよ」


 私が余りにも確信を突いた質問を口にしたため誰も答えられなかった。


 しばらくしてヒカルが私をなだめるように

伊佐宵いざよいそんなに結論を急ぐこともないと、私は思います。月姫だってまだ何の為と答えが出たわけでは御座いません、でしょ。ですから答えが出るまで待ちましょう」

「そっか、そもそも月姫って何?のままだものね、空船の意義を今考えたって答えが出る訳ないか、それでみんな納得してくれるの?」

「まあ、今までの状況からお前が何かの姫というのは何となく分かる、ただ光様がお前の妄想のせいで、べつの姫様になるはずなのになれないって事は無いのか」

「そんなことは御座いません、私は十六夜いざよい姫に仕える身であるのを、出会った時に悟りました、運命と言うものです」

「ヒカル、もし月の民が地球外生命体で、地球侵略を狙っていてその集団をまとめるのがわたしだったら、どうするの」

「あり得る事では無い、と言い切れないですね伊佐宵を見ていれば、UMA《ゆーま》で有るのかも知れないと思いますが、重要な武器となる空船を私たちに見せる事は無いでしょう」「わたしなら、重要な船の乗り手として、侵略は黙っておいてあなた達を使いこなそうとするわ」

「あれで地球侵略はないだろ」

「そうね、あの船を一万隻飛ばしたところで、侵略なんて出来そうに無いわね、なら山の中に落ちたUFOを探すためだとしたら、手を貸してくれるの」

「貸す貸す、その代りUFOに乗らせろよ」

「五億光年離れた星に行ってらっしゃいませ」光に言われている。


「光さまー、そんな冷たい事おっしゃらず、ご一緒してくださーい」

「いやです、宇宙の果てまで行ったきりがよろしゅう御座います」

「与一、ヒカル、反省会なんだから」

この二人が揃うといつもこの調子、黄昏さんは黙ったままだしどうなることやら。

 

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