らーめん屋見習いの異世界飯 〜超能力チートで異世界旅〜

七浜ユウキ

第1杯 コンビニのおにぎりは美味しい。

ここは食が最大の娯楽の世界ライク。


人々は日々うまいものを求め、そして自らうまいものを作ろうと奮闘する。


人々は10歳を過ぎると食の職を神により選択を迫られ、三種類に判別される。


料理を食し、評価するものをイーター。


料理を作り、研究するものをクッカー。


食材を採取、討伐し、供給をするものをキャッチャー。


それぞれにランクがあり、そのランクに応じて、世界のシステムからの恩恵として食のチケット、通称ショッケンが定期的に送られる。


この世界の食に関わることはこのショッケンに付随し、食べることはもちろん、食材の買い出し、狩猟場の開放や食材の売却や加工、レシピの特許などの取引もショッケンによって行われる。


金銭の概念は別にあり、ショッケンは高値で取引される。


高ランクの者の評価、料理、希少食材はショッケンや金銭を多く獲得することにつながるため人々は自身のランクを上げることがこの世界の者の生活原理である。




大食都市バークルの食であふれた賑やかな路地の裏で一人の少女がその命を神へと返そうとしていた。


「あーなんでわたしは生まれてきたのだろう……おいしいご飯が食べたくて…イーター選んだけど…もう5日も何も食べてないや……神様……今度生まれてくるときはご飯が不自由なく食べられるとこがいいな…」


ランクが初期値Fのこの少女は両親がいないストリートチルドレンであった。


5日前に10歳になり、食の職の選択の日を迎えた。


それまでは協会での炊き出しによって命をつないでいた少女は10歳になったことでショッケンなしでは食べ物を得ることができなくなってしまったのだ。


少女がいつものように食べ物を貰いに協会に行くと今まで優しく食べ物をくれていた神父様とシスター様にショッケンを出せと言われた。


神父やシスターはイーターとクッカーであり、炊き出しはイーターのポイントである食の普及、クッカーのポイントである調理のポイント稼ぎでしかなかった。


10歳以上への食の普及や供給はポイントが発生せず、無駄なことであるために神父とシスターは少女にショッケンを求めたのだ。


Fランクに支給されるショッケンは10日で10枚、簡単なパンとスープのセットがショッケン1枚なので1日わずかな量を一食のみの計算だ。


通常であれば親や親族の助力により、少しづつランクを上げ、独り立ちするものだがこの少女にはそれができない。


初回に配られたショッケンは神父とシスターへ今までの感謝という名目で全部取られてしまったのだ。


突然一文無しで食の社会へと追い出されてしまった少女は衰弱し、餓死する寸前となったのだ。


「あー神様…あの出店で売っていたお肉の塊が食べてみたかったです……あの子がお母さんに買ってもらっていた白くて甘そうなお菓子も食べてみたかったです。一度でいいから……おなか一杯ご飯を食べてみたかったです」


少女は薄れ行く意識の中で食の世界で満たされることのなかったおなかをさすっていた。


目をつぶりこの世界との別れを決めた時、一筋の光が少女へと指した。


「このひかりは……」


少女が目を開けるとそこは土でもない、レンガでもないごつごつとした見たことない地面があった。


「哀れな少女や」


「だれ?」


「わしはのお神様じゃ」


少女が顔をあげると空は暗いのにまるで昼間のような明るさをしている通路の真ん中に1人の老人が立っていた。


横を過ぎていく人たちは見たこともないような服を着ていて、こちらをちらちらとみるものの話しかけてくる様子はない。


「かみさま?わたし死んだの?」


「危ないところじゃったのお…一応これを食べなさい」


そういって手渡されたのは黒いものが巻かれたものにつるつるとした透明な紙が巻いてあって、その表面に見たこともないような文字がずらっと並んでいるものであった。


「これなに?」


「これはのおにぎりというたべものじゃよ」


「たべもの!がぶ!」


少女は食べ物と聞くや否やビニール袋のしてあるおにぎりにかぶりついた。


「うげーー。これ食べられないよー」


「ほっほっほ。これはのこうやって剥いての…この黒いのりってものを巻いて食べるのじゃよ」


神様はそういいながらコンビニのおにぎりを向いてあげると再び少女に手渡した。


「がぶ!んんんんんすっぱーい」


「おお…そっちは梅じゃったか!すまんこっちのツナマヨと間違えてしもうた」


「がぶがぶ!でもおいしーーーい!!」


「そうかそうかこっちのもおたべ」


「うん!」


神様は少女がおにぎり100円セールのそこのコンビニで買ったおにぎりを幸せそうに食べる姿をほほえましく見ていた。


「もぐもぐもぐもぐ。ごくん。ごちそうさまでした!」


「おいしかったかい?」


「うん!すごくおいしかった!!かみさまありがとう!」


「そうかそうかよかったのう」


「かみさま…わたしどうなったの?」


「そうじゃなお腹もいっぱいになったようじゃしの本題について話すとするかの」


神様は真剣な面持ちになると少女の純粋な目を見つめ話し始めた。

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