最終話
「……るみ、俺の事分かるか?」
「………海斗……?」
「良かった。あの、ごめん。ケンカ、俺が悪かった。」
「私もカッとなっちゃって、ごめんね。
…私、心臓が悪くなっちゃったんだよね、もういくらも生きられないって。お医者さんの話たまたま聞いちゃってさ。結婚してこれからもっと幸せに生きていこうって二人で決めたのに。本当にごめん。」
るみの目からは涙が流れていた。
「謝らないで、るみは悪くない。これから二人で一緒に病気に立ち向かっていこう。」
「うん、ありがとう、海斗。私頑張るね。」
俺とるみは出来ることならなんでもやって病気を治そうとしていた。しかしそんな俺たちの気持ちとは裏腹にるみの体調は日に日に悪くなっていった。腕も細く、顔も痩せこけていた。それでも俺たちは決して諦めず二人で闘い続けた。
るみが倒れてから数週間後、いつものように病院に向かうと、ベッドの周りには医者たちが数人立っていた。
「本間さん、奥様がたった今、息を引き取りました。」
無意識のうちにベッドへ駆け寄ると、るみの体は冷たくなっていた。自然と目から涙が溢れた。
「俺は、これからどうやって生きていけばいいんだ…。」
そんな独り言を口にした時、ある看護師が口を開いた。
「奥様の分まで全力で生きてあげてください。お二人はずっと一緒だと思います。奥様は天国からちゃんと見ていると思います。
…すみません、出しゃばってしまって。」
「…いえ、ありがとうございます。これからるみの分まで生きます。」
るみにはもう会えないけど、俺は信じて生き続ける、そう決意した。
1度目の恋 ちりめんじゃこ @chirimenjyako
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