第2杯 美味しいご飯を求めて少女は旅立ちました。

「そうじゃまずはおぬしの名前を聞かせてもらえるかの?」


「わたしのなまえ?」


「そうじゃおぬしの名前じゃ」


「うーん……わたしもの心ついた時から1人だったからなー神父様には子羊って呼ばれてたよ」


「そうか……名前が無いんじゃの……よしわし自ら名前をつけてしんぜよう」


「本当!じゃあわたしもあの子やその子達のように名前で呼んでもらえるの?」


少女はぴょんぴょんと低く飛び跳ねながら神様の袖を引っ張っていた。


「そうじゃのお……バクバクと美味しそうに食べるからバクはどうじゃ?」


「えー可愛くなーい」


「そうかのお……それじゃあモグモグ食べる姿が愛らしいことからモグはどうかの?」


「かみさま名付けのセンスゼロだね」


「なにーそれじゃあパクパクと綺麗に食べるからパクはどうじゃ!」


「うーん神様擬音好きだね……でも可愛いからパクでいい!」


「そうかそうかそれではおぬしの名前はこれからパクじゃ!神の名のもとに祝福するぞ!」


「うん!かみさまありがと!」


少女改めてパクは可愛らしい笑顔でニコッと笑うと御機嫌に鼻歌を歌い始めた。


「その曲はなんじゃ?」


「ううん。わたしも知らないの……でもなんかこの歌安心するんだぁ」


「そうかそうかそれはいいの」


繁華街の真ん中で鼻歌を歌う少女とそれを微笑ましく見つめる老人は周りから見て孫とおじいちゃんの図であった。


「それでのうパクや」


「ん?」


「わしはのおそろそろ行かなくてはならんのじゃ」


「えっかみさまもう行っちゃうの?」


「そうじゃもうそろそろわしの力も尽きてしまうのじゃ……でもその前にパクに頼み事があるのじゃが……聞いてくれるかの?」


「ん!なんでも言って!パク頑張る!!」


「そうかそうかそれでは話をするぞ」


「ん!」


「わしはのあの世界ライクが嫌いじゃ……あの世界は真の食に溢れておらん」


「何で?」


「パクも見たじゃろう……おぬしを食のために騙す者や見て見ぬふりする者達を……」


パクは神父やシスターのことを思い出していた。


「確かにあの世界にはうまいもんがいっぱいある。しかしうまいもんを得るためには手段を使わないものも少なからずいるのじゃ……」


「うん。そうだね……」


「パクはそんな世界をどう思う?」


「ご飯はみんなで食べた方が美味しいよ!」


「そうじゃのその通りじゃよ……それもこれも真のうまいものを人々が知らないのが問題なのじゃ!」


「真のうまいもの?」


「この世界を見てみなさい。この世界はそこらに売っているおにぎりでさえこの完成度じゃ……これがライクの5分の1で買えるのじゃよ」


ショッケン1枚は日本円にして500円程である。


「あっちでは水っぽいスープと硬いパンでショッケン1枚なのに!ここではあの美味しいおにぎりが5個も買えるの!!」


「そうじゃあっちの食は歪んでおるわしら神がショッケンというシステムを作ったのが間違いだったのかの……」


「違うよ!かみさま達はみんなご飯食べれる素晴らしい世界だよ!悪いのはそれを悪いことに利用した人達だよ!!」


「そう言ってもらえると嬉しいの……でも実際問題パクのようなもの達はいっぱいいるのじゃよ……あの世界には……」


明らかに落ち込む神様はを見てパクは何とかしなきゃという気持ちになったが自分のこともあるので真っ向から否定出来ないのも事実であった。


「ねえかみさま……何でパクなの?」


「ん?どうしたんじゃ急に?」


「だってパクのような人はもっといっぱいいたんでしょ?なのに何でパクだけ助けてくれたの?」


「ほっほっほパクはのお神父やシスターにショッケンを9枚も取られたあと何をしたのか覚えておるか?」


「えっと……」


「おぬしはの残りのショッケンを使って倒れていた野良犬に、食べ物を買ってあげたじゃろ」


「あっうん!あの子可愛そうだったから……」


「わしはのこの子は他人に食べ物をめぐむ心を持っておるのじゃと感心したのじゃよ……普通はショッケン無くすると盗みをしたり、無茶な討伐に赴いたりするものなんじゃよ」


「ふーん……パク馬鹿だからわかんなっかったや……てへへ」


「わしはそんなパクの純粋さと優しさ、他人を不幸にするのなら自分がという精神に感動したのじゃ……この世界にもまだこんな者が残っておるのじゃと……この者なら同じ境遇の者達と手を取り合ってこの食の世界を変えてくれるのではないかとの」


「世界を変える?」


「そうじゃ!わしがパクにお願いしたいこととはこの世界で真の食に関わるものを見つけ、一緒に異世界へと赴き各地を回って真の食の素晴らしさをライクの住人へ伝えてもらいたいのじゃ!!」


神様が決まったっ!とばかりに清々しい顔をしていた。


「パクでもランク低いよ?」


「パクはイーターじゃろ?」


「うん。」


「パクにはその者の料理の味見をして評価をつけて欲しいのじゃ。そうすれば自然とランクも上がっていくしの」


イーターは料理を評価又は普及の促進することでランクが上がっていく。


評価をした料理が多くの人々に共感されることが出来れば多くの経験値を得ることが出来るのだ。


ただし普及の経験値を貰えるのは初めの3名だけだ。


評価するだけでもある程度の経験値は貰える。


「でもこの世界からライクにはどうやっていくの?」


「それはわしのプレミアムスキル異世界渡航を使えば良いのじゃ!」


「異世界渡航?」


「異世界渡航はライクと地球(日本)を行ききする事のできるスキルなのじゃ!パクを連れてきたのもこのスキルじゃよ」


「へえーかみさま凄い!」


「しかしのこのスキルは10日に1度しか使えないのじゃ……しかも片道分だけじゃしの……」


「それじゃぁパク次第で地球(日本)に戻ってくることも出来るんだ!」


「あーそれと出現する場所はランダムだ決まるのじゃ……もしここで異世界に渡っても戻ってくる時は別の場所(日本内)という事じゃな……ライクでもしかりじゃ……」


「じゃあパクが探さなきゃいけないのは各地に知り合いがいてどこでも対応可能なご飯を作れる人ってことだね?」


「そういうことになるの飲みこみ早いのお」


「えへへー」


「おお……そろそろ時間じゃ……それじゃあのこれが異世界渡航のスキルじゃ」


パクの頭の上に手を載せるとポンポンと叩いた。


「これだけ?」


「うむ。これだけじゃそれとこの世界の通貨もある程度渡すから食べ歩きでもしてゆっくり決めなさい」


そう言うと神様は小さい首からかける財布を取り出すとパクの首にかけた。


中には3万円入っている。


それと子供用のリュックサックも背負わせた。


「もし困った時は優しそうな人に交番はどこですか?と聞いてそこにいる人にこの手紙を渡しなさい。きっと助けてくれるはずだからの」


「うん!かみさまありがとーー!大好きーー!」


パクはそう言いながらリュックに手紙をしまった。


神様は孫と分かれるおじいちゃんのような顔でパクに背中を向けると光を放ち「またの」っと一瞬のうちに消えてしまった。


「よーうし!頑張るぞーー!」


パクはそう言うと新しい世界へと旅たつのであった。

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