モテ過ぎる有島くんの悩み
@karaokeoff0305
モテ過ぎる有島君の悩み
俺の名前は有島翔。
ハッキリ言って非常にモテる。有り得ないくらいモテる。
「有島君、良かったらコレ、貰ってくれない?」
「私も…こんな、手作りのへたっぴなチョコレートだけど」
バレンタインの日になると、箱にたくさん、チョコレートを詰め込んだ女子達が
一斉に此方に詰め寄る。一応予備で大き目のバッグを持ってくるが、
それでも入りきらない。
「クールでだるそうな感じが良いのよね~」
「何考えてるか分からないトコ、あま~い眼差し。
見るだけでウットリしちゃう」
俺の事を見掛けた女子は皆、口を揃えてこう言った。
正直よく解らない。クールでだるそう?あまい眼差し?
俺はいつも、早く家に帰りたくて堪らないだけなんだが・・・
「自覚ないのかしらね~有島君は」
「余裕ぶってないトコもまた素敵なのよねーッ」
冷静にその状況を眺めていたら、余計大きな声でそう騒がれるようになった。
自覚がないとか余裕ぶってないとか、一体何の話だ。
そもそも俺がこんなにモテてる事自体、あまり納得いっていないのに。
「有島君、コレあーげるっ」
「わ、私…有島君に、お話ししたい事が・・・」
ついには後輩まで来る始末。
あー、あと何人来る事やら。今日中にこの大量のチョコ、持って帰れるかなぁ。
人に渡せたら良いんだけど、一応貰い物だしね、それは出来ないよ。
(あー嫌ださっさと家に帰りたい)
やりかけのFFクリアしてこの前買った新作のゲームしてぇ。
正直学校なんて来たくない。親が『大学行け』って煩いから渋々言ってるだけで別にやりたい事とかもねーし。行ったら行ったでこういう厄介事に巻き込まれるだけだし。まァ、あまり贅沢言う立場にないか。
「放課後…校舎の裏で。ずっとずっと、待ってます」
先程来た女子生徒の一人が、俺にそう言い残し教室を去っていった。
放課後、校舎の裏…うわー、マジかよ。早くかえりてーのに放課後って
しかも絶対告白だろ。同じクラスの奴とかに見られたら面倒だなー。
「はァ~疲れた。面倒くせ」
友人から聞いた話によると、俺は平成ナントカの山田涼ナンチャラっていう奴に似てるらしい。誰だそれ。ジャニーズなんて全く興味無いから分かんねぇ。
俺はアントニオ猪木が一番カッコ良いと思うんだけど、女子は違うらしい。
「良いよな~有島は。超モテモテで羨ましい位だぜ」
「別に良くないよ。知らん他校の女子から電話とかかかって来るし…
もう疲れた。別に俺そんな彼女とか欲しくないし」
サラリとした口調でそう言い放ち、くるりと背を向けた。
「何で俺、王子様的な扱いになってるんだ?テストは毎回赤点だし、掃除はサボるし…泣いてる人が居ても割とほっとくし」
「…さ、さァ知らん。あいつ等は顔が良ければ何でも良いらしい」
「同じクラスの金田の方がカッコ良いのにな。いつもすっげー親切にしてくれるし、滅多に怒んないし。絶対アイツの方がカッコ良いのに」
「…有島。女子とはそういうものだ」
ガックリと肩を項垂れ、級友は教室を立ち去った。
全く、世の中は理解出来ないことがたくさんあるなぁ・・・
「先程、〇×市(学校から少し離れた場所の地名)で強盗事件がありました。
犯人は未だ逃走中。皆さん、お帰りの際は身の回りの安全に十分ご留意下さい」
なんか物騒な事件が起きてるなぁ。
でもまぁ、何でも良いや。
「抜け駆けはしないって約束したじゃないのッ。
加奈子、アンタは親友である私を裏切ったのよ」
「裏切るって…付き合ってもいない癖に。
偉そうな事言うそっちだってどうなの。恋愛は個人の自由でしょッ」
なんか俺絡みの事で事件起きてるけど・・・
ま、なんかどうでも良いや。全てが。それより早くFFクリアしたい。
(俺って、本当イケメンの王子様でも何でもないんだけどなァ・・・)
流れゆく雲を眺めながら、ぼんやりとそんな事を想った。
(何でみんなこんな風にカッコ良いとか素敵だとか言うんだろう…
不思議だ、ファァ~あ、さっきより雲の数が増えてる)
ひとつ、ふたつ、みっつ。流れる雲の数を数えながら、しばしの休息に浸る。
こんな騒がしい人生が、波乱万丈な(?)人生が、早く落ち着きますようにと
そう心の中で願いを込めながら。
モテ過ぎる有島くんの悩み @karaokeoff0305
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。モテ過ぎる有島くんの悩みの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
さいわい/@karaokeoff0305
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます