第2話 危機。

 どれくらい眠っていたのだろう、(どうなった!)いきなり頭が目覚め目を開ける。


「お疲れ」両足を伸ばして座った影丸にもたれ掛かり両手は与一の手に包まれていた。


「どうなったの?」一番顔が近い(近すぎだぞ)与一に聞いてみる。

「あと2m位の処で力尽きて落下したから、みんなで支えた、船は無事だ」

「姫様、そんなに体力を使うのですか」影丸が聞いてきた。


「初めのうちは上り坂を全力疾走、そこでいっぺんに疲れてしまったの、飛び立つところが問題ね」

「すまん、おれの力不足だ、体力付けるから」

 山の上の方からカサカサ、カサカサと何かが動く音がかすかに聞こえた。(なんだろう)


「フタギみたいに誰かから体力貰いなよ、始めは少しくらいしか貰えないけど、特定の人と練習すれば結構充電できるものよ」

「俺ってバッテリーかよ」

「違うわよ、与一さんは使う方、黄昏さんで練習してみたら」

「えっ黄昏さんで、でもまた今度今日はもうクタクタなのよ、それに影丸急ぎましょ、すぐに山を下りられる?」

「姫様次第ですが、どうかなさいましたか」

「そりゃあれですよ、きっと」与一が余計な事を言う。


 ガサガサ、バキッ、ミシッと重量の有りそうな物が動く音がはっきり聞こえてきた。


「ばっか、トイレじゃないわ、山から何か下りてくる、鹿とか狸くらいならいいけどイノシシとかお猿だったら厄介だわ」

「そのようですね、姫様歩けますか」

「それくらい、、、ダメだ起きれない誰か支えてくれない、あっ黄昏さんお願いできます、影丸、山の方注意しておいて」

「はい、ですが木に隠れて何も見えません」

黄昏さんはもじもじと下を向いて動かない。


 「黄昏さん、近くに来て、腕を掴んで肩に回して」

やっと近づいてきて、差し出した手を取って、いきなりぐいっと引っ張り上げた。


 (あー女の子の扱いに慣れてないのね)

「ありがとう、何とか立てた、でも歩けない、肩を貸して」

私がふらついていたので、慌てて私の右腕を自分の肩に回した。もう顔が真っ赤だ。


 それでも体勢が崩れてしまいそうな私、左手を背中に回し彼の左手を掴んで自分の腰に回し「しっかり支えて、倒れそう」と言う。


 「前に進んで」で言ってみたがタイミングが合わないのか、もたもたするだけで一向に進むことができない。


 傍で見ていた与一が「黄昏、おんぶした方がはやいんじゃねえ」

そう言われても俯いたまま動かない。


「お願いします、急がないと危険な動物と鉢合わせするかもしれない」


 彼はうなづき、背中を向けるが、腰を下げたりはしてくれない(気が利かないのねえ)。


 でも私の方がずっと背が高いのでちょっと背伸びして背中におぶさった。

「足をしっかり持って、でないと重く感じるから」って言うと一言

「軽いけど」ともそっと言う。

「急いで下りよう」


 彼はゆっくり前に向きかける、「あ待って山の方に体を向けて」

 私は音のする方を注意深く木の隙間からうかがうと、大きな大きな動物が走り下りているのが見えた。(熊!、、いや違う)


「イノシシ、ずいぶん大きい、危険だわ早く下りましょう」

「姫様先に行ってください、与一さんも、私も後を追います」

「そうね、私から動かないと進めないわね、黄昏さんお願いします」

彼は向きを変えゆっくり歩き出す、「大丈夫ですか」どうも元気のない人だ。


「大丈夫もう少し早く歩いて、イノシシが下りてきてます」

「真っ暗で何も見えませんが、音は聞こえました」

「聞こえた?かなり大きいよ、あっ向きを変えたみたい奥に行く道の方、そのまま向こうに行ってくれたら良いけど」

「姫様離れて行きますね」

「だといんだけど、とにかく早く下りよう」

かさかさ、小さいが風で葉がこすれる様な音とは違う、枯葉を踏む音が近くで聞こえた、私は辺りを注意深く観察すると(居た、さっきのイノシシは別の方に行ったはず)


「影丸、二頭いるわ、一頭はすぐ近くの山の中、隠れているつもりかしら、あっ後ろ、さっきの大きい奴、こっちに向かって走ってくる」

「姫様道の反対側も確認してください、挟み込むつもりかも知れません」

「挟み込む、まさかそんなに頭が、、良いみたい来たわ」

「おいおいどうなってんだよ、うじゃうじゃ居るんじゃないだろうな」

「影丸そっちの特大任せるから、こっちは気にしないで、与一山の方気を付けて、いつ飛び出して来るか分からないから」

「お、おい出てきたらどうすりゃいんだよ」

「与一の場合風しかないでしょ、どーんと強い風ぶつけてあげなさい、山から離れてないと間に合わないわよ、とにかく懐中電灯を山の中に向けておいて、影丸もっと私の方へ」

「どうなさいます」

「イノシシ同士をぶつけ合うのが一番、こんなでかいの止められないでしょ、ぎりぎりの所でジャンプするのよ」

「あとの二人は?」

「与一は任せる、この人は私の道連れ、黄昏降ろして、わたしの背中に乗って!」

「は?まさかそれでジャンプ?無理ですって間に合わない!」

「だからやるしかないの、いくわよ、いちに、それっ」

「はいっ」

ジャンプした私の目に、山から飛び出ようとするイノシシが目に入った。


「与一、来た!」

 私は黄昏さんを背負っていたので一メートル位しかジャンプできなかったが、双葉を使い風を道にぶつけ数秒滞空した、影丸も大きくジャンプすると特大イノシシと下から走って来たのがぶつかった。


 下から来たのは山の方に跳ね飛ばされ倒れる、特大はそのまま駆け抜けずっと先で止まった。


 与一は山から飛び出してきたイノシシを何とか避けた様で、そのイノシシは道を突っ切り下りの谷の方へ走って行った。


 倒れたイノシシは影丸に短刀で首を突かれ息絶えたようだ。

 四人が固まっているところに又特大イノシシが突進してきた。


 私を庇うように私の前に居た影丸にさけぶ。

「前を開けて!フタバ!爆風3、2、1、バン!」

ボン!と音が聞こえそうな強い爆風が目の前に迫っていた特大イノシシを吹き飛ばし空中に舞い上げる、くるりと半回転して道に叩きつけられた。

 私も風の反動で後ろに居た黄昏さんにぶつかったが、なんと彼はびくともせずに私を受け止めてくれた、私の後頭部が彼の顔面を直撃したにもかかわらず。


 中々頼もしい人だと感心した。

 が私は体力を使い切っていた。


 特大イノシシが起き上がり一目散に山の中に駈けて逃げて行くのを、黄昏さんの腕の中で夢の様にぼんやり見ながら意識が暗闇に溶けて行った。

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 第二話大幅に変更しました、いや書き直してしまいました。

一度読んで下さった方すいません、もう一度お読み直してください。

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