2年D組:飛鳥 裕(あすか ゆう)

@karaokeoff0305

2年D組:飛鳥裕(あすか ゆう)

俺の名前は飛鳥裕(あすか ゆう)。

サッカーと野球が大好きなごく普通の高校2年生だ。



「飛鳥君、これお願い」



クラスメイトにそう言われたら率先して仕事をやるようにしている。

何かトラブルが起きたらフォローを入れる。

サポーターかつクラスのムードメーカーというのが、俺の役目だ。



「飛鳥君、学園の出し物なんだけど…何出すかで凄い迷っちゃって…

金魚掬いは去年やったし…何が良いと思う?」



こういう質問にも真摯かつ丁寧に答える。

疲れた、と思うときもあるが同級生達からの「ありがとう」の

一言のおかげで入学して2年半、何とかやっていけている。



「あーやっぱり、こういう仕事は楽じゃねぇなぁ」



行事の度に泣き出す女子達。

『あれが良い!』『これが良い!』と言い合いになる同級生達。

彼・彼女らを纏めるのは至極簡単な事では無かった。



「飛鳥君って、頼りになるし、しっかりしてるしカッコイイね」



同じクラスの女子生徒が笑みを浮かべてそう言った。

カッコイイ?しっかりしてる?自分では駄目駄目だと思うんだけど…

他の人から見たらそう見えるのかな?その言葉に驚き、ただ黙って

次の言葉が出るのを待っていた。



「別に、普通だよ。先生から言われてることをしてるだけ」


「そこがカッコイイのよ。自覚ないんだ?」


「ん~よく分からん。あれ、腕のトコ…それ怪我?大丈夫?」



彼女の腕にある小さな傷を見付け…手当てをしようとすると、

『いいの、いいの』と凄い勢いで振り払われた。



「これくらい大したことじゃないから!全然全然、ちょっと

床で擦り剥いただけ!血も収まってるし大丈夫」



顔を真っ赤にして彼女は何処かへ行ってしまった。



「ほんとニブいなーお前は」



茫然とその姿を見遣っていると、不意うちで後ろから声を掛けられた。



「有原美香。アイツ絶対お前のこと好きだぜ。さっきも顔真っ赤にしてこっちへ来てよう。羨ましい奴だぜ、ぐへへ」


「んん?何を言ってるんだ、お前は」



友人の話によるとこうだ。

俺はモテるらしい。それも、気付いていないだけで各クラスに2~3人は俺の事を好きな女子がいるそうだ。何でもお人好しで、ムードメーカー的なところが他の男子とは違ってて良いらしい。あまり自覚ないから、よく分からないけど。



「なんだ、俺がモテてるのってなんか変な気分だな」


「ホントに気付いてなかったのか。おっそろしー奴」



ぶるる、と背筋を奮わせて友人は言った。

ふうん、俺のことを好きな女子がねぇ。何だか嬉しい気分なのは気のせいだろうか。



「まーお前は結構誰にでも優しいし?同性からも結構好かれてるし?

憧れる女子は多いんじゃねーの」


「ふぅん、俺ってそうなんだ…」


「あークソ羨ましい奴め。女子の1人2人位俺に分けろっ」



神様ー!と天に向かって叫ぶ友はさておき、

先程友人が言った言葉を何度も脳内で再生する。



『誰にでも優しい』『カッコイイ』『お人好しなムードメーカー』

フフ、何だか嬉しいな。自分のことをそういう風に言ってくれる人がいたなんて。



「飛鳥君、コレお願いね。いつも飛鳥君にばかり嫌な事押し付けちゃって

ゴメンなさいね」



そんなふうに褒められると、先生から面倒事を押し付けられるというのも

悪くないな、とも思える。



「大丈夫ですよ先生。俺が好きでやってることですから。

次の文化祭、最高のものになると良いですね」


グイッとVサインをして満面の笑みを浮かべる。

俺のことを好いてくれるみんなのためにも頑張ろう。

心の底で強くそんなことを想いながら。

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