第4話 『魔王城に全裸の人間』がいるわけがない!
「……まもうとに異世界に召喚された次は女勇者の襲来か。イベントを詰め込み過ぎだな」
勇ましい宣戦布告の直後に生娘のような悲鳴を上げた女勇者はいまだに狼狽し混乱している。
裸の男はやれやれと肩をすくめていたがこのままにもいかないのでディモニークに話しかける。
「まもうとよ、これはどういう事態だ? 彼女は何者だ?」
「えーと、彼女は勇者、我々魔族と敵対する人間の先鋒です。魔王を攻め滅ぼしにきたようです」
「やはり勇者なのか。しかし、これはピンチなのではないか?」
魔王不在の魔王城に勇者が攻め込んできた。RPGなら人間サイドの勝利で終わりそうな状況だ。ディモニークはポンと手を叩いた。
「ピンチですわっ、どうしましょう?」
「やはりピンチであったか。それと、まもうとはアホなのだな」
「まさかこう悪いタイミングが重なるとは予想できませんでしたの。それとアホとはなんですか!」
あくまで冷静な全裸男と憤慨しているディモニークがヤイヤイと騒いでいると女勇者が叫んだ。
「ふざけるなっ!! そこの男、貴様何者だ!?」
「……キレたぞ、勇者のくせに」
「彼女、脳筋ですの。すぐに叫んで怖いですわ~」
こそこそと相談する二名を勇者は射殺しそうな目で睨みつける。ディモニークは両手を男に向けた。ここはお任せしますということらしい。
「世界が異なっても面倒ごとを兄になすりつけるのは妹の本能なのか? まもうとよ」
「頑張ってくださいませ、お兄様♪」
全裸男にまもうとはエールを送る。置換召喚を行うための条件から予想はしていたが彼には妹がいるようだ。ならば話は早い。妹のための苦労は兄にとってごく当たり前の義務なのだから、矢面に立ってもらうとしよう。
「お兄様、だと……!?」
だが、この良かれと思っての妹サービスが悲劇を巻き起こす。
「……分かったぞ。貴様、魔王だな!!」
勇者は剣をつきつけて全裸男に叫ぶ。彼女は男のことを魔王と認識したらしい。
「……いや、違うのだが」
「そんなわけがあるかっ!!」
「………」
「……どうしてそうなるんですの?」
すぐに否定したが女勇者は取り合わない。男は沈黙しディモニークは呆れ顔だ。
「重ねて言うが、違う。どうして君は私を魔王だと思うのだ、勇者よ?」
なんとか誤解を解こうと男は尋ねるが、女勇者はこれが答えだとドヤ顔で宣言した。
「簡単な話だ! 魔王城に全裸の人間がいるわけがないからだっ!!」
「「………」」
まっぱ男とディモニークは同時に固まった。
「……否定材料はあるか? まもうとよ」
「……ごめんなさい。ぐうの音も出ませんわ」
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